毎日放送『ゼニガメ』 偽の買取現場への「密着コーナー」に関する意見の通知・公表
上記委員会決定の通知は4月24日午後2時からBPOで行われた。委員会からは小町谷委員長、岸本委員長代行、米倉委員の3人が、毎日放送からは北野弘制作担当取締役ら4人が出席した。BPO側から放送倫理違反があったと判断するに至った経緯を説明したあと、毎日放送の北野取締役が「意見書について真摯に受け止めたい。現在、再発防止を行っているが、いただいた意見を参考に、引き続き再発防止に努めたい。スタッフ間のコミュニケーション、情報共有をもっと多くして、視聴者に信頼される番組作りをしていきたい」などと述べた。
続いて午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、委員会決定を公表した。会見には新聞・テレビなど18社29人が出席した。
小町谷委員長は問題となった3放送回のうち、1回目と2回目は国家資格者である司法書士が土地建物の取引現場に同席しており、放送局が依頼者が本人であると信用する相当の理由があったと考えられることを説明した。一方、3回目については依頼者が「本物」であることの担保がなく、取材対象者からの紹介により業者の利害関係人であることにともなるリスクも加えると、通常以上に慎重な事実確認が必要だったと指摘した。
続いて米倉委員は今回の事案について、取材対象者による手の込んだ仕込みや偽装があったという認識を示した。さらに相手が悪意を持って本気でだまそうとするならば、(番組側がこれを)完全に防ぐことは非常に難しく、この事案においても、番組側が相手の意図を見抜くために、「これをしていれば見抜けたという決定的な何かがあるわけではない」と述べた。とはいえ、取材での複数のプロセスにおいて事実確認を積み重ねることが重要であることを強調し、また取材中に「番組が面白くなりそうだと感じるときがあるが、そういうときこそ冷静になって事実関係を確認してほしい」と述べた。
岸本委員長代行は、まずBPOの審議の姿勢として「問題があったと分かった後で、あのとき、ああすれば良かったという立場をとらない。制作した時点に立って、あのとき何ができたか、また、すべきだったかを考える」と説明した。そのうえで、倫理違反とされた3回目の放送については「一言で言えば無防備に過ぎた」「お金やビジネスを扱う番組のテーマからすると、(テレビを利用しようとする人が紛れ込むという)予見できるリスクがあった」と指摘した。
この後の質疑応答では「司法書士だからといって偽装を疑わないという確認の仕方に問題はなかったか」という趣旨の質問があった。これに対してBPO側からは、司法書士は、法令上の義務を負っており、それを超えて番組側が偽装を見抜くことは困難であったであろうし、今回の司法書士の行動は法務大臣による懲戒に値する可能性があるものであったという説明があった。
また「騙した社長は、(番組ディレクターからの)期待に沿ってあげよう、テレビってこんなもんやろうと考えた、というふうに意見書に書いてあるが、もう少し深くききたい」という要望があった。これに対してBPO側からは、業者の本意を知ることはできないが、社長から事情を直接聴いた毎日放送によると、宣伝効果を狙ったか、ある種の自己顕示欲を発露したかったか、ということが考えられると説明があった。
最後に、金の延べ棒が見つかった家と「偽の依頼人」は、どのような関係なのかという質問があった。これに対してBPO側からは、分かっていることは不動産登記上のことに限られる。本当は誰の、どういう家なのかについては、偽の依頼人が放送局からの電話連絡にいっさい出なくなってしまったので不明だ、との回答があった。
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