第282回-2025年9月24日
沖縄地区意見交換会に向けての勉強会を実施…など
2025年9月24日、第282回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、吉永みち子委員長をはじめ7人の委員全員が出席しました。
議事に先立って、沖縄県平和祈念資料館学芸員・大城航氏をオンラインで招き、沖縄地区意見交換会に向けての勉強会を実施しました。
議事では、7月後半から9月前半までの2カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
9月の中高生モニター報告のテーマは「終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。
議事の詳細
- 日時
- 2025年9月24日(水)午後4時00分~午後7時30分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階) - 議題
- 沖縄地区意見交換会に向けての勉強会
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について - 出席者
- 吉永みち子委員長、飯田豊副委員長、池田雅子委員、佐々木輝美委員
沢井佳子委員、髙橋聡美委員(オンライン参加)、山縣文治委員
沖縄地区意見交換会に向けての勉強会
青少年委員会は戦後80年となる今年の11月に沖縄地区放送局との意見交換会を開催する予定です。その準備の一環として、沖縄県平和祈念資料館学芸員・大城航氏をオンラインで招いての勉強会を実施し、沖縄県内の平和教育の現状と課題についてレクチャーを受けました。
戦争体験者が次第に減り、戦争の語り部たちも引退するなかで、どのようにして若い人たちに戦争の記憶を継承していくのかや、新しい平和教育を模索する際の苦労話のほか、現状で戦争証言を取材できるのはメディアしかないという放送局への大きな期待についても熱く語っていただき、戦争の実相を後世に伝えていかねばならない放送局の責任の重大さを痛感する、たいへん有意義な勉強会となりました。
視聴者からの意見について
7月後半から9月前半までの2カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
子ども向けニュース解説番組で「日本が戦争(満州事変からの15年戦争)を始めた原因」を「日本が中国の資源と市場を独占したかったから」と説明したところ、視聴者から「このような単純化された説明を判断力の未熟な子どもに行うことは、偏った歴史認識を刷り込み、将来的な誤解を招く」などの意見がありました。
担当委員は「教科書的な事実をきちんと押さえた説明だった。資源を求めた背景には『昭和恐慌(1930年~)がある』ことも踏まえていて、誤解を招く表現があったとはいえない」と説明しました。加えて「むしろ、視聴者意見のなかに『ABCD包囲網に言及していない』との指摘が複数あったが、それは太平洋戦争の開戦(1941年)に関わるもので、満州事変との混同が著しかった」としました。
平日夕方の報道番組で、著名大学柔道部の男子学生(20歳と19歳)が大麻等所持の容疑で逮捕され、とくに20歳学生を実名・顔出しで報じたことに、視聴者から批判的な意見が寄せられました。
担当委員は「これは、この番組だけのものではなく、(20歳以上の)逮捕者を報じる際に実名か匿名か、あるいは顔を出すか出さないかというのは、繰り返し議論が重ねられてきた問題として捉えるべきだろう」と述べました。
ある委員は「これが、18歳、19歳の特定少年の問題であれば、委員会としても意見表明できるが、20歳以上だと報道各社の判断だとしか言えないだろう」と指摘しました。続けて別の委員も「犯罪報道の原則が『実名報道』であることを踏まえるべきだ。そのうえでこの事件をどう見るべきか。著名大学の柔道部が舞台であり、仮にだが、部の寮内で広がりを持つ事件になるかもしれず、その社会的影響は看過できない。そういったことと逮捕された20歳の学生の人権や将来を比較衡量したうえでの当該放送局の判断だったのだろうと思う」と述べました。
成人向けアダルトゲームが原作のアニメが深夜遅くの時間帯で放送されていることに、視聴者から「放送できない用語を打ち消すピー音や、胸や尻を過度に強調した制服を着た女子高校生が頻繁に出てくる。地上波放送にはそぐわない内容だ」などの意見がありました。
ある委員は「ダイジェスト版を一部見たが、ピー音や(卑猥なシーンを覆う)静止画が本当に多い。あそこまで入ってくると、本当は何があるのだろうという、いわば『誘導』になるのではないか」としたうえで、「(女子高校生が出てくるならば)『児童ポルノへの誘導』ということも考えられ、このような番組が続くのは問題ではないかと思った」と述べました。さらに別の委員も「実写(のドラマ)ではなく、アニメだからという理由で少し緩くなっているのではないか。ピー音や静止画が頻繁に入ることで、元のシーンを見てみたいなという形で『DVD購入などへの誘導』にもなるのであれば、今後は問題をはらんでくるだろうと思う」と指摘しました。
このほかに大きな議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。
中高生モニター報告について
9月のテーマは「終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」で、25人から合わせて19番組の報告がありました。視聴方法は、リアルタイム視聴が9人、アプリ(TVer、NHK+など)を利用したタイムフリー視聴が3人、録画・録音が12人、その他(回答なし)が1人でした。
複数のモニターが取り上げたテレビ番組は『戦後80年特別放送 映画「ラーゲリより愛を込めて」』(TBSテレビ)、『金曜ロードショー「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」』『金曜ロードショー「火垂るの墓」』(いずれも日本テレビ)、『ザ!戦後80年の映像遺産SP 池上彰×加藤浩次の運命の転換点』(フジテレビ)です。
今月は「自由記述」ではなく「あなたが“戦争に関心を持つ”のはどんなときですか」と質問したところ、「終戦関連の番組やニュースを見たとき」「戦時中を扱うドラマや映画、アニメを見たとき」「学校の授業」といった回答が届きました。「若い世代に戦争をどう伝えていくか」についての意見も寄せられました。
「青少年へのおすすめ番組」では『クローズアップ現代「戦後80年スペシャル テレビが伝えた“あすへの希望”」』(NHK総合・8/6放送)と『戦後80年特別放送 映画「ラーゲリより愛を込めて」』(TBSテレビ)に3人から、『第45回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2025』(日本テレビ)と『ドラえもん 誕生日スペシャル』(テレビ朝日)に2人から、それぞれ感想が届いています。
◆モニター報告より◆
【終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】
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『時をかけるテレビ~今こそ見たい!この1本~「夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~」』(NHK総合)
1988年に放送された番組で、当時の女学生のアニメと、残された家族が娘を想う言葉が綴られていました。平和が続く世界の多くの人に見てもらいたい番組です。ただアニメを放送中は、両サイドの2人の映像は必要ないと思いました。番組に集中したいので副音声も必要ありません。遺族が話しているときはその声だけでよいと思います。(高校3年・女子・長崎) -
『NHKスペシャル「広島グラウンドゼロ 爆心地500m 生存者たちの“原爆”」』(NHK総合)
「グラウンドゼロ」という言葉を知らず、どのようなものか興味を持ちました。CGで再現された原爆投下後の映像は想像以上にクリアで、リアルな映像に驚きました。人型にくっきりと跡が残っているシーンは、実物より恐怖を感じました。「戦争とは」を知ることができる、貴重な番組だと思います。(中学1年・女子・東京) -
『NHKスペシャル「原子雲の下を生き抜いて 長崎・被爆児童の80年」』(NHK総合)
「原爆が落とされた時、家族のことを一切考えなかった」という話が印象深かったです。「戦時中のことを思い出したくない」という気持ちがある中で当時の記憶を話してくださったことに感謝の気持ちを持つべきだと思いました。(高校1年・女子・愛媛) -
『NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争 最終回 忘れられた悲しみ」』(NHK総合)
特に印象的だったのはある主婦の日記で、日本軍の躍進を鼓舞するような力強い文言の隣に、「当時の自分が今では恥ずかしいが、この記述は後世まで残しておこう」と書き込まれていた。間違っていた過去に蓋をせず未来へ繋げていこうと決意したことは、心を揺さぶられる重みがあった。ごく一般の人の戦時中の生の声を丁寧に紹介していて、心に深く刺さった。(高校2年・女子・神奈川) -
『NHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」』(NHK総合)
ドラマは人物の心理描写が伝わりやすく、総力戦研究所の若者の恐怖や葛藤が的確に描かれていました。ただ、実際の総力戦研究所所長の孫の、番組への批判がニュースになり、結果として番組の意図を視聴者に純粋に伝えられなかったことは、歴史を伝える役割をもつ戦争関連番組にとって残念なことだと思います。放送日を遅らせてでも事前に理解を得てから放送したほうが、効果を発揮できたと思います。(中学3年・男子・東京) -
『戦争×令和 『あの花』がつなぐ戦後80年』(NHK総合)
若い世代と戦争の関わりが気になったので視聴しました。「特攻は無駄死になのか」という疑問に対して、人それぞれ考えが異なっていたのが心に残りました。戦争関連番組は「全国各地の資料館を紹介する」というテーマが良いと思います。『あの花』の作者も知覧特攻平和会館を訪れて心を揺さぶられたと聞きました。戦争をより身近に考えられるのではないでしょうか。(高校1年・女子・熊本) -
『映像の世紀バタフライエフェクト「シリーズ昭和百年(2) 敗戦国ニッポン 敗れざる者たち」』(NHK総合)
普段から視聴している番組です。終戦を迎えたというと「悲しい」「いやな」イメージが先行し、他の番組では復興までは取り上げていないと感じますが、この番組は細かいところから現在につながるまでの「バタフライエフェクト」を取り上げていて、本当に勉強になります。(中学3年・男子・東京) -
『長崎スペシャル「カズオ・イシグロ 遠い山なみの光が照らす“ナガサキ”」』(NHK総合)
広瀬すずさんの朗読が印象的で、飽きることなく物語に引き込まれました。とても面白かったです。特に心に残ったのはカズオ・イシグロさんの言葉です。「戦争というのは映画やニュース映像で見るような巨大な出来事だけではなく、私の母のような人々の日常生活のささいなことや、時につらいことの中に、戦争の本質がある。」原爆のあとに人々がどのように暮らしていたのかも、もっと知りたいと思いました。(高校3年・女子・広島) -
『ETV特集「火垂るの墓と高畑勲と7冊のノート」』(NHK Eテレ)
私は映画「火垂るの墓」をまだ見たことがない。友人との話題に出たこともなく、正直、戦争描写が怖くて見られない。ただ親世代は見ていていつか見たいと思っていたため、創作ノートが見つかったという番宣を見て、番組を見ようと決めた。当時の日常の精一杯の日々の事実として、今知ることができて良かったし、とても貴重な番組だと思う。(高校1年・女子・秋田) -
『あしたは8月6日じゃけぇね ~平和の声が届く部屋in広島~』(NHK Eテレ)
原爆投下の前日も忘れることのできない日だったと知り、よいテーマだと思った。戦争について語ろうと広島で奮闘する若者の姿と平和ソングとを一緒に放送するのは、平和についてより考えることができる良い演出だった。(高校3年・女子・徳島) -
『アナウンサー百年百話 ラジオが伝えた戦争 第1回 「ラジオ太郎」と戦意高揚の時代』(NHKラジオ第2)
戦争を伝える番組は証言記録、映像、体験談などを「悲劇」として構成することが多く、加害の歴史はあまり報道されません。でも、悲惨さを伝えるだけでいいのでしょうか。いかにして戦争賛美の世論が形成されていったのか、そこには言葉の力がありました。「ラジオ太郎」は国民に夢を見させて、我慢は美徳であることを、一人芝居を通して共感させる。SNSに慣れ親しんだ現代人でもコントロールされると思いました。ファクトチェックの重要性を「ラジオ太郎」が教えてくれました。(中学3年・男子・北海道) - 『戦後80年特別放送 映画「ラーゲリより愛を込めて」』(TBSテレビ)
- 戦争の悲惨さや人々の生き方について知りたいと思って視聴しました。心に残ったのは過酷な収容所生活の中でも仲間を思いやる姿です。平和の大切さが伝わるように構成されていて、世代を超えて語り継ぐことの大切さを感じました。(高校1年・男子・神奈川)
- 劇場でとても感動したので、テレビで放送されると知ってもう一度観ました。この映画の良いところは戦後の残酷さを描いているのに希望をもらえるところで、「帰って家族に会うこと」「収容所で大切な仲間ができたこと」が描かれていてすごく良いと思います。(高校2年・女子・東京)
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『戦後80年特別番組 なぜ君は戦争に? 綾瀬はるか×news23」』(TBSテレビ)
自分の年齢に近い有名な俳優がたくさん出演していて気軽に視聴できそうだと思った。体験者の証言は心に響くので映像で残すことが大切だと思うし、そういった生の声を発信する番組が良いと思う。今回のようなドラマ仕立ても感情移入しやすかった。(中学2年・男子・東京) - 『金曜ロードショー「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」』(日本テレビ)
- ニュース番組などで「今年は戦後80年」と報道され、いつもより戦争への関心が高まっていたことが視聴した理由の一つです。残虐な演出があまりなかったため観やすく、最初から最後まで感動し、またとても考えさせられる話でした。映画では「最後のエンドロールで主題歌が流れた時にまた泣いた」と友達が話していたので、地上波でも流してほしかったです。(高校2年・女子・熊本)
- 原作の小説が大好きだったので視聴しました。戦争時の緊迫した状況をよく再現しているなと思いました。ただ緊迫している状況で現代風のCMが挟まると緊張感がなくなりイライラするので、映画の前と後の2回にまとめてほしいです。(中学3年・女子・山梨)
- 『金曜ロードショー「火垂るの墓」』(日本テレビ)
- 戦争関連の映画は怖くて避けていましたが、有名な「火垂るの墓」を見て戦争について考えてみようと思いました。80年前にこの日本でこのようなことが起きていたとは想像もできませんでした。(中学3年・男子・大分)
- 戦後80年という節目の年の終戦の日に7年ぶりに地上波放送され、とても意味のある放送だったと思います。清太と節子が当時の姿で現代のビル群を見つめるラストシーンは、現代に生きる私たちへ戦争の悲劇を伝えているようなメッセージ性を感じました。(中学2年・女子・千葉)
- 小さい頃に少しだけしか観た記憶がなく、久しぶりに『金曜ロードショー』で放送すると知り視聴しました。戦争についての話を見聞きするのは学校がほとんどで、あとは報道番組の特集で見るだけなのでとても新鮮でした。心に残ったのは、日本が負けて父親が亡くなったことを清太が知り、情緒不安定になったシーンです。誰にとっても過酷でつらいのに、節子がいるからと頑張る清太を見て心が痛みました。(高校2年・女子・埼玉)
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『報道ステーション』(テレビ朝日)※8/6放送
前日の放送の終盤で「イヤフォン推奨」と予告していたので、他の戦争特集とは違う切り口なのだろうと興味がわきました。「ANN」のYouTubeチャンネルでも視聴でき、「貴重な記録をありがとう」「評価できる報道機関だ」など感謝するコメントがありました。これからの放送はネットユーザーへの対応も求められると考えていましたが、エンタメではなく戦争特集で突きつけられるとは思いませんでした。(高校3年・男子・福島) -
『池上彰のニュースそうだったのか!! 3時間SP 知っておきたい!戦後80年』(テレビ朝日)
アメリカ人に対する「戦争に原爆は必要だったのか?」というインタビューで、正当化できる人とできない人がいることを知りました。アメリカでは原爆に関する授業があり、「多くの命を奪う方法として正当化できない」と考える人が多かったと聞いて、少し救われたような気持ちになりました。(中学1年・男子・大分) - 『ザ!戦後80年の映像遺産SP 池上彰×加藤浩次の運命の転換点』(フジテレビ)
- 原爆ドームは5回にもわたる補修工事が行われていて、中から樹脂で固め傷跡を白くさせる技法にとても驚きました。ただ原爆ドームを紹介するよりも、被爆者が当時どのような目に遭ってきたかを伝える方が、視聴者の興味を引けると思いました。(中学1年・男子・福島)
- 特攻隊は3人1組でそれぞれの役割を命じられていましたが、突然作戦中止になり、それによりPTSDを発症したそうです。秘密裏の部隊だったので戦後の補償は何もなく、自分と同じ年代の人が一生苦しめられたとしたら、その先に希望はないなあと思いました。(高校3年・男子・神奈川)
- 心に刺さる言葉がたくさんあり、私が本当に知りたかったことを教えてくれました。最も心に残ったのは、戦争で愛する人を亡くした方とアメリカ兵との再会で、戦う相手も同じ地球で生活する人間だという事実を改めて教えられました。アメリカ兵の視点でも戦争について語っていてとても学びになりました。戦争がぼんやりしたイメージではなくなり、改めて戦争は起こしてはいけないと感じました。(中学2年・女子・東京)
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『終戦80年企画「財前直美 知られざる“特攻の町” 我が故郷 戦争の記憶」』(BSフジ)
高校で公共の先生に勧められて視聴したが、終始胸が締めつけられるような内容だった。特攻隊を見送る母親の日記が印象的で、まだ未来が長いはずの若者が国のために命を投げ出すことは本当にあってはならないことだし、戦争の残酷さを改めて感じた。(高校2年・女子・東京)
【(モニターへ質問)あなたが“戦争に関心を持つ”のは、どんなときですか?】
《終戦関連の番組やニュースを見たとき》
- テレビで戦争関連番組を見ると、修学旅行で訪れた長崎で聞いた被爆体験や知覧特攻平和会館で見た資料など、これまで見聞きした記憶が蘇る。
- 私と近い年齢の方や、父の出身地である鹿児島が題材だと関心を持つが、残酷な映像ばかりの番組はどうしても見られない。
《今起きている戦争に関連する番組やニュースを見たとき》
- 毎朝『ZIP!』(日本テレビ)を30分視聴しているが、戦争の話は何度も聞いた。「戦争によって何がしたいのか」と当事者たちに尋ねたくなる。
- 「ポーランドの領内にロシアの無人機が侵入した」などの大きなニュースが報道されると、今後世界はどうなるのだろうかと考える。
- 紛争についての報道を見て、戦争は過去のものではなく、今も人々の生活を壊しているのだと実感する。
《戦時中を扱うドラマや映画、アニメを見たとき》
- ストーリーが展開されるとその場面を追体験している気持ちになり、なぜこの戦争は起きたのだろうと疑問がわく。
- 戦時中の様子が再現されていると当時の苦しい生活や戦争の悲惨さを知ることができ、戦争は二度としてはいけないと改めて感じる。
- 『この世界の片隅に』というアニメ映画を見たあと、当時の人は何を考え生活していたのかなど、さらに深く知りたいと思った。
《学校の授業》
- 最近歴史の授業で戦争のことを学び、とても意識するようになった。
- 毎年8月6日は学校に登校して、黙とうをしたり、戦時中の体験談を聞いたり映像を見たりして、クラスで平和について話し合う。
《資料館等で当時の資料に触れたとき》
- 広島原爆資料館の展示品には衝撃を受けた。現場や現物に勝るものはない。
《家族や親族から話を聞いたとき》
- 靖国神社に行ったことをきっかけに、親から戦争に関する話を聞いた。
- 戦争時代を4~5年過ごした曾祖父母からよく話を聞いていた。本やテレビやSNSでは分からない当時を知る人の言葉に、とても関心を持った。
- お盆に仏壇にある過去帳を見せてもらい、祖父の兄が戦時中、栄養失調で幼くして亡くなったことなどを聞いた。家族で戦争の話を語り継いでいくことが大切だと思う。
《日常の中でふと戦争を身近に感じたとき》
- 東京タワーに戦車の鉄などが使われていると知ったとき。
- 夏休みに韓国の非武装地帯に旅行に行き、ツアーガイドの話を聞いた。朝鮮半島は事実上戦争状態で、BTSが軍隊に入隊していたことの意味が分かった。
- 例えばNHKの朝ドラでは、大正から昭和を舞台にした作品には必ず戦争の描写があり、人々がどう生きてきたかを想像する過程で戦争に関心を持つことがある。コンテンツの要素の一つとして戦争が関係しているものの方が、自発的に関心を持つきっかけになる。
《常に関心を持っている》
- 戦争にはいつも関心を持っているが、それは無意味なことだと思うようになってきた。世界各地で戦争が絶えず、しかも国連安保理の常任理事国が戦争をしている。平和を祈ることしかできないが祈り続けたい。
《若い世代に戦争をどう伝えていくかについての意見》
- VRは視覚だけでその場にいるような体験ができ、学校などでも取り入れやすいと思う。
- 他の地域では戦争はどのように伝えられているのだろうか。長崎市では毎月9日11時2分に無線放送で音楽が流れる。日頃から戦争や平和について考えるきっかけがあれば、平和な世界が続くと思う。
- 毎月15日は戦争について考える日にするなど、8月に限らず関心を持つことが必要だと思う。それにはメディアの力が不可欠で、対象の世代に応じていろいろな角度から分かりやすく放送してほしい。
【青少年へのおすすめ番組】
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『戦後80年特別放送 映画「ラーゲリより愛を込めて」』(TBSテレビ)
戦争と聞くとすぐに思い浮かぶのは広島・長崎・沖縄ですが、この映画はシベリアが舞台で、そんな歴史があったことを初めて知りました。テレビで放送されているのがとてもいいなと感じたし、戦争について知る良いきっかけになりました。(高校3年・女子・広島) - 『第45回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2025』(日本テレビ)
- 私はこの番組が大好きです!私たちにはなかなかできない青春を毎回見せてもらい、自分が体験した気分になります。(中学2年・女子・東京)
- 自分と同年代の子たちが本気で物事に打ち込んでいる姿を見て、自分も熱中できることを全力でやり遂げたいと思った。(高校2年・女子・東京)
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『THE世代感 特別編 夏の高校野球 歴史的大逆転ベスト10』(テレビ朝日)
漫画などの作り話でしか起こらないようなことが実際に起きていたことに驚き、とてもワクワクした。(高校3年・男子・神奈川) -
『ドラえもん 誕生日スペシャル』(テレビ朝日)
昔からキャラクター設定が嫌いなため見てきませんでしたが、直接的な表現は減ったように思います。ただひみつ道具の「映画缶」を半分発狂しながら押し入れに投げ入れたのび太のお母さんには引いてしまいました。あのシーンは必要なのか、あんなにキレて物を投げる母親のシーンを小さな子どもが見てどのように感じるのか、考えていないのだなあと思いました。(中学1年・女子・東京) - 『今夜はナゾトレ』(フジテレビ)
- ただの世界遺産クイズや紹介だったら飽きるけれど、出演者3人がテンポよく雑学トークを交えながら進めていて、楽しくてあっという間の2時間でした。(中学3年・男子・大分)
- 日本の名所や気象庁といった国家機関に潜入してクイズを出題するので、他のクイズ番組よりも手がかかっているなと感じます。(高校3年・男子・福島)
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『けいナビ~応援!どさんこ経済~』(テレビ北海道)
テーマは「地方移住」で2つの町を取り上げました。南幌町は子育て世代をターゲットに手厚く移住支援をしていますが、高校がなく、札幌までの公共交通は1日7本のバスしかないことは放送されませんでした。また沼田町では就農者に手厚い支援金がありますが、JRが来年3月に廃止になることには触れませんでした。テレビのズルさを少し感じ、メディアリテラシーを高めようと思いました。(中学3年・男子・北海道) -
『伝説の自由研究~コレをやったの どんな天才?~』(秋田テレビ)
今までにない企画だと思った。番組を企画したディレクターの小学校時の自由研究も発表されていて、その研究が現在の職業につながった場面では、思わず感嘆の声を上げてしまった。パネラーゲストの雰囲気も明るく、それぞれの役割がハマっていて人選も合っていた。自由研究の思い出の街頭インタビューや、秋田で賞を取った研究も知りたかった。(高校1年・女子・秋田) -
『ゴジてれChu!キャラバンin三春町』(福島中央テレビ)
福島の有名人は野口英世と古関裕而しかいないと思っていたけれど、女性として世界で初めてエベレスト登頂に成功した人が三春町の田部井淳子さんだったと初めて知って驚きました。三角形の大きな厚揚げもとても美味しそうでした。(中学1年・男子・福島) -
『田村淳のキキタイ!』(TOKYO MX)
「防災」がテーマの番組はシリアスな雰囲気で作られることが多いと思うが、この番組は全編を通して明るく気軽な雰囲気で、心理的に見やすかった。(高校2年・女子・神奈川) -
『かながわ旬菜ナビ』(テレビ神奈川)
若手農業者がYouTubeで農業の現場を伝える「農Tuber」を初めて知りました。亀井農園の亀井さんが発信する言葉や伝え方はわかりやすかったです。時短で作れる家族3世代分の大皿料理がおいしそうでした(中学2年・女子・千葉) -
『新 窓をあけて九州「笑顔のケーキをあなたに」』(熊本放送)
地元の熊本に卵・牛乳・小麦粉を使っていないケーキがあるとは知りませんでした。子どもの喜ぶ表情や声、親の嬉しいという声がいろいろな場面で登場していました。アレルギーを克服してパティシエになった樋口響希さんの店はこぢんまりとしていますが、ケーキからは大きな喜びと愛が伝わってきます。番組ではあまりケーキが映らなかったので、もっと樋口さんのケーキを紹介してほしかったです。(高校2年・女子・熊本) -
『被爆80年特別番組「NO MORE・・・」長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典』(長崎放送)
番組冒頭の黒焦げの遺体ですが、戦争で亡くなれば遺体を放送してもいいのでしょうか。この映像は番組中も多く流れていたため、原爆の脅威はとても伝わりましたが、鐘の話に集中できませんでした。ただ映像が放送されることで、被爆者の心の声を伝えることはできたと思います。式典開始まで被爆者の証言や取組みが放送されて、多くの人にも伝わる内容でした。(高校3年・女子・長崎)
◆委員のコメント◆
【終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】
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中学2年生のモニターの報告に「方言が聞き取りにくい部分があったがテロップのおかげで聞きやすかった」とあった。方言や昔の言葉、島言葉などは今ではなかなか聞き取れないこともあるので、きちんと残していってほしい。
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高校1年生のモニター報告を読んで「戦争の描写は怖くて直視できない」という若い世代に対しては、戦争映画や番組の制作過程を丁寧に紹介したり、資料館を紹介したりするのも、一つの手なのかもしれないと思った。
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全体的な感想として、中高生が今回選んで視聴した番組が、自分たちが“入りやすい”映像世界なのだろう。私は教育の世界にいるが、平和教育ではそれぞれの許容レベルに合った段階を踏んでいくほうがスムーズに入っていける。今回のテーマでは映画を視聴したモニターが多かったが、自分に合ったものからまず入って、学習の必要性を感じながら少しずつ難しい映像にも触れていくような段取りが必要だと思う。
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『ザ!戦後80年の映像遺産SP 池上彰×加藤浩次の運命の転換点』(フジテレビ)を視聴した中学3年生の報告に「視点」という言葉が繰り返し書かれていて、非常に考えさせられた。「戦争がどういうものか、様々な視点から見ることでだんだん分かってくる」と指摘していて、制作者が明確に意識している点をきちんと拾っていたと思う。しかし、視点が増えるほど理解が進んだつもりになるのも、これはこれで非常に危うい。それぞれの視点がどう構成されているのか批判的な視座が必要だし、多様な視点をよしとする価値観を突き詰めると主観的なドキュメンタリーを受け付けなくなってしまう怖さもある。主観が軽視される今の傾向は、昨今の“エビデンス至上主義”とも通底していて、戦争を伝える上での悩みどころの一つだろう。『アナウンサー百年百話 ラジオが伝えた戦争 第1回 「ラジオ太郎」と戦意高揚の時代』(NHKラジオ第2)を聴取した中学3年生の報告にも「ファクトチェックの重要性を「ラジオ太郎」が教えてくれました」とあったが、この書きぶりにも、データに基づかない情動的なコミュニケーションに対する警戒感を感じる。戦争の悲惨さを伝えることも“共感のコミュニケーション”という点では同じなので、こうした現代的な感覚を制作者は直視していく必要があると感じた。
【質問への回答について】
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中学2年生の報告に「夏休みに韓国の非武装地帯に行きツアーガイドの話を聞いた。徴兵制や、BTSが軍隊に入隊していたことの意味が分かった」とあったが、K-POPや韓国コスメへの関心の高さを踏まえると、韓国を通じた平和教育はポテンシャルが高いと感じた。
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高校2年生の報告に平和教育のヒントを感じた。まずはドラマやアニメが戦争に関心を持つきっかけであり(映像)、曾祖父や祖父母の話を聞いていたので映像の意味が心に沁みて(話)、加えて今後、広島の原爆ドームに行くという(体験)。「映像」「話」「体験」のセットがうまい順番でいくと、教育上よい効果があるのだと思った。
【青少年へのおすすめ番組について】
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『第45回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2025』(日本テレビ)について、中学2年生のモニターが、津波警報の影響で後半の企画が変わったことに触れていた。去年は台風が直撃するなどハプニングが続いていて、制作者は大変なのだろうが、非常にテレビっぽく面白い仕上がりになっていた。スタジオで段取りよく収録するクイズ番組が供給過多になっている中で大変貴重な番組だし、若い視聴者もそういう意味で面白く視聴しているのだろう。
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長崎の高校3年生のモニター報告に「番組冒頭の黒焦げの遺体。原爆の脅威はとても伝わったが鐘の話(番組内容)に集中できなかった」とあった。悲惨さを伝えることと戦争や平和について考えることは、別にしてほしいという意見なのだろう。ボランティアで平和活動に参加し、原爆に関して多くの知識があるだろうモニターが「悲惨な映像に対して抵抗がある」とはっきり書いていたのが大変印象に残った。
今後の予定について
次回は2025年10月28日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。
以上


