放送人権委員会

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2021年6月15日

「宮崎放火殺人事件報道に対する申立て」審理入り決定

 BPO放送人権委員会は、6月15日の第293回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

 NHK宮崎放送局は、2020年11月20日午後6時10分からの『イブニング宮崎』(宮崎県内で放送)の中で、同年3月26日に宮崎市内で男性2人が死亡した民家火災の続報を放送した。そこでは、この火災は放火殺人事件の疑いが濃くなり、容疑者がガソリンをまいて火をつけ被害者(申立人の兄)を殺害し自分も死亡した可能性があり、その原因として「何らかの金銭トラブル」が死亡した2人の間にあったかのように伝えられた。
 ニュースでは、この火災について、被害者の服からガソリンの成分が検出されたことや、容疑者の自宅や車などの捜索から被害者の父親名義の銀行通帳が見つかり、口座から現金が引き出されていたことを報じた上で、「こうした状況から警察では2人の間に何らかの金銭トラブルがあり、容疑者(実名)がガソリンをまいて火をつけ被害者(実名)を殺害した疑いが強まったとして、殺人や放火などの疑いで容疑者死亡のまま書類送検する方針です」と締めくくった。
 この放送に対して申立人が、「2人の間に何らかの金銭トラブルがあった」と報じられたことで、「亡くなった兄にも何らかの原因があったのではないか」との印象を抱かせるものであり、事件被害者である兄の尊厳を傷つけたとして、NHKに対して謝罪を求めてBPO放送人権委員会に申立てを行った。
 これに対してNHKは、「事件当事者の2人が亡くなっている中でも、当時の取材で知り得た情報を基に『被害者』と『加害者』を明確に分ける形で客観的な事実を伝えており、申立人の主張する指摘は当たらない」と反論した。

 15日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。