放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第277回

第277回 – 2020年1月

「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」委員会決定を通知・公表へ…など

議事の詳細

日時
2020年1月21日(火)午後4時~9時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、國森委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案の審理

テレビ東京は、2018年5月16日午後のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」としてオウム真理教の後継団体であるアレフを特集した。アレフ札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した際、申立人の顔にボカシをかけたが、音声の一部は加工されないまま放送された。
アレフ会員である申立人は、肖像権とプライバシーの侵害を訴え、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対しテレビ東京は、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象であり、報道には公益性がある」と主張。プライバシー保護については「必要かつ十分な配慮を行った」としたうえで、音声の一部が加工されないまま放送された点について「編集作業上のミスで反省している。放送後速やかに社内ルールを見直し、再発防止に努めている」としている。
今委員会では、再修正された決定文案が担当委員から示され審理し、修正を加えたうえで、委員会として決定内容を承認した。2月14日に通知公表の予定。

2.「訴訟報道に対する元市議からの申立て」事案の審理

本事案は、テレビ埼玉の『NEWS545』が昨年4月11日に放送した損害賠償訴訟のニュースを巡って元市議が申し立てたもの。元市議は、自分が起こした裁判なのに自分がセクハラで訴えられたかのような「ニュースのタイトル」であり、「議員辞職が第三者委員会のセクハラ認定のあとであるかのような表現」によって名誉が傷つけられた。また「次の市議会議員選挙に立候補予定」と伝えたことは選挙妨害であると主張した。これに対しテレビ埼玉は、放送では「元市議が被害を訴えた職員を相手取った裁判」と正確に表現しており、全体をみれば誤解を招くような内容ではなく、名誉毀損や選挙妨害には当たらず、放送倫理上問題となるものではないと反論している。テレビ埼玉は、申立人との交渉のなかで「言葉の順番が違うことだけを見れば、誤解を招きかねない懸念が残る」ことは事実だとして、同日夜のニュースで言葉を修正した放送を行い、また市議会選挙直後の4月22日の『NEWS545』でお詫びと訂正を行った。
今委員会では、起草担当委員より決定文の草案が提出され、担当委員が全体構成と論点別の主旨を説明した。審理の中では、とくに議員辞職と第三者委員会のセクハラ認定の時系列関係が逆転しているようなナレーションについて、委員の間で活発に意見が交わされた。この日の議論を元に、次回委員会までに、さらに決定文案の修正を行い、改めて審理することになった。

3.「オウム事件死刑執行特番に対する申立て」事案の審理

フジテレビは、2018年7月6日、オウム真理教の松本智津夫死刑囚らの死刑執行について特別番組で報じた。これに対し松本元死刑囚の三女である松本麗華氏が、死刑執行をショーのように扱った放送であり、父親の死が利用され遺族として名誉感情を傷つけられたなどと申し立てた。
フジテレビは、速報情報を扱う生放送の制約の中で、複数の死刑囚の執行情報を分かりやすく伝えたもので、申立人の人権を侵害していないなどと反論している。
今委員会では、番組のどの部分が申立人の主張する権利侵害などの問題になりうるか、検討すべき論点を整理した。そのうえで、申立人と放送局の双方に対してヒアリングを行う方針を確認し、質問項目を決定した。次回2月委員会でヒアリングを実施する予定。

4.「一時金申請に関する取材・報道に関する申立て」事案の報告

今委員会では、まだ双方から必要な書面が整っていない状況が報告され、実質的な審理は行われなかった。
この事案は、札幌テレビ(STV)が、2019年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道したもの。番組では、男性が家で申請書類を記入するところや、北海道庁での申請手続きなどの様子を放送した。これに対して、この男性が、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「明日、申請に行きましょう」などと説明し、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張して、放送内容の訂正と謝罪を求め申立書を提出したもの。
一方、札幌テレビは、記者との信頼関係があったからこそ取材が可能となったものだとして、「検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。

5. 審理要請案件

・「大縄跳び禁止報道に対する申立て」
フジテレビは、2019年8月30日の『とくダネ!』で、都内の公園で大縄跳びが禁止された話題を取り上げた。放送は、近所の進学塾が生徒たちに暗記手段として大縄跳びをしながら声を出して歴史を覚えさせていることに、周辺住民から苦情があり、行政が公園での規制を始めたことを紹介したもの。番組では、周辺住民が「本を読んだり、集中する日には、うるさいと思う」などと答えるインタビューが紹介された。この放送に対して、このインタビューに答えた女性が、犬の散歩中に突然見知らぬ女性からマイクを向けられ、大縄跳びの騒音問題について聞かれた。「一度も目撃したことがなく、理解に苦しむ内容」なのに誘導尋問に近い形で質問され、勝手に放送に使われ、「懇意にしている進学塾の批判にもつながり、非常に憤慨している」として、フジテレビに対して「捏造に対する謝罪と意見の撤回」を求めて、BPO放送人権委員会に申立書を提出した。
これに対してフジテレビは、インタビュー内容を加工せずそのまま放送しており「捏造には該当しない」などと反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。

6. その他

  • 「覚せい剤押収報道に対する申立て」の通知報告
    前回委員会で審理入りしないと決めた同事案の処理に関する報告。同事案は、人権侵害の有無及びそれに係る放送倫理上の問題を検討する必要があると委員会が判断したものの、審理に不可欠な、取材の経緯を知る申立人の家族への事情聴取について了承を得られず、審理対象にしないと決定したもの。今回、申立人、被申立人である当該放送局に審理入りしないことを通知するとともに、委員長として、この決定にいたった委員会の判断と議論について説明する書簡を、双方に送ったことが報告された。

  • 委員会運営規則に関する議論
    BPOの認知度が上がるとともに、委員会に対する申立ての提出件数が急増し、内容が複雑化、委員会本来の目的とずれたものも散見されている。こうした状況を受け、委員会は、主に運営規則にある「苦情の取り扱い基準」のありかたについて議論した。委員会としては、これまでどおり委員会の審理を経て、その都度決定することを前提としながら、審理対象としない決定をすることができるような規定を明文化する方向で検討することとなった。

以上