放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第280回

第280回 – 2020年5月

「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案の審理…など

議事の詳細

日時
2020年5月19日(火)午後4時~6時30分
場所
新型コロナウイルス対策のためオンラインにて開催
(主会場):「放送倫理・番組向上機構 [BPO]」 第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
(主会場):奥委員長
(参加者):市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、二関委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案の審理

フジテレビは、2018年7月6日、オウム真理教の松本智津夫元死刑囚らの死刑執行について特別番組で報じた。これに対して松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱っており、父親の死が利用されて名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。
フジテレビは、生放送の制約の中で複数の執行情報等を分かりやすく伝えたもので、人権侵害には当たらないなどと反論している。
今委員会では、担当委員から決定文の修正案が示され、意見交換を行った。この中では、各論点での人権侵害の有無に加え、放送全体を踏まえた放送倫理上の問題についての検討をめぐり活発な議論が交わされた。
今回の議論をもとに再度決定文案の修正を行い、次回委員会で引き続き審理することとなった。

2.「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」事案の審理

 札幌テレビは、2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道した。番組では、男性が家で申請書類を記入し、北海道庁で申請手続きをする様子などを放送した。この放送に対して取材の対象となった男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せるなど、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求めて申立書を提出した。
申立てに対して札幌テレビは、放送と取材は記者との信頼関係があったからこそ可能となったものであり、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
今委員会では、ヒアリング開催に向けた論点と質問項目について起草担当委員から案が示され、委員会の議論をへて決定した。ただ、実施時期については、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が継続しており、今後の状況を見極めて決めることを確認した。

3.「大縄跳び禁止報道に対する申立て」事案の審理

フジテレビは、2019年8月30日の『とくダネ!』で、都内の公園で大縄跳びが禁止された話題を放送した。放送は、近所の進学塾の生徒たちが大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えていることに、周辺住民から苦情が出て、行政が規制を始めたことを紹介したもので、番組では周辺住民のインタビューが流された。
そのインタビューに答えた女性が、突然マイクを向けられ一度も見たことがないのに、誘導尋問され、勝手に放送に使われたとして、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて申立書を提出した。
これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」などと反論している。
今委員会では必要な書面が整ったことを確認し、実質的な審理を始めるため、起草担当委員が論点の整理を行うことになった。

4.その他

  • テレビ埼玉が2019年4月11日『NEWS545』で放送した損害賠償訴訟のニュースを巡り、元市議が申し立てた「訴訟報道に関する元市議からの申立て」に関する委員会決定は、前回委員会(3月)で了承された。ただ、通知公表は、新型コロナウイルスの影響でまだ行われておらず、緊急事態宣言解除後速やかに行う方針を確認した。

以上