よくあるご質問

委員会決定等について

question
取材対象者や一般人の出演者が実は関係者だったというケースについて、委員会で取り上げたことがありますか?
answer
放送倫理検証委員会は、委員会発足の翌年の2008年から2015年にかけてほぼ毎年のように、取材対象者や一般人の出演者が実は関係者だったというケースについて、委員会決定を出して放送局に注意を促してきました。その後、2020年に入り、NHK国際放送のドキュメンタリー番組で、仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客として出演した男性らがサービスを提供する会社のスタッフだった事案や、テレビ朝日がニュース番組の特集で取り上げたスーパーの買い物客が取材ディレクターの知人だった事案について、委員会は相次いで放送倫理違反があったと判断しました。
取材対象者や一般人の出演者が実は関係者だったという事案に関する委員会決定は、以下のとおり。

  • ▼テレビ朝日『スーパーJチャンネル』「業務用スーパー」企画に関する意見はこちらから
    第38号 2020年9月2日 放送局:テレビ朝日
    テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する特集を放送しましたが、この特集に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪しました。委員会は、同年11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯などを詳しく検証する必要があるとして審議入りを決め、議論を続けてきました。
    日本民間放送連盟とNHKが1996年に定めた放送倫理基本綱領は「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」とし、「取材・制作の過程を適正に保つことにつとめる」と定めています。また、民放連の放送基準では、前文で「正確で迅速な報道」を求め、第32条では報道の責任として「事実に基づいて報道し、公正でなければならない」と掲げています。本件特集は、その取材の過程が適正とは言い難く、内容においても、本来ならその場に現れるはずのない「客」を偶然を装って登場させたという点で正確ではなく、公正さを欠いていた。
    したがって、委員会は、本件特集には放送倫理違反があったと判断しました。
  • ▼NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見はこちらから
    第34号 2020年3月31日 放送局:NHK
    2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは2019年5月29日、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表しました。委員会は9月、利用客が会社関係者でないこと等の確認が適切に行われるべきであったところ、十分な確認をしなかった可能性がうかがわれるため、放送に至るまでの経緯や原因を検証する必要があるとして審議入りを決め、議論を続けてきました。
    委員会は、放送倫理基本綱領の「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」、NHK「放送ガイドライン」の「NHKのニュースや番組は正確でなければならない」との規定に照らすと、出演者が本物の利用客ではなかった点、また、出演者が会社関係者だったのにその関係を明らかにしていなかった点において、放送の内容は正確ではなく、したがって、NHKが適正な考査を行わなかったことを含め、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断しました。
  • ▼『クローズアップ現代』”出家詐欺”報道に関する意見はこちらから
    第23号 2015年11月6日 放送局:NHK
    NHK総合テレビ『クローズアップ現代』(2014年5月14日放送)と、その基になった『かんさい熱視線』(同年4月25日放送 関西ローカル)は、寺院で「得度」の儀式を受けると戸籍の名を変更できることを悪用した”出家詐欺”が広がっていると紹介。番組で「ブローカー」とされた人物が、演技指導によるやらせ取材だったと告発したのに対して、NHKは「過剰な演出」などはあったが「事実のねつ造につながるいわゆるやらせは行っていない」との報告書を公表しました。委員会は、NHK関係者のみならず、番組で紹介された「ブローカー」「多重債務者」に対しても聴き取り調査を行いました。その結果、2つの番組は「情報提供者に依存した安易な取材」や「報道番組で許容される範囲を逸脱した表現」により、著しく正確性に欠ける情報を伝えたとして、「重大な放送倫理違反があった」と判断しました。
  • ▼日本テレビ『スッキリ!!』「弁護士の”ニセ被害者”紹介」に関する意見はこちらから
    第19号 2014年3月5日 放送局:日本テレビ
    日本テレビは、朝の情報番組『スッキリ!!』で2012年2月29日と6月1日の2回、インターネット詐欺の特集を放送しましたが、ネット詐欺専門の弁護士から被害者として紹介され出演した男女2人が、実は被害者ではなく弁護士の当時の所属事務所の職員だったことが判明し、裏付け取材が不十分だったとして審議入りした事案。委員会は、日本テレビが十分な裏付け取材を行わず「ニセ被害者」の証言を放送し視聴者の信頼を損なったと指摘しましたが、一方、放送時点において「ニセ被害者」が実際の被害者であると信じるに足る相応の理由や根拠は存在したとして、「放送倫理違反とまでは言えない」と判断しました。そのうえで、今回の事例を踏まえ放送界全体で共有してほしい事柄として、「専門家」に対する過度の依存を考えなおしてほしい、など3点の問題提起を行いました。
  • ▼日本テレビ『news every.』の「飲み水の安全性」報道に関する意見はこちらから
    第14号 2012年7月31日 放送局:日本テレビ
    福島第一原発の事故の影響で懸念されている水道水の安全性の問題を特集企画で検証した際、最近「宅配の水」として利用者が急増しているボトルドウォーターについても取り上げました。この中で、利用者として紹介され、子どものためにも宅配の水のほうを選ぶとコメントした女性が、一般の利用客ではなく、宅配水メーカーの経営者の親族で、同社の大株主でもあったことが判明した事案。委員会は、約1年前に同じ放送局の同じ番組の「ペットビジネス」報道でも、類似の問題が繰り返されたことを重視して比較検討しました。その結果、取材・制作スタッフが実績のあるベテランだったため内部チェックが空洞化したこと、1年前の教訓をもとに策定された「企業・ユーザー取材ガイドライン」が現場で血肉化されておらず機能しなかったことなどを指摘しました。
  • ▼情報バラエティー2番組3事案に関する意見はこちらから
    第12号 2011年7月6日 放送局:テレビ東京、毎日放送
    1.番組で酸素飲料を飲み、ダイエットに成功したと紹介した女性が、その飲料を販売する会社の社長だった事が分かったテレビ東京の『月曜プレミア!主治医が見つかる診療所』(2010年11月8日放送)
    2.ホテルを購入しようとしたセレブな女性に密着した取材が、ホテルの宣伝のための作り話ではないかと視聴者から指摘された毎日放送の『イチハチ』(2010年11月17,24日放送)
    3.同じ『イチハチ』で、出演した女性がニューヨークに23件もの不動産物権を持っていると紹介し、その後、毎日放送が女性の所有とは証明できず、事実と異なる情報を放送した可能性が極めて高いと言わざるを得ないと公表した事案(2011年1月12日放送)
    委員会は、情報や事実の正確さを前提に制作されている以上、その正確性や公正性に対する確認や裏づけ取材は、バラエティーといえどもあやふやであってはならないと指摘しました。そのうえで、若い制作者たちへの手紙という「別冊」で、委員会への思いを表明しました。
  • ▼日本テレビ 「ペットビジネス最前線」報道に関する意見はこちらから
    第10号 2011年5月31日 放送局:日本テレビ
    番組の中で紹介されたペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者でなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったという事案。担当ディレクターは、そのことを知りながら、一般客として放送していました。委員会は事実を正確に伝えておらず、公正性も損なわれていると指摘しました。
  • ▼テレビ朝日『報道ステーション』マクドナルド元従業員制服証言報道に関する意見はこちらから
    第3号 2008年2月4日 放送局:テレビ朝日
    「マクドナルド製造日偽装問題」のニュースの中で、店の制服とバッジをつけた女性が「直営店でも商品の調理日改ざんをしていた」との内部告発の証言を放送しましたが、女性は現職ではなく、番組は、店員の制服を着て店長代理のバッジをつけた元店員が内部告発の証言をするという演出をしたことについて謝罪放送をし、また、証言者が番組関係者であることも明らかにした事案。委員会は、こうした安易な演出は、報道にあたっての慎重さに欠けるものであったなどと指摘しました。