第272回 – 2019年8月
「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」事案のヒアリングと審理…など
議事の詳細
- 日時
- 2019年8月20日(火)午後3時~8時30分
- 場所
- 「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
- 議題
- 1.「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」事案ヒアリングと審理
2.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案審理
3. 審理要請案件「訴訟報道に関する元市議からの申立て」
4. その他 - 出席者
-
奥委員長、市川委員長代行、曽我部委員長代行、紙谷委員、城戸委員、二関委員、廣田委員、水野委員
1.「情報公開請求に基づく報道に対する申立て」事案
今年1月21日に秋田県内で放送された『NHKニュースこまち845』が対象。情報公開請求等によって明らかになった過去5年間の県内の国公立大学における教員のハラスメントによる処分に関するニュースを伝えた中で、匿名で、ある男性教員に対してハラスメントが認められ「訓告の処分を受けた」と報じた。この放送に対して男性教員が、氏名は公表されていないが、関係者には自分だと判断される内容であり、「不正確な情報を、あたかも実際に起きたかのように間違って報道された」と主張し、「大学で正常に勤務できない状況が作られた」として、NHKに謝罪を求めBPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対してNHKは、「情報公開請求で開示された内容を、各大学で改めて取材を行い、内容に誤りや変更がないことを確認した上で概要を説明した」と反論したうえで、「処分をされた教員は、いずれも匿名で、役職や年齢に触れていないなど、個人が特定できないよう、十分配慮している」と説明している。
第269回委員会において審理入りを決定し、今委員会では申立人とNHKに対してヒアリングを行った。申立人は、「在籍している大学のハラスメントを強調して伝えたことによって、特定の人間が割り出されてしまうという問題が生じた」と主張し、「学生との信頼関係が取れなくなっている」と述べた。
一方、被申立人のNHKは、秋田放送局の幹部らが出席し、「今回の報道は、県内の国公立大学のハラスメントの全体像を伝えることを主眼としたもので、個別案件を強調する意図はない」と主張するとともに、今回行った情報公開に基づく調査取材の過程を述べた。
ヒアリング終了後、本件事案の論点を踏まえて審理を行い、担当委員が決定文の起草に入ることになった。
2.「宗教団体会員からの肖像権等に関する申立て」事案
テレビ東京は2018年5月16日午後のニュース番組『ゆうがたサテライト』で、「教祖を失う可能性に揺らぐ教団の実態」としてオウム真理教の後継団体であるアレフを特集した。その中で、アレフ札幌道場前での申立人と取材記者とのやり取りを紹介した。申立人の顔にボカシをかけたが、音声の一部が加工されないまま放送された。
アレフ会員である申立人は、肖像権とプライバシーの侵害を訴え、テレビ東京に対し謝罪と映像の消去などを求めて、BPO放送人権委員会に申立てを行った。
これに対しテレビ東京は、「アレフは団体規制法に基づく観察処分の対象であり、報道には公益性がある」と主張。プライバシー保護については「顔にボカシを入れ、氏名の公表もしておらず、必要かつ十分な配慮を行った」としている。
委員会は、第271回委員会で、運営規則の要件を満たしているとして審理入りを決定した。今委員会では、これまでに両者から提出されている書面をもとに論点などについて意見を交わした。
3. 審理要請案件「訴訟報道に関する元市議からの申立て」
テレビ埼玉は、2019年4月11日午後の『News545』内で、元市議が提訴した損害賠償訴訟のニュースを放送した。放送は、「元市議セクハラ訴訟 被害女性職員 請求棄却求める」とタイトルスーパーを表示し、経緯の説明の中で「(議会)第三者委員会が調査をした結果、5つの行為がセクハラやパワハラにあたると認定され、元市議は去年10月に議員を辞職しました」と伝えた。
申立人は、ハラスメントそのものを「身に覚えのないこと」と主張したうえで、「申立人が提訴した裁判であるのに、申立人がセクハラを訴えられたような印象を与え名誉を損なわれた」と訴えた。また、経緯の説明の中で、実際には第三者委員会の認定前に辞職しているのに、「第三者委員会にパワハラを認定されたことから議員を辞職した印象を与え、視聴者に誤解を与えた」などと主張した。そのうえで申立人は、「元市議セクハラ訴訟」という名称をやめることや誤解を与える放送をしたことについて訂正と謝罪等を求めて申し立てた。
これに対してテレビ埼玉は、放送では「被害を訴えた職員を相手取った裁判」と明記していることや、申立人代理人が報道各社に配布した訴状から「セクハラの有無が裁判の争点となると判断した」ことを挙げ、「名誉を損なうとか、放送倫理に反するとは考えていない」と反論している。また、テレビ埼玉は、「言葉の順番が違うことで誤解を招きかねない懸念が残る」と判断し、当該放送のあった日の午後9時半のニュースで修正した内容で放送したほか、市議会選挙直後の4月22日の『News545』の中でお詫びと訂正を行っている。
20日に開かれたBPO放送人権委員会は、運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らして、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。次回委員会から実質審理に入る。
4. その他
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申立ての状況について事務局より報告があり、関連して委員の間で意見交換が行われた。
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次回委員会は9月17日に開かれる。
以上