放送人権委員会

放送人権委員会  決定の通知と公表の記者会見

2020年6月12日

「訴訟報道に関する元市議からの申立て」に関する
委員会決定の通知・公表の概要

[通知]
2020年6月12日午後1時からBPO会議室において、奥武則委員長と事案を担当した城戸真亜子委員、廣田智子委員が出席して、委員会決定を通知した。申立人と申立代理人、テレビ埼玉からは取締役と編成局長が出席した。
奥委員長がまず、決定文の結論について「本件放送に名誉毀損の問題及び放送倫理上の問題は認められない」としたうえで、その判断に至る委員会の考えを、申立人の主張する3つのポイントにそって説明した。自分が起こした裁判なのに自分がセクハラで訴えられた裁判であるかのような誤解を招くとする「ニュースのタイトル」については、ニュースの最初から最後までずっと表示されているタイトルスーパーの一部分であり、全体では誤解を招くようなものではないこと。議員辞職のタイミングが第三者委員会のセクハラ認定の後であるかのような時系列表現については、たとえ視聴者がそう受け取ったとしても、ニュース全体では申立人の裁判での主張を正確に伝えており、問題とはならないこと。そして、市議選への出馬に言及したことについては、「あの議員が性懲りもなくまた立候補する」との印象を与えてもいないし、再出馬を伝えることは地元メディアとして当然の責務と言えること。以上の理由から3点について、それぞれ名誉毀損も放送倫理上の問題もないとの結論に至ったと説明を行った。
続けて廣田委員が、結論は問題なしだが、委員会の議論の中では、テレビ埼玉の対応について懸念を示す意見があり、2箇所でそれを付記する形となっていることを説明した。1点目は、時系列表現の問題について、テレビ埼玉が「局所的な表記の問題」と捉えていることで、結果的に誤解が生じなかったから良いというものではなく、より正確な放送を目指すべきであるとの意見。2点目は、申立人側からの訂正要求に対して、一旦は応じる判断をしながら、交渉がうまく運ばず選挙告示前の訂正ができなかったことについて、正確な情報は有権者にとっても重要であり、申立人の納得が得られなくても、躊躇することなく実施すべきだったとの意見であることを説明した。
城戸委員は、放送局は視聴者のことだけではなく、放送でとりあげられる当事者がどう感じるのかも考えて、番組づくりをすることが大事であると述べた。
決定をうけ申立人は「非常に残念です」と述べ、申立代理人も「一般の受け止めではなく、放送される側への影響を理解してほしかった」と付け加えた。テレビ埼玉は、「ご指摘いただいたことを真摯に受け止め、今後の番組作りにしっかりと生かして行きたい」と述べた。

[公表]
 午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見し、委員会決定を公表した。18社25人が取材を行った。テレビカメラの取材は当該放送局のテレビ埼玉に加え、代表取材としてテレビ東京が行った。通知と同じく、奥委員長が決定の結論とそこに至る考え方を説明し、廣田委員が付記した意見の内容と、城戸委員が補足的な説明を行った。

(奥委員長)
結論的には名誉毀損も放送倫理上の問題も認められない。しかし、要望という形は取らなかったが、議論の中で出た委員の意見の一部を紹介する形でテレビ埼玉に考えて欲しいことを伝える決定となっている。
(廣田委員)
 放送は正確であることが基本。たとえ全体的には問題なくても、客観的な事実の訂正はした方がよかった。
(城戸委員)
 大筋正しければ、小さな表現の違いは「まあいいだろう」ではなく、放送される側にとっては、放送は一生に一度のことで、まさのその小さな表現が問題になることを、放送局は意識してほしい。

以上