放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会  決定の通知と公表の記者会見

2019年10月7日

長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、10月7日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、鈴木嘉一委員長代行、高田昌幸委員の3人が出席し、長野放送からは取締役(編成・業務推進・放送番組審議会担当)ら2人が出席した。
神田委員長は委員会決定について、「民放連放送基準(92)や、当該基準を踏まえて民放連が策定した『番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項』の『視聴者に「広告放送」であると誤解されないよう、特に留意すべき事項』に照らした適正な考査が行われておらず、放送倫理違反があったと判断した」と説明した。続いて鈴木委員長代行が、「問題点と背景として、考査体制というシステムの不備だけでなく、局員の当事者意識の希薄さがあった」と述べ、高田委員が、「持ち込み番組とはいえ、放送の数日前まで内容を誰も把握していなかった」と発言した。これに対して長野放送は、「この意見書を真摯に受け止め、今後の放送活動に生かしていく。全社一丸となり再発防止に取り組んでいく」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には43社80人が出席した。
はじめに神田委員長が、「持ち込み番組の場合、放送局による考査が適正に行われたどうかが検証の対象となる。その前提として番組の放送倫理上の問題の有無について検討した。その結果、当該放送局の考査は、民放連放送基準(92)や、当該基準を踏まえて民放連が策定した『番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項』の『視聴者に「広告放送」であると誤解されないよう、特に留意すべき事項』に照らした適正な考査を行わず、当該番組を放送したことについて放送倫理違反があったと判断した」と説明し、さらに、「当該番組を『留意事項』に照らして判断したとき、視聴者に広告放送であると誤解される番組であると委員会は事実認定した。放送基準の解釈・運用については各放送事業者の自主・自律的な判断が尊重されるべきであり、広告に関する放送に当たっても、各放送事業者が、『留意事項』等に照らして、自主・自律的な判断をしていただきたい」と補足した。続いて鈴木委員長代行が、「今回第30号となる意見書の特徴は、端緒が視聴者からのメールであった点、初めて広告との関係を問うものである点、2年前の東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』に対する意見書に続き持ち込み番組の考査のありかたを問うものである点である。『ニュース女子』に対する意見書では考査のあり方に対する注意喚起を行ったが、現場に浸透しておらず残念である」と述べた。高田委員は、「関係者の当事者意識が薄かった。番組に対してそれぞれ関わった人たちが少しでも番組の内容に関心をもっていればこうしたことは起きなかったのではないか」と述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 改稿要請すべきところをせずに放送した結果、広告放送と誤解されたという結果になった。この点が放送倫理違反と結論づけられたということでよいか?
A: それで結構である。(鈴木委員長代行)
   
Q: 広告放送でなかったものが広告放送と見られたのがよくないということでよいか?
A: 広告放送であると判断しておらず、広告放送であると誤解される番組であるという判断をし、その前提に立って意見を述べている。(神田委員長)
   
Q: 番組は放送基準に抵触したのか?
A: 放送基準(92)「広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」を踏まえて、民放連の「番組内で消費・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」が規定され、その中の「2.視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」において、「視聴者に『広告放送』であると誤解を招くような内容・演出になっていないかを、総合的に判断する必要がある」と規定されている。今回の事案は、放送基準(92)を踏まえて規定された「留意事項」2の「広告放送であると誤解される番組」であったと判断し、放送基準(92)及び「留意事項」2に反しているという評価をした。(神田委員長)
   
Q: 『ニュース女子』に対する意見書の教訓が現場に浸透していなかったことについてどう受け止めるか?また浸透させるための課題は?
A: 当該意見書の教訓が現場に浸透していないとすれば、委員会全体としても極めて残念、遺憾だと受け止めている。当該放送局だけでなく放送局全体に刺さる意見書を書く工夫をしてきたが、今回のように持ち込み番組への考査の問題が短期間に繰り返されたとなると、意見書の工夫だけでは足りないところがあると思う。当委員会としても、意見書を出すだけではなく、放送局との意見交換の機会を増やし、これまでの様々な事例、意見書のエッセンスを上層部の方々だけでなく現場で制作に関わる方々に伝え、直接意見交換をし、よりよい放送をしてもらうために、放送倫理を常に意識して自主・自律的に議論、判断することが大切であるということを考える機会をもっと設けていきたいと考えている。(神田委員長)

以上