放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第148回

第148回–2020年5月

琉球朝日放送と北日本放送のローカル2番組を審議
6月にも委員会決定を通知・公表へ

第148回放送倫理検証委員会は5月15日にオンライン会議システムを使用して開催された。
委員会が1月24日に通知・公表した関西テレビの『胸いっぱいサミット!』に関する意見への対応報告が、当該放送局から書面で提出され、その内容を検討した結果、委員会との意見交換が適切な時期に開催されることを期待し、報告を了承し公表することにした。
3月31日に通知・公表を行ったNHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。また4月8日にメールにて通知し、委員会決定をBPOウェブサイトに掲載して公表した北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見について、委員長から経過の報告がされた。
番組で取り上げている特定企業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、民放連の放送基準に照らして検証が必要だとして審議中の琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、6月にも当該放送局への通知と公表を行うことになった。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議中のTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』について、担当委員から意見書の再々修正案が提出され、意見交換が行われた。
スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人という不適切な演出を行ったとして審議中のテレビ朝日のニュース番組『スーパーJチャンネル』について、担当委員から意見書の再修正案が提出され、意見交換が行われた。
① 秋田放送が制作放送した『そこが知りたい!過払い金Q&A』、②山口放送が制作放送した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』、③山口放送が制作放送し、また秋田放送が放送した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座! PART2』というローカル単発番組について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、日本民間放送連盟放送基準の広告の取り扱い規定等に照らし、それぞれの番組で取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出された。もっとも上記番組のうち別の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書と同録DVDの提出を求め、継続して討議することとした。
出場者の人数が不足した場合、解答権のないエキストラを番組に参加させていたことが判明したフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、当該放送局に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、同局の番組に対して委員会が2014年4月に出した意見書(委員会決定第20号)において指摘した背景や問題点との類似が窺われることなどについて意見が出され、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。

議事の詳細

日時
2020年5月15日(金)午後1時~午後4時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)他オンライン
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、大石委員、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、巻委員

1. 関西テレビ『胸いっぱいサミット!』に関する意見への対応報告を了承

1月24日に通知・公表した、関西テレビの『胸いっぱいサミット!収録番組での韓国をめぐる発言に関する意見(委員会決定第32号)への対応報告が、当該放送局から委員会に対し書面で提出された。また、同局の番組審議会およびオンブズ・カンテレ委員会の議事内容をまとめた「番組審議会議事録」、「オンブズ・カンテレ委員会の見解」もあわせて提出された。
報告書には、再発防止、放送倫理意識向上に向けた「制作局における取り組み」が制作部会で共有され、自社検証番組「カンテレ通信」で審議に至る経緯、決定内容、改善に向けた取り組み等について放送したほか、専門家を招いた「全社的研修会」を3回開催したことなどが記されている。
委員からは、「意見書やオンブズ・カンテレ委員会が指摘しているにもかかわらず、制作現場と局の間にある意見の分断の解消についての言及がないのは残念である」「意見書を受け、制作現場の意識に変化はあったのかについて書いていただけるとよかった」といった意見が出されたが、意見書で指摘した課題に対し概ね適切な対応が行われており、また、新型コロナウイルスの拡大に伴う緊急事態宣言のため、委員会と当該局との意見交換は行われていないが、今後、適切な時期での開催を期待することとして、当該対応報告を了承し、公表することにした。
 関西テレビの対応報告書はこちら(PDFファイル)

2. NHK国際放送『Inside Lens』「レンタル家族」企画に関する意見および北海道放送『今日ドキッ!』参議院比例代表選挙の報道に関する意見の通知・公表について報告

NHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、委員会は放送の内容は正確ではなく、適正な考査も行われなかったとして放送倫理違反があったと判断し、3月31日に通知と公表の記者会見を行った。この日の委員会では、通知・公表に出席した委員長や担当委員が当日の様子を報告した。
また、北海道放送のローカル情報番組『今日ドキッ!』について、委員会は有権者に誤解を与え、比例区の投票行動をゆがめた可能性があるなど選挙報道に求められる公正・公平性を害し放送倫理に違反していると判断し、4月8日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言下であることを踏まえ、通知はメールで、公表は委員会決定をBPOウェブサイトに掲載する形で行った。この日の委員会では、その経緯について委員長が報告した。

3. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議、6月にも通知・公表へ

琉球朝日放送が2019年9月21日に放送した『島に“セブン-イレブン”がやってきた〜沖縄進出の軌跡と挑戦〜』と、北日本放送が同年10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう!自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかとして、昨年12月の委員会で審議入りした。この日の委員会では、担当委員から示された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、6月にも当該放送局へ通知して公表することになった。

4. バラエティー番組の生き物を捕獲する企画で事前に動物を用意していたTBSテレビ『クレイジージャーニー』について審議

TBSテレビは2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行ったと発表した。
11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の再々修正案が提出され、意見交換が行われた。

5. スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客が取材ディレクターの知人だった『スーパーJチャンネル』について審議

テレビ朝日は2019年3月15日、ニュース番組『スーパーJチャンネル』で、スーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が取材ディレクターの知人だったとして、記者会見を開き謝罪した。
11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議入りした。今回の委員会では、担当委員から意見書の再修正案が示されて意見交換が行われた。

6. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった秋田放送と山口放送のローカル単発番組を討議

秋田放送は2019年10月26日に『そこが知りたい!過払い金Q&A』と題した30分のローカル単発番組を制作放送した。その内容は、ある弁護士法人が扱った過払い金などの借金問題の事例に法人の代表がクイズやQ&Aの形式で解説を加えるものであり、番組内において法人の料金体系の説明や県内で開催される無料法律相談の告知もされている。なお、提供は同法人であり、法律相談会の告知CMも放送されている。
この番組を見た視聴者から「CMの延長のような番組作りは許されるのか」という意見がBPOに寄せられ、併せて「山口県で放送されたものと同じ内容の番組も1週間前に流している」との指摘もなされた。
秋田放送では、上記番組を2018年2月17日に初回放送し、その後、同年10月13日に2回目の放送をし、今回は3回目の放送であった。また、上記番組とは別に、2019年10月19日に山口放送が制作した『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』を放送していた。
そして、山口放送では、2018年6月2日、同月15日、2019年5月11日及び同月18日に、『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!』を、また、2019年5月25日および同月29日に、上記の『“見ねれば”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』をいずれも制作放送していた。
そこで、委員会は秋田放送と山口放送から提出された報告書を基に討議した結果、いずれの番組も日本民間放送連盟放送基準の広告の取り扱い規定(第92、第93)や2017年に民放連が策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」に照らし、それぞれの番組で取り上げている特定法人の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっており、放送倫理違反の疑いがあるのではないかといった意見が多く出された。もっとも、上記番組のうち別の放送局に番組販売され放送されている番組があることがわかったため、それらの放送局からも報告書の提出を求め、継続して討議を行うこととした。

7. 解答権のないエキストラで欠員補填していたフジテレビのクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』を審議

クイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』について、4月3日、フジテレビは、100人の出場者を集めて収録すべきところ、人数が不足した場合、解答権のないエキストラで欠員補填して番組に参加させ、「番組が標榜している『1人対99人』というコンセプトを逸脱し、視聴者の信頼を損なう形となっていた」として、番組ウェブサイト上で事実関係を公表するとともに謝罪した。
委員会は、当該放送局から提供された報告書と同録DVDを基に討議した結果、委員からは「意欲的な番組であるが、もともと無理があったのではないか」「同局の番組に対して委員会が2014年4月に出した意見書(委員会決定第20号)において指摘した背景や問題点との類似が窺われる。なぜ教訓が生かされなかったのか、再発防止策が生かされていたのか解明する必要がある」などの意見が出され、これまで2017年12月31日から2020年3月7日にかけて放送された番組のうち、レギュラー番組として放送された1回目(2018年10月20日)から25回目(2019年10月26日)までの回について放送倫理違反の疑いがあるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

以上