『とくダネ!』フジテレビ
『とくダネ!』(2月22日放送)に関するフジテレビからの回答
これは、鹿児島県で駅伝の応援帰りの中学生の列に車が突っ込み死傷者が出た事故報道に際し、当該番組が絶句した中学生へのインタビューを放送したことについて、視聴者から「マスコミの配慮が足りない」などの意見が寄せられたのを受け、委員会が当該局に見解を求めていたものです。
その回答は以下のとおりです。
〔フジテレビからの回答〕
【事件・事故の際に、中学生など青少年へのインタビューを行うにあたっての判断基準】
事件・事故の当事者や目撃者が青少年の場合、年齢が低ければ低いほど、PTSDなどの心理的に被る影響が深刻であることには、最大限、配慮しています。それでもなおかつ、その事件・事故が社会に与える影響が重大で、検証報道に当該青少年のインタビューが不可欠な場合に限っては、事件・事故の態様や年齢などを総合して、質問の内容など、インタビューの仕方を慎重に判断することにしています。
高校生以下の場合は、保護者ないし教師の「許可が得られたかどうか」という条件も、判断する際の重要な基準にしています。
今回の取材・編集・放送にあたって留意した点
現場取材にあたったFNN系列のKTS鹿児島テレビの取材記者は、駅伝の応援帰りの中学生の集団に軽乗用車が猛スピードで突っ込むという極めて特異な事故でありながら、運転していた女性が意識不明の重体だったこともあり、現場では原因を特定できませんでした。このため、事故の状況の取材や原因の究明には、居合わせた中学生の話を聞くしかないと判断。その報告を受けたデスクは「保護者ないし教師の許可を得られるなら」という条件をつけて中学生の心理的な動揺に最大限配慮するよう指示し、病院に移動した記者は、けがをした女子生徒に付き添っていた保護者の女性に許可を求めてインタビューしています。
『とくダネ!』では、KTSから、この女子生徒の取材テープを未編集のまま提供してもらいました。2月22日の『とくダネ!』で放送したのは、記者の「怖かった?」という質問に女子生徒がうなずく様子と、それに続いて「今、どんな気持ちですか?」という質問に、少し間があった後、「言えない」と答えている部分(合わせて20秒あまり)です。(視聴者からの意見には『途中からこの女子生徒が泣き始めた』とありましたが、取材記者によりますと、インタビューの前後も含めて泣いたという事実はないとのことですし、放送した映像・音声にも、その事実はありません)
「今、どんな気持ちですか?」の質問に対して答えに窮している部分については、放送する前に、女子生徒の心情に配慮して放送を控えるべきかどうかについて番組のスタッフが協議を重ねましたが、①突然発生した特異な事故の衝撃の大きさを視聴者に伝えるためには必要だ、②保護者の女性に許可を得て、立ち会いのもとで撮影されていることなどから、放送することを決めたものです。
同じ映像を他の番組でも使用しているか
この事故は、特異で重大な事故だったため、この女子生徒のインタビューは、地上波放送では『とくダネ!』放送までに、2月21日夕の『FNNスーパーニュース』、同日深夜の『ニュースJAPAN』、22日早朝の『めざにゅー』、続く『めざましテレビ』でそれぞれ1回ずつ、合わせて4回、放送されています。『とくダネ!』以外のどの番組も、「今、どんな気持ちですか?」以下の部分は放送していませんが、『とくダネ!』では、事故の衝撃度も含めて多角的に検証するために必要なインタビューだと考えて放送しました。
放送後の視聴者意見と、それを受けた社内議論
『とくダネ!』放送直後のスタッフの反省会では、女子生徒のインタビューを番組中のCMの前とCM後の2回放送したことについて、プロデューサーが「やや行き過ぎではないか」と、担当ディレクターに指摘しました。
フジテレビには、『とくダネ!』放送後、「事故に遭った子にインタビューをするなんて良識を疑う」「事故を思い出させてかわいそう」などの批判が、電話で16件、HPに35件、寄せられました。
これらのご批判を受けて、『とくダネ!』のスタッフの間では、「当事者とはいえ、未成年者へのインタビュー取材ならびに放送での取り扱いは、より一層、慎重にすべきだ」という意見とともに、「事件・事故の凄まじい衝撃をも伝えなければならない報道の公益性から、あえて取材・放送をしなければならない場合もある」との意見があり、今後も議論を重ねていくことにしています。
KTSには、『とくダネ!』放送後、事故に遭った中学校のPTA関係者と名乗る人から2件、電話で「子どもへの取材は、今後の心のケアを配慮してほしい」との申し入れがありました。これを受けてKTS報道部は、部内で協議した上で、フジテレビのFNN連絡部に「生徒の映像(現場映像およびインタビューとも)は顔がわからない形で使用する」という使用制限を要請しました。そしてKTS報道部では、この事故の関連取材では、当該中学校の生徒のPTSDに配慮し、直接取材は、これまでにも増して慎重にすることを申し合わせました。
今後、子どもが当事者になるなど、同様のケースが起きた場合に向けての考え
事件・事故の事実関係やその原因を徹底的に究明して報道の使命を果たしていくためには、青少年への最少限の取材が必要不可欠な場合もある、との基本的な認識に変わりはありませんが、今回の視聴者からの指摘・批判を教訓にして、今後の取材・編集・放送にあたっては、より一層、青少年の心のケアに細心の注意を払うよう、スタッフ教育を徹底していきたいと考えております。
回答を基に検討したところ、委員からは、「”保護者の同意”よりも、動揺している被害者にマイクを向けることに視聴者の批判が向けられているのではないか」「インタビューを受ける側の意思によっても違ってくる。中学生であっても積極的に話をしたい生徒もいるだろう」「視聴者としては、事故の当事者である中学生の声を聞きたいと思うのも理解できる」との意見のほか、「中学生に”今の気持ち”を聞くことに、どれほどの意味があるのかを考えて取材しているのか。インタビュー自体が陳腐化しているように思う」「子どもへのインタビューはこれまでもさまざまに議論されているが、”取材現場の対応”と”その映像を使用するか否かの編集”の二つの問題に収斂できると思う」などの意見が出されました。
議論の結果、今回の審議で出された論点を整理した上で、今後、同様のケースが起きた際に改めて議論することを確認しました。
≪注≫ 当該事故報道については、NHKを含む在京TVキー局にも、”中学生へのインタビューを放送していた場合”には質問に対する回答文を要請していました。その結果、テレビ朝日とテレビ東京からは「中学生へのインタビューは行っていない」、日本テレビ、TBS、NHKからは「中学生へのインタビューを放送した」との回答がありました。以下に、放送した3局からの回答の概要を掲載します。
〔2005年4月7日付〕