NHK BS1 東京五輪に関するドキュメンタリー番組への意見
2022年9月9日 放送局:NHK
NHKは2021年12月26日に放送したBS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編の字幕の一部に不確かな内容があったとして、2022年1月9日、番組と局のホームページで公表し謝罪した。番組は、東京五輪の公式映画監督である河瀨直美さんと映画製作チームに密着取材したもの。男性を取材した場面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕を付けて伝えた。放送後、視聴者から字幕の内容が事実であるかの問い合わせが相次ぎ、NHKが男性に確認したところ、実際に五輪反対デモに参加していた事実を確認できず、字幕の内容が不確かだったことがわかったという。
委員会は、取材、編集、考査、調査の各段階で問題があるのではないかといった厳しい意見が相次ぎ、放送倫理違反の疑いがあることから、2月の委員会で審議入りを決め、議論を重ねてきた。審議を経て、委員会は次のとおり事実を認定した。①番組は五輪反対デモに参加していない男性を参加したかのように描くものだった。②男性のその他の発言についても事実の確証は得られていない。③別のデモに関する男性の発言を五輪反対デモに関するものであるかのように編集した。④男性に対し適切な説明をしなかった。そして、放送の結果、番組はデモの参加者はお金で動員されており、主催者の主張を繰り返す主体性のない人々であるかのような印象を視聴者に与え、デモの価値をおとしめたという問題も生じた。以上から、放送倫理基本綱領、NHK放送ガイドラインに反しているとして、重大な放送倫理違反があったと判断した。
2022年9月9日 第43号委員会決定
目 次
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- 1 制作に至る経緯
- 2 問題シーンの取材のいきさつ
- 3 公園での問題シーンの撮影
- 4 公式映画ディレクターX氏へのインタビュー
- 5 編集から第1回試写まで
- 6 第2回試写から完成に至るまで
- 7 放送後の局の対応
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- 1 本件放送が伝えた内容
- 2 基本を欠いた取材
- 3 別のデモに関する発言を五輪反対デモの発言に“すり替えた”編集
- 4 関心の薄さで問題を見過ごした試写
2022年9月9日 決定の通知と公表
通知は、2022年9月9日午後1時30分からBPOで行われた。
また公表の記者会見は、午後2時30分からオンライン会議システムを使用して行われ、委員長および担当委員が委員会決定の説明と質疑応答を行った。
会見には57社118人の参加があった。詳細はこちら。
2022年12月9日【委員会決定に対するNHKの対応と取り組み】
委員会決定 第43号に対して、当該のNHKから対応と取り組みをまとめた報告書が2022年12月8日付で提出され、委員会はこれを了承した。
NHKの対応
目 次
- 1) 委員会決定の放送対応
- 2) 放送現場への周知
- 3) 経営委員会・放送番組審議会への報告
- 4) 放送倫理委員会の開催
- 5) コンテンツ品質管理連絡会の実施
- 6) BPO 放送倫理検証委員会との研修会
- 7) 再発防止に向けて