2024年度「中学生モニター会議」
◆概要◆
2024年8月1日に日本テレビで行われた高校生モニター会議に続いて、2025年3月27日、中学生モニター会議がテレビ東京で開催されました。委員と交流できるモニター会議は、モニターたちの日頃思っている意見やアイデアを委員や放送局に直接伝えることのできる絶好の機会であると同時に、テレビ局内の見学や番組制作者との意見交換会を通じて、メディアリテラシーを涵養(かんよう)する貴重な場でもあります。今後もテレビのファンとして、さらには将来のテレビ視聴者の柱となってもらえればと、青少年委員会ではモニター会議を毎年開催しています。
当日は今年度の中学生モニター10名と、BPOからは大日向雅美理事長と青少年委員会の吉永みち子副委員長(当時)、飯田豊委員(当時)、池田雅子委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員の7人の委員が参加しました。
オリエンテーションを終えたモニターと委員ら参加者は、テレビ東京報道フロアの副調整室で同社の社員からのニュース番組制作の流れについての説明を受けたのち、ニューススタジオで同社の田中瞳アナウンサーからの説明を聞きながらニュース番組『昼サテ』の生放送を見学しました。またOA終了後のスタジオセットでは、末武里佳子アナウンサーに案内されながらモニターたちが一人ひとりニュース原稿を実際に読むアナウンサー体験をしました
社屋内の社員食堂でランチを済ませた後、中学生モニターと番組制作者との意見交換が行われました。今回はテレビ東京の『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』(以下『そこんトコロ!』)の小平英希チーフプロデューサー(以下、小平CP)、田中晋也総合演出・プロデューサー(以下、田中総合演出兼P)、畦元海帆アシスタントプロデューサー・ディレクター(以下、畦元D・AP)、古橋慧士アシスタントディレクターと(以下、古橋AD)、進行役の冨田有紀アナウンサー(以下、冨田アナ)にご参加いただき、同番組がいかにして制作されるのかの詳細や苦労話を聞いた後、活発な質疑応答が行われました。
後半には中学生モニターと青少年委員会委員との意見交換が行われました。それぞれの自己紹介のあと、
「お笑いなどのバラエティー番組について、子どもの教育に悪いなどといった大人の意見をどう思うか」
「同世代にテレビ・ラジオをもっと視聴してもらうために放送局にしてほしいことはありますか」について意見交換しました。
この日参加してくれた中学生モニターたちは中学生とは思えないしっかりとした意見を堂々と述べ、まわりの人たちを驚かせていました。
第1部 『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』制作者との意見交換会
① 番組の制作体制について
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○冨田アナ モニターの皆さんからいただいた、番組に関する質問をベースに進めていきたいと思います。まず一番多かった質問は「何人くらいのスタッフで制作しているのか」でした。
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○小平CP 番組によってスタッフの人数は違います。例えば規模の小さい深夜の30分番組はとても少ない人数で制作していますが、『そこんトコロ!』は金曜日20時からという非常にいい時間に放送している、お金をかけて作っている番組で、スタッフの人数も多いです。毎週1時間番組を作るので、かなりの人数です。
CPはチーフプロデューサー、現場の方々がやりやすいように調整する係です。次にPと演出は非常に重要なポストで、Pはお金の管理や制作会社とのやり取りなどをし、演出は内容面にあれこれ口を出してより良い番組を作る役です。通常はPと演出は別々の人がやっていますが『そこんトコロ!』では田中総合演出兼Pが一人でやっています。そして1カ月先や2カ月先の放送回まで制作するために多くの制作会社、制作チームが入っています。この形はテレビの中では王道で、どの番組でもこういう形式で制作しています。最後にAP、デスクはプロデューサーや演出の補佐をします。例えばAPは、出演者やゲストは誰がいいかをプロデューサーと相談して、実際に電話をして「この日は空いていますか」「ギャラは幾らでお願いします」などのやり取りをします。またデスクは出演者の楽屋を整理したり会議室を押さえたりなどの細かい仕事があります。他にも番組のナレーターや、ロケ・スタジオのカメラマン、音声さんなど、全部合わせると100人位になります。 -
○冨田アナ それではここで、スペシャルメッセージが届いていますのでご覧ください。
~VTR視聴~ 所ジョージさんと東貴博さんからのスペシャルメッセージ
② 番組制作の流れについて
【VTRの企画が決まるまで】
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○田中総合演出兼P それでは4月18日の放送回を制作する過程を説明していきます。まず僕が最初に考えるのは、4月18日に裏局が何を放送するのかという“裏環境”です。他局がどういう番組を放送するかを考えて、負けない強いコンテンツを考えながら決めていきます。情報を集めたところ、ある放送局が女性に人気のスポーツ大会を中継することが分かったので、こちらは男性に人気の企画をやろうと思いました。『そこんトコロ!』では大体3つの企画を放送しますが、まず1つ目は「開かずの金庫」の企画に決めます。他局のスポーツ中継は高視聴率を獲るからもう1つ強い企画が欲しいと思い、2つ目は「遠距離通学」の企画に決めました。この2つは定番企画なので、3つ目は新しい企画をやろうと考えて、3つの企画を進めていきます。これが僕の最初の役割です。そして担当する班に「開かずの金庫」と「遠距離通学」をやると伝え、残りの1つの新企画については、AD全員が新規企画案を持ち寄ってみんなで話し合います。ちなみにその時に2人が書いた企画を、少しだけ紹介します。
【実際の企画会議で検討された企画案を、モニターに紹介!】
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○古橋AD 1つ目は「酷(こく)道(どう)を通る人」です。日本には険しい道がたくさんあって、そこを通る人がどんな人なのかに密着する企画を考えました。国道だけど全然整備されていない道を「酷(こく)道(どう)」と読むというネット記事があって面白いなと思い、何かできないかなと考えました。2つ目は、リサイクルショップに来た人に話を聞く「リサイクルショップに何を売りにきたんですか」という企画で、これもたまたまリサイクルショップに行った時、変なものがたくさん売っているなと思ったので、企画書にしました。
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○畦元D・AP 私は自分が楽しくできるものじゃないと興味がわかないので、番組の趣旨と自分がやりたいもののちょうど間くらいの企画を毎回出すようにしています。「イグノーベル賞」というノーベル賞の面白い版があって、すごく変なことに人生を賭けている研究者たちがいるので、それをやりたいなと思って出した企画です。
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○田中総合演出兼P 僕が求めているのは大体15~16分ぐらいの尺になりそうな企画で、加えて常に考えているのは、所さんがこれを見てどう思うかということです。所さんは何かに夢中になっている人のVTRを見ると、すごく前のめりになってくるという印象があります。
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○(中学3年・女子・長崎) 視聴者として見てみたいと思ったのは「酷道」の企画です。こういう場所は日本全国に点在していると思うので、そこを通る人はすごく面白そうだなと思いました。
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○(中学3年・男子・千葉) 僕は「変な同好会」の企画がいいなと思いました。所さんが一生懸命な人に興味があるそうなので、一番合っていると思いました。『学校では教えてくれない』という番組タイトルなので、誰かに教えてもらうことなく自分たちで頑張っているところも合っていると思いました。
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○田中総合演出兼P この企画は、学校の変な部活に密着する既存の企画に似てしまうので今回は止めましたが、いま話してくれた視点で『そこんトコロ!』でできる企画だなと思います。
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○(中学2年・女子・埼玉) 「あのすごい人」の企画がすごく印象に残っていてます。具体例にあった“新幹線の車内アナウンスの声の方”とか「これ誰がやっているんだろう?いま生きているのかな?」という気がしたりするので、そういう一般人のふとした疑問を解決してくれる面白い企画だなと思いました。
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○田中総合演出兼P ありがとうございます。ほめられてうれしいです!『そこんトコロ!』は20年くらい放送している番組ですが、最初の頃はまさに今言ったような企画をたくさんやっていました。もう一回やってほしいという視聴者の声もありますが、ネタをたくさん用意しなければいけないので、今回はみんなで話し合って「リサイクルショップに何を売りにきたんですか」という企画に決めました。変なものを売りに来る裏には絶対に人間ドラマが待っているはずだし、それが幾らで買い取られるのかというのも興味がある。さらにそれを誰が買うのかというところまで広がる企画だと思ったので、これはテレビ東京が大好きな密着してどんどん聞いていくスタイルで、台本では書けない面白い展開が起きると思いました。実は進めてみたらすぐ“誰も売りに来ない”という問題が起きたのですが、ディレクターやADと「買いに来る人も結構面白いですよ」という話になり、そちらに企画の軸をずらしてやってみようとなりました。思ったように企画が動かないことはあったりしますが、そういうときにいかにその中で楽しいことを見つけて、そっちに軸をずらして演出していくかというのは、ディレクターやテレビ番組を作る人には大事な力だと思います。以上のような形で、この3ネタでいく、と決まったのが放送の1カ月半ぐらい前です。
【取材~ロケの準備】
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○畦元D・AP 「開かずの金庫」の企画(以下「金庫」)をやると決まったらまず“開かずの金庫”を探す作業がありますが、「金庫」はもう10年くらい続けているので最近は本当に“開かずの金庫”がないんです。まずは視聴者から「“開かずの金庫”がありますよ」と言われて動くのがベースです。次にリサーチ会社という、何でも調べてくれる会社にお金を払って金庫を探してもらうことも多々あります。視聴者投稿も予算もない場合は、我々ADは“ローラー作戦”と呼んでいますが、とにかく金庫がありそうな場所に電話をかけまくります。『そこんトコロ!』のADの間では定番の話ですが、なぜか酒蔵に開いてない金庫がたくさんあったり、質屋さんにも結構置いてあったり、市役所に「開かずの金庫がないですか」と聞くとたまに紹介してくれたりと、ネタのないときはADみんなでとにかく電話をかけまくって探します。探しまくるといろいろな金庫が集まってきますが、今回皆さんと一緒に「開かずの金庫」ネタをディレクターの視点で一緒に選んでいこうと思います。お配りした資料には、例として3つの候補があります。1つ目は愛知県の金庫で郷土資料館に置かれていた金庫、2つ目は奈良県の古民家で使われていた金庫、3つ目は静岡県のお寺に置いてあったぼろぼろの金庫です。この中から1つ決めなければいけませんが、どういう基準で決めると思いますか?資料を見て、自分だったらこの金庫を選ぶなというのを考えましょう。
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○(中学2年・女子・東京) 奈良県の古民家で使われていた金庫は、もし“開かずの金庫”が今自分が住んでいる家にあったらと思うと、面白いと思いました。
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○(中学2年・女子・秋田) 私も奈良県の古民家の金庫が気になります。振ると音がすると書いてあったので、中に何かが入っている可能性があるのかなと思いました。
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○畦元D・AP 確かに古民家というのはかなり引っかかりますよね。実は私たちが今回選んだのは、静岡県のお寺の金庫です。まず第一基準として、空の金庫を開けたくはないから中身が入っていそうな金庫を選びます。その基準でいうと、郷土資料館の金庫はほとんどが寄贈されているもので、たいてい中身を空にして寄贈されるので何も出てこない傾向があります。次に古民家か寺かで迷いましたが、最後の判断基準は「金庫」のVTR構成です。VTRの前半でどういうところにある金庫かを詳しく説明しますが、この古民家はあまりに普通すぎて、この家族のファミリーストーリーみたいになってしまうのは避けたかった。それより寺の金庫が「なぜこんなにぼろぼろなんだろう」「なぜこんな倉庫に置いてあるんだろう」と気になりました。つまり、中に何が入っているのか、そして前半のVTRでいかに面白いものが作れるか、という基準で金庫を選びました。
寺の金庫の取材が決まると台本を作成します。皆さんの手元にある静岡市ロケ台本というのをディレクターが作ってロケに挑みますが、とてもきちんと台本を書く番組だなと私は個人的に思います。リポーターの酒井貴士(ザ・マミィ)さんに言ってほしいところを決めた台本を作ってからロケに行くという流れになっています。最近の『そこんトコロ!』のディレクターにとても人気な芸人は岡野陽一さんです。毎週1回は絶対に出演していて、本当にいい人でやりやすいです。リポーターを選んだら、次にロケに入ります。
【VTRロケ~スタジオ収録準備】
~VTR視聴~ ロケから編集まで、スタッフの様子を撮影した動画を見ながら解説してもらいました
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○古橋AD 金庫のあるお寺がどんなところかを紹介するシーンの撮影になります。基本的にカメラマン2人と音声さん、ディレクター、ADの、計5~6人でロケに行きます。演者さんが映っていない、例えば金庫だけを見せるといった“インサート”と呼ばれるシーンも撮りますが、このロケでは金庫だけで10~20パターンくらい撮ってVTRの中に散りばめます。1つの金庫を撮るだけでも相当こだわります。また金庫を開錠するシーンはカメラ3つに加えて定点カメラとして小さいGoProを回しているので、合計で5~6台のカメラで一気にたくさんのものを撮っています。ちなみにロケにはハプニングがつきものですが、これまでハプニングとかあったりしましたか。
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○畦元D・AP 私は「金庫」のロケはたくさんやっていますが、ハプニングが多くて。例えば、鍵開け職人の方に金庫の写真や動画を送るためにロケハン(撮影場所の下見)に行ったのですが、金庫のレバーの固さを動画に撮るために私がガチャガチャと動かしていたら、“開かずの金庫”を開けちゃったことがあって。もちろんそれはボツになってしまいました。
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○田中総合演出兼P 僕の場合は「金庫」のロケではないんですが、ロケが終わって車に戻ったら荷物が全部盗まれていたことがあります。ただ収録したテープだけは手元に持っていたので、テープだけは持って帰れました。ロケで一番大事なのは素材だということを再認識し、そのあとも本当に注意しています。
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○古橋AD さて撮影が無事に終わったら次は編集です。編集には2つの段階があって、最初にオフライン編集、ディレクターが自分のパソコンで編集します。大体1週間ぐらいかかりますが、この段階ではまだ粗くてテロップもきちんと入っていません。次にそれを編集所に持っていって、プロの編集マンにテロップを入れ直してもらったり、音を調整してもらったりします。皆さんが普段視聴している番組は、ディレクターが構成を考えて編集していますが、見やすいテロップや楽しい効果音がついているのは編集マンたちの協力があってのことです。次にディレクターが指示しながらナレーションを録って、ミキサーがナレーションの声やタイミング、背景の音などを調整します。編集が全部終わるとVTRの完成ですが、これがそのままオンエアされるのではなくて、このVTRをスタジオで所さんや東さんに見せて、リアクションを収録します。この収録には冨田アナも毎回出ていますが、冨田アナは収録の時に気をつけていることとかありますか。
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○冨田アナ 私は所さんや皆さんと一緒に初めてVTRを見るので、思ったことを素直にお伝えするようにしているのと、いろいろなゲストの方がレギュラーメンバーに加わっているので、その方々について調べてから本番に臨んでいます。また2週間に1回収録があるのですが、収録に臨む前にこの2週間にあったことをお話しして、よりよい雰囲気で収録に臨めるようにしています。
【スタジオ収録~オンエア】
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○古橋AD (実際の収録台本をモニターに配って)この台本は収録時に僕たちが参照しているもので、裏表紙に収録スケジュールが書いてあります。セットは前日から建て込んでいて、朝早くからカメラや照明のセッティングを行い、そこからリハーサルをする流れになっています。12時半からの「位置決め」から裏側を撮影したので、見ていきましょう。
「位置決め」ではどの位置に座るかを決めますが、全部演者さんにやってもらうわけにはいかないので、首から名前を下げたスタッフが座って、カメラマンと位置を調整していきます。14時頃から演者さんが入られます。今回のゲストは俳優の町田啓太さんです。ゲストの選定基準はどうなっていますか。 -
○田中総合演出兼P 基本的には予算の範囲内で決まります。町田啓太さんは『ドラマ9「失踪人捜査班 消えた真実」』に出演されているので、ドラマ担当者から「ぜひ町田さんを出してくれませんか」と言われました。あとはギャラなどを相談しながら決めていきます。
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○古橋AD 収録がスタートすると、カンペを出して、それを冨田アナが読みます。冨田アナは、カンペを見るときに気を付けていることはありますか。
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○冨田アナ 私が話すところはオンエアには乗りづらいので、カメラに向かって伝えるというよりは、現場にいらっしゃる演者さんたちにお話しするようにして、その場がスムーズに進むように心がけています。
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○古橋AD カンペは文字を大きくしたり色分けしたりして、遠くからでも見やすいように作っています。この収録だとカメラは6~7台で、それぞれにカメラマンとアシスタントがついています。収録はスタジオで行いますが、1フロア上に“サブ”と呼ばれる副調整室があって、そこからいろいろな指示を出したりカメラの映像を切り換えたりしています。スタジオにはたくさん人がいますが、それを仕切ったり調整したりする人もいて、たくさんの人がいて収録が行われています。
収録が終わったら最後に反省会をしています。例えば、VTRを見せたスタジオのリアクションをこれから編集するので「スタジオで見せたVTRのどこを切ろうか」「ここはスタジオはあまり盛り上がっていなかった」「ここは盛り上がっていたから長めに使おうか」といった話をして、オンエアに向けて調整をしていきます。 -
○田中総合演出兼P 今はまだパソコンで編集していますが、最終的には編集所で、朝10時から翌日朝10時くらいかけて編集して、放送の時間に合わせます。編集所とスタジオを何回も行ったり来たりしながら1時間の番組が出来上がります。
③ モニターからの質問
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○(中学3年・男子・千葉) ネタ探しのときにリサーチ会社を使うとお話されましたが、リサーチ会社は具体的にはどうやってリサーチしているんですか。
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○畦元D・AP さきほどお話した「電話のローラー作戦」とほぼ同じのようです。例えばリサーチ会社に「金庫のネタが動きます」と伝えると「地域を教えてください」と言われます。行きたい地域は九州だと伝えると、地道に1軒ずつ電話をかけて探してくれます。リサーチ会社からは「1カ月間くらい期間が欲しい」と言われます。
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○(中学3年・女子・長崎) 時代によって視聴者が見たい企画や風潮が変わっていくと思いますが、『そこんトコロ!』は長く続くなかで、時代に対応していくためにどんな工夫をなされていますか。
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○田中総合演出兼P あえて時代に沿おうとは考えていなくて「所ジョージさんを喜ばせるぞ」という部分はぶれずに続けています。所さん出演の長寿番組は他局にもありますが、他局の人たちも同じような気持ちでやっているからではないかなと思います。
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○(中学3年・男子・東京) 僕のイメージでは、テレビ業界は時間にシビアで、怒声が飛び交っているようなイメージがあるのですが、実際はどうなんでしょうか。
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○小平CP 怒声というのは「オラー!」みたいな?そんなことはないですよ!例えばスタジオ収録では、大勢に同時に伝えるために「いま調整中です」「10分押しです」とか大きな声で言うんですよ。ちょっと怒声ぽく聞こえなくもないですが。昔はあったかもしれませんが、今はそういうのはありません。
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○(中学1年・女子・鹿児島) 番組を制作するときに、芸能人の出演者と意見がぶつかったり、出演者から「こういうことはやりたくない」といった意見が出たりしませんか。
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○田中総合演出兼P 『そこんトコロ!』ではほとんどありません。他の番組だともう少しぶつかることはありますが、それは決して嫌な感じではなくて、演者も一緒に面白い番組を作りたいと思っての意見交換という意味では、結構あったりします。
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○冨田アナ 所さんは穏やかな方で、中心にいる方が穏やかだと良い空気が広がっていくのだと思います。
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○(中学3年・女子・神奈川) 人気のある企画は何度も放送すると思いますがその基準は何ですか。視聴率とかTVerの再生回数、Xの反応はやはり結構大事ですか。
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○田中総合演出兼P やはりめちゃくちゃ見ちゃいます。ただ視聴率は裏の番組で何をやっているかにも左右されるので、視聴率がある程度低くても、所さんやスタジオのリアクションがものすごく良ければもう一回トライしようと思ったりします。実はTVerは番組とそんなに親和性がなくて、Xもそんなに反応があるタイプの番組ではないので、スタジオの盛り上がりを最も重視しています。
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○冨田アナ 8ミリフィルムの企画という、皆さんのおじいちゃまやおばあちゃまが昔撮っていた映像を番組で見せていただくコーナーがあります。演者さんも泣いてしまうくらい心打つものがあって、やはり場の空気は大事なんですよね。私もいち視聴者としてすごく心に来るものがあって…。
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○田中総合演出兼P 冨田アナは泣いて進行ができなくなって。カンペ出しているのに…。
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○(中学2年・女子・東京) 私は「遠距離通学」の企画ががすごく好きです。通学する人をどうやって探しているのですか。
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○田中総合演出兼P 「遠距離通学」は視聴者投稿が結構多いようです。僕がまだディレクターだった10何年前ぐらいに始めた企画ですが、その頃は東京駅で「どこまで帰るんですか」とひたすら聞き続けて探していました。効率的に企画をつくれるネットワークが徐々に出来上がっていった形です。
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○(中学3年・女子・長崎) 冨田さんに伺いますが、収録で演者さんの個性や面白いトークを引き出すために、工夫されていることを教えてください。
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○冨田アナ 私は本番でも緊張しがちなのでちょっとしたミスにはツッコミを入れていただけるような関係性を築けるように、普通の会話のようにお話いただけるように心がけています。
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○(中学1年・男子・山梨) 収録スタジオの後ろにある大きい金の銅像はどんな意味があるんですか。
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○田中総合演出兼P スタジオのセットは美術の担当者が作っています。『そこんトコロ!』の世界観やイメージを伝えるとデザインしてくれる人がいて、それに基づいて大きい金の銅像が置かれています。右手に見える扉も、ゲストが登場するために作ったものです。スタジオセットはお金もかかるので頻繁には変えられないですが、時代や演出に合わせて変えたりしています。
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○(中学2年・女子・秋田) 大体100人くらいのスタッフで番組を制作するとお話していましたが、出演者と実際に会うスタッフは何人くらいですか。
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○田中総合演出兼P ディレクターは毎回演出についての説明を出演者にするので、そういった接点はあります。僕は番組のプロデューサーなので所さんと簡単な打ち合わせをします。その他のスタッフはスタジオではあまり直接的に出演者との接点はありませんが、1泊2日のロケに行けば夕食を一緒に食べたりしますし、そういう楽しいこともあります。
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○(中学2年・女子・埼玉) ロケの構成はどのように決めているんですか。また遠方にロケに行く場合は、実際にテレ東のスタッフが行きますか。それとも地方にいる人に頼む場合もありますか。
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○田中総合演出兼P 基本的にスケジュールとお金があればロケハンに行って「こういうものを紹介しよう」という情報を持って帰って、台本を作ってロケに行くという流れです。例えばテレビ北海道という系列局がありますが、バラエティー番組では、北海道でロケするからといってテレビ北海道のスタッフに任せることはありません。一方でニュースやスポーツ番組では、テレビ北海道の記者はプロ野球の北海道日本ハムファイターズと繋がりがあるので、撮影に協力してもらうことはあります。
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○(中学3年・男子・千葉) 「開かずの金庫」と「遠距離通学」の企画は男性人気が高いと話していましたが、性別ごとに人気が出やすい企画の傾向はありますか。
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○田中総合演出兼P 結果論ですが、視聴率から「金庫」は男性が見るとか、昔あった「遠距離“通勤”」とは男性が見るけれど「遠距離“通学”」は女性が見るとかいう傾向があります。
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○(中学2年・女子・埼玉) スタジオ見学では、あまり音が反響しないように音を吸収する仕組みになっていましたが、具体的にはどういうものを使っていて、どのような効果があるのですか。
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○田中総合演出兼P どういった材質かは分かりませんが、例えば6人出演者がいてそれぞれが好き勝手に発言したときに、1人の声だけ使いたい場合は他の人の声をオフにしなければいけないから、余計な音が入らないようになっています。マイク1個で収録するのではなく、全員がマイクをつけるほうが音をきちんと編集できます。逆にスタッフはスタジオで「大きな拍手しろ」「大きな声で笑え」と言われますが、それはそれできちんと響きわたるような作りになっているのだと思います。
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○冨田アナ モニターのみなさん、本日はありがとうございました。
第2部 BPO青少年委員と中学生モニターとの意見交換会
【テーマ1】お笑いなどのバラエティー番組が「子どもの教育に悪い」という大人の意見をどう思う?
BPOに届く視聴者意見の中には、バラエティー番組の企画について「子どもの教育に悪い」「子どもが見て真似をするのでは」といった“大人の意見”がありますが、中学生モニターはどう感じているのでしょうか?アンケートをとると、以下の結果となりました。
「確かにそう思う」…2人、「どちらともいえない」…3人、「そうは思わない」…5人
<大人の意見について「確かにそう思う」という人の意見>
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(中学1年・女子・鹿児島) 中学校で筆箱を投げてテレビを割った男の子や、椅子を引かれて怪我をした男の子がいて、担任の先生からクラス全員に向けて「テレビで見ているようなお笑いとは別なのだから、きちんと自分たちで考えて行動して」と言われました。また『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)で芸人さん同士が言っていた汚い言葉とか人を下げるような言葉が中学校の男の子の間で一時期はやっていました。同じ環境で勉強している人がそういう言葉を使っているのは悲しいです。
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(中学2年・女子・秋田) 「教育に悪い」と母とも前々から話しています。ドッキリがやり過ぎで心配のほうが勝る番組や、食べ物を味わうことなくただ大量に食べる大食いの番組などは、何かちょっと違うかなと感じます。
<「どちらとも言えない」という人の意見>
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(中学2年・女子・鳥取) お笑いなどのバラエティー番組を見て、笑顔になってストレスや悩みが減ったりすることもあるので、何とも言えないなと思いました。
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(中学1年・男子・山梨) ちょっとしたことも「いじめにつながる」と言われれば確かにそうかもしれないけれども、テレビで放送する内容を制限されるとお笑い芸人の人たちが活躍するのが難しくなるのではとも思います。
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(中学2年・女子・東京) 小学生まではドリフの『8時だョ!全員集合』(TBSテレビ)とかが好きで、昔のバラエティー番組ばかり見ていました。最近はテレビをつけてチャンネルを替えてみても、自分の笑いのツボに入らないというか、あまり面白いと思わないんですよ。今はあまりバラエティー番組を見ていないので、教育に悪いのか悪くないのか正直分かりません。自分も大人に「悪い」と言われたら「悪いのかな」と思っちゃうから、そこは難しいなと思います。
<大人の意見について「そうは思わない」という人の意見>
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(中学2年・女子・埼玉) 「子どもの教育に悪い」と言われると「確かに悪いかもな」と思う自分がいつつ、どこかで「そんなことないんじゃないか」と思う自分もいます。番組をネットで叩いて炎上させている大人は、子どもの視点からではなく大人の視点から「子どもに悪い」と言っているわけで、番組の気に食わないところを「子どもに悪い」と置き換えているような、言い方は悪いですが“利用された”と思うことがここ最近よくあります。半々な気持ちもありつつ「そうは思わない」と思う気持ちのほうが強いです。
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(中学3年・女子・神奈川) 小学校のときからバラエティー番組をよく見ていて、結構過激なドッキリ番組も見ますが、実際にそれを友達に仕掛けようと思ったことは一回もありません。テレビの中で芸人がやっているから面白いというのは小学生でも分かるし、現実との区別ができている人のほうが多くて、バラエティー番組がいじめにつながったという話は身近では聞かないです。
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(中学3年・女子・長崎) バラエティー番組が一概に教育に悪いとは言えないと思います。まずバラエティー番組は教育が目的ではなくて楽しむという目的のほうが大きいし、ある程度の制限は必要かもしれないけれど子ども自身が境界線を分かっておくべきところなので、「子どもの教育に悪い」という言い方はどうなのかなと思います。
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(中学3年・男子・東京) バラエティー番組よりYouTubeのほうが過激で、例えば少し前にあった“すしペロ”のほうが身近に真似できてしまってより危険だと思います。また先日の選挙の政見放送で脱ぎ出した人がいましたが、あのほうが駄目だと思うし、ニュース番組でもケンカしているところを放送したら悪い言葉遣いとかを子どもは学んでしまうし。バラエティー番組だけを規制すればいいという問題ではないと思います。
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(中学3年・男子・千葉) バラエティー番組が問題視されるのは今に始まったことではないと思うんです。『有吉ゼミ』(日本テレビ)や『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)が普通に続いているのは視聴率が取れるからで、みんなが見るということだから単純に需要はあると思ってて。でもみんなが見たい番組をなくしていったとしたら、結局YouTubeとかに視聴者が移ってしまうと思いますし、仮にYouTubeを規制したら今度はそれ以外の媒体に移っていくだけで多分この問題は終わらないと思います。だから「教育、教育」と言うぐらいなら、そういったメディアとの付き合い方を教育したほうがよいと思います。
<委員の意見>
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佐々木委員 「影響がある」「影響がない」という2つの逆の意見が出ていますが、両方とも正しいと思います。“いじめが好きな人”はいじめ的な番組を好んで見るんですよ。それを見るとますます自分のいじめ的な行動が強化されてしまうことがあります。逆に“いじめが嫌いな人”が、そういう番組を見た場合、「あんなことを絶対自分はやらない」と感じて、いじめに反対する行動が強化されます。つまり、受け取る側の特徴によって、番組視聴によってますますいじめ行動をする(影響がある)場合もあれば、いじめ行動をしない立場に留まる(影響がない)場合もあるので、「影響がある」「影響がない」という二極的な意見はそれぞれ正しいのだと思いますね。
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髙橋委員 大人でもバラエティー番組を悪いと思っている人もいればそうではない人もいるし、子どもでも両方いるのかなと思います。先ほど『そこんトコロ!』のスタッフのお話を聞いて、番組に対する愛情や出演者に対するリスペクトがものすごくあって、そういった思いがある番組は、誰が見ても「素晴らしい」「楽しいな」「面白いな」と思うのかなと感じました。
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飯田委員 子どもの教育って何なんだ?という話や、真似をする/しないという話もありましたが、一括りにできないですよね。先ほどバラエティー番組での「汚い言葉」の話がありましたが、家族や友達、YouTubeで聞いた口調がうつることもあります。一方でネットやSNSで、日々どこかで炎上が起きていたり誹謗中傷が繰り返されたりするのを見ていると、だんだんそれが当たり前のように思えてきてしまう恐れもあります。何がどの程度教育に悪いのかは、安易に比較できないと思うんですよね。あとはバラエティー番組でなくても、最近は選挙におけるSNSの影響が問題視されていて、ひっくり返って今のテレビの報道のあり方が公平なのかが議論されています。“バラエティー番組”だけでテレビの影響を考えるのも難しいですし、先ほどお話ししてくれた“メディアの影響に対する教育”を具体的に考えるためには、いろんなレイヤーで吟味して、議論を積み重ねていく必要があると感じました。
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吉永副委員長 昔から必ずPTAが文句言う番組というのはあって、『8時だョ!全員集合』は全国のPTAから「あの放送はやめろ」という大きな声が届いていました。でもやっぱり面白かったんですよね。私はそのとき子どもだったから、大人に対して非常な反発を覚えたわけです。大人は子どもに悪い影響を与えそうなものを排除したい、それは一つの親心なんだろうと思います。でも世の中は親心だけでは動いていなくて、何回も番組が放送されたのは視聴者が喜ぶからですよね。視聴率が取れるということは、それを必要としているということだと思います。教育は何のために必要なのか。例えば、全く悪いところに触れないで、いい学校に行って、いい会社に勤めて…というのが教育の成功と思うならば、なるべく悪いものを排除し、余計なものは見せない・聞かせないという考えになると思いますが、実際の世の中は、本当に嫌な人間がいっぱいいたりとか、きついことや傷つくこともたくさんあります。だから、子どもたちが柔軟性を持って強く生きていく力をつけることが教育だと考えるならば、“社会の毒”のようなものに触れたときに“嫌だな”と思う感情が育つことは、悪いばかりではないと思います。テレビ放送が瞬く間に活字を席巻していったときに、何をもって教育と捉えるのか、何をもってバラエティーと捉えるのかという、根本的な議論がきちんとされていなかったのかなと思いました。
【テーマ2】 あなたやあなたの友人、中学生の世代にテレビやラジオをもっと視聴してもらうために放送局にしてほしいことはありますか。
<放送局にしてほしいこと>
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(中学1年・女子・鹿児島) 『今日、好きになりました。』(ABEMA制作・配信)という恋愛バラエティー番組が、いま女子中高生や大学生に人気で、出演した女の子たちは、普通の女子高生からモデルになったりどんどん流行りの人になっています。彼女たちが出演する番組は視聴率が上がると思います。
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(中学2年・女子・東京) 自分の身近な地域がテレビで取り上げられたら視聴すると思います。私は墨田区に住んでいるので、例えばスカイツリー特集とかを見たいです。
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(中学2年・女子・秋田) 以前NHK Eテレで、歌番組で歌ってほしい曲をdボタンで応募する企画がありました。例えばアイドルグループで誰が一番人気なのかという企画があったら、ファンもテレビを見て自分の推しをボタンで投票すると思うので、dボタンなどのテレビの特性を使うのがいいと思います。
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(中学2年・女子・鳥取) 放送局同士のコラボやイベントを企画したら盛り上がると思います。私はいつも視聴するチャンネルが決まっているので、それ以外のテレビ局に関心を持てそうだと思いました。鳥取県では山陰の3つの放送局がイベントをしていて、楽しそうだなと思いました。
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(中学3年・女子・長崎) 番組や放送局のコラボについては、例えば『オールスター感謝祭』(TBSテレビ)には特別感がありますし、放送局の垣根を越えた番組同士のコラボがあれば、新鮮で面白いです。また地方に住んでいる身からすると、関東圏のお店やイベント、スポットにはあまり親しみを感じないので、地方での公開収録を活用して幅広い地域の人たちが親しみやすい番組作り、テレビ局作りにつなげてほしいです。
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(中学3年・男子・東京) 「テレビだから信用できる」という人は結構いると思うので、テレビのネットワークがあるからこその信頼性の高い情報を流してほしいです。『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』(テレビ東京)や『カズレーザーと学ぶ。』(日本テレビ)はとてもいいと思います。
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(中学3年・男子・千葉) このテーマでアンケートをするのは一体なぜだろうと考えました。テレビやラジオを視聴する人は間違いなく減っていて、インターネットへ流れていると感じているのだろうと思いましたが、それではテレビやラジオで何か特別なことができるかと考えたときに、規制のないインターネット以上にできることは何もないなというのが僕の結論でした。でも、例えばラジオはテレビに比べて映像はないしデメリットが大きいように思えるのに、まだ残っている。やはりマスメディアとしての信頼性があるから、ラジオはこの100年ずっと生き残ってきたのだと思います。特段何もしなくても、テレビは今後も残り続けると思うので、大丈夫だと思います。
<委員の意見>
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沢井委員 放送100年というのはラジオの歴史で、テレビの歴史は70年ちょっと。日本にいながらニューヨークの様子が見られる!と感動した世代もあるわけですが、これから若い皆さんがテレビにかじりつくときがいつか来るのかなと思うと、火星に行ったときではないかと思うんです。火星中継です。「今火星に着陸するところです!」というのを皆さんが何を信頼して、どのメディアでご覧になるかしら。今現在遠くで何が起きているかということに、どれだけ信頼性のあるメディアでアクセスできるかというところが大事なのかなと考えていました。
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池田委員 「ネットと違ってテレビは正確な情報を出してくれるので信用できる」という意見がありました。本日はニュース番組『昼サテ』のスタジオやその裏側も見せていただきましたが、番組を作るための時間、労力、お金は想像を超えるものだと思います。今日見えなかったところでも、取材に行った人や原稿を書いた人、メイクや衣装の人とかもいるわけですよね。『そこんトコロ!』も100人もの大人が真剣に取り組んで作っている。たくさんの人が一生懸命、番組の一瞬の時間を全力をかけて作っている。私はここがテレビの信用性につながっているところだと思うし、モニターの皆さんも今日そう感じたのではないかと思います。SNSでは真偽にかかわらず1人がものすごくインパクトのあることや過激なことを言うとそれが瞬時に拡散しますが、放送はそうではない。一つ一つ丁寧に一生懸命作っている。放送の信頼性は大事にしなければいけない点であり、これからも生き残ってほしいと思います。
【本日のまとめ】
○吉永副委員長 私の小さい頃はテレビがなかったのでラジオだけの生活をしていました。テレビが出てきたときに活字離れが起きました。今はSNSによってテレビ離れが起きている状況です。テレビはかなりのお金も人手もかかりますから、見てくれる人が少なくなると民間放送にはCM料が入らなくなって、経済的に厳しくなり、クオリティーを保つのが非常に難しくなるという連鎖も起きます。新聞業界も同じで、今の体制で世の中をきちんとフォローすることが保てるかどうかが大きな課題です。これは、今後私たちがどういう情報を手に入れることができるかに直結すると思うんですね。情報が多くはなるけれどクオリティーが保たれなくなる。私たちはどういう社会に生きているのかということをだんだんつかみにくくなってしまう。テレビも含めマスメディアは日本を戦争に向かわせることを止めるということができませんでしたが、今はさらに規制がないSNSやYouTubeにものすごい感情が渦巻いていて、“空気で動く社会”をさらに醸成させている状況なんだと思います。
私たちと大人と比較して、皆さんが接する情報量は圧倒的に多いですが、さまざまな情報が今入り乱れている状況です。選択肢はいっぱいありますが、その中から正しい情報を自分で選ばなくてはいけません。テレビの不祥事もあって、オールドメディアとかオワコンとか言われていますが、今日実際に皆さんの目でどう番組が作られるのかを見たことは、きちっとした情報の裏打ちになりますよね。『御上先生』(TBSテレビ)というドラマがありましたが、主人公の御上先生は「考えろ、考えろ」と毎週繰り返し言っていました。考える力というのはこれから先すごく大事だと思います。
みなさんにはこの1年間毎月、モニター報告を書いていただきました。物を書くということがあまりなくなった時代に自分の思いを言語化するのは大変面倒くさくもあり、難しかったと思いますが、しっかりといろんな感想を書いてくれました。この視点は今後すごく大事だと思いますので、この1年間の面白かったような、つらかったような、テレビとの距離感が若干変わったかもしれない、そんな1年の成果をこれからの長い人生にいかしてただきたいと思います。今日は遠くからありがとうございました。
モニターへの事後アンケートより
【テレビ東京社内見学 について】
- スタジオが意外とコンパクトだったり、アナウンサーが直前まで化粧直しをしたりしていたのは、実際に見ないと分からないし面白かった。また番組で伝える内容を選ぶのは1人だけだと知ることができた。速報が入ったときの対応力はすごいと思った。(中学1年・女子・鹿児島)
- 普段見ることのできない場所を見学できてとても興味深かった。スタジオは大きいと思っていたので、想像と違って驚いた。キャスターの席に座ったり、カメラを操作させてもらったり、貴重な体験で本当に楽しかった。(中学3年・男子・東京)
- ニュース番組がどのように制作されているのか、その大変さを知ることができました。とっさの状況にも冷静に対応していてすごいと思いました。これからは裏側も想像しながらテレビを見たいです。(中学3年・男子・東京)
【テレビ東京『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』制作者との意見交換会 について】
- 疑問に丁寧に答えてもらいとても勉強になりました。1つのテーマをしっかり考えて番組を制作していることが分かりました。普段何気なく見ているテレビをもっと楽しく見ることができそうです。(中学2年・女子・秋田)
- 実際に番組を制作している人の話を聞くのは初めてでした。台本や資料、カンペなどを見ることができたのが1番印象に残っています。「開かずの金庫」はよく見ているコーナーなので、こういう風に作られているんだなと、とても面白かったです。(中学3年・女子・神奈川)
【青少年委員との意見交換会 について】
- 中学生として普通に生活していると、多彩な職種の委員の皆さんとは滅多にかかわることがないので、すごく貴重な機会でした。大人が自分の意見を聞いてくれる嬉しさは、今後も忘れないと思います。(中学2年・女子・埼玉)
- 「お笑いなどのバラエティー番組は子どもの教育に悪いのか」や「放送局にしてほしいこと」について委員はどう思っているのか、大人の意見をもっと聞きたかった。(中学2年・女子・鳥取)
- 毎月委員からのお便りを読んで、新たな視点をいただいていました。今回は委員や中学生モニターと意見交換ができて、とても考えが深まりました。テレビやラジオ、広くメディアとかかわっていくのは私たち視聴者なので、メディアについて考え続けることは私たちの義務でもあると思います。これからもモニター活動の経験を生かして、メディアについて考えていきたいです。(中学3年・女子・長崎)
以上