「一時金申請に関する取材・報道に対する申立て」審理入り決定
BPO放送人権委員会は、12月17日に開催した第276回委員会で上記申立てについて審理入りを決定した。
札幌テレビ(STV)は、今年4月26日の『どさんこワイド179』内のニュースで、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金支給等に関する法律」に基づいて一時金の申請を行った男性について報道した。
放送は、北海道における初めての申請であるとして、男性が家で申請書類を記入する様子や「裁判を続けていきたいけど、区切りを一つ一つやっていきたい」と話すインタビューのほか、タクシーで北海道庁に到着する映像などを放送し、ナレーションで男性が担当部署で職員と面談して申請手続きを行ったことなどを説明した。
これに対してこの男性はBPO放送人権委員会に申立書を提出し、その中で、記者が申請のための請求書を取り寄せ、必要な書類の準備を指示したうえ、「明日、申請に行きましょう」などと説明し、タクシーも手配したと指摘した。そのうえで、「一時金申請を希望していなかった申立人に対して、申請するよう働きかけた」と主張し、その結果、「不本意な申請をすることになり、これを広く報道され、申立人の名誉を毀損するとともに、法律専門家の援助を得る機会を与えない不利益を与えた」として、放送内容の訂正と謝罪を求めた。
一方、札幌テレビは、記者は申立人を1年以上にわたって取材を続け、申立人と良好な関係を築いてきたとして、「その信頼関係があったからこそ一時金申請の取材が可能となった。検証の結果、報道の内容は公正で、取材手続きも適正である」と反論している。
17日に開かれたBPO放送人権委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。
放送人権委員会の審理入りとは?
「放送によって人権を侵害された」などと申し立てられた苦情が、審理要件(*)を満たしていると判断したとき「審理入り」します。
ただし、「審理入り」したことがただちに、申立ての対象となった番組内容に問題があると委員会が判断したことを意味するものではありません。
* 委員会審理に必要な要件については、同委員会「運営規則 第5条」をご覧ください。