青少年委員会

青少年委員会 審議事案

2005年10月

『カミングダウト』日本テレビ

『カミングダウト』(2月15日放送)に関する日本テレビからの回答

これは、当該番組で未成年タレントが過去の集団窃盗を告白したことを題材に取り上げたことについて、視聴者から「犯罪行為を軽いことのように扱う局の倫理観に大きな疑問を感じる」との意見が多く寄せられたのを受け、委員会が当該局に見解を求めていたものです。

その回答は以下のとおりです。

〔日本テレビからの回答〕

はじめに

本件の最大の問題は、子どもの頃の万引きとは言え、窃盗という犯罪行為を番組の題材として取り上げた点であります。犯罪行為については、これを肯定したり面白いものとして取り扱ったりしないよう注意すべきことは、公共の電波を預かる弊社としては当然のことであり、番組づくりはバラエティーといえども社会通念から外れてはならないことも自明の理であります。
このような点に照らして、今回の放送内容は放送基準の精神にもとるとの誹りを免れないものです。

この題材を取り上げた意図、制作現場スタッフの判断

番組担当者は、企画段階では放送するにあたって大きな問題があるとは認識しておりませんでした。タレント事務所等との打ち合わせでは、事務所側から窃盗という犯罪行為を告白することについて若干の懸念の表明がありましたが、事務所側が積極的にこの題材を扱うことを拒否するまでに至らなかったことなどもあり、この題材をクイズ形式で放送することを決めました。上記に述べましたとおり、根本的な判断ミスです。

放送にあたっての社内議論と、放送上留意した点

通常の番組担当者による打ち合わせ、番組会議、収録前打ち合わせ、収録、下見を経て放送に至りました。

番組収録後の下見の際、このままでは放送上問題があると判断した番組担当者の指示により「万引きは犯罪です。絶対やめましょう」とテロップで表記し、ナレーションを加えるなどの措置がとられました。

どのような社内チェックを経て放送したのか

先述したように、打ち合わせ後の番組会議、収録、下見等で当然行われるべきであった管理職レベルのチェックや審査担当部署への事前照会など、基本的な作業が抜け落ちていたことが事後の調査で判明いたしました。

弊社といたしましては、日頃から番組制作をはじめコンプライアンスの啓発を進めていたところで、今回の事案についてはその徹底を欠いていたと申しあげるほかなく、誠に申し訳なく思っております。

放送後の視聴者意見と、それを受けた社内議論

視聴者センターに入った電話・メール等は、電話:約330件、メール:約1600件です。

主な内容は、「犯罪行為を放送する局の姿勢が理解できない」「お詫びのテロップは免罪符ではない」「若者の犯罪に対する罪悪感の欠如を増進する放送に抗議する」「タレントよりもそれを公言させた番組の責任が重い」「チェック体制以前の問題である」等。

以上の意見・指摘については、さまざまなレベルの会社横断的な会議で紹介し、意見交換するとともに教育研修の題材とさせていただきました。

なお、当該放送の1週間後の放送において、視聴者に対するお詫びを行いました。

また、その同日に開催した番組審議会において、社側より報告し、審議していただきました。

今後の対応策

事案発生後、緊急に「放送人としての倫理確立・再確認」のため、編成局の全プロデューサーを対象に教育研修を実施しました。講師は、編成局、コンプライアンス担当の幹部が務めました。

委員会で検討したところ、委員から、「犯罪を告白したタレントだけでなく、共演者がそれを揶揄するという番組の作り方にも問題を感じた」「”万引きくらいは平気”との風潮がある。企画の段階でやめるべきだった」などの指摘や、「タレントの告白内容は”住居侵入窃盗”だが、番組では”万引き”と言っており、そういう感覚にも驚いた」「人間には醜いところもあるが、それも含めて一人の人間だ、と感じられるような番組づくりはできないのか」との意見が出されました。

その一方で、「極端なことを言って本当か嘘かを当てる番組の構成そのものに危うさを感じるが、委員会が番組企画にまで踏み込んでいいのかという問題もある」「やはり一つひとつのケースに関する議論を積み重ねていくほかない」との考えも述べられました。また、当該タレントが活動を再開したことに関連して、「けじめのつけ方について局として視聴者にどう説明するのか、ルールのようなものを考える必要があるのでは」との意見もありました。

議論の結果、今回出された問題点を念頭に置きつつ、今後の審議を行っていくことを確認しました。

〔2005年4月7日付〕