放送人権委員会

放送人権委員会  決定の通知と公表の記者会見

2020年2月14日

「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」に関する委員会決定の通知・公表

[通知]
2020年2月14日(金)午後1時からBPO会議室において、奥武則委員長と、事案を担当した市川正司委員長代行と水野剛也委員が出席して、委員会決定を通知した。申立人と、被申立人のテレビ東京からは報道局長ら3人が出席した。
奥委員長が決定文にそって説明し、結論について「プライバシー、肖像権の侵害はなく、放送倫理上の問題もない。しかし、要望はある」とした上で、「アレフの動向を伝えたテレビ東京の番組には、全体としては公共性・公益性があると考える。だが、アレフが団体規制法の観察対象だからといって、申立人個人の人権を侵害してよいということにはならない。個人のプライバシー保護を徹底させることは、放送の目的と何ら矛盾することではなく、両立しうることであり、それは本件ニュースにもあてはまる。今回、申立人の音声の一部が加工されないまま放送されたことを、テレビ東京は編集上のミスであり単なる不体裁と説明しているが、これをプライバシー保護に関わる問題と受け止め、ボカシの濃さや音声加工についての技術的な処理の問題、事前のチェック体制など段取りの問題、プライバシー保護に対する関係者の意識の問題など、種々の観点から再発防止に向けた取り組みを強めることを要望する」と述べた。
続いて、市川委員長代行が補足説明し、「権利侵害はなく、放送倫理上の問題もないという結論となったが、結論に至った過程はテレビ東京の主張とは少し違う。委員会は、一部の人にとってではあるが、”申立人と特定はできた”という前提に立ち、個人のプライバシーがテーマとなるととらえて議論を進めてきた。テレビ東京には、議論の過程をよく理解し、放送局内のプライバシー保護の意識をさらに深めてほしい。番組全体の公益性・公共性があっても、そこに登場する人物のプライバシーをできるだけ保護するという問題は切り分けて対応してもらいたい」と発言。
水野委員は、「決定文をよく読めば、私たちの言いたいことは理解してもらえると思う。委員会の要望や付記された意見を心に留めてほしい」とテレビ東京への期待を述べた。
決定を受け、申立人は「自分の主張を一定程度くみ取ってもらえたと感じている」と発言。一方、テレビ東京は「決定文を熟読し、指摘された点を真摯に受け止め、今後の放送に生かしていきたい」と述べた。

[公表]
午後2時から千代田放送会館2階ホールで記者会見をして、委員会決定を公表した。21社32人が取材した。テレビカメラの取材は、当該局のテレビ東京が行った。
まず、奥委員長が判断部分を中心に、「要望あり」の見解となった決定を説明した。続いて、市川委員長代行と水野委員が補足的な説明をした。

その後の主な質疑応答は、大要以下のとおり。

(質問)
テレビ東京は、2014年にアレフを巡る報道で放送人権委員会からプライバシーの問題で「放送倫理上の問題あり」と指摘されたにもかかわらず、今回、同じような事案が起きた。テレビ東京がどの程度、前回と今回のことを深刻に受け止めているか、疑問が残る。前回の事案を踏まえて、委員会が今回「要望あり」とした点について、ポイントを教えてほしい。
(奥委員長)
放送人権委員会決定第52号は、さまざまな点で明らかにアレフ信者のプライバシーへの配慮を欠いたとして「放送倫理上の問題あり」とした。今回の事案とは、問題の質が違うと思う。ただ、同じプライバシーについて、過去に問題となったことがあったことは事実であり、その点は指摘し、考えてもらいたいというのが要望の趣旨だ。
(市川委員長代行)
前回の番組は、青年信者の内心に迫った内容で、放送により明らかになった事実の質が今回とはかなり違う。また今回は、前回とは違い、編集上のミスによって起こったことだ。教団に対して突っ込んで取材することの必要性は委員会も高く評価している。ただ、一般信者のプライバシーを守ると決めたのならば、徹底してもらいたい。その切り分けが中途半端だったいう点は通底する問題かもしれないが、テレビ東京がまったく反省しておらず、再び問題を起こした、というふうにはとらえていない。
既にテレビ東京でも取り組みを行っていると聞いているが、今回の問題をとらえなおして、放送局内で勉強してもらいたい。本日、テレビ東京からも、多くのスタッフで問題意識を共有する考えだという発言があったので、期待している。

以上