青少年委員会

青少年委員会 議事概要

第246回

第246回-2022年5月

視聴者からの意見について…など

2022年5月24日、第246回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、8人の委員全員が出席しました。
4月後半から5月前半に寄せられた視聴者意見には、美容整形手術をテーマにしたバラエティー番組に元AV女優が出演したことに対し、「ゴールデンタイムの出演はいかがなものか」「家族で見ていられない」などの意見が寄せられました。また、恐怖体験を語るトーク番組で、お笑い芸人がエレベーターに乗った時に先に待っていた女性が一緒に乗って来ず、自分を警戒していたことが不服でもう一度戻って反応を見ようとしたら、既に姿がなく恐怖でゾっとしたというオチの話をしたという内容に対し、「性被害を自衛する女性を批難する言動」「人権意識が希薄だ」という意見が寄せられました。
委員会ではこれらの視聴者意見について議論しました。
5月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。モニターからは知床の観光船沈没事故の報道で、「被害者家族への取材に気配りが感じられた」という受け止めの一方、「運航会社を批判的にとらえるインタビューばかりだった」「亡くなった人の手紙を公開する必要はないのではないか」などの意見が寄せられました。
委員会ではこれらのモニターからの意見について議論しました。
最後に次期調査研究のテーマ選定や、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解についての意見交換会、および地方局との意見交換会など、今後の予定について話し合いました。
次回は、6月28日に定例委員会を開催します。

議事の詳細

日時
2022年5月24日(火)午後4時30分~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
自殺報道のガイドラインについて
調査研究について
地方局との意見交換会について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

4月後半から5月前半に寄せられた視聴者意見について議論しました。
美容整形手術をテーマにしたバラエティー番組に元AV女優が出演したことに対し、「ゴールデンタイムの出演はいかがなものか」「家族で見ていられない」などの意見が寄せられました。委員からは「以前から同様の批判的意見が寄せられることがあるが、出演自体が青少年に与える影響はあまり感じられない」「番組の内容自体に特に問題はないと思われる」といった意見が出されました。
恐怖体験を語るトーク番組で、お笑い芸人がエレベーターに乗った時に先に待っていた女性が一緒に乗って来ず、自分を警戒していたことが不服でもう一度戻って反応を見ようとしたら、既に姿がなく恐怖でゾっとしたというオチの話をしたという内容に対し、「性被害を自衛する女性を批難する言動」「人権意識が希薄だ」という意見が寄せられました。委員からは「心霊体験もどきの話を意図したもので、話を盛り上げるための状況説明の範囲だろう」という意見が出されました。
何百年も続く旧家に嫁ぐ庶民の女性の苦闘を描くドラマで、子どもが溺れていても一族の人間が誰も助けず傍観する薄情な様子や、主人公をサウナに閉じ込める危険な行為の描写に対して、「人命を粗末にしている」「いじめを助長する」などの意見が寄せられました。委員からは「フィクションとしての設定であり、特に問題はないと思われる」との意見が出されました。
特撮ヒーロー番組で、敵に操られて悪に染まった人間を主人公が見殺しにし「悪い奴は死んで当然だ」という発言をしたことに対し、「あまりに残酷」「改心させて欲しかった」などの意見が寄せられました。委員からは「勧善懲悪ストーリーの範囲内で、そこまでの影響はないだろう」との意見が出されました。
高級料理を皆で食べその料金を予測し一番外れた者が全額を負担するという番組で、一人の出演者が連勝し続けている状況下で他の出演者が「負けろ」「空気を読め」などの嫌がらせをしたことに対し、「ズルではなく実力で勝ち続ける人を貶めるようなやり方は、いじめにしか見えない」「学校や会社でのいじめに繋がる」との意見が寄せられました。委員からは「弱い者への集団的行為と捉えられるものではない」「強い者に対するやっかみレベルの演出と思われる」との意見が出されました。
童謡の歌詞を替え歌にしてお笑芸人に仕掛けるドッキリ企画に対し、「子どもが真似をする」「冷蔵庫に人が入るのは危険」などの意見が寄せられました。委員からは「同様の番組について前回も議論しており、このような視聴者意見が来ていることを確認してほしい」「今回は一人に連続して全部を仕掛ける内容にはなっておらず、全体として討論に進むという程度には至っていないと思われる」との意見が出されました。
今回の委員会の議論から、「討論」に進んだものはありませんでした。

中高生モニターについて

5月のテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。朝や夕方の情報番組を取り上げたモニターが多く、いくつかの番組を比較した報告もありました。
一番感想が多かった知床の観光船沈没事故の報道では「被害者家族への取材に気配りが感じられた」という受け止めの一方、「運航会社を批判的にとらえるインタビューばかりだった」「亡くなった人の手紙を公開する必要はないのではないか」などの声がありました。
山梨県の不明女児や芸能人の自殺に関する報道については「もっと家族などに配慮すべきではないか」という感想が複数寄せられました。
「自由記述」では、ウクライナ情勢の報道や生放送中の地震対応などについて要望・感想がありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、バラエティー番組の『LIFE!春~君の声に捧げるコント~』(NHK)に8人から感想が寄せられ、とくに「大人たちに言いたいこと」をお題にした”子ども川柳”に「共感できた」という声が挙がっていました。そのほか『香川照之の昆虫すごいぜ』(NHK Eテレ)、『世界くらべてみたらSP』(TBSテレビ)にそれぞれ3人から、『半分だけで考えてみた!』(NHK BS)に2人から感想がありました。

◆委員の感想◆

  • 【最近見たニュース・報道・情報番組について】

    • 観光船の沈没事故をはじめ不明女児や芸能人の死去に関する報道で、家族にお気持ちを聞くシーンが多かったように思う。観光船事故の報道で、被害者の手紙を公開したことに疑問の声があったが、事故と関係ないようなプライベートな話を報じる傾向はあるので、何が必要で何が必要でない情報か、私たちが得るべき情報は何かということを一緒に考えたい。

    • 観光船事故の報道で「運航会社が悪者のようなインタビューばかりだった」という声があった。ただ、こうした事故があったときどういう会社かを知るためには周りにインタビューをするし、それを放送すると結果的に悪者のようになってしまうことがある。それを抑えようとすると公式な発表があるまで報じられなくなってしまい、その辺の兼ね合いについても考えてもらえればと思う。

    • SDGsの話に関心を持っている中学生モニターがかなりいたことは喜ばしい。報道や学校教育などの効果だと思う。

    • ローカル番組を取り上げてローカル性の良さに触れている報告が複数あった。ローカル放送局の大切さも意識して見てくれているのはよいことだと感じた。

  • 【自由記述について】

    • 報道番組のキャスターについて「コメントが的確で、スポーツニュースのときに楽しそうでいい」などと評価する声があった。キャスターに対しても、そうした人間性が見えたようなときに親しみを感じたりするのだろう。

    • 「昔よりバラエティー番組の幅が狭くなった」という記述があった。少し深読みかもしれないが、もっと自由にやっていいのではないかというような感想と受け止めた。

    • バラエティー番組のパターンが似てきていて幅が狭くなった、という印象を持っているのかもしれない。

    • 中高生がテレビのバラエティーに求めるのは、今のお笑いの第7世代と呼ばれる若手に象徴されるように、コンビ仲がいいとか優しい笑いのようなものではないか。若手芸人の皆さんや若い制作者の方々は、そのあたりの感触もよく分かっているのではないかと思う。

  • 【青少年へのおすすめ番組について】

    • 『LIFE! 春~君の声に捧げるコント~』(NHK)に多くの感想が届けられた。NHKの「君の声が聴きたい」キャンペーンの一環だったが、とかく重いテーマになりがちなところをうまくコントにつなげ、子どもたちの今のリアリティを吸い上げたのではないか。

◆モニターからの報告◆

  • 【最近見たニュース・報道・情報番組について】

    • 『news every.』(日本テレビ)、『ゴゴスマ』(CBCテレビ)知床観光船沈没のニュースに関しては、報道陣の方々の多くは、被害者家族の方々にマイクを向けることに十分気を配っていらっしゃるように感じます。一方で、山梨県道志村の不明女児の報道に関しては、少し違和感を覚えています。行方不明の女の子の母親に対して、捜査が進展するたびに報道陣の方々からのマイクやカメラが向き、連日母親のコメントが報道されている印象です。いちばん辛い状況におかれているはずのご家族に対しては、極力配慮をするべきだと思います。(高校2年・女子・東京)

    • 『ZIP!』(日本テレビ)、『情報7DAYSニュースキャスター』(TBSテレビ)亡くなった被害者の方のプロポーズの内容が書かれた手紙の公開はしなくてよいと強く思いました。相手の方のためだけに書かれたものを亡くなったからといって公開することはプライバシーの侵害です。「もし、自分が」と思うと「あなたたちに伝えたかったことじゃない!」と思ってしまうなと思いました。「他の番組では放送しないことを放送して見てもらおう!」ではなく、「どの報道番組よりも相手に寄り添う番組にしよう!」という心がけで番組が制作されたら「見てみたいな」となると思います。(高校2年・女子・千葉)

    • 『Live News イット!』(フジテレビ)北海道の観光船が事故を起こしたというニュースの取り上げ方が気になりました。当初、事故を起こした会社を批判的にとらえる、会社を悪者にするようなインタビューばかり放送されていて「もし、これが別の原因で起こってしまった事故だったら番組はどうやって責任をとるつもりだろうか」と疑問を持つとともに怖くなりました。「取材部ネタプレ」のコーナーはとても面白いなと感じています。普段、現場で取材をしている記者たちがイチオシのネタをプレゼンしていて、記者だからこその詳しい情報が分かるし、毎回惹かれる見出しと内容なのでどの記事もとても気になります。選ばれなかった記事も見てみたいなと思いました。(高校2年・女子・岩手)

    • 『めざまし8』(フジテレビ)上島竜兵さんが亡くなられた時のニュースを見ました。ネットでも問題視されていましたが、死因を報道する、本人の自宅前からの中継、近隣の方へのインタビューなど、やり過ぎた報道が行われていたように思います。今回の報道の仕方は、上島さんへの配慮と同時に、視聴者への配慮も足りなかったのではないかと思います。(高校2年・女子・広島)

    • 『news23』(TBSテレビ)今回の放送は、局のSDGsウィーク中であったこともあり、その話題を冒頭にもってきていたのは印象づけられて良いと思いました。SDGsのように長期的な取り組みを継続して報道する姿勢は素敵だなと思います。番組中盤の「調査報道23時」では、映画界の性暴力被害について、被害者のそのままの声を時間をかけて伝えたり、具体的な被害の内容や現場の取り組みについても伝えたりしていて内容が深く入ってきました。(高校1年・男子・兵庫)

    • 『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ)平日朝に放送している『ZIP!』は朝の情報番組ということもあり、短い時間でたくさんのことを伝えているのですが、バンキシャ!は日曜日にゆっくり深掘りできる内容なので落ち着いてみることができる。時間帯や曜日ごとに取り上げ方が違うことに、制作をしている方々の工夫を感じた。(中学3年・女子・千葉)

  • 【自由記述】

    • 知床遊覧船の沈没事故についてのニュースの中で、事故当日に交際相手の女性にプロポーズをする予定だった男性が書いた手紙が公開されていて驚きました。この事故を実感を持って伝えるには有効な報道の仕方でしょうし、遺族に公開の許可をとっていれば問題ないというメディアの考え方もわかります。ただ問題は、ニュースの受取り手が「亡くなられた男性に対するプライバシーの侵害だ」「メディアには道徳が欠けているのではないか」などと感じていること自体です。そうなってしまうとメディアが伝えたかったニュースの核の部分が入らなくなってしまいます。”多くの人に見られる番組”だけにとらわれないようにお願いします。(高校1年・男子・兵庫)

    • 芸能人の方が亡くなるニュースが次々と入ってきました。詳しいことはよく分からないのですが、この報道をするたび同時に「こころの相談窓口」の電話番号なども画面に映されますが、なんとなくその部分の説明が形式的な「社会的な義務だからやってます」という雰囲気がして気になっています。(高校1年・男子・滋賀)

    • ロシアとウクライナの情勢について、在日のロシア人が日本人に誹謗中傷を受けていることに違和感をもっています。これは、マスコミの報道の仕方に問題があると思います。そこで報道するとき「ロシア」と使わずに「ロシア軍」や「プーチン大統領」など、ロシア国民には侵攻に関与したり支持したりしていない人が多いことをしっかり示してほしいです。(高校2年・男子・福岡)

    • 通販番組は一社だけの収入になってしまいます。この状態が激しくなってしまうと、お金のある企業だけがどんどんメディアを侵食し、その企業の作りたい未来しか作れません。テレビ・ラジオという選択の余地が限られているものの中で、そのようなことをやっても大丈夫なのか?と家族と話しました。地方になればなるほど選択ができなくなって真実がぼやけてしまいます。通販番組のあり方についてもう一度考えてほしいです。(中学2年・男子・山形)

    • 最近、日本では地震がとても多くなり、生放送の番組を見ていて、そのアナウンサーの対応がとてもすごいなと思います。どの番組のどのアナウンサーも瞬時に言葉を選び、その言葉は私たちの不安を和らげてくれるような気がします。地震が起こるとすぐに生放送をやっている番組に切り替えます。生放送、アナウンサー、とてもすごいし大切だと思います。(中学2年・女子・東京)

    • 昔と比べてバラエティー番組の幅が狭くなったと感じます。興味を持ったお笑い番組の多くも深夜にやっていて少し残念です。SNS時代である今だからこそ、少し奇抜、クセのある番組を放送しても良いのではないでしょうか。(中学2年・女子・山形)

  • 【青少年へのおすすめ番組】

    • 『LIFE!春~君の声に捧げるコント~』(NHK)川柳のコーナーでは、同じ世代の人たちの声だったので、とても共感しました。家族に対する思春期特有の悩みがある人は、一緒にこの番組を見たら「ここをもう少しこうしてほしい」などと、素直に話せるようになるのではないでしょうか。(中学2年・女子・山形)

    • 『世界くらべてみたらSP』(TBSテレビ)SDGsやガーナのゴミ問題など、世界や地球環境について考えることができた。ゴミを使ったアート作品は、売ったお金を現地で活用していて、あまり世界で活躍する日本人をみる機会がなかったので知ることができてよかった。(中学2年・女子・山形)

自殺報道のガイドラインについて

中高生モニターからの意見等を受けて、自殺報道についての議論となりました。
人気お笑い芸人の訃報を伝える情報番組で、自殺の手段を伝え自宅前からの中継に街頭インタビューを交えて動機を推測するなど、直接的な表現を使った報道に対して、「WHOの自殺報道ガイドラインを認識しているのか」「厚労省が注意喚起したのは明らかに特定番組だ」との意見がありました。
2020年にも芸能人の自殺報道が問題になり厚労省の注意喚起が出され、民放連でもWHOの自殺報道ガイドラインと共に自主・自律的に対処する呼び掛けがあったことが事務局より報告されました。
委員からは、「行政の介入には反対だが、直接的な表現を使った報道には問題があると思う」「自殺報道に限らず、行政機関から注意喚起があったという事態を踏まえ、報道の自由を守るという視点から考えていただきたい」「相談窓口の紹介さえすればアリバイ的に大丈夫というマニュアル化に陥っているのでは」「知床の観光船事故のプロポーズ全文もそうだが、エモーショナル過ぎないか」などの意見も出されました。

調査研究について

次期調査研究担当委員から、青少年がバラエティー番組から得られる満足をテーマとする研究の提案があり、年次変化を見る調査方法などについてのプレゼンが行われ、それについて意見交換しました。
次回以降に継続して議論を行い、調査研究のロードマップを検討することになりました。

地方局との意見交換会について

新型コロナウイルス禍により開催が延期されていた青少年委員会と地方局との意見交換会を、感染状況を考慮し感染防止に配慮しつつ、年度内に再開する方向で準備を進めることになりました。

今後の予定について

本年4月15日に公表した「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解をテーマにした在京・在阪各局の番組制作担当者を招いての意見交換会を開催する予定です。

以上

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