放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第283回

第283回 – 2020年8月

「一時金申請に関する取材・報道に対する申立て」事案のヒアリングを開催…など

議事の詳細

日時
2020年8月18日(火)午後1時~6時
場所
北海道新千歳空港ターミナル内会議室
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「一時金申請に関する取材・報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理

今事案は、昨年6月に申立てがあり、審理入り後今年3月にヒアリングを行う予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛要請等の影響で開催が再三延期されてきた。感染が再び拡大する状況での開催に関する申立人からの要請を検討した結果、委員会は、高齢の申立人に配慮するとともに、審理のこれ以上の遅延回避とヒアリングへの全委員出席の原則を踏まえ、異例の措置として申立人の居住地に出向いて行うことを決め、北海道新千歳空港内会議室において開催した。
今事案の対象となったのは、札幌テレビが2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性に関する報道で、男性が自宅で申請書類に記入をし、北海道庁で申請手続きをする様子等の場面を放送した。この放送に対して取材された男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示するなど、「一時金申請を希望していなかったのに、記者が申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求めて申立書を提出した。これに対して札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ可能となった取材であり、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
ヒアリングでは、双方に対して、申請を行った経過やその際の記者とのやり取りなどをとくに詳しく聴いた。申立人には代理人が同席し、申請による影響等を申立人に代わって説明した。委員会は、ヒアリングを受けて審理を行い、決定の方向性を固め決定文の起草に入ることを決めた。

2.「大縄跳び禁止報道に対する申立て」事案、審理

フジテレビは2019年8月30日の『とくダネ!』で、都内の公園で大縄跳びが禁止された話題を放送した。放送は、近所の進学塾の生徒たちが大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えていることに、周辺住民から苦情が出て、行政が規制したことを紹介したもので、周辺住民のインタビューが流された。
そのインタビューに答えた女性が、突然マイクを向けられ一度も見たことがないのに誘導尋問され、勝手に放送に使われたとして、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて申立書を提出した。これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており、「捏造には該当しない」などと反論している。
今委員会では担当委員から決定文の原案が示され、委員の間で意見交換を行った。申立人が主張する権利の扱いや一般的な街録と違う申立人と近隣関係への影響、街録一般のトラブル回避策等について意見が出され、改めて起草委員会を開き修正を加えることとなった。

3. 審理要請案件、「裁判和解の見通し報道に対する申立て」

地方自治体を退職した元職員が自治体を相手に起こした訴訟で和解が成立する見通しだと報道した今年1月に放送されたニュースに対する申立て。裁判は、放送の3日後に和解した。元職員は、放送は自治体側の取材だけで報道しており自分に意見を言わせなかったのは人権侵害だとしてBPOに申し立てた。その後申立人は、協議を求める当該局の再三の電話に出ず、事務局からの連絡にも出ない等の状況が続いたため、審理要請案件として検討した前回(第282回)委員会は、申立て継続の意思が確認できなければ取り下げとみなすと判断し、その旨申立人に通知した。しかし申立人から期日までに返答はなく、今委員会で申立ては取り下げられたものとみなすことを正式に決定した。

4. その他

  • 新規申立て等に関して報告と意見交換が行われた。

以上