2025年7月24日

2025年度「中高生モニター会議」

◆概要◆

2025年7月24日に東京渋谷のNHKで中高生モニター会議が開催されました。中高生モニター会議は中高生モニターが実際に放送局を訪れ、通常は見られない局内の見学や、番組制作者との触れ合い、委員との意見交換会など、多くの経験ができるとともにメディアリテラシーを涵養(かんよう)する貴重な場です。今後もテレビのファンとして、さらには将来のテレビ視聴者の柱となってもらえればと、青少年委員会では中高生モニター会議を毎年開催しています。
今回は今年度の中高生モニター17名と、BPOからは大日向雅美理事長と青少年委員会の吉永みち子委員長、飯田豊副委員長、池田雅子委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員の7人の委員全員が参加しました。
オリエンテーションのあと、モニターと委員ら参加者は4班に分かれ、NHKの局内を見学しました。『あさイチ』のスタジオ見学では、実際に出演者が座る予定のスタジオセットの椅子にモニターたちも腰掛ける体験をし、大晦日の『NHK紅白歌合戦』の会場でもあるNHKホールの見学では、その大きさと迫力に圧倒されていました。また、たくさんのモニター機器が並ぶニュースセンターの見学では、ニューススタジオの案内・説明をしてくれたのは副島萌生アナウンサー(以下、副島アナ)と森下絵理香アナウンサーで、日頃ニュース番組で見慣れた顔の二人ということもあり、中高生モニターたちの喜びもひとしおでした。 この日の昼食は局内の食堂でいただいたことも、なかなか体験できない貴重なものとなりました。
戦後80年にあたる今回は『被爆体験を伝えるVR』をテーマに中高生モニターと番組制作者との交流の場が持たれました。NHKの横井秀信チーフプロデューサー(以下、横井CP)、大海寛嗣チーフディレクター(以下、大海CD)、ニューススタジオを案内してくれた副島アナにご参加いただき、中学生のときに広島で被爆した兒玉光雄さんの被爆経験をもとに作成されたバーチャルリアルティーの映像の制作についての詳細と苦労話を聞いたのち、モニターたちが実際にVRゴーグルを覗いてこのコンテンツの視聴体験をし、質疑応答が行われました。
会議の後半は中高生モニターと青少年委員会委員との意見交換が行われました。それぞれの自己紹介のあと、まずは「戦争に関する報道・番組について考えること」「こんなテーマを扱ってほしい」「こういう番組は視聴したくない」などをテーマに、そのあとは「今のテレビ・ラジオ業界についてどう感じていますか?」「今後の放送業界について、こうあってほしい」「こうしてほしい」などをテーマに、活発な意見交換をしました。

第1部 『被爆体験を伝えるVR』制作者との意見交換会

番組制作の説明とVR視聴体験

○横井CP NHKでプロデューサーという仕事をしています、横井です。今日はVRを見ていただきますが、どうしてVR制作に至ったのかも含めて番組制作についてお話して、皆さんからの質問にお答えしたいと思います。この仕事に関心を持ってもらったり、視聴者の立場で放送をどうしていくかを考えていただいたりすることは、我々にとっても大事なことなので、いろいろな意見を遠慮なく聞かせてください。

【横井CP 自己紹介】
簡単に自己紹介をします。私はもう25年ぐらいこの仕事をしています。1999年にディレクターとして広島放送局に赴任し、原爆で被爆された方の番組などを制作していました。2005年に東京に来たあとは、当時はチェルノブイリ原発事故から20年たっていたのでその番組を制作するなど、割と社会的な番組を制作するようになりました。当時問題になっていた「ワーキングプア」、当時の時給は1,000円以下だったのでどんなにたくさん働いてもなかなか豊かになれない、そんな問題を取り上げました。2017年に大阪放送局に行ってからはプロデューサーとして、インパール作戦という戦争の番組や在日コリアンの番組、部落問題、今はトクリュウと呼ばれるオレオレ詐欺をやっている人たちに関する番組なども制作しました。2020年に東京に戻ってからは戦争関連の番組ばかり制作しています。
ディレクターとプロデューサーで何が違うのかというと、ディレクターは日々取材に行ったり撮影をしたり、現場に行っている人たちです。プロデューサーは番組の大方針を決めたり方向性を一緒に考えたり、番組制作の最後に「こうしたほうがもっと伝わるんじゃないか」とナレーション原稿を一緒に考えたり、割とチェックしたり確認したりする仕事です。私は2014年からプロデューサーの仕事をしています。

【番組に出演した兒玉光雄(こだまみつお)さんとの出会い】
この仕事の一番の魅力は、なかなか普段会えない人や、本当に素敵な人に出会えることです。広島にいた2005年にVRに出演している兒玉光雄さんに出会ったのは、私にとってすごく大きな出会いでした。兒玉さんは1932年生まれで5年前に亡くなってしまいましたが、孫ほど歳が離れた私と、一緒に食事したりお酒を飲んだりという付き合いがありました。NHKに入局して広島や長崎、沖縄に赴任すると、やはり原爆や戦争が大きなテーマになります。私が赴任したときは「最初に被爆者のお話を聞きに行きなさい」と上司からアドバイスを受けました。とにかく被爆者をきちんと取材をすることが最初の仕事であり、最も大事な仕事となるわけです。
兒玉さんは中学校1年生、12歳の時に広島の中学校で被爆しました。爆心地から850メートルでした。原爆は「爆風」「熱線」「放射線」によって体に3つの大きなダメージを与えますが、校舎外で熱線を浴びた同級生は大やけどを負い、爆風で校舎が倒れ、兒玉さん御自身も4,600ミリシーベルトというとてつもない放射線を浴びました。現在は一般の方は年間1ミリシーベルトが限度だとされていますが、その4,600倍の放射線を一気に浴びたわけですね。307人いた同級生のうち288人を失いました。逃げるときには「助けてくれ」と知らない女性に足をつかまれたが、どうしようもなくて振り払ってしまったと。体にもものすごいダメージがあったわけですけども、生き残った罪悪感だとか多くの負傷者を見た心の傷も、ずっと抱えて生きてこられたわけです。けれども兒玉さんは60歳ぐらいまでは被爆についてほとんど語らずに生きてきました。やっぱりそういうことを考えたくない、考えると自分の心がおかしくなってしまうので考えずに生きて、とにかく仕事を頑張ろう、次の未来を明るくしよう、と必死に頑張ってこられました。でも60歳の頃に運命が変わることが起きてしまいます。
先ほど「兒玉さんは4,600ミリシーベルトの放射線を浴びた」と言いましたが、がんが体中にできるようになるんです。兒玉さんは実に22回、がんの手術をしています。昔は60歳が定年だったので、やっと第二の人生だと思っていたらすぐに直腸がんになって、直腸がんが良くなったと思ったら胃がんになって、7年たって甲状腺がんになって、85歳で腎臓がんになって、最期は腎臓がんで亡くなりました。がんがどこかにできて移ってしまうことを“転移”と言いますが、兒玉さんのがんは転移ではなく、それぞれの場所でがんが発症していました。体中に放射線を浴びていたので、いろいろな臓器の細胞が傷ついてしまったんですね。
私は兒玉さんが70歳を過ぎたときに出会ったんですけども、兒玉さんはくよくよしたり、つらいと言ったりすることが一切ない人でした。一緒にお酒を飲もう、ワインを飲もう、おいしいチーズがある、そういうことばかり。とにかくエネルギーにあふれている方で、どうしたらこうなるんだろうと思ったんです。それが、私の人生にとってとても大きな出会いでした。
「兒玉さんの同級生307人のうち288人が亡くなった」と言いましたが、生き残った19人も早い方は高校生のときに亡くなっているし、1人は大学生のとき、1人は30代で、3人は40代で亡くなっていて、とにかくどんどん亡くなっていました。兒玉さんは自分だけが取り残されているという思いがあって、やはり同級生のことや原爆のことを伝えていかなきゃいけないと、私の取材にもすごく積極的に応じてくださったんです。それで制作したのが『被爆者 命の記録』という20年前の番組です。私自身がさらに取材をして書籍にしましたが、実はこれには悲しい経緯があって、2017年に兒玉さんに腎臓がんが見つかって私のところに電話があり「もうあと2年しか生きられないと言われたんだけれどどうしようか」と言われて、「それなら何か形に残るものを一緒にやりましょう」ということで2019年の秋に本を出すことができました。兒玉さんはその翌年に亡くなりました。
こういう方と出会って時間を共有し、いろんなことを学んだりできるというのは、この仕事の素晴らしい一面じゃないかなと思っています。

【VRの制作について】
基本的に私たちは戦争体験者の方に話を聞いて、取材をして、撮影させてもらって番組にしてきましたが、戦争体験者はどんどん亡くなってしまっているわけですよね。だから、番組の作り方を変えていかなければならない。そういった問題意識を持っていたところ「VRで戦争を伝えることができないか」という話が2023年1月に私のところにきました。しかし私は正直に言って「勘弁してほしいな」と思いました。というのも取材や考証が大変過ぎるというか、360度すべての世界を作るのはどうやるのかと。
ここからは他の番組のプロセスと一緒ですが、とにかく兒玉さんの体験がどうだったのかもう一度調べました。当時の中学校はどうだったか、中学生は何をやっていたのか、教室はどんなところだったのか、制服はどうだったか、持ち物はどうだったか、当時のプールはどういうものだったのか…ありとあらゆることを調査しました。これは面白くもあり苦痛でもあるのですが、とにかくいろいろな写真や証言を集めて立体的にしていく。それから被爆の被害はどういうものだったのか、いま一度調べるわけです。医師や、爆風の研究をしている研究者、火災の研究者、建物の研究者とかに話を聞いて調べていきます。
この取材を少し詳しく言うと、本当にただ調べる、フィールドワークみたいなものです。例えば、原爆の影響を調べるためにアメリカが原爆投下2週間前に撮影した広島の航空写真から当時の街のことを調べたり、広島一中で被爆した19人のうちの十数人が残している記録を調べて、教室で被爆前に誰がどこにいてどんな話をしていたのか全部確認していったりしました。また、美術を学ぶ高校生に兒玉さんが自分の体験を絵にしてもらったときの指示書からも、当時の様子を洗い出していきました。
そしてこの取材結果を脚本家が脚本にしてくれました。番組は一つの“ストーリー”になっていないとなかなか心に響かないのですが、今回の場合は脚本家に書いてもらいました。この“ストーリー”は“うそ”ということではなくて、ノンフィクション、事実を基にしたストーリーを作っていただくということです。それをどう映像で表現していくのかというと、「この場合は3Dカメラを使いましょう」「CGを使いましょう」「痛々しいやけどのシーンがあるので特殊メイクも必要かな」と考えていきます。去年のちょうど今頃ロケをして、撮影したものを基にどうプレゼンテーションしていくか構成して、音響を作っていって、皆さんの目の前にあるヘッドマウントディスプレーに実装して、最終的に見ることができる形になりました。

【VRの視聴】
2年かけて制作したのが、皆さんに見ていただくVRです。もちろん悲惨なものを見せたいと制作したわけではなく、苦手だという人は頑張って見る必要はありません。ただ私の思いとしては、もう亡くなってしまった兒玉さんのことを少しでも多くの人に知ってもらいたい。19分くらいありますが、ご覧ください。

1945年8月6日、原爆が投下された広島を舞台にしたVR動画。校舎にいた生徒たちの多くが命を落とすなか、奇跡的に生還し、のちに証言を続けた兒玉光雄さんの視点から、“原爆投下当日”の出来事を追体験しました。

モニターからの質問

  • Q.(中学3年・男子・大分) 取材しても詳細が分からないとか、いまいち曖昧だったときは、番組の制作はどうしているのですか。

  • A.(横井CP) 実際は分からないことはたくさんあるので、勇気を持って「伝えない」ということになります。分かっている事実を伝えるのが基本なので、一生懸命取材は尽くすんですけども、分からないところはしっかりと「ここまでしか分かりませんでした」と言うことがとても大事だと思っています。歯がゆい思いをすることもありますけども、伝えないことも大事だと思っています。

  • Q.(高校1年・女子・愛知) 被爆者にインタビューするときに、気をつけていたことはありますか。

  • A.(横井CP) とても大事な質問だなと思います。被爆者の取材のときに限らず「知った気にならない」ということがとても大事だと思っています。いろいろ取材していると、いつの間にか知っているような気持ちになってしまって、大事なことを聞けないということがあります。きちっとゼロから語ってもらうというか、その人が本当に伝えたいことを聞き出す。だから質問はものすごく丁寧に、ロケの間は眠れなくなってしまうぐらい考えます。質問項目を考えて、こういう答えがあったら次はこれを聞こうとか、すごく気をつけて考えます。あらゆる取材で、人や社会はすごく多様で深くて多面性があるから、自分が見ているものは、その人のごく一部だと思うんです。だから自分自身をいさめて謙虚になって、きちっとお話を聞くことが一番大事で、また難しいことかなと思います。

  • Q.(高校2年・女子・神奈川) 取材する上で一番大変だったこと、苦労したのはどういう話題ですか。

  • A.(横井CP) 26歳ぐらいのとき、韓国の被爆者の方が取材している途中で亡くなってしまいました。それを記録しなければいけないのがとてもつらくて、この仕事って何なんだろうとか、もう辞めたいなとか思いました。それは押しつぶされそうな体験で、ずっと一番つらい思い出になっています。ですが、その韓国の被爆者の奥様がとても感謝してくださって、取材が終わった後も韓国にいらっしゃいと言ってくれて、それですぐ「明日から頑張ろう」と思えたわけではないのですが、少しずつ、自分のやってきたことにも何らかの意味があるのかもしれないなと思えて。そうしたら25年ぐらい続いちゃったという感じです。

  • Q.(高校3年・男子・福島) 戦争特番に限らず、教育とか福祉とか、見る人が少ないけれど必要な番組を日々制作していると思います。でも見てもらったり聞いてもらってなんぼじゃないですか。番組制作で心がけていることはありますか。

  • A.(横井CP) そのとおりで本当に胃が痛いです。戦争の番組って視聴率的には本当に厳しいです。僕が大学生だった頃は身近な映像メディアはほぼテレビしかなかったので見られていましたが、今はいろいろな選択肢が増えたなかで視聴されなくなっている面もあります。人が亡くなるシーンでは「もう見たくない」となることもあるので、そこは本当に工夫しなければいけないところだと思います。もう一つ、NHKの役割は “記録” です。今インターネットで「証言アーカイブス」を公開していて、そこには無数の戦争体験者のインタビューがそのまま収められていますけども、ほぼ全員亡くなっていてもう二度と撮れません。それをきちんと記録する務めもあると思っています。私はいろんな番組があっていいと思っていて、ドラマやアニメのように見てもらうことを大事にする番組もあれば、記録番組もあるし、その中間もあると思います。そういう番組を多様に放送していけたらいいなと思っています。

<NHKアナウンサーへの質問>

  • ○NHK担当者 本日ニューススタジオの案内をした副島萌生アナウンサーにも、質問があればどうぞ。

  • Q.(中学3年・男子・大分) テレビに出演するときは全国の人が見ているから緊張すると思いますが、緊張はどうやってほぐしていますか。

  • A.(副島アナ) やはりアナウンサーも緊張します。「緊張しないように」と思うと余計緊張するので、「私はいま緊張しているな」と受け入れているうちに、少しずつその空気に慣れていく…という感覚が近いです。

  • Q.(中学2年・女子・東京) アナウンサーはニュースや台本を事前にチェックして覚えるのですか。

  • A.(副島アナ) 『NHKニュース7』の放送前には、パソコン上にある原稿をチェックはしますが、実際に原稿が紙でスタジオに入ってくるときには変わっていたり、増えていたり、初めて見る原稿もあります。『ニュース7』では基本的に原稿を覚えて話すことはなく、今日のスタジオ見学で紹介したプロンプター(アナウンサーをカメラ目線で撮影するために、カメラレンズの前に設置したガラス板に文字を表示させる装置のこと)に映っている原稿を読みます。一方で、例えば中継でアナウンサーが特産品を紹介するときのコメントなどは、自分で覚えて話していることがほとんどです。

  • A.(横井CP) 『ニュース7』は、アナウンサーの手元に原稿が届く放送ぎりぎりまで制作をしているケースが多いです。

  • A.(副島アナ) アナウンサーは2人いますが、1人が読んでいるときにもう片方が次の原稿読んで、読んだらまた次の原稿、と。事前に1本も読まないでスタジオに入ったこともあります。

  • Q.(中学2年・女子・千葉) アナウンサーの仕事でやりがいを感じるときはどんなときですか。

  • A.(副島アナ) ディレクターも同じだと思いますが、世界が広がるなと思うときです。私は青森出身ですが、九州の大分県に赴任して、その後名古屋に行ってと、それまで全く縁もゆかりもないところに行って「日本にはこういう文化があるんだ」と知りました。またスポーツキャスターを5年ぐらい担当してスポーツをすごく好きになりました。自分が知らなかった世界に触れたときに、自分の人生が豊かになっているなと感じることがあって、それを見てくださる人にも共有できたらいいなというところが、またやりがいになっています。

  • Q.(中学3年・男子・東京) NHKは記者もアナウンサーも地方局に何回か転勤するイメージがあります。転勤が多い仕事をプラスに受け止める人もいればマイナスに受け止める人もいますが、NHKにどういった心構えで入局したのかを知りたいです。

  • A.(NHK記者) 仕事を通じてその地域を詳しく知ることが結構あって、出身地よりも赴任した土地のほうがより深く入れて面白いなと感じます。東京で大きな仕事をしたいという気持ちもありますが、地方の現場でより深く仕事したいという思いがありました。

  • A.(副島アナ) そこまでの心構えはなかったかもしれないというのが正直なところですね。でも地方局に赴任して感じるのは今の話にあった通りです。私は青森県弘前市出身で弘前市のことは知っているけど、青森県全体については深くは知らない。でも赴任先の大分県は全市町村へ行ったことがあって、おそらく青森のことよりも深く知っています。全国各地の情報を伝えるなかで、大分だったり東海地方だったり、少しでも馴染みがある場所のニュースはキャスターとして感想を伝える際など親近感を持って伝えられる部分もあります。全国のニュースを届ける上でも重要だと思っています。

  • ○NHK担当者 制作者との交流はこれで終了です。


第2部 BPO青少年委員と中学生モニターとの意見交換会

【テーマ1】「戦争に関する報道・番組について考えること」

  • ○飯田副委員長 ここからはモニターの皆さんと我々委員との意見交換会です。最初のテーマ「戦争に関する報道·番組について考えること」に関して、皆さんが考えていることをお聞かせください。

  • ○(高校1年·女子·愛媛) 戦後80年たって今の日本には戦争はないけれど、一歩世界に出たらまだ戦争を続けている国があるから、日本だけでなく世界でお互いに多様性を認めた上で「戦争をしても何も得るものはないし、失うものの方が大きい」としっかり理解するのが大事だと思います。私の母方の曾祖父は戦争を経験していますが、30代の前半に亡くなった過去があるので、なおさら戦争はよくないという気持ちが強いです。戦争をしても得るものがないことを全世界が共通して理解しておかないと、戦争はなくならないと思います。

  • ○(高校3年·女子·広島) 私は広島の高校に通っていますが、出身は兵庫県です。

  • ○飯田副委員長 広島の高校に通うようになって、雰囲気の違いなどは感じますか。

  • ○(高校3年·女子·広島) 小学校とか中学校のときに原爆資料館に行った子が多かったり、価値観が少し違ったりするなと感じます。

  • ○飯田副委員長 山縣先生は広島県出身ですね。

  • ○山縣委員 私の父親は被爆者です。私は被爆二世で高校生の頃まではずっと健康診断を受けていましたが、他人事というか、もう戦争は終わっているという感じでしたから、被爆二世だという実感はあまりなかったです。広島でも「戦争に関する生々しいものを映像で見たくないから文字だけにしてよ」派と、「やっぱり見るべきだ」派の人が存在します。私は「見るべきだ」派で、自分でも様々な資料を見てきたし話を聞いたりしたけれども、ただ見るだけでもやはり伝わらない。世界で戦争が起こっていることに一生懸命関心を持ってみようとするけれども、安全なところに自分の居場所を置きながら感じている。若い人たちがそれをどう思っているのか、どこまで戦争が起きていることを実感できているかに、すごく興味がありますね。

【グロテスクな映像表現について】

  • ○飯田副委員長 夏になると終戦番組や戦争関連番組が増えてくるわけですが、若い皆さんがそれをどう受け止め、どう思っているのかをぜひお聞きしたいです。事前アンケートには「悲惨なシーン、グロテスクなシーンはあまり見たくない」と書いた方がすごく多かったです。少し踏み込んだ回答をしていた方にお話をしてもらいましょう。最初の方は「学校で戦争特集の映像を見た。悲惨なシーンがあったが、戦争の実態を知り後世に伝えることが大切だと思うから、悲惨なシーンも取り上げるべきだと思う。また、いろいろな国の視点で戦争をひもとく番組があったら見たいと思う」と書いていましたね。

  • ○(中学2年·男子·東京) 映像を見てどう感じるかは人によって違うから、昔起こったことの重大さを知って、今を生きるほうがいいと思いました。

  • ○(中学2年·女子·東京) 若い人はグロテスクなシーンを見た経験があまりないと思うので、そういうシーンを見ると「やっぱり戦争の映像は見たくない」と感じて、どんどん戦争から目を背けるきっかけにもなってしまうと思います。グロテスクなシーンを避けた上で、戦争はこういうものだとしっかり伝えていくのがいいと思いました。

  • ○佐々木委員 悲惨なシーンの一つに「身体分離(全身がバラバラになるなど)」があります。私はゲームソフトのレーティング基準に関する会議にも関わっていて、そういったシーンは青少年には絶対見せてはいけないという話をしますが、戦争のシーンでは出てきますよね。ただ大人と子どもとでは考えが違って、大人には「実際に起こったことなのだから知るべきだ」という考えもありますが、子どもたちの中に「そういうシーンは見たくない」という意見もあって当然です。私たちは本能的に死にたくないので、そういった恐ろしいものや怖いものを本能的に避けようとする心理があるし、正常な反応だと思います。

  • ○池田委員 例えばNHKの『映像の世紀シリーズ』には、人が亡くなったシーンが出てきますよね。どう思いますか。

  • ○(中学2年·男子·群馬) 特別見たいわけではないですが、『映像の世紀シリーズ』は、モノクロの映像だとちょうどバランスが取れていると思います。

  • ○佐々木委員 ではアニメとか漫画のような表現のほうが良い人はどのくらいいますか。

      • —-挙手—-
  • ○佐々木委員 なるほど半数以下ですね。生映像も見るべきだと思っておられる人の方が多いですね。

  • ○飯田副委員長 「モノクロ映像だからちょうどいい」というのは新鮮な意見ですね。モノクロだと戦争の悲惨さが伝わらないという理由で、AIでカラー映像化するプロジェクトがあったりもしますが、モノクロのほうがいいという考え方もあるのですね。

  • ○吉永委員長 アニメ映画『鬼滅の刃』にも、首が飛んだり、血が飛び散ったりする悲惨なシーンは幾らでもありますが、あまり皆さん拒否感がなく、小さい子どもまでもが映画を見に行きますよね。やはりアニメは「作りものだから」と受け入れていて、戦争は「実際に起きたことだから見るのは嫌だ」という心理なのでしょう。カラーとモノクロではインパクトは大分違いますが、モノクロ映像でも戦争の悲惨さは十分に伝わるということなんですね。

  • ○佐々木委員 私は「始まる前にボタンを押しておくと、残虐なシーンは白黒になる(またはアニメーションになる)」など、将来的にそういうテクノロジーが可能になるとよいなと思います。

  • ○飯田副委員長 大人の話を聞いていて、中高生の皆さんから何かご意見はありますか。

  • ○(中学3年·男子·東京) 例えば『映像の世紀バタフライエフェクト』には戦争の残虐なシーンが本当に多いじゃないですか。それは必要だとは思いますが、いやだと感じる人がそのシーンのせいで番組を見ないのならば、きちんと伝えられていないとも思います。YouTubeと同じように、何分飛ばしたらこのシーンに飛ぶ、というのをテレビでもやればよいと思いました。

  • ○飯田副委員長 たくさんの人に見てもらえる番組にするのか、それとも制作の意図を追求するのか、そのバランスは制作者の方も悩まれているのだろうと思いますね。

【有名人の番組出演について】

  • ○佐々木委員 皆さんの毎月のモニター報告を読んでいると「有名人が出演する番組を視聴する」という感想が多くあります。例えば戦争映画に横浜流星さんとかが出演するとしたら、そういう効果をどう思いますか。

  • ○(高校2年·女子·神奈川) 『国宝』という映画を横浜流星さん目当てで見に行く人が今周りにすごく多いです。どんなストーリーだったのか感想を聞くとだいたい「横浜流星さんがかっこよくて…」から始まるのですが、逆にいえば伝統芸能がテーマの映画を見る気のなかった人たちも呼び寄せたのだなと感じました。そういう観点では、戦争番組に有名人を出して、「これまで見たことはなかったけれど勉強になった」と思う人が増えるのもいいやり方なのかなと思います。

【テーマ2】「今のテレビやラジオについて、どう感じていますか」

  • ○飯田副委員長 それでは意見交換の2つ目のテーマです。事前アンケートではコンプライアンスなどに関する意見が多く、例えば「失敗した芸能人にもう一度出演のチャンスを与えてほしい」と書いた人もいました。

【“過去に悪いことをした人”の出演について】

  • ○(中学2年·男子·東京) 現在出演しなくなった人の昔の番組を見て、演技力がすごくてとても人気だったのだと思うと、もったいないなと思って。もう一度出演したら改心するかもしれないので、チャンスを与えてほしいです。

  • ○髙橋委員 同感です。一度悪いことをすると社会に復帰できないとなると、更生のチャンスがなくなってまた悪いところにつながるという悪い連鎖になってしまうので、社会復帰のチャンスはあるほうがよいと私も思います。一方で、かつて悪いことをした人が地上波の番組に出演するとネット上ですごくバッシングされて、それが世の中一般の意見のように見えることもあります。多くの人の意見なのか、ごく一部の意見なのか、その見極めと向き合いが難しいなと感じます。

【ネットやSNSとの関わりについて】

  • ○(高校1年·女子·秋田) ニュース番組の中で、ネットやSNSに上がっているコメントを「世間の声」として紹介することがよくありますが、「ネットの声=世間の声」ではないと思います。「世間の声」は街に出て街の人に質問して得られるものだと思うし、ネットの声を信用し過ぎているなと思います。

  • (中学1年·女子·東京) 友達と最近「出演者や番組内容がどれも似ている」と話しているときに、地上波の話は出なくてYouTubeの話ばかりでついていけなくて困っています。

  • ○(高校2年·女子·神奈川) ネットでバズっている動画をほぼそのまま切り抜いて紹介し、その動画を見る芸能人の反応を楽しむような番組が結構あります。それってテレビの役割を完全に放棄しているというか、そもそも海外の動画の許可をどう取っているのかよく分からないし、YouTubeやインスタを見れば誰でも見られる動画を拾ってくるだけでいいのだろうかと思います。

  • ○BPO事務局 海外の“おもしろ映像集”などは、YouTubeなどから勝手に取ってきているのではなくて、テレビ局の担当者が海外の市場に行って権利を買っています。また海外まで行かなくても、日本の制作会社などが権利を買ってきて日本の放送局に売るというビジネスもあります。例えばデーブ·スペクターさんの会社ではそういうのをいっぱい扱っています。デーブ·スペクターさんの会社から権利を買って放送している場合もたくさんあります。

  • ○飯田副委員長 「テレビ局がやらなくてもよいのでは」と皆さんは思っているかもしれませんね。逆に日本で作られたテレビ番組が、別の会社を介して海外で視聴されることもあります。

【政治関連の番組ついて】

  • ○(高校1年·女子·岡山) 私が知っている政治番組は若い人や有名人が出演するイメージがなくて、専門家や評論家が多く出演しています。政治関連の番組にYouTuberやインフルエンサーやアイドルが出演すれば、もう少し若い人の関心が得られるし、意見も聞けると思います。

  • ○吉永委員長 政治の番組でも経済の番組でも、いちいち辞書を引かないと言葉の意味が分からないことはありますよね。専門家が作れば作るほど「みんな知っていて当然だよね」というレベルが高くなってしまって、私たちがそのレベルにたどり着けないということが起きていると思います。そこは番組の制作者も気をつけたほうがよいのかな。入り口のところで基礎知識をきちんと知ると興味を持てると思うので、入り口をいろんな形で広げていって、その先に行けるような仕組みが欲しいですね。

【番組表について】

  • ○(高校1年·女子·熊本) 小さい頃は新聞のテレビ欄を一番に見て、そこから見たい番組に印をつけて一日楽しみにしていましたが、最近新聞の購読をやめてからはどんな番組があるのかを知らなくなって、テレビ視聴時間も減ってしまいました。私の家に限ったことかもしれませんが、新聞の購読はテレビの視聴時間に直結していると思います。

  • ○飯田副委員長 これは「テレビ離れ」の本質ではないかと、僕も実は前から同じことを思っています。テレビ画面でも番組表(EPG)が見られますが、一覧性がないから新聞のテレビ欄と比べると見落としも多くなるし、(ウェブの)検索で網羅できるかというとそれも難しいですよね。紙の新聞のインターフェースに代わるものはないなと感じています。

【テレビ局が薦める「青少年へのおすすめ番組」について】

  • ○BPO事務局 「青少年へのおすすめ番組」は毎月各放送局が自局の番組の中から選んでいるもので、BPOのウェブサイトに載せて紹介しています。「青少年へのおすすめ番組」の仕組み自体はBPOが発足する前からあって、1990年代後半、テレビの残虐なシーンが子どもたちに悪い影響を与えているのではないかという批判がすごく高まった時期に、若い人たちに見てもらいたい番組を放送局から主体的に情報提供していこうと決めてできた仕組みです。
    モニター報告はすべて番組を制作した放送局に送っていて、皆さんの指摘や感想を受け取った制作現場はとても喜んでいます。特に地方の放送局では、若い世代に特化したモニター制度を運用しているところは少ないようなので、地元の放送や配信サイトで視聴した地方局制作番組の感想は、とても喜ばれています。

モニターからの質問

  • ○(中学3年·男子·東京) テレビのニュースやワイドショーに関して、SNSでよく「その情報は正しいのか」と疑う声をみます。情報の信憑性はどうやって確保しているのでしょうか。

  • ○BPO事務局 去年までNHKで報道の仕事をしていて、今年の春、民放とNHKに入社したばかりの新人に研修をしましたが、そこでお話した4つのことを紹介します。1つ目は、放送局には誰に対しても責任を負っていて、何か問われたときにはその根拠を答えなければいけないという責任をもって放送を出しています。2つ目は、放送局は事実を伝えるということです。真実と事実というのは違って、「自分はこう思う」という真実は人の数だけありますが、放送局は一つの事実を多角的に伝える。事実以外のことを伝えてはいけません。3つ目は、放送局は誠実でないといけません。取材相手に嘘を言って話を聞き出してはいけませんし、取材相手が本当に言いたいことを曲げてインタビューを編集してはいけません。4つ目は、放送局は議論をして番組を作る場だということです。放送局にはいろいろなタイプの人がいますが、大切なのは独りよがりにならないこと、つまりみんなで議論することです。この4つは放送局の特徴であって、関わる人すべてが大切にしなければいけないことです。

  • ○(中学2年·男子·東京) 人工知能の生成AIが成長することで、モデルや俳優の仕事も変わり、テレビの在り方も変わると思いますが、そういった事態にはどう対応していくのですか。

  • ○飯田副委員長 難しい質問ですね。AIはたくさん物事をインプットして一番それらしい答えを出すので、人に分かりやすく説明する文章づくりやニュース原稿を読むことなどはAIにやってもらってもいいと思います。ただ先ほどの話にあった、誠実な姿勢で取材先から事実を受け取って、それを多角的に議論して、責任を持って視聴者に届けるという部分は、AIにはできないですよね。なぜかというとAIは考えないから。AIは自分の話したことが事実かどうかは考えないし、教えてくれた人に対して誠実に対応しようとも思わないし、議論もしない。日常業務をAIでやれる部分は大きいかもしれないので、その分、放送局の人は新しいものを生み出す仕事ができるようになりますよね。

  • ○BPO事務局 人を「美しい」と思う基準って、例えば顔のパーツが線対称に近いとか体のバランスが“黄金比”に近いとか、分かりやすいものがあります。だから見た目に美しいモデルや俳優は、生成AIで簡単につくれると思います。ただ先日、弁護士である池田委員とお話していたときに「弁護士の仕事においても、法律的に正確なことや事実に基づいたことを即座に答えるのはきっとAIのほうが優秀だが、この弁護士の人に話を聞いてほしいという人の気持ちは絶対になくならないと思う」と言われてハッとしました。生成AIでつくられたモデルや俳優に私たちが憧れるかというと、必ずしもそうではないのではないか。生身の人間って人間くさかったりちょっと抜けていたりするけれど、それでもなんだか美しかったり、かっこよかったり、味があったり…。モデルや俳優や放送局も、美しいものだけを追い求める世界ではないから、これからも変わらない仕事はあるとも思います。

  • ○池田委員 法律相談でもテレビのコメンテーターでも、生成AIはきっと正しい知識に基づいて完璧な発言をするようにはなると思います。吉永委員長もテレビ番組のコメンテーターとして毎週出演していますが、吉永委員長が出演するから見たくなる、吉永委員長が話す内容だから聞きたくなるのだなと、改めて思いました。

吉永委員長のまとめ

  • ○吉永委員長 今日は、朝10時から午後4時までという大変長い時間となりました。今日は日本で一番大きなNHKの現場を見せていただきましたが、放送業界ではこんなにもたくさんの人が事実を伝えたいと頑張っている現状を、皆さんにも分かっていただけたと思います。今は新聞やテレビなどの既存メディアに逆風が吹いていて「もう既存メディアは信用できない」という声もあります。では何を信用しているかというと、事実の確認も自由で言いたいことが言える、“一人放送局”ともいえるYouTubeのほうが膨大な情報が耳に入ってくるから未来がある、といった考えが出てきているのでしょう。これから生成AIが進歩するとますます便利になって、頭を使わなくて済んでしまうかもしれませんが、人間が唯一AIに勝てること、それは「考えること」だと思います。いろいろな情報が皆さんの目にも耳にも洪水のように入ってくると思いますが、そこで少し立ち止まって、「これは一体何を伝えようとしているのか」「この背景に何があるのか」と、ぜひ自分の頭で考えてほしいです。もう一つは、やっぱり周りの人としゃべってほしいな。戦争の報道を見て「何でこんなことになっているのだろう」と友達と話す、これもAI同士ではできないことです。AIにできないことを、ぜひ意識的に心がけていってほしいと思います。そして、皆さんとは中高生モニターに参加していただいて御縁ができました。テレビ業界はこんなに頑張っている人がたくさんいて、事実に則った情報を視聴者に提供したいと思っているのだということを、ぜひ他の人にもお伝えいただければなと思います。今日は本当に、お疲れさまでした。

事後アンケートより

Q1 NHKの放送局見学はいかがでしたか

  • (中学2年・女子・千葉) 『ニュース7』でアナウンサーが立つスタジオの背景が緑色だったのがとても衝撃的でした!また『あさイチ』のスタジオの机はリサイクル材料で作られていてすごいなと思いました。鈴木奈穂子アナウンサーがいつも座っている椅子に座ることができて嬉しかったです。
  • (中学3年・男子・東京) いつもニュースの裏側がどうなっているのか気になっていたので、報道フロアの見学は興奮の連続でした。普段見ているニュース番組が、今いるスタジオから放送されていることに驚きました。実際の生放送も見せてもらい、アナウンサーの技術にも感激しました。
  • (高校3年・男子・福島) これから生きていくなかで訪れることのない場所の一つだと思うので、とても貴重な時間となり感謝の気持ちしかありません。中でもニュースセンターの見学では「ここから“世論の材料”が世の中に放送されるのか」と思うとワクワクしました。

Q2 『被爆体験を伝えるVR』制作スタッフとの意見交換会はいかがでしたか

  • (中学1年・男子・大分) 戦争を知らない世代が増えるなか、このような取り組みはとても良いことだと思った。特にVRを見たときは当時にタイムスリップしたような気持ちになり、改めて戦争は良くないと思った。このような取り組みをどんどん増やしてほしい。
  • (高校1年・女子・秋田) 制作スタッフの方々が取材時に心がけていることや、苦労・プレッシャー・辛いこと等を赤裸々に話してくださり、貴重な体験となった。話していただいた内容を忘れないようにしなければならないと感じている。
  • (高校2年・女子・神奈川) この番組に限らず『NHKスペシャル』の制作スタッフとして、「多様な背景を持つ人に取材をする過程では辛く苦しかったこともあるけれど、自分がただ生きていく上では到底出会うことができなかったであろう、素敵で心打たれるような人と関わることができるのが魅力だ」とおっしゃっていたのが心に残りました。

Q3 青少年委員との意見交換会はいかがでしたか。

  • (中学3年・男子・大分) 自分の意見とは異なり、考え方が鋭いと思った。戦争関連の番組については「アニメにすれば視聴する人が増えるのでは」という意見は自分では思いつかなかった。
  • (高校3年・女子・広島) 印象的だったのは「グロテスクな表現」についての議論です。私は苦手なのであまり放送してほしくない立場でしたが、多くの参加者は積極的に放送してほしいと考えていて驚きました。またAIの話題では「美しいものを追い求めるわけではない」という意見が印象に残りました。私には好きな芸能人がいますが、もしその人が完璧すぎたらかえって応援しなくなってしまうかもしれないと感じました。「テレビは“完璧なモノ”ではなく“事実”を放送するものだ」という意見もなるほどと思いました。
  • (高校1年・女子・岡山) 全国のモニターと意見交換ができてよかったです。ただ今回は、モニターが意見を述べてそれに対して青少年委員の方が回答する形だったので、モニター同士のほうが緊張せず話しやすいかもしれないと思いました。また意見交換の時間が少なかった気がしました。

Q4 モニター会議に参加しての印象に残ったこと、発見したことなどの感想やご意見・ご要望など自由に聞かせてください

  • (中学1年・女子・東京) 同世代とテレビについて話したり意見を交換したりする機会が普段はないため、とても新鮮で貴重な体験でした。アナウンサーはトイレの回数を減らすためにスポーツドリンクを飲むようにしていたという発言を聞いて、プロフェッショナルだと思いました。
  • (高校1年・女子・熊本) 特に印象に残ったのは質疑応答で他のモニターが積極的に発言していたことです。どの質問も自分なりの視点があってとても刺激を受けました。また委員会の方々からはテレビに関する様々な専門的な話を聞くことができ、普段とは違った角度からテレビの在り方を考える貴重な機会となりました。
  • (高校1年・女子・愛媛) スタジオ見学ではプロデューサーやアナウンサー、カメラマンなど大勢の人が待機していて、それぞれが働く様子を見て放送業界で働くことへの憧れが強くなりました。楽しく勉強になる会議を開いていただき、本当にありがとうございました。
  • (中学2年・女子・東京) 私は将来アナウンサーを目指していますが、そのことを委員の皆さんが把握してくださり、アナウンサーの方ともお話できたことが一番嬉しかったです。また放送局で働く人に対しての自分の勝手な思い込みが全く違うものになりました。放送局は「事実を国民に伝えている」ことを改めて感じたし、働いている人は常に忙しくて真面目なことばかり考えていると思っていましたが想像よりもずっと優しくてたくさん話してくれ、親と先生以外の大人と久しぶりに話して人間の温かみを感じました。学生たちは普段は目にしないテレビ局の中をドラマでしか見ることができません。職業ドラマでは主人公は熱心な努力家ですが、偉い人は大抵あまりいい人ではありません。実際はこんなに素敵な方々なのにもったいないと思いました。

以上

第344回

第344回 – 2025年10月

「視聴者依頼番組における民家清掃に関する申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2025年10月21日(火)午後4時~午後7時
場所
千代田放送会館BPO第1会議室
議題
出席者
廣田委員長、鈴木委員長代行、野村委員長代行、大谷委員、
國森委員、斉藤委員、成原委員、松尾委員、松田委員

1.「視聴者依頼番組における民家清掃に関する申立て」審理

申立ての対象となったのは、福岡放送が2025年4月13日と20日に放送したバラエティー番組『ナンデモ特命係発見らくちゃく!』の「命の危機…ゴミ屋敷大掃除!」で、視聴者からの依頼を受けて、高齢の親族が住む民家の大がかりな清掃を行い、その模様を放送した。
これに対し、当該民家の住人が、番組は臭いや不衛生な状態が過度に強調される形で顔出し・実名・モザイク処理なしで放送され、尊厳が著しく損なわれ人権を侵害されたと申し立てた。さらに、番組の収録過程において、住人にとって重要な物品がなくなったと主張している。
また、他の親族2名は、番組内で幼少期の写真が承諾なく使用されたり、プライベートな事実が本人の同意なく放送されたことなども権利侵害にあたると訴えている。
放送局は一部配慮が足りなかったことなどを認め謝罪したが、これら3名の申立人は納得せず、双方の交渉が不調に終わったため、9月の委員会で審理入りするか否かを検討した結果、審理入りすることを決めた。
今回の委員会では、被申立人である福岡放送から提出された答弁書の概要・ポイント等を担当調査役が説明し意見交換を行った。さらに、いくつかの論点についても議論した。

2. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況等について説明し議論した。

3. その他

10月中旬に開催した3委員会合同意見交換会について事務局から報告を行った。また、委員会運営規則第5条第1項(6)や同2項(2)にかかわる申立てについて、その取り扱い等について議論した。

以上

第49号

日本テレビ『月曜から夜ふかし』
街頭インタビューの恣意的な編集に関する意見

2025年10月21日 放送局:日本テレビ

日本テレビは、2025年3月24日に放送したバラエティー番組『月曜から夜ふかし』の街頭インタビューのコーナーで中国出身の人の声を紹介したが、放送後この人から実際に話した内容とは違うという指摘を受けた。日本テレビは、制作スタッフの意図的な編集で当初の発言の趣旨とは全く異なる内容となっていたことを認め、番組ウェブサイトと社長会見で事実を公表して謝罪し、その後番組内でMCが謝罪のうえお詫びコメントを表示した。
委員会は同年4月、放送倫理違反の疑いがあり取材から放送に至る制作プロセスを検証する必要があるとして審議入りし、日本テレビや制作会社の関係者を対象にヒアリングを実施。街頭インタビューを担当したディレクターが、オチが付き面白い内容になると考えて、中国出身の人が別の文脈で発言した言葉を恣意的につぎはぎする音声の編集を単独で行ったこと、発言していない内容を発言したかのように放送した結果、取材対象者がソーシャルメディア上で誹謗中傷にさらされる事態に至ったことを確認した。
更に委員会は、なぜ制作幹部が恣意的な編集に気づかず、事案の発生を防げなかったのかについて検証した。その結果、▼放送内容の正確性を担保し、番組の制作過程に不正がないかどうか疑念を持つ意識が制作幹部に希薄だったこと、▼取材対象者に放送内容の真正性を確認する場が放送を許諾するよう仕向ける場となっていたり、番組の制作過程で生じた疑念を制作陣全体に共有する仕組みがなかったり、不正抑止のための仕組みが機能不全を起こしていたこと、▼制作陣が、取材対象者は自主的にオチのある発言をし、視聴者はそれを冗談だと受け止めると一方的に期待して、笑いやオチを優先させるなかで、不正リスクの軽視につながった組織風土が醸成されたことに問題があったと認めた。また、他国への偏見とはいえないまでも、他国の人々の感情を尊重する姿勢が不十分であったと付言した。
以上のことから委員会は、本件放送は恣意的な編集によって事実に基づかない虚偽の内容を放送し、取材対象者がソーシャルメディア上において想定外の誹謗中傷にさらされる事態を招き、民放連の放送基準及び日本テレビの取材・放送規範の各項目に反しているとして、放送倫理違反があったと判断した。

2025年10月21日 第49号委員会決定

全文はこちら(PDF)pdf

目 次




第211回

第211回–2025年10月

TBSテレビ『熱狂マニアさん!』への意見 対応報告を了承

第211回放送倫理検証委員会は、10月10日に千代田放送会館で開催された。
委員会が2025年7月11日に通知・公表した委員会決定第48号 番組と広告の識別が問題視されたTBSテレビ『熱狂マニアさん!』への意見について、当該放送局から再発防止に関する取り組み状況などの対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、報告を了承して公表することにした。
9月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2025年10月10日(金)午後4時~午後5時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、小柳委員、水谷委員、毛利委員、米倉委員

1. TBSテレビ『熱狂マニアさん!』への意見への対応報告を了承

7月11日に通知・公表した委員会決定第48号 番組と広告の識別が問題視されたTBSテレビ『熱狂マニアさん!』への意見への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、委員会決定が公表された後、本件放送に関わったコンテンツ戦略局、営業局、編成考査局を中心に、委員会決定の内容を周知、説明する会を開催したことが記されている。
再発防止については以下のような取り組みを講じていることが記載されている。
9月1日付で、「番組内での商品・サービスの取り扱いに関する識別上の留意点」を策定し、TBSテレビの放送基準などを収めたガイドライン集に新たに掲載。番組で取り上げる理由・目的に「主体性」と「必然性」があること、視聴者にとって有益でフェアな内容であることの2点に留意するよう求めている。
また、社内の共有フォルダでスポンサー情報や番組で取り扱う企業名・企画内容などを一元的に管理し、関係部門間で適切に情報共有する運用を開始。
さらに、考査機能を強化するため、番組と広告の識別をめぐり視聴者に誤解を与える可能性のある番組については、納品前の「完パケ」またはテロップがすべて入った「画完」を対象とした考査を行う体制を整えたことなどが記されている。
委員からは、報告書に沿って良い番組を作ってほしい等の意見が出され、報告を了承して公表することにした。
TBSテレビの対応報告は、こちら(PDFファイル)

2. 9月の視聴者・聴取者意見を報告

9月に視聴者・聴取者から寄せられた意見には、情報番組のコメンテーターが、ある政党が特定の団体に金を配って集票していると誤解を招く発言をしたことに対して、撤回と謝罪を求める意見があった。また、ソーシャルメディア上の投稿写真の使用許諾を受けた情報番組が、その写真を使って元の投稿の趣旨とは全く逆の内容の放送をしたことについて、事実を伝える報道機関としてあるまじき行動だと批判する意見があった。

3. その他

NHKが2025年8月16、17日に放送したNHKスペシャル『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦』について、10月初旬、同番組の舞台となった総力戦研究所の所長を務めていた人の親族から、祖父が正反対の人物として描かれ、総力戦研究所に関する史実が意図的にわい曲されている旨を記した「要望書」と資料が放送倫理検証委員会に届いた。この番組は、NHKの番組紹介によると、「猪瀬直樹の『昭和16年夏の敗戦』を原案に創作を加えたドラマと、総力戦研究所の史実を伝えるドキュメンタリーを2夜連続で放送。日米開戦前夜の1941年夏、首相直属の総力戦研究所で日本とアメリカが戦った場合のあらゆる可能性がシミュレートされた。官僚・軍人・民間から選抜された若きエリートたちが導き出した結論は日本の“圧倒的な敗北”だった―。」というものである。
放送倫理検証委員会は申立て制度を取っておらず、申立書・要望書は放送番組を検討する端緒のひとつと捉えることがあるが、申立書・要望書を受けて必ず議論を行うものではない。本番組については番組を視聴し議論をした。議論では、史実に基づくドラマ制作に関し、関係者と事前に協議をしなかったことや人物の設定そのものを史実と変えて描くことに疑問を呈する意見のほか、戦争の取り上げ方が多様化する中でのドラマ制作のあり方、歴史の捉え方、モデル小説などに関する裁判例についての意見があった。ドラマであることを理由にいかなる番組を制作しても良いとはいえないが、委員会は、本番組についてはドラマ制作として放送倫理上問題の疑いがあるとまではいえず、またテロップでフィクションであることを明示したうえ、ドラマの後のドキュメンタリー部分で、実際の所長はドラマで描かれた人物像とは異なっていたことをナレーションなどで説明しており、視聴者において誤解が生じることはないと考え、討議入りしないこととした。
なお、委員会は議論をしたうえで討議、審議・審理入りしないことを決めた番組については、原則として議事概要に放送局名・番組名を公表していないが、要望書を出した親族が記者会見を行ったことやNHK会長の記者会見の発言などがすでに報道されていることから、議事概要に番組名等を記載することとした。

以上

2025年9月に視聴者から寄せられた意見

2025年9月に視聴者から寄せられた意見

自民党総裁選をめぐる各社の報道情報番組にさまざまな意見が寄せられました。

2025年9月にBPOに寄せられた意見の総数は、2,157件で、先月から328件増加しました。
意見のアクセス方法は、ウェブ86.2% 電話 12.9% 郵便・FAX 0.8%
男女別は、男性 52.3% 女性 24.7% 無回答 23.0%で、世代別では10代 1.6% 20代 8.5% 30代 19.3% 40代 22.8% 50代 18.5% 60代 10.8% 70歳以上 4.5%
視聴者意見のうち個別の番組や放送局に対するものは当該局へ個別に送付します。9月の個別送付先は41局で意見数は572件でした。放送全般に対する意見は146件でその中から12件を選び会員社すべてに送りました。

意見概要

番組に関する意見

自民党総裁選についての各社の報道番組・情報番組にさまざまな意見が寄せられました。ラジオに関する意見は61件、CMについては26件でした。

青少年に関する意見

2025年9月中に青少年委員会に寄せられた意見は63件で、前月から48件減少しました。
今月は「表現・演出」が21件と最も多く、次いで「要望・提言」の18件、「言葉」の15件などが続きました。

意見抜粋

番組に関する意見

  • 自民党総裁選が重要な政治ニュースであることはわかるが、連日ほとんどの社で多くの時間を使って報道されているのを見ると、結果として党の宣伝・アピールの時間になっているようにも見えてくる。

  • 自民党総裁選5人の候補者に対するインタビューの中で特定の候補者に対して強く批判的な姿勢を取っていると感じられる番組があった。

  • 奈良公園の鹿に暴力をふるう外国人がいるかどうかを検証するというニュース企画。そのような外国人を見つけることはできなかったというトーンで終わっているが根拠が弱く取材が足りないと感じた。

  • 「石破やめるな」デモについてはほとんどすべてのテレビが報道したと記憶しているが「やめろ」デモについては逆にほとんどの社が報道しなかったのではないか。そのことがネットでも話題になっている。テレビは公平性に欠けるという批判を招かないよう意識した方がいいのではないか。

  • 静岡・伊東市長の学歴問題を各社多くの時間を使って報道しているが、イスラエルによるガザへの攻撃や中露朝3国の連携が及ぼす影響をはじめもっと重要なニュースをしっかり伝えてほしいと思う。

  • 毎年恒例の大型チャリティー番組の中のマラソン企画。酷暑をしのぐため不要不急の外出を控えるようニュースで毎日呼び掛けているのに矛盾していないか。出演者やスタッフなど関係者の安全を脅かす企画は考え直す時期ではないかと思う。

  • ネット上のフェイクニュースに気を付けるようにとテレビはアピールしているが、情報番組などで専門家でもないコメンテーターが政治経済や国際情勢を語っているのを見るとどっちもどっちではないかと思えてくる。

  • 最近のテレビ報道を見て感じるのだが、「外国人差別」という言葉の多用によって、「外国人」と言えば「差別」を受けるものという風に固定化したイメージを視聴者に植えつける結果になってはいないだろうか。ひとつひとつの事件や出来事の中には「本当の差別」もあれば「差別とは異なるもの」もあるだろう。事柄をつぶさに正確に伝えてほしいと思う。

  • 熊に襲われた被害者の容態を報じるとき、ただ「命に別状はありませんでした」とだけで終わってしまうことがあるがこれでは熊被害の深刻さが伝わらないと思う。重傷なのか軽傷で済んだのか、後遺症が残るような負傷なのか否か、しっかりと取材してほしいと思う。

  • 近年豪雨災害が増え浸水した現場からの中継をよく見るが、転倒や転落、水流を伝わる感電、感染症などに対してしっかりと安全対策を取っているのか疑問に感じることもある。中継するレポーターや取材スタッフの安全が十分に守られていると視聴者が安心できることが大切で、それが視聴者の災害に対する意識を高めることにつながると思う。

  • 殺人や強盗、窃盗など犯罪の手口をこと細かに報道することに違和感を覚える。事実を詳しく伝えることは大切なことだとは思うが模倣犯が現れることを避けるために手口についての報道には配慮があってもいいのではないか。

  • 万博開催期間終了が迫りまだ使われていないチケットのことを「死に券」と呼んでいる番組があった。死を軽んじているようにも感じられ違和感が残った。

  • 最近の報道番組はニュースを伝える時間の量と比べてグルメ・エンタメ・海外ハプニングの映像を流す時間のほうが多いと感じる。だから「どこかから圧力がかかって伝えるべきことを伝えていない」などとネットで言われてしまうのだと思う。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 子ども向け特撮ヒーロードラマで主人公が、飲食店のツケを仲間から金を借りて支払うシーンがあった。その借り方が、仲間が財布を取りだした瞬間に財布ごと奪い、お札を抜き取ると財布を床に投げ捨てるというひどいものだった。お礼の言葉もない。気分の悪くなるシーンだった。

  • 高校生が出場するクイズ番組。問題を答えさせるまで、男子と女子を、ハンデをつけることなく同じ条件で走らせていた。このまま体力勝負の作問が続くと、各校から体力では勝てない女子が選抜されなくなると思う

【「要望・提言」】

  • 戦後80年関連で、太平洋戦争中の激戦の島での体験を語るドキュメンタリーを幼い孫といっしょに見た。体験者が鼻水を流しながら涙するシーンで孫が「このおじいちゃん、汚いねぇ」とひとこと。本人の了解を得たうえでのシーンだと思うが、もう少し配慮があってもよかったのではないか。

  • 地上波テレビの深夜アニメについて、子どもが見たらどうするのかという意見があるが、それは保護者など周囲で教育する大人の責任の問題だろう。規制を強くすると、ファンである視聴者がオリジナル作品を楽しめなくなるのでは、と懸念する。そこまでして放送局が自重する必要はないのではないか。

【「言葉」に関する意見】

  • テレビ出演者の言葉に不快感を覚える。若者言葉なのか「難しい」を「むずい」と言ったり、「恥ずかしい」は「はずい」と言ったりする。高校生の発言ならまだしも、成人の発言としてはおかしいし、さらにその言葉にテロップまでつけるのはいかがなものだろうか。もう少し、言葉に注意を払ってほしい。

第282回

第282回-2025年9月24日

沖縄地区意見交換会に向けての勉強会を実施…など

2025年9月24日、第282回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、吉永みち子委員長をはじめ7人の委員全員が出席しました。
議事に先立って、沖縄県平和祈念資料館学芸員・大城航氏をオンラインで招き、沖縄地区意見交換会に向けての勉強会を実施しました。
議事では、7月後半から9月前半までの2カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
9月の中高生モニター報告のテーマは「終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。
委員会ではこれらの視聴者意見や中高生モニター報告について議論しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2025年9月24日(水)午後4時00分~午後7時30分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
沖縄地区意見交換会に向けての勉強会
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
吉永みち子委員長、飯田豊副委員長、池田雅子委員、佐々木輝美委員
沢井佳子委員、髙橋聡美委員(オンライン参加)、山縣文治委員

沖縄地区意見交換会に向けての勉強会

青少年委員会は戦後80年となる今年の11月に沖縄地区放送局との意見交換会を開催する予定です。その準備の一環として、沖縄県平和祈念資料館学芸員・大城航氏をオンラインで招いての勉強会を実施し、沖縄県内の平和教育の現状と課題についてレクチャーを受けました。
戦争体験者が次第に減り、戦争の語り部たちも引退するなかで、どのようにして若い人たちに戦争の記憶を継承していくのかや、新しい平和教育を模索する際の苦労話のほか、現状で戦争証言を取材できるのはメディアしかないという放送局への大きな期待についても熱く語っていただき、戦争の実相を後世に伝えていかねばならない放送局の責任の重大さを痛感する、たいへん有意義な勉強会となりました。

視聴者からの意見について

7月後半から9月前半までの2カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
子ども向けニュース解説番組で「日本が戦争(満州事変からの15年戦争)を始めた原因」を「日本が中国の資源と市場を独占したかったから」と説明したところ、視聴者から「このような単純化された説明を判断力の未熟な子どもに行うことは、偏った歴史認識を刷り込み、将来的な誤解を招く」などの意見がありました。
担当委員は「教科書的な事実をきちんと押さえた説明だった。資源を求めた背景には『昭和恐慌(1930年~)がある』ことも踏まえていて、誤解を招く表現があったとはいえない」と説明しました。加えて「むしろ、視聴者意見のなかに『ABCD包囲網に言及していない』との指摘が複数あったが、それは太平洋戦争の開戦(1941年)に関わるもので、満州事変との混同が著しかった」としました。
平日夕方の報道番組で、著名大学柔道部の男子学生(20歳と19歳)が大麻等所持の容疑で逮捕され、とくに20歳学生を実名・顔出しで報じたことに、視聴者から批判的な意見が寄せられました。
担当委員は「これは、この番組だけのものではなく、(20歳以上の)逮捕者を報じる際に実名か匿名か、あるいは顔を出すか出さないかというのは、繰り返し議論が重ねられてきた問題として捉えるべきだろう」と述べました。
ある委員は「これが、18歳、19歳の特定少年の問題であれば、委員会としても意見表明できるが、20歳以上だと報道各社の判断だとしか言えないだろう」と指摘しました。続けて別の委員も「犯罪報道の原則が『実名報道』であることを踏まえるべきだ。そのうえでこの事件をどう見るべきか。著名大学の柔道部が舞台であり、仮にだが、部の寮内で広がりを持つ事件になるかもしれず、その社会的影響は看過できない。そういったことと逮捕された20歳の学生の人権や将来を比較衡量したうえでの当該放送局の判断だったのだろうと思う」と述べました。
成人向けアダルトゲームが原作のアニメが深夜遅くの時間帯で放送されていることに、視聴者から「放送できない用語を打ち消すピー音や、胸や尻を過度に強調した制服を着た女子高校生が頻繁に出てくる。地上波放送にはそぐわない内容だ」などの意見がありました。
ある委員は「ダイジェスト版を一部見たが、ピー音や(卑猥なシーンを覆う)静止画が本当に多い。あそこまで入ってくると、本当は何があるのだろうという、いわば『誘導』になるのではないか」としたうえで、「(女子高校生が出てくるならば)『児童ポルノへの誘導』ということも考えられ、このような番組が続くのは問題ではないかと思った」と述べました。さらに別の委員も「実写(のドラマ)ではなく、アニメだからという理由で少し緩くなっているのではないか。ピー音や静止画が頻繁に入ることで、元のシーンを見てみたいなという形で『DVD購入などへの誘導』にもなるのであれば、今後は問題をはらんでくるだろうと思う」と指摘しました。
このほかに大きな議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

9月のテーマは「終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」で、25人から合わせて19番組の報告がありました。視聴方法は、リアルタイム視聴が9人、アプリ(TVer、NHK+など)を利用したタイムフリー視聴が3人、録画・録音が12人、その他(回答なし)が1人でした。
複数のモニターが取り上げたテレビ番組は『戦後80年特別放送 映画「ラーゲリより愛を込めて」』(TBSテレビ)、『金曜ロードショー「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」』『金曜ロードショー「火垂るの墓」』(いずれも日本テレビ)、『ザ!戦後80年の映像遺産SP 池上彰×加藤浩次の運命の転換点』(フジテレビ)です。
今月は「自由記述」ではなく「あなたが“戦争に関心を持つ”のはどんなときですか」と質問したところ、「終戦関連の番組やニュースを見たとき」「戦時中を扱うドラマや映画、アニメを見たとき」「学校の授業」といった回答が届きました。「若い世代に戦争をどう伝えていくか」についての意見も寄せられました。
「青少年へのおすすめ番組」では『クローズアップ現代「戦後80年スペシャル テレビが伝えた“あすへの希望”」』(NHK総合・8/6放送)と『戦後80年特別放送 映画「ラーゲリより愛を込めて」』(TBSテレビ)に3人から、『第45回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2025』(日本テレビ)と『ドラえもん 誕生日スペシャル』(テレビ朝日)に2人から、それぞれ感想が届いています。

◆モニター報告より◆

【終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

  • 『時をかけるテレビ~今こそ見たい!この1本~「夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~」』(NHK総合)
    1988年に放送された番組で、当時の女学生のアニメと、残された家族が娘を想う言葉が綴られていました。平和が続く世界の多くの人に見てもらいたい番組です。ただアニメを放送中は、両サイドの2人の映像は必要ないと思いました。番組に集中したいので副音声も必要ありません。遺族が話しているときはその声だけでよいと思います。(高校3年・女子・長崎)

  • 『NHKスペシャル「広島グラウンドゼロ 爆心地500m 生存者たちの“原爆”」』(NHK総合)
    「グラウンドゼロ」という言葉を知らず、どのようなものか興味を持ちました。CGで再現された原爆投下後の映像は想像以上にクリアで、リアルな映像に驚きました。人型にくっきりと跡が残っているシーンは、実物より恐怖を感じました。「戦争とは」を知ることができる、貴重な番組だと思います。(中学1年・女子・東京)

  • 『NHKスペシャル「原子雲の下を生き抜いて 長崎・被爆児童の80年」』(NHK総合)
    「原爆が落とされた時、家族のことを一切考えなかった」という話が印象深かったです。「戦時中のことを思い出したくない」という気持ちがある中で当時の記憶を話してくださったことに感謝の気持ちを持つべきだと思いました。(高校1年・女子・愛媛)

  • 『NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争 最終回 忘れられた悲しみ」』(NHK総合)
    特に印象的だったのはある主婦の日記で、日本軍の躍進を鼓舞するような力強い文言の隣に、「当時の自分が今では恥ずかしいが、この記述は後世まで残しておこう」と書き込まれていた。間違っていた過去に蓋をせず未来へ繋げていこうと決意したことは、心を揺さぶられる重みがあった。ごく一般の人の戦時中の生の声を丁寧に紹介していて、心に深く刺さった。(高校2年・女子・神奈川)

  • 『NHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」』(NHK総合)
    ドラマは人物の心理描写が伝わりやすく、総力戦研究所の若者の恐怖や葛藤が的確に描かれていました。ただ、実際の総力戦研究所所長の孫の、番組への批判がニュースになり、結果として番組の意図を視聴者に純粋に伝えられなかったことは、歴史を伝える役割をもつ戦争関連番組にとって残念なことだと思います。放送日を遅らせてでも事前に理解を得てから放送したほうが、効果を発揮できたと思います。(中学3年・男子・東京)

  • 『戦争×令和 『あの花』がつなぐ戦後80年』(NHK総合)
    若い世代と戦争の関わりが気になったので視聴しました。「特攻は無駄死になのか」という疑問に対して、人それぞれ考えが異なっていたのが心に残りました。戦争関連番組は「全国各地の資料館を紹介する」というテーマが良いと思います。『あの花』の作者も知覧特攻平和会館を訪れて心を揺さぶられたと聞きました。戦争をより身近に考えられるのではないでしょうか。(高校1年・女子・熊本)

  • 『映像の世紀バタフライエフェクト「シリーズ昭和百年(2) 敗戦国ニッポン 敗れざる者たち」』(NHK総合)
    普段から視聴している番組です。終戦を迎えたというと「悲しい」「いやな」イメージが先行し、他の番組では復興までは取り上げていないと感じますが、この番組は細かいところから現在につながるまでの「バタフライエフェクト」を取り上げていて、本当に勉強になります。(中学3年・男子・東京)

  • 『長崎スペシャル「カズオ・イシグロ 遠い山なみの光が照らす“ナガサキ”」』(NHK総合)
    広瀬すずさんの朗読が印象的で、飽きることなく物語に引き込まれました。とても面白かったです。特に心に残ったのはカズオ・イシグロさんの言葉です。「戦争というのは映画やニュース映像で見るような巨大な出来事だけではなく、私の母のような人々の日常生活のささいなことや、時につらいことの中に、戦争の本質がある。」原爆のあとに人々がどのように暮らしていたのかも、もっと知りたいと思いました。(高校3年・女子・広島)

  • 『ETV特集「火垂るの墓と高畑勲と7冊のノート」』(NHK Eテレ)
    私は映画「火垂るの墓」をまだ見たことがない。友人との話題に出たこともなく、正直、戦争描写が怖くて見られない。ただ親世代は見ていていつか見たいと思っていたため、創作ノートが見つかったという番宣を見て、番組を見ようと決めた。当時の日常の精一杯の日々の事実として、今知ることができて良かったし、とても貴重な番組だと思う。(高校1年・女子・秋田)

  • 『あしたは8月6日じゃけぇね ~平和の声が届く部屋in広島~』(NHK Eテレ)
    原爆投下の前日も忘れることのできない日だったと知り、よいテーマだと思った。戦争について語ろうと広島で奮闘する若者の姿と平和ソングとを一緒に放送するのは、平和についてより考えることができる良い演出だった。(高校3年・女子・徳島)

  • 『アナウンサー百年百話 ラジオが伝えた戦争 第1回 「ラジオ太郎」と戦意高揚の時代』(NHKラジオ第2)
    戦争を伝える番組は証言記録、映像、体験談などを「悲劇」として構成することが多く、加害の歴史はあまり報道されません。でも、悲惨さを伝えるだけでいいのでしょうか。いかにして戦争賛美の世論が形成されていったのか、そこには言葉の力がありました。「ラジオ太郎」は国民に夢を見させて、我慢は美徳であることを、一人芝居を通して共感させる。SNSに慣れ親しんだ現代人でもコントロールされると思いました。ファクトチェックの重要性を「ラジオ太郎」が教えてくれました。(中学3年・男子・北海道)

  • 『戦後80年特別放送 映画「ラーゲリより愛を込めて」』(TBSテレビ)
    • 戦争の悲惨さや人々の生き方について知りたいと思って視聴しました。心に残ったのは過酷な収容所生活の中でも仲間を思いやる姿です。平和の大切さが伝わるように構成されていて、世代を超えて語り継ぐことの大切さを感じました。(高校1年・男子・神奈川)
    • 劇場でとても感動したので、テレビで放送されると知ってもう一度観ました。この映画の良いところは戦後の残酷さを描いているのに希望をもらえるところで、「帰って家族に会うこと」「収容所で大切な仲間ができたこと」が描かれていてすごく良いと思います。(高校2年・女子・東京)
  • 『戦後80年特別番組 なぜ君は戦争に? 綾瀬はるか×news23」』(TBSテレビ)
    自分の年齢に近い有名な俳優がたくさん出演していて気軽に視聴できそうだと思った。体験者の証言は心に響くので映像で残すことが大切だと思うし、そういった生の声を発信する番組が良いと思う。今回のようなドラマ仕立ても感情移入しやすかった。(中学2年・男子・東京)

  • 『金曜ロードショー「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」』(日本テレビ)
    • ニュース番組などで「今年は戦後80年」と報道され、いつもより戦争への関心が高まっていたことが視聴した理由の一つです。残虐な演出があまりなかったため観やすく、最初から最後まで感動し、またとても考えさせられる話でした。映画では「最後のエンドロールで主題歌が流れた時にまた泣いた」と友達が話していたので、地上波でも流してほしかったです。(高校2年・女子・熊本)
    • 原作の小説が大好きだったので視聴しました。戦争時の緊迫した状況をよく再現しているなと思いました。ただ緊迫している状況で現代風のCMが挟まると緊張感がなくなりイライラするので、映画の前と後の2回にまとめてほしいです。(中学3年・女子・山梨)
  • 『金曜ロードショー「火垂るの墓」』(日本テレビ)
    • 戦争関連の映画は怖くて避けていましたが、有名な「火垂るの墓」を見て戦争について考えてみようと思いました。80年前にこの日本でこのようなことが起きていたとは想像もできませんでした。(中学3年・男子・大分)
    • 戦後80年という節目の年の終戦の日に7年ぶりに地上波放送され、とても意味のある放送だったと思います。清太と節子が当時の姿で現代のビル群を見つめるラストシーンは、現代に生きる私たちへ戦争の悲劇を伝えているようなメッセージ性を感じました。(中学2年・女子・千葉)
    • 小さい頃に少しだけしか観た記憶がなく、久しぶりに『金曜ロードショー』で放送すると知り視聴しました。戦争についての話を見聞きするのは学校がほとんどで、あとは報道番組の特集で見るだけなのでとても新鮮でした。心に残ったのは、日本が負けて父親が亡くなったことを清太が知り、情緒不安定になったシーンです。誰にとっても過酷でつらいのに、節子がいるからと頑張る清太を見て心が痛みました。(高校2年・女子・埼玉)
  • 『報道ステーション』(テレビ朝日)※8/6放送
    前日の放送の終盤で「イヤフォン推奨」と予告していたので、他の戦争特集とは違う切り口なのだろうと興味がわきました。「ANN」のYouTubeチャンネルでも視聴でき、「貴重な記録をありがとう」「評価できる報道機関だ」など感謝するコメントがありました。これからの放送はネットユーザーへの対応も求められると考えていましたが、エンタメではなく戦争特集で突きつけられるとは思いませんでした。(高校3年・男子・福島)

  • 『池上彰のニュースそうだったのか!! 3時間SP 知っておきたい!戦後80年』(テレビ朝日)
    アメリカ人に対する「戦争に原爆は必要だったのか?」というインタビューで、正当化できる人とできない人がいることを知りました。アメリカでは原爆に関する授業があり、「多くの命を奪う方法として正当化できない」と考える人が多かったと聞いて、少し救われたような気持ちになりました。(中学1年・男子・大分)

  • 『ザ!戦後80年の映像遺産SP 池上彰×加藤浩次の運命の転換点』(フジテレビ)
    • 原爆ドームは5回にもわたる補修工事が行われていて、中から樹脂で固め傷跡を白くさせる技法にとても驚きました。ただ原爆ドームを紹介するよりも、被爆者が当時どのような目に遭ってきたかを伝える方が、視聴者の興味を引けると思いました。(中学1年・男子・福島)
    • 特攻隊は3人1組でそれぞれの役割を命じられていましたが、突然作戦中止になり、それによりPTSDを発症したそうです。秘密裏の部隊だったので戦後の補償は何もなく、自分と同じ年代の人が一生苦しめられたとしたら、その先に希望はないなあと思いました。(高校3年・男子・神奈川)
    • 心に刺さる言葉がたくさんあり、私が本当に知りたかったことを教えてくれました。最も心に残ったのは、戦争で愛する人を亡くした方とアメリカ兵との再会で、戦う相手も同じ地球で生活する人間だという事実を改めて教えられました。アメリカ兵の視点でも戦争について語っていてとても学びになりました。戦争がぼんやりしたイメージではなくなり、改めて戦争は起こしてはいけないと感じました。(中学2年・女子・東京)
  • 『終戦80年企画「財前直美 知られざる“特攻の町” 我が故郷 戦争の記憶」』(BSフジ)
    高校で公共の先生に勧められて視聴したが、終始胸が締めつけられるような内容だった。特攻隊を見送る母親の日記が印象的で、まだ未来が長いはずの若者が国のために命を投げ出すことは本当にあってはならないことだし、戦争の残酷さを改めて感じた。(高校2年・女子・東京)

【(モニターへ質問)あなたが“戦争に関心を持つ”のは、どんなときですか?】

《終戦関連の番組やニュースを見たとき》

  • テレビで戦争関連番組を見ると、修学旅行で訪れた長崎で聞いた被爆体験や知覧特攻平和会館で見た資料など、これまで見聞きした記憶が蘇る。
  • 私と近い年齢の方や、父の出身地である鹿児島が題材だと関心を持つが、残酷な映像ばかりの番組はどうしても見られない。

《今起きている戦争に関連する番組やニュースを見たとき》

  • 毎朝『ZIP!』(日本テレビ)を30分視聴しているが、戦争の話は何度も聞いた。「戦争によって何がしたいのか」と当事者たちに尋ねたくなる。
  • 「ポーランドの領内にロシアの無人機が侵入した」などの大きなニュースが報道されると、今後世界はどうなるのだろうかと考える。
  • 紛争についての報道を見て、戦争は過去のものではなく、今も人々の生活を壊しているのだと実感する。

《戦時中を扱うドラマや映画、アニメを見たとき》

  • ストーリーが展開されるとその場面を追体験している気持ちになり、なぜこの戦争は起きたのだろうと疑問がわく。
  • 戦時中の様子が再現されていると当時の苦しい生活や戦争の悲惨さを知ることができ、戦争は二度としてはいけないと改めて感じる。
  • 『この世界の片隅に』というアニメ映画を見たあと、当時の人は何を考え生活していたのかなど、さらに深く知りたいと思った。

《学校の授業》

  • 最近歴史の授業で戦争のことを学び、とても意識するようになった。
  • 毎年8月6日は学校に登校して、黙とうをしたり、戦時中の体験談を聞いたり映像を見たりして、クラスで平和について話し合う。

《資料館等で当時の資料に触れたとき》

  • 広島原爆資料館の展示品には衝撃を受けた。現場や現物に勝るものはない。

《家族や親族から話を聞いたとき》

  • 靖国神社に行ったことをきっかけに、親から戦争に関する話を聞いた。
  • 戦争時代を4~5年過ごした曾祖父母からよく話を聞いていた。本やテレビやSNSでは分からない当時を知る人の言葉に、とても関心を持った。
  • お盆に仏壇にある過去帳を見せてもらい、祖父の兄が戦時中、栄養失調で幼くして亡くなったことなどを聞いた。家族で戦争の話を語り継いでいくことが大切だと思う。

《日常の中でふと戦争を身近に感じたとき》

  • 東京タワーに戦車の鉄などが使われていると知ったとき。
  • 夏休みに韓国の非武装地帯に旅行に行き、ツアーガイドの話を聞いた。朝鮮半島は事実上戦争状態で、BTSが軍隊に入隊していたことの意味が分かった。
  • 例えばNHKの朝ドラでは、大正から昭和を舞台にした作品には必ず戦争の描写があり、人々がどう生きてきたかを想像する過程で戦争に関心を持つことがある。コンテンツの要素の一つとして戦争が関係しているものの方が、自発的に関心を持つきっかけになる。

《常に関心を持っている》

  • 戦争にはいつも関心を持っているが、それは無意味なことだと思うようになってきた。世界各地で戦争が絶えず、しかも国連安保理の常任理事国が戦争をしている。平和を祈ることしかできないが祈り続けたい。

《若い世代に戦争をどう伝えていくかについての意見》

  • VRは視覚だけでその場にいるような体験ができ、学校などでも取り入れやすいと思う。
  • 他の地域では戦争はどのように伝えられているのだろうか。長崎市では毎月9日11時2分に無線放送で音楽が流れる。日頃から戦争や平和について考えるきっかけがあれば、平和な世界が続くと思う。
  • 毎月15日は戦争について考える日にするなど、8月に限らず関心を持つことが必要だと思う。それにはメディアの力が不可欠で、対象の世代に応じていろいろな角度から分かりやすく放送してほしい。

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『戦後80年特別放送 映画「ラーゲリより愛を込めて」』(TBSテレビ)
    戦争と聞くとすぐに思い浮かぶのは広島・長崎・沖縄ですが、この映画はシベリアが舞台で、そんな歴史があったことを初めて知りました。テレビで放送されているのがとてもいいなと感じたし、戦争について知る良いきっかけになりました。(高校3年・女子・広島)

  • 『第45回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2025』(日本テレビ)
    • 私はこの番組が大好きです!私たちにはなかなかできない青春を毎回見せてもらい、自分が体験した気分になります。(中学2年・女子・東京)
    • 自分と同年代の子たちが本気で物事に打ち込んでいる姿を見て、自分も熱中できることを全力でやり遂げたいと思った。(高校2年・女子・東京)
  • 『THE世代感 特別編 夏の高校野球 歴史的大逆転ベスト10』(テレビ朝日)
    漫画などの作り話でしか起こらないようなことが実際に起きていたことに驚き、とてもワクワクした。(高校3年・男子・神奈川)

  • 『ドラえもん 誕生日スペシャル』(テレビ朝日)
    昔からキャラクター設定が嫌いなため見てきませんでしたが、直接的な表現は減ったように思います。ただひみつ道具の「映画缶」を半分発狂しながら押し入れに投げ入れたのび太のお母さんには引いてしまいました。あのシーンは必要なのか、あんなにキレて物を投げる母親のシーンを小さな子どもが見てどのように感じるのか、考えていないのだなあと思いました。(中学1年・女子・東京)

  • 『今夜はナゾトレ』(フジテレビ)
    • ただの世界遺産クイズや紹介だったら飽きるけれど、出演者3人がテンポよく雑学トークを交えながら進めていて、楽しくてあっという間の2時間でした。(中学3年・男子・大分)
    • 日本の名所や気象庁といった国家機関に潜入してクイズを出題するので、他のクイズ番組よりも手がかかっているなと感じます。(高校3年・男子・福島)
  • 『けいナビ~応援!どさんこ経済~』(テレビ北海道)
    テーマは「地方移住」で2つの町を取り上げました。南幌町は子育て世代をターゲットに手厚く移住支援をしていますが、高校がなく、札幌までの公共交通は1日7本のバスしかないことは放送されませんでした。また沼田町では就農者に手厚い支援金がありますが、JRが来年3月に廃止になることには触れませんでした。テレビのズルさを少し感じ、メディアリテラシーを高めようと思いました。(中学3年・男子・北海道)

  • 『伝説の自由研究~コレをやったの どんな天才?~』(秋田テレビ)
    今までにない企画だと思った。番組を企画したディレクターの小学校時の自由研究も発表されていて、その研究が現在の職業につながった場面では、思わず感嘆の声を上げてしまった。パネラーゲストの雰囲気も明るく、それぞれの役割がハマっていて人選も合っていた。自由研究の思い出の街頭インタビューや、秋田で賞を取った研究も知りたかった。(高校1年・女子・秋田)

  • 『ゴジてれChu!キャラバンin三春町』(福島中央テレビ)
    福島の有名人は野口英世と古関裕而しかいないと思っていたけれど、女性として世界で初めてエベレスト登頂に成功した人が三春町の田部井淳子さんだったと初めて知って驚きました。三角形の大きな厚揚げもとても美味しそうでした。(中学1年・男子・福島)

  • 『田村淳のキキタイ!』(TOKYO MX)
    「防災」がテーマの番組はシリアスな雰囲気で作られることが多いと思うが、この番組は全編を通して明るく気軽な雰囲気で、心理的に見やすかった。(高校2年・女子・神奈川)

  • 『かながわ旬菜ナビ』(テレビ神奈川)
    若手農業者がYouTubeで農業の現場を伝える「農Tuber」を初めて知りました。亀井農園の亀井さんが発信する言葉や伝え方はわかりやすかったです。時短で作れる家族3世代分の大皿料理がおいしそうでした(中学2年・女子・千葉)

  • 『新 窓をあけて九州「笑顔のケーキをあなたに」』(熊本放送)
    地元の熊本に卵・牛乳・小麦粉を使っていないケーキがあるとは知りませんでした。子どもの喜ぶ表情や声、親の嬉しいという声がいろいろな場面で登場していました。アレルギーを克服してパティシエになった樋口響希さんの店はこぢんまりとしていますが、ケーキからは大きな喜びと愛が伝わってきます。番組ではあまりケーキが映らなかったので、もっと樋口さんのケーキを紹介してほしかったです。(高校2年・女子・熊本)

  • 『被爆80年特別番組「NO MORE・・・」長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典』(長崎放送)
    番組冒頭の黒焦げの遺体ですが、戦争で亡くなれば遺体を放送してもいいのでしょうか。この映像は番組中も多く流れていたため、原爆の脅威はとても伝わりましたが、鐘の話に集中できませんでした。ただ映像が放送されることで、被爆者の心の声を伝えることはできたと思います。式典開始まで被爆者の証言や取組みが放送されて、多くの人にも伝わる内容でした。(高校3年・女子・長崎)

◆委員のコメント◆

【終戦・戦争関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

  • 中学2年生のモニターの報告に「方言が聞き取りにくい部分があったがテロップのおかげで聞きやすかった」とあった。方言や昔の言葉、島言葉などは今ではなかなか聞き取れないこともあるので、きちんと残していってほしい。

  • 高校1年生のモニター報告を読んで「戦争の描写は怖くて直視できない」という若い世代に対しては、戦争映画や番組の制作過程を丁寧に紹介したり、資料館を紹介したりするのも、一つの手なのかもしれないと思った。

  • 全体的な感想として、中高生が今回選んで視聴した番組が、自分たちが“入りやすい”映像世界なのだろう。私は教育の世界にいるが、平和教育ではそれぞれの許容レベルに合った段階を踏んでいくほうがスムーズに入っていける。今回のテーマでは映画を視聴したモニターが多かったが、自分に合ったものからまず入って、学習の必要性を感じながら少しずつ難しい映像にも触れていくような段取りが必要だと思う。

  • 『ザ!戦後80年の映像遺産SP 池上彰×加藤浩次の運命の転換点』(フジテレビ)を視聴した中学3年生の報告に「視点」という言葉が繰り返し書かれていて、非常に考えさせられた。「戦争がどういうものか、様々な視点から見ることでだんだん分かってくる」と指摘していて、制作者が明確に意識している点をきちんと拾っていたと思う。しかし、視点が増えるほど理解が進んだつもりになるのも、これはこれで非常に危うい。それぞれの視点がどう構成されているのか批判的な視座が必要だし、多様な視点をよしとする価値観を突き詰めると主観的なドキュメンタリーを受け付けなくなってしまう怖さもある。主観が軽視される今の傾向は、昨今の“エビデンス至上主義”とも通底していて、戦争を伝える上での悩みどころの一つだろう。『アナウンサー百年百話 ラジオが伝えた戦争 第1回 「ラジオ太郎」と戦意高揚の時代』(NHKラジオ第2)を聴取した中学3年生の報告にも「ファクトチェックの重要性を「ラジオ太郎」が教えてくれました」とあったが、この書きぶりにも、データに基づかない情動的なコミュニケーションに対する警戒感を感じる。戦争の悲惨さを伝えることも“共感のコミュニケーション”という点では同じなので、こうした現代的な感覚を制作者は直視していく必要があると感じた。

【質問への回答について】

  • 中学2年生の報告に「夏休みに韓国の非武装地帯に行きツアーガイドの話を聞いた。徴兵制や、BTSが軍隊に入隊していたことの意味が分かった」とあったが、K-POPや韓国コスメへの関心の高さを踏まえると、韓国を通じた平和教育はポテンシャルが高いと感じた。

  • 高校2年生の報告に平和教育のヒントを感じた。まずはドラマやアニメが戦争に関心を持つきっかけであり(映像)、曾祖父や祖父母の話を聞いていたので映像の意味が心に沁みて(話)、加えて今後、広島の原爆ドームに行くという(体験)。「映像」「話」「体験」のセットがうまい順番でいくと、教育上よい効果があるのだと思った。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『第45回全国高等学校クイズ選手権 高校生クイズ2025』(日本テレビ)について、中学2年生のモニターが、津波警報の影響で後半の企画が変わったことに触れていた。去年は台風が直撃するなどハプニングが続いていて、制作者は大変なのだろうが、非常にテレビっぽく面白い仕上がりになっていた。スタジオで段取りよく収録するクイズ番組が供給過多になっている中で大変貴重な番組だし、若い視聴者もそういう意味で面白く視聴しているのだろう。

  • 長崎の高校3年生のモニター報告に「番組冒頭の黒焦げの遺体。原爆の脅威はとても伝わったが鐘の話(番組内容)に集中できなかった」とあった。悲惨さを伝えることと戦争や平和について考えることは、別にしてほしいという意見なのだろう。ボランティアで平和活動に参加し、原爆に関して多くの知識があるだろうモニターが「悲惨な映像に対して抵抗がある」とはっきり書いていたのが大変印象に残った。

今後の予定について

次回は2025年10月28日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上