第145回–2020年1月
スポーツの映像を早回し加工したTBSテレビの『消えた天才』委員会決定を通知・公表へ
第145回放送倫理検証委員会は1月10日に開催された。 委員会が昨年10月7日に通知・公表した長野放送の『働き方改革から始まる未来』に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な改善策を含めた取り組み状況など対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、当該対応を了承して公表することにした。 少年野球のピッチャーの投球などスポーツ映像の早回し加工が行われ審議中のTBSテレビの『消えた天才』について、担当委員から意見書の修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、2月に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を公示前日に紹介する内容を放送し審議中の北海道放送『今日ドキッ!』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。 仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして審議中のNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、担当委員から意見書の修正案が示された。 海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画で不適切な演出を行ったとして審議しているTBSテレビのバラエティー番組『クレイジージャーニー』とついて、意見書の原案が提出された。 スーパーの買い物客に密着する企画で登場した人物が取材ディレクターの知人だったという不適切な演出で審議入りしているテレビ朝日のニュース番組「スーパーJチャンネル」について、意見書の骨子案が示された。 番組で取り上げている特定企業の事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっているのではないか、日本民間放送連盟(民放連)の放送基準等に照らして検証が必要だとして審議入りしている琉球朝日放送と北日本放送の2つのローカル単発番組について、ヒアリングの途中経過や今後の予定が報告された。
議事の詳細
- 日時
- 2020年1月10日(金)午後2時~午後7時
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1. 長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見への対応報告を了承
2. スポーツの映像を早回し加工したTBSテレビの『消えた天才』について審議
3. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービス会社のスタッフだったことが判明したNHK国際放送の『Inside Lens』について審議
4. 参院選比例代表に立候補予定の特定候補に取材し公示前日に放送した北海道放送の『今日ドキッ!』について審議
5. 生き物捕獲バラエティー番組で事前に動物を用意していたTBSテレビの『クレイジージャーニー』について審議
6. スーパーマーケットで偶然出会ったように放送した買い物客4人が取材ディレクターの知人だったテレビ朝日の報道番組『スーパーJチャンネル』について審議
7. 視聴者に広告放送と誤解される疑いのある内容だった琉球朝日放送『島に"セブン-イレブン"がやって来た~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と北日本放送『人生100年時代を楽しもう!自分に合った資産形成を考える』について審議 - 出席者
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神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、西土委員、藤田委員、巻委員
1. 長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見への対応報告を了承
委員会が10月7日に通知公表した、長野放送の『働き方改革から始まる未来』に関する意見(委員会決定第30号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。 報告書には、「『役員・社員に対する放送倫理・番組基準の徹底と意識改革』に関する取り組み」として、社内で意見書勉強会とアンケートを実施するとともに、民放連事務局から講師を招いて「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」の理解を深めるために勉強会を開いたことなどが詳細に記されている。委員からは「社員のアンケート結果からは、一人一人がしっかりと事例を受け止めていることがわかる」「社員に加え、制作会社の関係者まで広く対象とし、また、社員等の主体性を生かす研修を実施するなど、自主・自律的な観点から望ましい事後対応を行っている」といった感想が述べられ、適切な対応が行われているとして、当該報告を了承して公表することにした。(委員会決定など2019年度 参照)
2. スポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議 2月に通知・公表へ
TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について、当該放送局から委員会に対し、昨年8月11日の放送で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した投手の試合映像を早回しして球速が速く見えるよう加工を行い、別の放送回でも、卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の映像について早回し加工を行っていたと報告があった。9月の委員会で、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議することになり、議論を重ねてきた。 今回は、前回までの議論を受けて担当委員から出された意見書の修正案について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、2月に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うことになった。
3. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議
参議院選挙公示前日の昨年7月3日、北海道放送は夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した企画を放送した。企画の中ではその他の比例代表の候補者や政党にまったく言及しておらず、制度上、参議院比例代表選挙には北海道という区切りがないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは道内の有権者を当該候補者に誘導する効果を否定できず、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして、委員会は9月から審議を続けている。 今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が提出され、意見交換が行われた。次回委員会には、意見書の再修正案が示される予定である。
4."レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議
2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは昨年5月、利用客として出演した男性ら3人がサービスを提供する会社のスタッフだったと明らかにした。番組の制作担当者は、利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。 委員会は、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて、制作担当者から直接話を聞いて放送に至った経緯を検証する必要があるとして、昨年9月に審議入りを決めた。 この日の委員会では、担当委員から意見書の修正案が示され、それをもとに議論した。次回委員会には、意見書の再修正案が示される予定である。
5. 生き物捕獲バラエティー番組で動物を事前に用意していたTBSテレビの『クレイジージャーニー』について審議
TBSテレビは、昨年8月14日放送のバラエティー番組『クレイジージャーニー』の中で海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、あたかもその場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行っていたと発表した。11月の委員会で、民放連放送基準に抵触している疑いがあり、制作過程を検証してこの内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして審議することを決めた。 この日の委員会では、12月に行われた制作担当者らに対するヒアリングを踏まえて担当委員から意見書の原案が示され、意見交換が行われた。次回委員会には、この日の議論を受けた意見書の修正案が提出される予定である。
6. スーパーで偶然出会ったように放送した買い物客4人が取材ディレクターの知人だったテレビ朝日の『スーパーJチャンネル』について審議
テレビ朝日は昨年3月15日、ニュース番組「スーパーJチャンネル」でスーパーの買い物客に密着する企画を放送したが、この企画に登場した主要な客4人が、取材ディレクターの知人だったことがわかったとして、10月に謝罪した。 11月の委員会で、放送倫理違反の疑いがあり放送に至った経緯を詳しく検証する必要があるとして審議することになり、12月に当該放送局の番組制作担当者らに対するヒアリングを行った。 これを踏まえて今回の委員会には意見書の骨子案が提出され、意見交換が行われた。次回委員会には議論を受けた原案が示される予定である。
7. 放送か広告か曖昧だと指摘された琉球朝日放送と北日本放送のローカル単発番組について審議
琉球朝日放送が昨年9月21日に放送した『島に"セブン-イレブン"がやってきた~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と、北日本放送が10月13日に放送した『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』という2つのローカル単発番組について、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92条、第93条)や2017年に民放連が出した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」などに照らすと、それぞれの番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であると誤解されかねない内容になっていて、放送倫理違反の疑いが大きいのではないかという意見が相次ぎ、12月から審議を続けている。委員会は、昨年10月に別の放送局の番組に対して出した意見書の審議の過程や結果が、それぞれの番組の制作過程にどのように反映されたのについても詳しく聞く必要があるとしてヒアリングを始めていて、この日の委員会ではその途中経過が報告されるとともに、今後の予定が説明された。 次回委員会には、意見書の構成案が提出される予定である。
以上