2022年7月に視聴者から寄せられた意見
安倍元首相銃撃事件の報道について、さまざまな観点から多数の意見が寄せられました。
2022年7月にBPOに寄せられた意見は2,743件で、先月から1,038件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール85%、 電話14%、 郵便・FAX計1%
男女別は男性37%、 女性18%で、世代別では30歳代25%、40歳代24%、50歳代20%、20歳代16%、60歳以上10%、 10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、7月の送付件数は1,431件、49事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から40件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。
意見概要
番組全般にわたる意見
安倍元首相銃撃事件の報道について、映像・音声の使い方、参院選への影響、政治家と宗教団体との関係の報じ方などさまざまな観点から多数の意見が寄せられました。
ラジオに関する意見は55件、CMについては20件でした。
青少年に関する意見
7月中に青少年委員会に寄せられた意見は139件で、前月から55件増加しました。
今月は「表現・演出」が54件、「報道・情報」が44件、「要望・提言」が10件、「いじめ・虐待」が6件と、続きました。
意見抜粋
番組全般
【報道・情報】
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安倍元首相銃撃の瞬間の映像を流すのはやめてほしい。旗に隠れているだけでまさにその瞬間の映像だったのでゾッとした。配慮に欠ける。
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銃撃の瞬間はすなわち殺害の瞬間。映像が相当にショッキングで動悸がおさまらない。インターネットで流れているのは知っていて、あえて見ないようにしていたが、テレビで何の前触れもなく流されたら自衛できない。
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元首相の冥福を祈る気持ちは私も同じだが参院選の投票日は二日後に迫っている。夜まで安倍氏の経歴を紹介したり過去の映像を流したりすることは自民党を利することになる。選挙の「公平性」は決してないがしろにすべきではない。
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参院選の投票前日に元首相銃撃の特集を放送した。意図はどうあれ特定政党の宣伝になってしまう。公平を保つために放送は選挙終了後にすべきではなかったのか。
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元首銃撃事件に使用された自作の銃の構造を、CGなどを用いて詳しく解説していた。見た人がまねて銃を作ることができるほどの再現性だと感じた。こうした情報の取り扱いには十分に配慮すべき。
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元首相銃撃事件の容疑者の供述として「元首相が教団と関わりがあると思い込んで」などと、実際には関わりがなかったかのような内容が報道されているが、現実には元首相が教団の関連団体にビデオメッセージを送っていたことが分かっている。これに対し全国霊感商法対策弁護士連絡会は抗議している。「一方的な思い込みによる犯行」と受け取られるような報道は止めるべきだ。
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情報番組のMCが「宗教の問題とまったく関係がない元首相に刃が向いた」と発言した。「まったく関係がない」と断じるなら相応の根拠を示すべきだ。
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野党幹部が教団の名称変更の経緯などに疑義を呈したことについて、情報番組の出演者が「パフォーマンスっぽいと思ってしまう」。事実とかけ離れた発言で不適切。
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ラジオでアニメ主題歌を特集したが、うち1曲は参院選に立候補している漫画家の代表作であるアニメのものだった。作品のタイトルを紹介すればすぐにその作者の名前が連想されるため、意図していなくても候補者の宣伝になると思う。選挙期間中にこのような曲を流すのは不適切だ。
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開票特番の出演者がある党首へのインタビューで個人的な恨みを晴らしているように感じた。
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ある局のいくつもの報道・情報番組に出演しているコメンテーターを選挙期間中、出演させなかったということは、その局がこの人物を特定の政党の関係者とみなしている証だと思う。普段、この局はその人物の考えを放送しているということになるのではないか。
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情報番組でタレントが新型コロナ感染症について「死者がいる以上、相応の対応が必要という議論があるが、それはほかの病気も同じ」と述べた上で「もはやコロナは心の病気だと思っている」と発言した。私の家族は今、自宅療養中で激しい咳などの症状に苦しんでいる。家庭内で介助や感染対策をしている人たちに冷や水を浴びせるような許しがたい発言だ。また、この発言が感染者やその家族への偏見を呼び起こさないか不安。
【バラエティー・教養】
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流行の先端を行くような中高生が体を張って希少な川魚を探したり、山越えの自転車通学について行ったり、また歴史や生物に造詣の深い若者の興味深い話に耳を傾けたり。彼らの姿は「今どきの若者」に対するイメージを大きく改善してくれる。ターゲットにしていると思われる若者の視聴者がいろいろなことに関心を持つきっかけとなることを期待したい。
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飲食店でシカの肉の「表面をさっとゆがいたレアなもも刺し」を食べるシーンを紹介した。ジビエの生食は食中毒で死亡するリスクがある。番組は「生食は問題ない」という誤解を視聴者に与える。
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揚げパスタ1本を折らないように相手の喉に入れ、入れられる方はむせないように我慢するというゲーム。「マネするなよ」というメッセージはあったが、事故につながる危ないものだと感じた。出演者のケガが心配になる演出はありえないと思う。
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バラエティー番組の「24時間プラスチックに触らず生活できるか!?」という企画で、マスクの不織布にプラスチックが含まれているという理由で、出演タレントが友人とカラオケを楽しむという閉鎖空間でもスカーフで代用させていた。この時期 タレントの安全のためにもマスクは着用させるべきだったのではないか。放送の際に「安全の観点から例外」とすればいいだけ。何が何でもダメというのは人権侵害ではないか。
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世界の「面白動画」を見せるという番組。AIやディープフェイクなどの怖さを教えている身として、「つくられた映像」が十分な検証なしに、あたかも真実であるかのように放送されるのは問題があると考える。今後、編集画像で様々なニュースやインタビューがつくられてしまわぬよう危機感を持った方がいい。
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「霊的な現象」や「霊能力」としてさまざまな現象を紹介していた。これらの存在を積極的に肯定していると受け取られる内容を、影響力の強いテレビで放送するのは問題ではないか。長年にわたり社会問題となっている霊感商法等を助長し、さらなる被害者を生む結果とならないか心配だ。特に青少年に与える影響は大きいと思う。
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私は自閉症や吃音(きつおん)を持つ子どもたちと関わっている。番組で吃音の芸人が「帰れ、と言われて何分で帰るか」というドッキリのターゲットになっていた。ビデオで芸人の言動を見ているスタジオの出演者が「変なやつ」と発言、ナレーションではこの芸人のことを「奇人」と表現していた。同じ症状がある子どもたちが見たらどう思うだろうか。病気を笑うような内容は放送しないでほしい。
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仕掛け人である人気の女性天気キャスターがターゲットの芸人に「自分はあなたのファン、一緒に写真を」と依頼するが、芸人が近づくと「近いんだよ!てめえ」などと大声でののしり始める。人が怒鳴られる様子を見て笑うという神経が考えられない。
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「47都道府県○○スポットを一挙公開」というので、自分の地元にもスポットライトが当たるのかと楽しみにして見たが、実際に取り上げられたのは10県程度で地元は登場せず。裏切られた気分だ。自分のワクワクを返してほしい。
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ロケ現場を自由に使ってスケートボードの技を競う企画で、植え込みの縁を滑走する選択をした人が何度も挑戦し、植え込みの植物をひどく痛めていた。見ていてとても不快だし、まねをする子どもが出てくると考えるとゾッとする。
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パーソナリティーが紹介する楽曲について繰り返し「ばかみたいな曲」と評し、また歌い手を貶(おとし)めるような発言をしていた。大変不快だった。
【ドラマ】
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ドラマで、幼少期に父親から受けたDVのトラウマを克服させるという目的で、仲間が本人の了承を得てわざと長時間、小突き回し、罵詈雑言を浴びせて耐えさせるというシーンがあった。「トラウマやPTSDは根性で治る、本人の努力で克服できる」といった誤った認識を植え付ける描写であり、不適切だと感じた。
青少年に関する意見
【「表現・演出」に関する意見】
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バラエティー番組内の子ども番組を模したコーナーで、男女がヤクザ系の言葉を入れた唄を歌っていて、出演者の子どもたちが怖がっていた。教育上の問題があると思う。
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幼児が「おつかい」を初めて体験する番組で、1歳8カ月の男の子が少し離れたお隣さんに回覧板を届ける内容を放送した。子どもの発達の個人差について不安を煽る内容であり、出演する子どもには年齢制限を設けてほしいと思った。
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ドッキリを扱う番組で、銭湯の浴槽に電気を流して痛がる様子を放送したが、いじめに見える。浴槽から出るのを妨害する役の人もいて、完全にいじめだと思った。
【「報道・情報」に関する意見】
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安倍元首相が銃撃された直後のニュースで、現場を見ていた高校生とみられる女性2人にインタビューしていたが、顔と制服がそのまま放送されていた。インタビューするのはよいが、顔と制服は隠すべきではないか。
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銃撃の様子を目撃し、インタビューに答えた高校生とみられる女性は今後、自責の感情に苛まれます。目撃者のPTSDはあとから遅れて発症します。目撃直後に無遠慮にマイクを向けるのは二次加害です。必要なのはメンタルケアです。
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安倍元首相の銃撃のニュース。子どもが学校から帰宅する時間なのに、銃声音が入った映像や元首相が倒れて出血している映像を流す必要がありますか。子どもたちが目にしてしまい、すぐにテレビを消しました。
【要望・提言】
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各局で夕方の時間帯に、連続殺人などのドラマが再放送されている。「再放送するな」とはいわないが、子どもたちが夏休みに入っているのだから、内容を考えて放送してほしい。殺人を扱ったドラマが子どもたちに悪影響を及ぼすのではないかと危惧している。
【「いじめ・虐待」に関する意見】
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バラエティー番組に、吃音症を持った芸人が出演した。その症状を見て、笑いを誘うような表現があり、吃音症の当事者として不適切だと思った。当事者のほとんどが子どものころに吃音が原因でいじめに遭っており、今回の表現はそうしたいじめの状況を助長するものだと思う。