青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第255回

第255回-2023年3月

中高生モニター会議の開催… など

2023年3月28日、第255回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。当日は中高生モニターによるテレビ朝日オンライン館内見学会と中高生モニター会議に引き続いて通常の委員会が開催されました。
委員会では、2月後半から3月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見については、バラエティー番組に関して報告されました。3月の中高生モニターリポートのテーマは「1年間で最も印象に残った番組について」でした。委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。最後に来年度の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年3月28日(火) 午後4時00分~午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
中高生モニター会議 詳細はこちら
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

2月後半から3月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
バラエティー番組で、一人暮らしの男性芸人の部屋に妖怪に扮した女性が潜んでいて、芸人が帰宅すると手にした壺から砂をまくドッキリを放送したところ、「部屋に砂をまくのはやりすぎ。企画というより弱い者いじめだ」などの意見が寄せられました。担当委員は「少しも面白くないし、やりすぎだと思うが、委員全員で視聴して議論するものでもない」と述べ、議論の結果、「討論」に進むことはありませんでした。
別のバラエティー番組で、男性芸人を四つんばいにさせてズボンを下ろし、臀部を露出させたことについて視聴者から、「『無理やりズボンを脱がす』のは、警察に相談または通報すべき19のいじめ事例として文科省より2月に通達されている」と指摘されました。担当委員は「委員会としても今後は19のいじめ事例を念頭に置きながら判断していかなければならないだろう」という意見を示したほかは大きな議論はなく「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

現モニター最後となる3月のテーマは「1年間で最も印象に残った番組について」で、20人から合わせて17(テレビ15、ラジオ2)番組への報告がありました。
複数のモニターが挙げたのは3番組で、『M-1グランプリ2022』(朝日放送テレビ)には「一生懸命ものごとに立ち向かっている姿は見る人に勇気を与える」などの感想が寄せられました。また『バリューの真実』(NHK Eテレ)に「高校生の疑問にまっすぐ向き合っているところに好感がもてる」、『silent』(フジテレビ)には「見るたびに感情が揺さぶられる番組だった」といった声が届きました。
「自由記述」では、「テレビの強みは同じ空間を共有して感想を言い合えるところで、人と自分の価値観の違いに気づくきっかけにもなる」など、1年間のモニター活動で感じたことの記述が目立ちました。

◆モニター報告より◆

【1年間で最も印象に残った番組について】

  • 『バリューの真実』(NHK Eテレ)
    • この番組の面白いところは、さまざまな角度から徹底的に現役高校生たちの悩みを解決するところです。1回の放送の内容がとても濃く、高校生の疑問にまっすぐ向き合っているところに好感がもてます。大人からすると些細なことに感じられても高校生にとってはとても切実な悩みであることもあります。そんな悩みに真摯に向き合ってくれる温かさと、「自分たち高校生と同じ目線で考えて悩んでくれている」という安心感や優しさがあるように思います。(高校2年・女子・東京)
    • ドラマ(「たいせつを探して」)を見て、改めて「人生は一度で儚いもの」なんだなと思いました。そして1分1秒を大切にして、これからも家族を大切に過ごしていきたいと思いました。(高校3年・女子・神奈川)
  • 新美の巨人たち 『「不思議の国のアリス」×篠原ともえ』(テレビ東京)

    私は英語で原作を読んで古い英語の美しさを感じていたが、この番組はアートという視点からだったので、新たな角度で興味深かった。実際に日本を代表する木版作家の方がアリスの挿し絵を再現していた。このような紹介のしかたは、やはりテレビしかできないような気がする。(中学1年・女子・千葉)

  • 『世界ふれあい街歩き』(NHK総合)

    2019年の再放送としてキーウ(キエフ)の街並みを紹介していた。ロシアによる軍事侵攻が起こる前の平和な街を見ていて胸が苦しくなった。とくに博物館の前で「過去を学ばない者に未来はない」と語る男性がいた。過去を見つめてこれからの未来に生かそうとする姿に感動した。また教会で平和を祈る女性が「世界中の人々が仲良くできますように」と語っていた。番組の最後に現在のウクライナの姿、人々を紹介していた。私たち視聴者がこれを見て、自然とウクライナのことを考えて祈らずにはいられない、考えさせられる放送だった。(中学2年・女子・鹿児島)

  • 『musicる TV』(テレビ朝日)

    有名な人ではなく駆け出しの人や、これから伸びそうな人を紹介してくれるため、毎回新しい音楽と出会えてとても好きな番組になりました。もっとも良いと思うのは、“一般人で音楽の紹介をしている人を招いて意見やおすすめの曲を教えてもらえること”です。あくまでファンという位置づけの人が紹介してくれる曲から「エモい」や「良い」といった印象を受けやすいです。(中学2年・女子・東京)

  • 『マイケル・サンデルの白熱教室2023』(NHK Eテレ)

    「同性婚を認めるか」という問題を国の垣根を超えて話し合う内容で、とても斬新さを感じました。各国のトップの意見ではなく大学生の意見であることにとても興味が湧きました。印象に残ったのが、アメリカの学生の「そもそも結婚を法制度化するのはどうなのか」という意見です。もちろん人や国によって価値観や考え方は違うのですが、国に関係なく打ち解けて話し合っていて、国どうしの関係の良し悪しなどは別の問題なのだと強く思いました。とても深く考えさせられる議論でした。(中学1年・男子・山形)

  • 『エルピス -希望、あるいは災い-』(関西テレビ)

    このドラマが社会に訴えたいであろうと思われる主張を、現実社会とリンクさせる中で強く感じた。社会批判の要素があるドラマを制作したテレビ局と制作陣の勇敢さに感心したとともに、一歩やり方を間違えれば厳しい結果もあったであろうところをうまくバランスを取ったのだろうなと思った。(高校1年・男子・愛知)

  • 『it!!』(ベイエフエム)

    一番の魅力は「ほっと一息」つけることだと思う。常にメッセージテーマがフリーなのも相まって、リスナーからのメールで番組が進んでいく。「明日、卒業式です」といったメールにDJが優しく言葉を返すのが、聴いていて心地が良い。「3時になったらラジオでお茶会」という企画もあり、肩の力を抜いて楽しめる。(高校1年・男子・東京)

  • 『silent』(フジテレビ)
    • 毎週見るたびに切なくなったり感動したり、本当に感情が揺さぶられる番組だったと思います。手話にあまり興味を持ったことがなかったのですが、番組を見て興味が湧きました。自分も障がい者の方と線をひいていた感じがします。(中学2年・女子・山口)
    • 学校で感想を言い合うだけでなく、先生も授業の冒頭に感想を言っていてとても楽しかったことを覚えています。耳が聞こえない人の生活の中での工夫や苦悩を知ることができ、人としてもひとつ成長できたように思いました。(高校2年・男子・福岡)
  • 『ラジオ・チャリティー・ミュージックソン』(ニッポン放送)

    こうした活動を知ることで障がいのある人たちに自分は何ができるかを考え、積極的に行動するという自信も生まれた。番組を通して視覚障がい者の感覚の違いに気づき、ラジオを聴かなければ知ることができないことがたくさんあった。ラジオの音声でしか伝えられない特徴を生かしていると思った。(中学2年・女子・東京)

  • 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)

    大河ドラマは難しい印象が強かったのですが、序盤のほうはコミカルなシーンも多く、現代語のようなしゃべりかたで進んでいたので見やすいなと思いました。ずっとシリアスなわけではなく、何百年も前に生きていた人ではあるけれど、どこか現代の人間にも通じるような部分があってすごく面白かったです。(中学3年・女子・群馬)

  • 『第73回紅白歌合戦』(NHK総合)

    これを見ないと私の1年は終わらない、それくらいアツい気持ちで見ている番組です。さまざまな要素で構成されているのがとても魅力的で、そんな世界観を堪能できるのは紅白ならではだと思います。欲を言えば番組全体のテンポが早い気がするのと、演奏する曲がかなり短くカットされているので、もう少し番組や1曲の時間が長くても良いのではないかなと思います。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『M-1グランプリ2022』(朝日放送テレビ)
    • 去年の王者やM-1の物語があり、漫才師たちがどれだけ努力してきたか、すごく思いが伝わってきました。今年の出場者は本当に面白い方たちばかりで、ずっと笑っていられました。ネタのことばの使い方だったりリズムの使い方だったりと、去年にはない新たな漫才を見ることができました。(中学2年・女子・山口)
    • 1年間で一番、テレビがあって良かったと思いました。一生懸命にものごとに立ち向かっている姿は見る人に勇気を与えます。審査員の方の点数は後からついてくるものだと思うので、全組に優勝をあげたい気持ちです。(高校2年・女子・千葉)
    • それぞれの漫才師さんたちが1年間磨いた漫才をぶつけ合う様子は涙なしでは見られませんでした。審査員の方の席順やメンバーも変わったため、とても新鮮でした。ほかの賞レースよりもSNSの活用がうまく、それも視聴率につながっているのではないかと思いました。(中学3年・女子・千葉)
  • 『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ)

    現実にもいるような普通の女性が主人公で、存在感のあるキャラクターで印象に残っています。最終回にかけて伏線が回収されていくところが見ていてスッキリしました。最新話の考察をしたりドラマで出てくる平成の流行り物について家族で話したりする時間が楽しかったです。(高校2年・女子・岩手)

  • 『クレイジージャーニー』(TBSテレビ)

    放送が深夜から早い時間に移動して、以前のように過激な内容の放送をすることはなくなるのかな、と思っていたのですが、初回からコカインやギャングなど、攻めた内容の旅が変わらず放送されていて嬉しかったです。(高校2年・女子・広島)

【自由記述】

  • 1年間リポートを書いて改めてテレビ番組の重要性や与える影響の大きさについて感じる部分がありました。SNSが主流になってテレビ番組を見る機会が少なくなっていましたが、テレビ番組は家族や友達と感動や悲しみなど感情を共有できる大切な時間だと気づきました。同時にSNSよりも様々な年代のたくさんの人が見ていて、放送された一言によって物事の印象が変わり、多くの人に大きな影響を与えることも色々な番組を見て強く思いました。(高校2年・女子・岩手)

  • 1年間リポーターをやって家族とテレビを見てコミュニケーションをとる機会が増えたように感じます。今は動画サイトや見逃し配信アプリが発達し、テレビではなくスマートフォン1台で、一人で十分動画が楽しめる時代になりましたが、家族皆でテレビを観る時間をこれからも大切にしていこうと思います。(高校2年・女子・広島)

  • テレビの在り方や番組について、何度も深く考えた貴重な時間でした。最近はテレビ番組もネットの配信で見ることができ、大抵のことがスマホ1台で完結してしまいます。テレビにはスマホのような万能さはありません。しかしテレビの強みは、その場にいる人全員で同じものを見て、同じ空間を共有して感想を言い合えるところだと思います。それが「同じものを見ても、こんなに感想が違う」「人それぞれ、こんなに捉え方が違う」と、人と自分の価値観の違いに気づくきっかけにもなるのではないでしょうか。(高校2年・女子・東京)

  • ネット動画やネットテレビが発達してテレビの在り方が議論されていますが、各メディアの特性を生かしたコンテンツが求められるのではないかと思います。ラジオは、速報性やメッセージによる双方向性を生かした番組、音楽に特化した番組が作られています。テレビも、コンプライアンスを守ることや情報の信ぴょう性など、自分で選んで見るネットとは違い、多様な考え方に触れることができるところなどを生かした番組を作ることが求められていると思います。(中学1年・男子・山形)

  • 最近のテレビは探求型だなと思います。視聴者に疑問を与え、考えさせて答えを教えるという流れの番組が多いです。視聴者も探求しながら番組を見ることで、人間の思考力は高く、よりよいものになるのではないかと思いました。(中学2年・男子・山形)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『ニンチド調査ショー』(テレビ朝日)
    • 今では信じられない昔の常識に驚くことが多かった。TVerを使って見たが、VTRのほとんどが「権利の都合上・・」だったので、今度はリアルタイムでも見られたらいいと思う。(中学1年・千葉・女子)
    • ジェネレーションギャップを分かりあえないという解釈で終わらせるのではなく、クイズ形式でお互いの世代を知っていこうと歩み寄る雰囲気で、楽しく見ることができました。お互いを受け入れ尊重するという姿勢が感じられ、良いなと思いました。(高校2年・女子・岩手)
  • 『超無敵クラス』(日本テレビ)

    高校生目線で面白く、視聴しやすい番組でした。自分と同じくらいの年齢の人が頑張っているのを見るのはとてもいい刺激になるので、ほかの番組でもいろんな活動をしている学生を紹介してほしいと思います。「若者が抱いた疑問を自ら解決する」という感じが出ると、より魅力が生まれるかもしれません。(高校1年・男子・滋賀)

  • 『NHKスペシャル テレビとはあついものなり-TV創世記-』(NHK総合)

    今や当たり前のようにあるテレビが、始まった当時は番組を一つ作るにもトラブルがたくさんあり、本当に多くの人の努力の上に成り立っているものだったということがよく分かりました。(高校2年・女子・広島)

◆委員のコメント◆

【1年間で最も印象に残った番組について】

  • 同性婚をテーマに異なる国の学生が話し合う番組について「深く考えさせられたと」いう意見があった。今の若い人たちは多様性とか、国籍や性差を超えてということに、とてもアンテナが高いのだなと思った。

  • 戦禍前のキーウ(キエフ)の街並みを紹介した番組から戦争の悲惨さを痛感したという報告があった。戦争反対を取り上げた番組ではないが、過去の美しい街並みの映像が戦争のむごさというものを深く印象づけたのだと思う。

  • 視覚障がい者の社会参加を支援するラジオチャリティー番組を聴いて、障がいのある人に接するときに「積極的に行動する自信が生まれた」という感想があった。ラジオ放送を聴いて自分に何ができるかを考えたということで、番組が若い人たちに与えた影響は大きかったのだろうと思う。

  • M-1グランプリを挙げたモニターが複数いた。それぞれリアルタイムで見ていて、若者にとってはワールドカップやWBC以上に生中継で見ないわけにはいかない番組の一つなのだろうと思った。

【自由記述について】

  • 「テレビの強みは感動を共有できるところだ」とか「ネットと違い多様な考え方に触れることができる」といった声が多く寄せられた。モニターは‟テレビ離れ”と言われる世代だが、それぞれ自分のなかでテレビの意味をしっかりつかんでいる。単に視聴時間が短いことをもって‟テレビ離れ”と言っていいのか、考える必要があるように思う。

  • 若い人たちは動画配信やSNSと放送番組をちゃんと使い分けているようだ。視聴率では高齢者がよく見ている結果だとしても、『紅白歌合戦』を熱く語る若者もいる。制作者はこうした意見もしっかり受け止めて分析する必要があるのではないだろうか。

今後の予定について

次回は、4月25日(火)に定例委員会を開催します。

以上

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