放送人権委員会

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2020年9月15日

「リアリティ番組出演者遺族からの申立て」審理入り決定

BPO放送人権委員会は、9月15日の第284回委員会で、上記申立てについて審理入りを決定した。

この事案は、フジテレビが2020年5月19日未明に放送した『TERRACE HOUSE TOKYO 2019 - 2020』に出演していた女性が放送後に亡くなったことについて、女性の母親が、娘は番組内で取り上げられた同居人男性の帽子をはねるシーンをめぐってSNS上で「批判的なコメントが殺到」したことを苦に「自らの命を絶った」としたうえで、きっかけとなったその場面は「過剰な演出」によるものであったなどとする申立書を委員会に提出したもの。
申立人はフジテレビに対して、娘は番組で狂暴な女性のように描かれたことによって、「番組内に映る虚像が本人の人格として結び付けられて誹謗中傷され、精神的苦痛を受けた」ことによる人格権の侵害と、「全ての演出指示に従うなど言動を制限する」等の条項を含む「誓約書兼同意書」による支配関係のもと自己決定権が侵害されたとして、娘に対する人権侵害があったと訴えている。そして、フジテレビに謝罪と公平・公正な検証を求めている。
これに対してフジテレビは、番組について「予め創作した台本は存在せず、番組内のすべての言動は、基本的に出演者の意思に任せることを前提として制作されていた」としたうえで、社内での検証結果に基づき「制作者が出演者に対して、言動、感情表現、人間関係等について指示、強要したことは確認されなかった」と主張した。また、「同意書兼誓約書」に関しては、出演契約であり労働契約のように「指揮命令関係に置くものではない」として、「自己決定権を奪われたとの主張には理由がない」としている。そして、インターネット配信から放送後に至るまで、番組スタッフが本人と連絡を取り、ケア等により、「精神状況が比較的安定していることを確認している」ことなどを挙げて、「番組内で狂暴な女性のように描かれ、視聴者がSNS上で誹謗中傷し、精神的苦痛を受け、人格権を侵害されたとの申立人の主張は認められない」と反論している。

15日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理入りの要件を満たしていると判断し、審理を始めることを決めた。委員会は今後、双方が提出する書面と、申立人と被申立人に対するヒアリングをもとに審理を行い、その結果を「勧告」または「見解」としてとりまとめ、申立人およびフジテレビに通知した後、記者会見を行い公表する。

放送人権委員会の審理入りとは?

「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。

* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。