「大縄跳び禁止報道に対する申立て」
に関する委員会決定の通知・公表の概要
[通知]
2020年10月14日午後1時からBPO会議室において、奥武則委員長と、担当した水野剛也委員、紙谷雅子委員が委員会決定を通知した。
申立人本人と、被申立人のフジテレビから本件番組の責任者らが出席した。
はじめに奥委員長が「本件放送に人権侵害、また放送倫理上の問題があったとは判断できない」と結論を伝え、その上で「ただし、申立人のように取材・報道に不慣れな者が予期せず声をかけられる種の街頭インタビューでは、誤解やトラブルを招かぬためにも、放送局名・番組名はもとより、取材の趣旨などを取材に際しては可能な範囲で説明し、かつ撮影した映像等の使用について本人の意向を明確に確認しておくことが望ましい」と結論には注文がついていることを述べた。その後決定文に沿って説明した。まず判断の前提となった申立人と被申立人との対立点が取材の経緯と申立人本人の発言内容の2点であり、この対立点は双方から完全に言い分が異なる主張としてなされている、と指摘した。双方の主張についていずれかが明らかに整合性を欠いていた訳ではなく、委員会としては各種書面やヒアリングの結果「申立人の主張する事実があったとは認定できない」としたと述べた。それらを総合的に判断した結果、「人権侵害、また放送倫理上の問題があったとは判断できない」という結論に至ったと説明した。また、編集のありかたについて、より慎重な姿勢を望む意見が付記されていることも説明した。
水野委員は、「放送人権委員会決定第24号(2004年)を引用しているが、『カメラに向かってインタビューに応じることは放送についても承諾している』とする第24号決定は、SNSの普及や個人情報保護の観点から、現在ではすべての取材に一律に適用できない、とこの決定文に記した。申立人からすれば人権侵害や放送倫理違反が認められなかったことは不本意かもしれないが、今後の街頭インタビューの方法などについて改善が期待できる」と述べた。紙谷委員は「実際の映像を見ると、切り張りされていたり何かがすごく強調されていたりした訳ではない。妥当な部分を編集して放送したと考えた。その上で人格権の侵害があったと判断できない、とした」と述べた。
申立人は「そもそも自分の考えとはまったく反対の意見が放送されたことで申し立てたが、認められなくて不本意だ」と述べた。
被申立人のフジテレビは「我々の考えが理解されたと考えるが、その一方で指摘された取材の在り方については真摯に受け止めたい」と述べた。
[公表]
午後2時から千代田放送会館ホールで、奥委員長、水野委員、紙谷委員が記者会見を行った。取材したのは22社33人。
(奥委員長)
結論として人権侵害も放送倫理上の問題も認められない。判断のグラデーションとしては「問題なし」に当たる。
(水野委員)
今後のインタビュー取材の在り方において一つの基準となる判断なのではないか。人権委員会の判断としては「問題なし」だが、今後の街頭インタビュー取材についてこの種のトラブルが生じた時の指針となると考えた。
(紙谷委員)
今回の場合、申立人は具体的な人権侵害ではなく「本来ではない自分」を放送されたと主張したので、人格権という観点で審理した。総合して考慮した結果、「人格権の侵害があったと判断することはできない」としたが、結論で述べているように取材時の丁寧な説明が望ましい。
質疑応答の概要は以下のとおり。
(質問)
申立人の年齢は?
(奥委員長)
申立書に年齢を記載する欄がないので把握していない。
(質問)
今後の取材の在り方が変化していくのではないか?
(奥委員長)
基本的なことをしっかりやっていただきたい、ということに尽きる。
以上