放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会  決定の通知と公表の記者会見

2021年7月21日

日本テレビ『スッキリ』アイヌ民族差別発言に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、7月21日午後5時40分から、オンライン会議システムを使用して行われた。委員会から小町谷育子委員長、高田昌幸委員、井桁大介委員、米倉律委員の4人が出席し、日本テレビからは取締役専務執行役員ら3人が出席した。
まず、小町谷委員長から委員会決定について、本件放送にはアイヌ民族に対する明らかな差別表現が含まれており放送倫理違反があると判断したことを伝えた。その背景として「収録動画の最終チェック体制が極めて甘かったことや、紹介作品をスタッフの中で1人しか見ていないなど自らの制作番組に対するこだわりが薄かったこと、番組で取り上げたアイヌ民族やその差別問題に関する基本的知識が決定的に不足していたことが挙げられる」と説明した。そして「ヒアリングを受けた制作スタッフは口々に差別をする意図はなかったと語っているが、意図がなくても差別発言が容認されるわけではない」と指摘した。また、スタッフの1人が、当該コーナーで紹介した作品は差別される側の問題を伝える内容なので、番組で片方の意見だけを伝えることになるのではないかと考えたことについて「バランスをとって伝えるということが誤って放送現場に定着している可能性がある。研修等を通じて改める必要がある」と述べた。
続いて高田昌幸委員が「日本テレビでは、かつて、バラエティー番組内でお笑いタレントが「イヨマンテの夜」の曲を流しながら踊ってみせた際、アイヌ民族の尊厳を著しく貶め差別を助長したという問題が起きた。その教訓が全く生かされておらず継承もされていない。我々が常識だと思っていたことが、若い世代にとってはそうではなく、そこにこの問題の一筋縄ではいかない難しさがある」と述べた。そのうえで「幹部や上席の人は、現場を信頼して任せることと、任せっきりにすることは違うと自覚し、細やかな目配りや手当てをしてほしい」と指摘した。
これに対して日本テレビ側は「委員会決定を真摯に受け止め、今後の番組制作に生かし再発防止に努めたい。社員、スタッフの人権意識や感度の低さに光をあて、不断の努力を重ねて、正しい情報を視聴者に伝えていきたい」と述べた。

続いて、午後6時15分からオンラインによる記者会見を開き決定内容を公表した。小町谷育子委員長、高田昌幸委員、井桁大介委員、米倉律委員の4人が出席し、132アカウントからの参加があった。
はじめに、小町谷委員長が委員会の判断について「チェック体制が隙だらけだった。また、制作番組に対するこだわりが薄く、担当のディレクター以外誰も紹介作品を視聴していなかった。差別に関する知識に乏しく放送人としての感度にも問題があった」と説明し、差別の意図がなくても差別表現をした放送が容認されるわけではないと指摘した。
続いて高田委員が「差別をしてはいけないという当たり前のことが世代間で継承されていない。番組のチェックがきわめて簡略に行われていた背景には、当該コーナーがグループ会社の配信映画を紹介するいわば番組宣伝だとして、制作する側が軽く見てしまった側面もあるのではないか」と指摘した。
記者からは「どういうところで放送人の感度が欠けていると感じたのか」という質問があり、これに対して高田委員は「感度とは、人を動物にたとえたときに、これでいいのかなと一瞬立ち止まることができるかどうかということだ。今回、番組を制作する上で、それはできたのではないか」と説明した。
井桁委員は「現在もなお差別はさまざまな形で続いている。一般常識を持っていればそれに気づき、立ち止まって議論できたのではないか。その最初の引っかかりがなかったこと自体に感度の低さを感じている」と答えた。
米倉委員は「チェック体制が緩いという以前に、一つ一つの制作プロセスにおいて、現場のスタッフの間で本当にいいのかの一声がなかなか出ない。出たとしても十分に議論された形跡がない。その点こそが放送人の感度に関わる部分ではないか」と述べた。

以上