2019年11月8日

TBSテレビ『クレイジージャーニー』審議入り

放送倫理検証委員会は11月8日の第143回委員会で、TBSテレビの『クレイジージャーニー』について、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、TBSテレビが2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』。TBSテレビは、海外に生息する珍しい動物を捕獲する企画を放送した際、番組スタッフが事前に準備した動物を、その場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行っていたと発表した。
専門家が「爬虫類ハンター」としてメキシコを訪れ、珍しい爬虫類を発見・捕獲するという企画で、放送後に外部からの指摘を受けて社内調査したところ、紹介した動物6種類のうち4種類が、事前に現地の協力者に依頼して捕獲し、生息地付近に放すなどしたものを使って撮影していたことが分かったという。
委員会は、当該番組の制作の経緯を知る必要があるとして、TBSテレビに報告書と同録DVDの提出を求めたうえで討議を継続し、審議入りを決めた。
神田安積委員長は、「報告書や番組の映像を見る限り放送倫理違反の疑いがあり、審議入りした」と話している。
委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2019年10月7日

長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、10月7日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、鈴木嘉一委員長代行、高田昌幸委員の3人が出席し、長野放送からは取締役(編成・業務推進・放送番組審議会担当)ら2人が出席した。
神田委員長は委員会決定について、「民放連放送基準(92)や、当該基準を踏まえて民放連が策定した『番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項』の『視聴者に「広告放送」であると誤解されないよう、特に留意すべき事項』に照らした適正な考査が行われておらず、放送倫理違反があったと判断した」と説明した。続いて鈴木委員長代行が、「問題点と背景として、考査体制というシステムの不備だけでなく、局員の当事者意識の希薄さがあった」と述べ、高田委員が、「持ち込み番組とはいえ、放送の数日前まで内容を誰も把握していなかった」と発言した。これに対して長野放送は、「この意見書を真摯に受け止め、今後の放送活動に生かしていく。全社一丸となり再発防止に取り組んでいく」と述べた。
続いて、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には43社80人が出席した。
はじめに神田委員長が、「持ち込み番組の場合、放送局による考査が適正に行われたどうかが検証の対象となる。その前提として番組の放送倫理上の問題の有無について検討した。その結果、当該放送局の考査は、民放連放送基準(92)や、当該基準を踏まえて民放連が策定した『番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項』の『視聴者に「広告放送」であると誤解されないよう、特に留意すべき事項』に照らした適正な考査を行わず、当該番組を放送したことについて放送倫理違反があったと判断した」と説明し、さらに、「当該番組を『留意事項』に照らして判断したとき、視聴者に広告放送であると誤解される番組であると委員会は事実認定した。放送基準の解釈・運用については各放送事業者の自主・自律的な判断が尊重されるべきであり、広告に関する放送に当たっても、各放送事業者が、『留意事項』等に照らして、自主・自律的な判断をしていただきたい」と補足した。続いて鈴木委員長代行が、「今回第30号となる意見書の特徴は、端緒が視聴者からのメールであった点、初めて広告との関係を問うものである点、2年前の東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』に対する意見書に続き持ち込み番組の考査のありかたを問うものである点である。『ニュース女子』に対する意見書では考査のあり方に対する注意喚起を行ったが、現場に浸透しておらず残念である」と述べた。高田委員は、「関係者の当事者意識が薄かった。番組に対してそれぞれ関わった人たちが少しでも番組の内容に関心をもっていればこうしたことは起きなかったのではないか」と述べた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 改稿要請すべきところをせずに放送した結果、広告放送と誤解されたという結果になった。この点が放送倫理違反と結論づけられたということでよいか?
A: それで結構である。(鈴木委員長代行)
   
Q: 広告放送でなかったものが広告放送と見られたのがよくないということでよいか?
A: 広告放送であると判断しておらず、広告放送であると誤解される番組であるという判断をし、その前提に立って意見を述べている。(神田委員長)
   
Q: 番組は放送基準に抵触したのか?
A: 放送基準(92)「広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」を踏まえて、民放連の「番組内で消費・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」が規定され、その中の「2.視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」において、「視聴者に『広告放送』であると誤解を招くような内容・演出になっていないかを、総合的に判断する必要がある」と規定されている。今回の事案は、放送基準(92)を踏まえて規定された「留意事項」2の「広告放送であると誤解される番組」であったと判断し、放送基準(92)及び「留意事項」2に反しているという評価をした。(神田委員長)
   
Q: 『ニュース女子』に対する意見書の教訓が現場に浸透していなかったことについてどう受け止めるか?また浸透させるための課題は?
A: 当該意見書の教訓が現場に浸透していないとすれば、委員会全体としても極めて残念、遺憾だと受け止めている。当該放送局だけでなく放送局全体に刺さる意見書を書く工夫をしてきたが、今回のように持ち込み番組への考査の問題が短期間に繰り返されたとなると、意見書の工夫だけでは足りないところがあると思う。当委員会としても、意見書を出すだけではなく、放送局との意見交換の機会を増やし、これまでの様々な事例、意見書のエッセンスを上層部の方々だけでなく現場で制作に関わる方々に伝え、直接意見交換をし、よりよい放送をしてもらうために、放送倫理を常に意識して自主・自律的に議論、判断することが大切であるということを考える機会をもっと設けていきたいと考えている。(神田委員長)

以上

第142回 放送倫理検証委員会

第142回–2019年10月

"生き物捕獲バラエティー番組で事前に動物を用意"
TBSテレビ『クレイジージャーニー』を討議

第142回放送倫理検証委員会は10月11日に開催され、10月7日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行った長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
また、委員会が7月5日に通知・公表した日本テレビ『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見について、当該放送局から委員会に対し、具体的な改善策を含めた取り組み状況など対応報告が書面で提出され、その内容を検討した結果、当該対応報告を了承し、公表することとした。
出演者の不適切な差別的発言を放送し審議中の関西テレビの『胸いっぱいサミット!』について、担当委員から意見書の原案が示された。次回委員会には意見書の修正案が提出される予定である。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し審議中の読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、担当委員から意見書の修正案が示され、意見交換を行った。
参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を公示前日に紹介する内容を放送し、前回審議入りした北海道放送の『今日ドキッ!』について、当該放送局の番組関係者の一部に対して行われたヒアリングの結果について担当委員から報告があった。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて検証する必要があるとして、前回審議入りしたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』について、近く予定されている番組関係者へのヒアリングのポイント等について意見交換を行い、確認した。
少年野球のピッチャーの投球などスポーツ映像の早回し加工が行われ、前回の委員会で審議入りしたTBSテレビの『消えた天才』について、当該放送局から追加報告書が提出され、これを受けて担当委員から、当該番組関係者に対するヒアリングの準備に入る旨の報告があった。
海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組を放送した際、事前に準備した動物をその場で発見し捕獲したように見せる演出を行ったTBSテレビの『クレイジージャーニー』について、当該放送局から提出された報告書を基に討議した。その結果、番組内容が民放連放送基準に抵触している疑いがあり、他方で、当該放送局が調査を継続中であり、追加の報告書が提出される見込みであることを踏まえ、討議を継続することとした。

1. 長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見を通知・公表

長野放送『働き方改革から始まる未来』に関する意見(委員会決定第30号)について、当該放送局に対する通知と公表の記者会見が10月7日に行われた。
長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』については、5月の委員会で、番組で取り上げられている特定企業の事業紹介が広告放送と誤解されかねない内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りし、議論を続けてきた。
委員会は、長野放送が、民放連放送基準の「(92)広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」や、民放連が策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」の「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らした適正な考査を行わず、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断した。
今回の委員会では、委員会決定を伝えた長野放送のニュースを視聴し、委員長や担当委員から、会見での質疑応答などが報告された。

2. 日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見への対応報告を了承

委員会が7月5日に通知公表した、日本テレビの『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見(委員会決定第29号)への対応報告が、当該放送局から委員会に書面で提出された。
報告書には、情報・制作局の全社員が意見書を読んだ感想をアンケートとして集め、それを基にミーティングを開いたこと、意見書の真意をより深く理解するために放送倫理検証委員会の担当委員を招いて勉強会を開催したことなどが記載され、それぞれの会合で出た意見や感想が具体的かつ詳細に記されている。
委員会では、勉強会に出席した委員の「活発な意見交換ができた」という感想を踏まえて意見交換を行い、当該放送局が意見書で指摘した課題を受け止め、個々の社員においても自分の問題として受け止めていることが窺われ、局の対応も適切であるとして、当該対応報告を了承して、公表することにした。(委員会決定など2019年度 参照)

3. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

関西テレビが4月6日と5月18日に放送した情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』の中で、コメンテーターとして出演した作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言した。この発言について、当該放送局は、4月の放送前に制作や考査の責任者らが検討し、「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」と判断して放送したとしていたが、6月に、視聴者への配慮が足りず心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送した判断は誤りだったと謝罪した。
委員会は7月、人種や性別などによって取り扱いを差別しないなどとしている民放連の放送基準に照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われずに放送されたうえ、放送後にお詫びに至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この日の委員会では、担当委員から意見書の原案が示され、それを基に議論した。次回委員会には、意見書の修正案が示される予定である。

4. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別を執拗に確認する内容を放送した。ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。6月の委員会において、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議入りした。
今回は、前回の意見書の原案に対する議論を受けて担当委員から示された修正案の内容について意見交換が行われ、次回の委員会でも引き続き議論を行う予定である。

5. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議

北海道放送が参議院選挙公示前日の7月3日、夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材した様子を放送した。前回の委員会において、その他の比例代表の候補者や政党にはまったく言及しておらず、参議院比例代表選挙には制度上北海道という区切りを入れる余地がないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは、道内の有権者を当該候補者に誘導する効果を否定できないことからすれば、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性を害し、放送倫理違反となる可能性があり、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして審議入りした。
委員会では、当該放送局の番組関係者の一部に対して行われたヒアリングの結果が報告された。次回の委員会までに引き続きヒアリングを実施し、意見書の骨子案が示される予定である。

6. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番組『Inside Lens』で、家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、利用客として出演した男性ら3名がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。番組の制作担当者は利用客の属性や依頼の経緯などを再三にわたり確認しようとしたが、見抜くことができず、結果的に事実と異なる内容を放送することになったという。
前回の委員会において、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われなかったことなどについて、制作担当者から直接話を聞くなど、放送に至るまでの経緯を検証する必要があるとして審議入りした。
委員会では、担当委員が、近く予定されている番組関係者へのヒアリングのポイント等について説明し、意見交換を行った。

7. 少年野球のピッチャーの投球などスポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議

TBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について、当該放送局から委員会に対し、8月11日の放送で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した投手の試合映像を早回しして球速が速く見えるよう加工を行い、別の放送回でも、卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の映像について早回し加工を行っていたことが社内調査で判明したと報告があった。
前回の委員会において、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議入りが決まった。
委員会では、当該放送局から、その後の調査において当該番組の全放送回で他に同様の加工はなかった旨の追加報告書が提出されたことを受けて、担当委員から、当該番組関係者に対するヒアリングの準備に入る旨の報告があった。

8. 生き物捕獲バラエティー番組で動物を事前に用意していたTBSテレビの『クレイジージャーニー』を討議

TBSテレビは、2019年8月14日に放送したバラエティー番組『クレイジージャーニー』で、海外に生息する珍しい動物を捕獲する番組を放送した際、制作スタッフが事前に準備した動物を、その場で発見して捕獲したかのように見せる不適切な演出を行っていたと発表した。
当該放送局の報告書によれば、専門家が「爬虫類ハンター」としてメキシコを訪れ、珍しい爬虫類を発見・捕獲するという企画で、放送後、外部からの指摘を受け社内調査したところ、紹介した動物6種類のうち4種類が、事前に現地の協力者に依頼して捕獲し、生息地付近に放すなどしたものを使って撮影していたことがわかったという。また過去10回の「爬虫類ハンター」企画を調べた結果、計7回、11種類の生物が、事前に用意されたものであることがわかったという。
委員会では、当該放送局から提出された同録DVDや報告書を基に討議が行われた。委員からは「民放連放送基準『(32)ニュースは事実に基づいて報道し公正でなければならない』に抵触する疑いがある」「当該放送局が認めているように、この番組のロケ部分はドキュメンタリーや情報番組においても虚偽やねつ造が許されないことと同様に過剰な演出にならないように注意する必要がある」「事実を伝えていないという点で視聴者との約束に反している」などの意見が出された。
委員会は、当該放送局が、現在も海外の現地協力者などに対して調査を続けており、その結果について追加の報告書を提出するとしていることから、討議を継続することとした。

以上

第30号

長野放送
『働き方改革から始まる未来』に関する意見

2019年10月7日 放送局:長野放送

長野放送が2019年3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』については、2019年5月の委員会で、番組で取り上げられている特定企業の事業紹介が広告放送と誤解されかねない内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りし、議論を続けてきた。
委員会は、長野放送が、民放連放送基準の「(92)広告放送はコマーシャルによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」や、民放連が策定した「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」の「視聴者に『広告放送』であると誤解されないよう、特に留意すべき事項」に照らした適正な考査を行わず、本件番組を放送したことについて、放送倫理違反があったと判断した。

2019年10月7日 第30号委員会決定

全文はこちら(PDF)pdf

目 次

2019年10月7日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2019年10月7日午後1時30分からBPO第1会議室で行われ、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。記者会見には、43社80人が出席した。
詳細はこちら。

2020年1月10日【委員会決定に対する長野放送の対応と取り組み】

委員会決定 第30号に対して、長野放送から対応と取り組みをまとめた報告書が2019年12月26日付で提出され、委員会はこれを了承した。

長野放送の対応

全文pdf

目 次

  • 1. はじめに
  • 2. 視聴者に対する委員会決定のお知らせ
  • 3. 「役員・社員に対する放送倫理・番組基準の徹底と意識改革」に関する取り組み
  • 4. 「考査態勢の再構築」に関する取り組み
  • 5. 「持ち込み番組を含む外部制作番組の取り扱い要領の明文化」に関する取り組み
  • 6. 「制作会社に対する番組基準・放送倫理をめぐる情報共有」に関する取り組み
  • 7. 当社番組審議会での審議や報告
  • 8. おわりに

第141回 放送倫理検証委員会

第141回–2019年9月

長野放送『働き方改革から始まる未来』通知・公表へ

第141回放送倫理検証委員会は、新たに西土委員が加わり9月13日に開催された。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し審議中の読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、意見書の原案が示され意見交換をした。
内容が番組か広告か曖昧であるとして審議していた長野放送の持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』については、担当委員から意見書の修正案が提出された。委員会での議論の結果、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、10月上旬に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うこととなった。
出演者の不適切な差別的発言を放送し審議中の関西テレビの『胸いっぱいサミット!』について、担当委員から意見書の骨子案が示された。次回委員会には意見書の原案が提出される予定である。
仮の家族や恋人などをレンタルするサービスを描いた番組で、利用客として登場した人物がこのサービスを提供する会社のスタッフだったことが判明したNHK国際放送の『Inside Lens』について、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議した。その結果、利用客が当該会社関係者でないことの確認が適切に行われたのかどうかなど取材や制作の経緯等を検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。
参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の候補者を、公示前日に紹介した北海道放送の『今日ドキッ!』について、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議した。その結果、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれがあるとして審議入りすることを決めた。
少年野球のピッチャーの投球などスポーツの試合映像を早回し加工したTBSテレビの『消えた天才』について、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った。その結果、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を制作過程で加工した経緯等について検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

1. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し、ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。6月の委員会において、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議入りを決めた。
今回は、担当委員から意見書の原案が提出され意見交換が行われた。次回の委員会には、今回の議論を受けた意見書の修正案が示される予定である。

2. 「内容が番組か広告か曖昧だ」とされた長野放送の『働き方改革から始まる未来』通知・公表へ

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について、5月の委員会において、民放連放送基準に照らし番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送と誤解されかねない内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りしていた。委員会では、前回までの議論を受けて担当委員から示された意見書の修正案の内容について意見交換が行われ、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しの上、10月上旬に当該放送局へ通知して公表の記者会見を行うこととなった。

3. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

関西テレビが4月6日と5月18日に放送した情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』において、コメンテーターとして出演した女性作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言し、この発言について、当該放送局は、4月の放送前に制作や考査の責任者らが検討し、「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」と判断して放送したとしていたが、6月に、視聴者への配慮が足りず心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送した判断は誤りだったと謝罪した。
委員会は7月、人種や性別などによって取り扱いを差別しないなどとしている民放連の放送基準に照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われずに放送されたうえ、放送後にお詫びに至った経緯について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この日の委員会では、担当委員から意見書の骨子案が示され、それを基に議論した。次回委員会には、意見書の原案が示される予定である。

4. "レンタル家族"サービスの利用客として登場した人物がサービスを提供する会社のスタッフだったNHK国際放送『Inside Lens』について審議入り

2018年11月に放送されたNHK国際放送のドキュメンタリー番『Inside Lens』で、仮の家族や恋人などのレンタルサービスを描いた企画「HAPPIER THAN REAL」について、NHKは5月29日、外部から指摘があり、NHKが独自調査を行った結果、利用客として出演した男女3名がサービスを提供する会社のスタッフだったと発表した。
また、代行会社の社長が、利用客として番組に登場した3人は派遣スタッフとしてこの代行会社に登録していた人物であり、番組のため会社側が手配したことを認めたという。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った結果、本番組の内容からすれば、その取材や制作に際し、「制作者は出演を依頼する消費者や利用者の選定に当たっては、注意深くその人物が企業の関係者ではないかどうかの確認をしなければならない」(2012年7月31日放送倫理委員会決定第14号)という視点を踏まえ、利用客が会社関係者でないことの確認が適切に行われるべきであったところ、十分な確認をしなかった可能性が窺われるため、放送に至るまでの経緯や原因を検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

5. 参議院比例代表選挙に立候補を予定していた特定の政治家に取材し、公示前日に放送した北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』について審議入り

北海道放送が参議院選挙公示前日の7月3日、夕方のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家に密着取材し、他の比例代表の候補者にまったく触れなかったのは、公平性への配慮に欠けるという内容の批判的な意見が視聴者からBPOに寄せられた。
この番組は、長年にわたって政治活動を続けてきた一人の立候補予定者が、今回の選挙を「最後の戦い」だとして、スポーツジムで体を鍛えたり、国会議員でもある家族と買い物をしたりして選挙の準備をする様子が4分40秒余りにわたって放送されていた。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った結果、(1)参議院比例代表には複数の政党・政治団体から多数の候補者が立候補したが、当該番組は、北海道に関係がある1人の候補者のみを取り上げ、その他の政党や候補者には言及していないこと、(2)参議院比例代表選挙には制度上北海道という区切りを入れる余地がないので、北海道関係者だけを取り上げて放送することは、北海道内の有権者を、当該候補者に誘導する効果を否定できないことからすれば、本番組の内容は他の候補者との間で公平・公正性を害し、放送倫理違反となる可能性があり、しかも、この点に関しては放送倫理検証委員会が再三にわたり指摘してきたにもかかわらず(2010年12月2日放送倫理委員会決定第9号、2014年1月8日同第17号等)、制作に当たってその問題点が検討された形跡が窺われないことをも踏まえ、放送に至った経緯等について検証する必要があるとして審議入りすることとした。

6. 少年野球のピッチャーの投球などスポーツの映像を早回し加工したTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才』について審議入り

8月11日に放送されたTBSテレビのドキュメントバラエティー番組『消えた天才~2時間半スペシャル』で、リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した当時12歳の少年を紹介した際、投球シーン全31球のうち7球の映像を早回し加工し、実際より球速が約20%から50%速く見えるよう編集していたことが判明したと、当該放送局より委員会に報告があった。
報告書によると、当該番組を見ていたスポーツ局のスタッフが気づき、確認したところ、担当ディレクターが早回し加工を認めたという。また、その後の調査で、別の放送回で卓球とフィギュアスケート、サッカーの3件の試合映像を放送した際、同様の早回し加工が確認されたという。当該放送局は、過去の放送分すべてについて調査を行っており、調査完了まで同番組の放送を休止するとしている。
委員会は当該放送局から提出された報告書と同録DVDを基に討議を行った結果、スポーツ番組の根幹である実際の試合映像を加工したことは放送倫理上問題がある可能性があり、番組制作の経緯やどのようにチェックが行われたのかなどを検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。

以上

2019年9月13日

TBSテレビ『消えた天才』審議入り

放送倫理検証委員会は9月13日の第141回委員会で、TBSテレビの『消えた天才』について、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、TBSテレビが8月11日に放送した番組『消えた天才』2時間半スペシャル内「リトルリーグ全国大会で全打者三振の完全試合を達成した当時12歳の少年」の企画で、少年の試合映像を放送した際、映像を早回しすることで実際の投球よりも球速が速く見える加工を行っていた。
加工が行われたのは、放送した投球シーン全31球のうち7球で、投手がボールをリリースした瞬間からキャッチャーミットに収まるまでの約0.5秒間について、映像のスピードを実際よりも20パーセントから50パーセント程度速くしていた。
TBSテレビは、「アスリートの凄さを実際の映像で表現するという番組の根幹をなす部分を加工することは、番組としては絶対にあってはならない手法だと考えております」として9月5日、ホームページで「 取材に協力してくださったご本人及び関係者の方々、そして番組をご覧いただいた視聴者の皆様に深くお詫びいたします」と謝罪した。そのうえで、今回の事案を重く受け止め、調査が完了するまで「消えた天才」の放送を休止すると発表した。
また過去の放送で、同様の加工が行われていなかったかどうか調査を行った結果、8月11日放送分の他に3件あったことが確認されたとして、ホームページで内容を公表した。
委員会は、当該番組の制作の経緯を知る必要があるとして、TBSテレビに対して報告書と同録DVDの提出を求めたうえで討議し、審議入りを決めた。
神田安積委員長は、「TBSテレビからお詫びも出ているし、映像を早回し加工して複数回、放送したという報告を受けている。そういった点が放送倫理違反にあたる可能性があるということで、審議入りした」とコメントしている。
委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2019年9月13日

北海道放送『今日ドキッ!』審議入り

放送倫理検証委員会は9月13日の第141回委員会で、北海道放送『今日ドキッ!』について、審議入りすることを決めた。
対象となったのは北海道放送のローカルワイド番組『今日ドキッ!』で、参議院選挙公示前日の7月3日、比例代表に立候補を予定していた特定の政治家が選挙に備える様子を紹介した。視聴者から、この一人以外の他の比例代表の候補者に触れておらず公平性への配慮に欠けるという批判的な意見がBPOに寄せられたため、委員会は北海道放送に報告書と同録DVDの提出を求めて討議した。その結果、参議院比例代表選挙に関してこれまで放送倫理検証委員会が出した複数の意見書が指摘した問題点にまったく配慮していないといった批判が相次ぎ、審議入りすることを決めた。
神田安積委員長は、「公示の前日に、ある特定の候補について放送したことが問題になります」とコメントしている。
委員会は、今後、当該放送局の社員などからヒアリングを行うなどして審議を進める。

2019年9月13日

NHK国際放送番組『Inside Lens』(インサイド・レンズ)審議入り

放送倫理検証委員会は9月13日の第141回委員会で、NHK国際放送『NHKワールドJAPAN』の番組で、レンタル家族について放送した「Inside Lens」(インサイド・レンズ)について、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、NHKが2018年11月19日、国際放送『NHKワールドJAPAN』で放送したドキュメンタリー番組「Inside Lens」の中の『HAPPIER THAN REAL』。レンタル家族について放送した番組の出演者について、事実と異なる内容を伝えていたことがNHKの調査で分かった。
この番組では、家族や友人などのレンタルサービスを行う会社を、実際に利用客にサービスを提供する様子などを交えて紹介した。しかし、利用客として紹介した男女3人は、実際には客でなく、レンタルサービス会社が用意したスタッフだった。
NHKは、5月29日、判明した事実を公表するとともに、「事実と異なる内容を伝えたことは極めて遺憾であり、視聴者の皆さまにお詫びします」と謝罪。そのうえで、国際放送で訂正とお詫びをした。
委員会は、当該番組の制作の経緯を知る必要があるとして、NHKに対して報告書と同録DVDの提出を求めたうえで討議し、審議入りを決めた。
神田安積委員長は、「レンタル家族の放送で、その利用者が映像の中に出てくるわけですが、その利用者が会社の関係者だった。そういったことが放送倫理に触れるのではないか。さらに利害関係者かどうか確認が必要なのに、その確認が十分にされていなかったという問題があるので、討議・審議入りした」とコメントしている。
委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第140回 放送倫理検証委員会

第140回–2019年8月

関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

第140回放送倫理検証委員会は8月9日に開催された。
出演者の不適切な差別的発言を放送し、前回の委員会で審議入りした関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』について、当該放送局社員など番組関係者に対するヒアリングが行われ、その内容について担当委員から報告があった。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送した読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、前回の委員会以降に実施された当該放送局の社員など番組関係者に対するヒアリングの報告があり、担当委員から提出された意見書の構成案が示されて意見交換をした。
内容が番組か広告か曖昧であるとして審議中の長野放送のローカル番組『働き方改革から始まる未来』については、担当委員から提出された意見書案について議論された。

議事の詳細

日時
2019年8月9日(金)午後4時~午後9時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、藤田委員、巻委員

1. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議

4月6日と5月18日に放送された関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』で、コメンテーターとして出演した女性作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言し、民族差別や女性蔑視をあおる人権的配慮を欠いた放送であるという意見や、生放送ではなく収録番組であるのに編集作業で発言がカットされなかった点などについて、BPOに多数の批判が寄せられた。
委員会は、民放連の放送基準が人種や性別などによって取り扱いを差別しないとしていることに照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われず放送された経緯や放送後におわびに至るまでの経緯について、詳しく調査し検証する必要があるとして、前回、審議入りを決めた。
委員会では、担当委員が8月に行った当該放送局や制作会社の担当者に対してのヒアリングの内容が報告された。次回委員会では、意見交換を踏まえた意見書の骨子案が示される予定である。

2. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別確認のために名前や住所、異性の恋人の有無を聞くなどしたうえ、本人の健康保険証の性別欄を撮影し、胸部に触るなどの執拗な確認行為をする模様を放送した。ロケのVTR終了後、スタジオで見ていたレギュラー出演の男性コメンテーターから許し難い人権感覚の欠如であって報道番組としての感覚を疑う旨の厳しい叱責があったが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。
委員会は、当該放送局の事後の自主・自律の迅速な対応は評価できるものの、なぜこの内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして審議している。
今回は、前回の委員会以降に実施された当該放送局の社員など番組関係者に対するヒアリングの報告と意見書の構成案の説明が担当委員から行われ、意見交換した。次回は意見書の原案が提出される予定である。

3. 内容が番組か広告か曖昧だとされた長野放送の『働き方改革から始まる未来』について審議

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について、5月の委員会で、民放連放送基準に照らし番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りしている。
委員会では、前回の議論を受けて担当委員から示された意見書案の内容について意見交換が行われた。次回も意見書案について議論を続ける予定である。

以上

第139回 放送倫理検証委員会

第139回–2019年7月

関西テレビ『胸いっぱいサミット!』審議入り

第139回放送倫理検証委員会は7月12日に開催され、7月5日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行った日本テレビの『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見について、出席した委員長代行や担当委員から当日の様子が報告された。
街頭取材で取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送し、前回の委員会で審議入りした読売テレビのローカルニュース『かんさい情報ネットten.』について、当該放送局など番組関係者に対するヒアリングが始まり、担当委員からその途中経過が報告された。
内容が番組か広告か曖昧であるとして審議中の長野放送のローカル番組『働き方改革から始まる未来』については、担当委員から示された意見書案について議論された。
出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』について、当該放送局から報告書と同録DVDの提出を受け討議を行った。その結果、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われず放送に至った経緯や放送後にお詫びに至るまでの経緯について、詳しく調査し検証する必要があるとして審議入りすることを決めた。
6月12日に放送されたTBSテレビのバラエティー番組『水曜日のダウンタウン』の企画「中継先にヤバめ素人が現れてもベテランリポーターなら華麗にさばける説」における「ヤバめ素人」の描かれ方について当該放送局から報告書と同録DVDの提出を受け討議を行った。その結果、当該企画は、民放連の放送基準に抵触している疑いがあるが、当該放送局は放送直後に視聴者から批判を受け、演出上の配慮や注意喚起が十分ではなかったと真摯に受け止めており、また、番組制作者にも差別に関する研修に参加するよう指導するなどの自主的・自律的な対応もとられているとして討議を終了することとした。
番組内で差別的表現があったことをお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』について、委員会は討議を継続していたが、当該放送局のその後の自主的・自律的な対応を踏まえて討議を終了した。

1. 日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見の通知・公表について

日本テレビ『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』2つの「祭り企画」に関する意見(委員会決定第29号)について、当該放送局に対する通知と公表の記者会見が7月5日に行われた。2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この2つの「祭り企画」を対象に審議を続けていた。
委員会は、「祭り」が番組のために用意されたものであったのに制作スタッフがその過程を把握していなかったこと、また視聴者の「了解」の範囲を見誤りナレーションによって地元に根差した「祭り」に出演者が体当たりで挑戦していると思わせてしまったこと、さらに挑戦の舞台である「祭り」への制作スタッフの関心が薄くなっていく中で安易なナレーションを生んでしまった、と検証したうえで、程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があったと言わざるをえないと判断した。
委員会では、委員会決定を伝えた日本テレビのニュースを視聴し、委員長代行や担当委員から、通知の際のやりとりや会見での質疑応答などが報告された。

2. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議

読売テレビは、5月10日夕方のローカルニュース『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画の中で、取材協力者に対して性別確認のために名前や住所、異性の恋人の有無を聞くなどしたうえ、本人の健康保険証の性別欄を撮影し、胸部に触るなどの執拗な確認行為をする模様を放送した。ロケのVTR終了後、レギュラー出演の男性コメンテーターが番組内容について、許し難い人権感覚の欠如であって報道番組としての感覚を疑うと厳しく叱責したが、特に他の出演者からの反応はなく当該コーナーの放送は終わった。
その後読売テレビは、取材協力者や視聴者に謝罪するとともに、なぜ当該コーナーを取材し放送に至ったのかについて検証する番組を放送した。さらに社内に「検証・再発防止検討チーム」を設置して、人権に関する全社研修会の実施や映像チェック体制の強化を図るとともに、独自の検証結果を公表した。
委員会は、当該放送局の自主的・自律的な迅速な対応は評価できるものの、なぜ十分な議論や反対意見が出された形跡がないまま、この内容が放送されるに至ったかの経緯等を解明する必要があるとして、前回審議入りを決めた。7月上旬、担当委員が当該放送局や制作会社の担当者の一部に対してヒアリングを行い、その途中経過が報告された。次回委員会までに引き続きヒアリングを実施する予定である。

3.「内容が番組か広告か曖昧だ」とされた長野放送の『働き方改革から始まる未来』を審議

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について、5月の委員会で、民放連放送基準に照らし番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、考査が適正だったか検証する必要があるとして審議入りしている。委員会では前回に引き続き、担当委員から示された意見書案の内容について意見交換が行われた。次回も意見書案について議論を続ける予定である。

4. 出演者の不適切な差別的発言を放送した関西テレビ『胸いっぱいサミット!』について審議入り決定

4月6日と5月18日に放送された関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』で、コメンテーターとして出演した女性作家が、韓国人の気質について「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言し、民族差別や女性蔑視をあおる人権的配慮を欠いた放送であるとの批判的意見や、番組は生放送ではなく収録されたもので、編集作業で発言がカットされなかったことについての批判がBPOに多数寄せられた。
当該放送局の報告書によると、4月6日の番組内容について、制作や考査の責任者らが事前に発言を検討し、当該発言は「国の外交姿勢を擬人化したもので、民族・人種への言及ではない」「配偶者が韓国人であり、頻繁に韓国を訪れ親近感を持っているコメンテーターならではの比喩表現であり、差別には当たらない」との判断を行った、5月18日についても、発言には差別的意図はないと判断し、放送したとしている。
放送後、関西テレビは、5月24日、「人種、民族、性別や自傷行為を繰り返す方々への差別的意図はない」という見解をまとめたものの、その後、6月18日に至り、「視聴者への配慮が足りず、心情を傷つける可能性のある表現で、そのまま放送するという判断は誤りだった」とする謝罪コメントを発表、社長も記者会見で謝罪した。
委員会は、当該放送局から提出された報告書と当該番組のDVDを基に討議した結果、民放連の放送基準が、人種・性別などを表現する時に、なにげない表現が当事者にとって重大な侮蔑あるいは差別として受け取られることが少なくないなどとしていることに照らし、収録番組であるにもかかわらず適切な編集が行われず放送に至った経緯や放送後にお詫びに至るまでの経緯について、詳しく調査し検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行い、審議を進める予定である。

5. TBSテレビ『水曜日のダウンタウン』の「中継先にヤバめ素人が現れてもベテランリポーターなら華麗にさばける説」企画について討議

6月12日に放送されたTBSテレビのバラエティー番組『水曜日のダウンタウン』の企画「中継先にヤバめ素人が現れてもベテランリポーターなら華麗にさばける説」について、放送後BPOに「障害者をネタとし、健常な対応がとれない素人に(リポーターが)どう対応するかを笑う特集になっています」など批判的な意見が複数寄せられた。このため委員会は、当該放送局に番組の同録DVDと報告書の提出を求め、討議を行った。
TBSテレビの報告書によると、『水曜日のダウンタウン』で2018年10月3日にも「中継先に現れたヤバめ素人のさばき方で芸人の力量丸わかり説」という企画を放送し、その時と同じ俳優が「ヤバめ素人」を演じたという。また、昨年10月の放送後「障害者をイメージさせて不快である」という主旨の意見が2件寄せられていたため、今回の企画においては、視聴者にそのような意図にとられないよう検討した上で演出を行ったということであるが、TBSテレビには視聴者から「障害者を演じている設定に見えました」「障害者を笑うつもりですか」などと批判的な意見が寄せられ、身内に発達障害の方がいるという局員からも「障害がある者を身内に持つ身としては、辛い部分もあった」という指摘を受け、改めて社内で話し合ったという。
委員会では、当該企画は民放連の放送基準「(56)精神的・肉体的障害に触れる時は、同じ障害に悩む人々の感情に配慮しなければならない」で記されている配慮が足りなかったという意見が大勢を占め、上記の演出の工夫では改善されたとは思えないという意見も出されたが、昨年10月の放送への批判を受け、限定的ではあるが改善する努力をしていた点を考慮できるとの意見もあった。
その結果、障害がある方やその家族の視点を踏まえた演出上の配慮や注意喚起が十分ではなかったと真摯に受け止めており、また、番組制作者にも差別に関する研修に参加するよう指導したり、番組スタッフ全員で問題点を共有し、今回のような配慮が足りず不快感を与えるような演出については避けるなどの自主的・自律的な対応もとられているとして討議を終了することとした。

6. 高校中退芸人の差別的発言をお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』を討議

テレビ朝日は2月14日に放送したバラエティー番組『アメトーーク!』の中で出演者の女性芸人が自身の体験を語った際、自身が中途退学した高校の実名を挙げ、学校側が不良生徒対策をしているかのような発言をした。また司会者も、その方面に行かない方がいいという趣旨の差別的な表現をした。さらに、他の出演者の「道できれいな10円を12円で売っている」人がいたとの発言に、その様子をイメージするかのようなイラストを挿入するなどの内容を放送した。
当該放送局の報告書によると、3月に当該高校などから謝罪・訂正を求められ、番組担当者が関係者と面会して直接謝罪したという。そして当該高校などからは一連の対応に理解を示してもらったという。
委員会では、討議を継続してきたが、当事者間で話し合いの場を設けてお詫びをしており、当該放送局の自主的・自律的な取り組みを評価して、委員からの意見を議事概要に公表することにして討議を終了した。

【委員の主な意見】

  • 番組内容のチェックが甘く、差別や人権など社会問題に対する認識が見受けられない。制作者には教育と啓発が必要である。

  • 高校の実名を出す必要性が感じられない。

  • 放送倫理上の問題があるが、放送やホームページで訂正するなど、抗議を受けた後は自主的・自律的に対応している。

以上

2019年7月5日

日本テレビ
『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』
2つの「祭り企画」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、7月5日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から神田安積委員長、升味佐江子委員長代行、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員の5人が出席し、日本テレビからは取締役執行役員(コンプライアンス担当)ら3人が出席した。
まず升味委員長代行が、「祭り」が番組のために用意されたものであったのに制作スタッフがその過程を把握していなかったこと、また視聴者の「了解」の範囲を見誤りナレーションによって地元に根差した「祭り」に出演者が体当たりしていると思わせてしまったこと、さらに挑戦の舞台である「祭り」への関心が薄くなっていく中で安易なナレーションを生んでしまった、という委員会の検証を解説し、程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があったと言わざるをえないという判断になったことを説明した。
これに対して日本テレビは、「丁寧な審議に感謝している。今回の決定を真摯に受け止め、今後の番組制作にいかしていく。視聴者に自信を持って伝えられる体制を整えてから、ぜひ『祭り企画』を再開させたい」と述べた。
その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、30社62人が出席した。
はじめに升味委員長代行が、意見書の内容を紹介して判断にいたった経緯を説明した。岸本委員は「どこまで視聴者に伝える必要があるのかという問いが現場から聞かれたが、それ以前に、制作過程を正確に把握していなかったことが問題だ。すべてを把握してはじめて、バラエティーが豊かな番組空間を作り出せる」と述べた。中野委員は「日曜日の夜8時にこの番組を見ている人たちは、番組のコアなファンだけでなく、多様な視聴者がいることを忘れてはならない。現地コーディネーターに頼りすぎるのでなく、コーディネーターとのコミュニケーションを密にしてほしい」と呼び掛けた。さらに藤田委員は、これまでに放送倫理検証委員会が出したバラエティーの意見書(決定第7号 2009年11月17日)について触れ、「番組のすみずみまで計算しつくしてはじめてバラエティーが成り立つ」という委員会の考えに変わりがないことを説明した。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 祭り企画は全部で111回放送しているが、2つ以外の「祭り企画」を審議の対象とはしなかったのか?
A: 審議に必要なものは視聴したが、この2件について掘り下げて審議することに意味があると考えた。(升味委員長代行)
   
Q: 現地コーディネーターは、制作スタッフの一員なのか?あるいは外部の存在なのか?
A: 独立した当事者。企画が通ってはじめて経済的にも対価を得ている。制作スタッフと現地コーディネーターとの関係は、放送局と制作会社との関係とは異なる。(中野委員)
   
  制作スタッフは、企画の提案を各方面に投げかけ、提案されたいくつもの企画の中から選んだものについてロケをしている。選ばれた企画の現地コーディネーターは、制作スタッフと一体ではなく、制作会社と契約関係にある独立した他者だ。ただし、制作スタッフがその企画を採用して番組にしているのだから企画内容には責任を伴い、ロケに入ってからは制作スタッフと現地コーディネーターのコミュニケーションが大切であるのに、今回はこのコミュニケーションが欠けていた。(藤田委員)
   
  日本テレビは問題が明るみに出た当初、現地コーディネーターを切り離して外の存在であるかのように言っていたが、その後、番組制作の大切な協力者だと訂正した。委員会のヒアリングの対象は普段は放送局と制作会社だが、今回は制作会社の協力者という立場で、コーディネーターにもヒアリングに応じてもらった。(岸本委員)
   
Q: 「やらせ」「でっちあげ」という指摘については、どういう議論があったのか?
A: これまでも、委員会では、「やらせ」「でっち上げ」を定義し、その番組がこれにあたるかあたらないかという判断の仕方はとっていない。今回の『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』についていえば、バラエティー番組であり、番組の素材として番組のために何か物を作る、何かを準備するということ自体が倫理違反であるとは考えていない。そこにある事実そのものを伝える報道番組やそのようなドキュメンタリーとは違う面があると考えている。(升味委員長代行)

以上

2019年7月12日

関西テレビの情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』審議入り

放送倫理検証委員会は7月12日の第139回委員会で、関西テレビの『胸いっぱいサミット!』について、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、関西テレビが4月6日と5月18日に放送した情報バラエティー番組『胸いっぱいサミット!』で、コメンテーターの作家が、韓国人の気質について、「手首切るブスみたいなもんなんですよ」と発言。民族差別や女性蔑視をあおる人権的配慮を欠いた放送であるとの批判的な意見がBPOに寄せられた。番組は生放送ではなく収録されたもので、編集でカットされなかったことについても批判が相次いだ。
委員会は、当該番組の制作の経緯を知る必要があるとして、当該放送局に対して報告書と同録DVDの提出を求めたうえで討議し、審議入りを決めた。
神田安積委員長は、民放連の放送基準が、人種や性別などによって取り扱いを差別しないとしていることを挙げ、「当該放送局がスタジオ収録を経て編集・放送、そしてお詫びに至った経緯について詳しく検証する必要がある」と話している。
委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第29号

日本テレビ
『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』
2つの「祭り企画」に関する意見

2019年7月5日 放送局:日本テレビ

日本テレビの『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』で、2017年2月に放送された「タイ・カリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオス・橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この2つの「祭り企画」を対象に審議を続けてきた。
委員会は(1)「祭り」は番組のために用意されたものであったが、制作スタッフはその過程を把握していなかった(2)視聴者の「了解」の範囲を見誤り、地元に根差した「祭り」への体当たり挑戦だとナレーションで思わせた(3)挑戦の舞台である「祭り」そのものへの関心が希薄化したため安易なナレーションを生んだ、と分析した。そして、制作過程の重要な部分を制作者側が把握していなかった点でその過程が適正に保たれておらず、現地にもともとある祭りに出演者が参加しているように視聴者を誘導した点で、多くの視聴者が番組に求める約束に反したものだったと言われても仕方がないとして、2つの「祭り企画」には、程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があったと言わざるを得ないと判断した。
そのうえで、世の中の権威や無意味な制約を笑いとばし、差別や偏見のばかばかしさを暴き、新たな驚きや笑いを視聴者に届けるしなやかさや気概を持ち続けてほしいとバラエティー制作者に呼びかけた。

2019年7月5日 第29号委員会決定

全文はこちら(PDF)pdf

目 次

  • I はじめにpdf
  • II 審議の対象とした番組pdf
    • 1 「ラオス・橋祭り」
    • 2 「タイ・カリフラワー祭り」
  • III 本件放送の制作過程と問題が指摘されたあとの日本テレビの対応pdf
    • 1 『イッテQ!』の制作体制
    • 2 「祭り企画」について
    • 3 「ラオス・橋祭り」の制作過程
    • 4 「タイ・カリフラワー祭り」の制作過程
    • 5 問題が指摘されたあとの日本テレビの対応
    • 6 その他の「祭り企画」109回の調査報告の検討
  • IV 委員会の検証pdf
    • 1 「祭り」は番組のために用意されたものであったが、制作スタッフはその過程を把握していなかった
    • 2 視聴者の「了解」の範囲を見誤り、ナレーションによって地元に根差した「祭り」への体当たり挑戦と思わせた
    • 3 挑戦の舞台である「祭り」そのものへの関心が希薄化し、安易なナレーションを生んだ
  • V 委員会の判断pdf
  • VI おわりにpdf

2019年7月5日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2019年7月5日午後1時30分からBPO第1会議室で行われ、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。記者会見には、30社62人が出席した。
詳細はこちら。

2019年10月11日【委員会決定を受けての日本テレビの対応】

標記事案の委員会決定(2019年7月5日)を受けて、当該の日本テレビは、対応と取り組み状況をまとめた報告書を当委員会に提出した。
10月11日に開催された委員会において、報告書の内容が検討され、了承された。

日本テレビの対応

全文pdf

目 次

  • 1、委員会決定についての報道
  • 2、情報・制作局の取り組み
  • 3、BPO委員を招いて研修会を実施
  • 4、決定内容の社内周知について
  • 5、番組審議会への報告
  • 6、イッテQ 再発防止への取り組み
  • 7、総括

第138回 放送倫理検証委員会

第138回–2019年6月

日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』の審議

第138回放送倫理検証委員会は6月14日に開催され、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、審議を続けている日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、担当委員から意見書の再修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、7月初めにも当該放送局へ通知して公表の記者会見を開く見込みとなった。
長野放送がローカルで放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』については、放送内容が番組か広告か曖昧であり、考査が適正だったか検証する必要があるとして、前回の委員会で審議入りが決まった。その後、担当委員が当該放送局や制作会社の担当者に対してヒアリングを行い、それを基にまとめた意見書の構成や原案の一部が示され、意見交換を行った。
街頭取材で、取材協力者の性別を執拗に確認する内容を放送した読売テレビのローカルニュース番組『かんさい情報ネットten.』について、当該放送局から提出された報告書などを基に討議した。その結果、プライバシーや人権への配慮を著しく欠いた不適切な放送であり、この内容が放送されるに至った経緯を解明する必要があるとして、審議入りすることを決めた。
番組内で差別的表現があったことをお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』について、追加報告書が提出されて委員会で議論したが、さらに討議を継続することになった。
統一地方選挙の告示約3週間前に立候補予定の現職知事のインタビューを放送したテレビ東京の『日曜ビッグバラエティ』および立候補していた現職の知事を、告示の翌日に番組内で取り上げたCBCテレビの『ゴゴスマ』について、当該放送局に報告書の提出を求めて討議した。報告書によると、前者については、制作スタッフは選挙を巡る放送基準は認識していたが、告示の3週間前であることに思いが及ばず放送に至ったとのことであり、後者については、制作スタッフは選挙期間中の候補者を扱う場合には注意が必要との認識はあったものの、紹介した知事が候補者かどうかの確認を怠ったという。委員会では、最近の討議事案と類似のミスが繰り返されていることに厳しい意見が出されたが、いずれの番組も他の候補者との間で実質的に公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまで達しておらず、今後、各放送局が、社内のチェック体制を構築して再発防止に努めるとしていることから、今回は審議に入らず、議事概要に主な意見を記載して改めて注意喚起をすることとし、討議を終了した。

1.「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議

日本テレビの『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この2つの「祭り企画」を対象に審議を続けてきた。
この日は、前回までの議論を受けて担当委員が作成した意見書の再修正案が示された。意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、表現などについて一部手直しをしたうえで、7月初めにも当該放送局へ通知して公表の記者会見を開く見込みとなった。
なお、神田委員長は当該番組の審議には参加していない。

2.「内容が番組か広告か曖昧だ」とされた長野放送の持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』を審議

長野放送が3月21日にローカル放送した持ち込み番組『働き方改革から始まる未来』について視聴者から「放送番組なのか広告なのか曖昧だ」という趣旨の意見がBPOに寄せられた。当該番組は30分枠の編成で、2分間のステーションブレークを除いた28分間には、中CMがなかった。前回の委員会で、当該番組で取り上げている特定の社会保険労務士法人の事業紹介は、民放連の放送基準に照らして広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、考査が適正だったのか検証する必要があるとして、審議入りを決めた。その後5月末から6月初めにかけて、担当委員が長野放送社員や番組を制作した制作会社の担当者にヒアリングを行った。
今回の委員会では、担当委員からヒアリングの概要が報告され、併せて、長野放送から再発防止策に向けた改善策などが記載された追加報告書が提出されたことも報告されたうえで、意見書の構成や原案の一部が示され、意見交換が行われた。次回も引き続き意見書案を中心に審議する予定である。

3. 人権にかかわる不適切な取材と内容を放送した読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について審議入り

読売テレビが5月10日に放送した夕方のローカルニュース番組『かんさい情報ネットten.』のコーナー企画について、「プライバシーおよび人権を侵害しているのではないか」という批判的な意見がBPOに対して多数寄せられた。
「迷ってナンボ!」と題されたコーナー企画は、お笑い芸人2人が街頭に出て、人々のさまざまな疑問や迷いを探し、その場で解決していくというもので、当該番組は、大阪市内の飲食店の女性に依頼され、男性常連客の性別を確認するというものだった。その際、名前や住所、異性の恋人の有無を聞くなどしたうえ、本人の健康保険証の性別欄を撮影し、胸部に触るなどした。ロケのVTRが終わって映像がスタジオに切り替わった際、レギュラー出演している男性コメンテーターが「許し難い人権感覚の欠如だ。よくこんなもの放送できるね。報道番組としてどういう感覚なのか」と厳しく叱責し、司会のアナウンサーなど他の出演者がその指摘に特に応じることなくコーナーの放送は終わった。
これを受けて読売テレビは5月13日、取材協力者に謝罪するとともに、番組ホームページに謝罪コメントを掲載、その日の同番組冒頭でも「人権的配慮に欠けた不適切な放送であった」と謝罪した。5月15日には番組を拡大し、問題を指摘したコメンテーターも出演して、なぜ当該コーナーを取材し、放送に至ったのかについて検証する番組を放送した。また、「迷ってナンボ!」という当該コーナーを当面の間休止すると発表した。
さらに社内に、「検証・再発防止検討チーム」を設置して、人権に関する全社研修会の実施や映像チェック体制の強化を図るとともに、独自の検証結果を公表した。また、視聴者からの意見に答える番組『声 あなたと読売テレビ』で、寄せられた意見を紹介し今回の問題点や再発防止策などについて改めて視聴者に説明した。
委員会では、当該放送局から提出された映像素材や報告書を基に討議が行われ、委員から「性的少数者の描き方に根本的な問題がある」「あまりにもマジョリティーの立場に立ちすぎた放送で重大性は群を抜いている」「放送内容のみならず制作過程に大きな問題があるのではないか」などの批判的意見が相次いだ。また、「深刻なのはコメンテーターや視聴者から指摘されるまで出演者だけでなく制作陣が問題に気づいていなかったことだ」「社会の批判的感覚と局内の感覚に深いギャップがある」との指摘もあった。
討議の結果、当該放送局の自主・自律の迅速な対応は評価できるが、読売テレビの放送基準が準拠する民放連放送基準の条項に複数抵触するおそれがあるとの意見や、十分な議論や反対意見が出された形跡がないまま、この内容が放送されるに至ったかを解明する必要があるなどの意見が出され、審議入りを決定した。

4. 高校中退芸人の差別的表現をお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』を討議

テレビ朝日は2月14日に放送したバラエティー番組『アメトーーク!』の中で出演者の女性芸人が自身の体験を語った際、自身が中途退学した高校の実名を挙げ、学校側が不良生徒対策をしているかのような発言をした。また司会者も、その方面に行かない方がいいという趣旨の差別的な表現をした。さらに、他の出演者の「道できれいな10円を12円で売っている」人がいたとの発言にその様子をイメージするかのようなイラストを挿入するなどの内容を放送した。
当該放送局の報告書によると、3月に当該高校などから謝罪・訂正を求められ、番組担当者が関係者と面会して直接謝罪したという。当該高校などからは一連の対応に理解を示してもらったという。
委員会では、当該放送局から提出された追加報告書を基に意見交換したが、討議を継続することになった。

5-1. 統一地方選挙の告示約3週間前に現職知事のインタビューを放送したテレビ東京の『日曜ビッグバラエティ』を討議

テレビ東京はバラエティー番組『日曜ビッグバラエティ』で、3月3日に『不法投棄を許すな!ヤバいゴミぜんぶ拾う大作戦~東京湾ダイバー70人で潜って一斉清掃SP~』を放送した。この番組の「三重県の不法投棄地帯で奮闘する不法投棄Gメンに密着」という特集コーナーの中で、三重県知事がインタビュー出演した。番組はゴミの不法投棄を取り締まる三重県職員の奮闘ぶりを伝えるもので、その一部として現職知事のインタビューが37秒間放送された。
放送日は、統一地方選挙で三重県知事選挙の告示まで約3週間前だった。
委員会は、当該放送局に対して、告示の1カ月前を切った時期に現職知事を放送した経緯について、報告書と番組DVDの提出を求めて討議した。
報告書によると、制作会社のディレクターやプロデューサー、テレビ東京の社員も含め番組スタッフは民放連放送基準「(12)選挙事前運動の疑いがあるものは取り扱わない」の規定は認識していたが、知事のインタビュー出演が選挙事前運動にあたるとは考えなかったという。このため放送日が「告示の1カ月前を切った、3週間前の放送」になってしまう事に思いが及ばず、放送に至ったとしている。
選挙関連の放送を巡っては、これまでに複数の委員会決定や委員長コメントを出しており、つい最近の討議事案においても改めて注意喚起したにもかかわらず同様のミスが繰り返されていることについて厳しい意見があった。他方で、放送倫理違反の有無の判断にあたっては、候補者が番組に出演しているかどうかという形式的な観点からの検討だけでは十分ではなく、視聴者、有権者に与える印象の程度を考慮して、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれがないかどうかという実質的な観点も合わせて判断すべきであること(決定第9号)を踏まえ、視聴者に与える印象の程度、放送の時期が選挙期間中であるか否か、露出の時間の長短、番組の性質が候補者への投票を誘導するような影響を生じるものか否か等の観点から検討すると、本件番組は、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまで達しているとまでは言えないだろうとの判断で一致した。また、当該放送局は、今回の事案を受けて、社内に向けた注意喚起をより一層強化するとともに社内のチェック体制を構築し、制作会社に向けて説明する機会を設けるなど、再発防止に努めるとしている。
以上を踏まえ、委員会は、委員からの厳しい意見を議事概要に公表して、当該放送局に対して、当該担当部門だけでなく、全社をあげて選挙の公平・公正性の確保のために自主・自律に定めたルールが守られるよう注意喚起をすることとして、今回は審議に入らず討議を終了した。

【委員の主な意見】

  • 選挙は現職に有利であるとされており、インタビュー取材の相手は立候補予定者の現職知事ではなく、現職知事以外の責任者でも良かったはずではないか。

  • 現職の知事が自治体の最高責任者であることを踏まえて、懸案となっている不法投棄問題についてインタビュー取材を申し入れることはあり得ると考えられるが、今回のように、現職知事が政策や政治活動の実効性について発言することになれば、告示前であっても選挙の事前運動的効果が強いと視聴者に受け取られかねず注意が必要だ。

  • 統一地方選挙の時期である以上、日頃は守備範囲外である地方選挙に対しても感覚を鋭敏にすべきであるにもかかわらず、告示の3週間前であることなどについて意識が希薄であったことは問題であり、残念である。

  • 今年2月の委員会の選挙関連事案に際して注意喚起した意見が生かされておらず、大変遺憾である。

5-2. 統一地方選挙期間中に現職候補者の顔写真と名前を放送したCBCテレビの情報番組『ゴゴスマ』を討議

3月22日に放送されたCBCテレビの情報番組『ゴゴスマ』で、秋篠宮佳子さまの大学卒業の話題に関連して現職の鳥取県知事を扱った。番組では、佳子さま卒業のニュースを受け、佳子さまに関するエピソードのひとつとして「公務で見事な切り返し」と題して、鳥取県を訪問された際の知事とのやり取りを紹介した。その際、知事の顔写真と名前が書き込まれたフリップを約31秒間放送した。放送当日は、鳥取県知事選挙が告示された翌日でありフリップで紹介した知事も立候補していた。
委員会は、当該放送局に対して、統一地方選挙期間中にもかかわらず放送した経緯について、報告書と番組DVDの提出を求めて討議した。
報告書によると、番組制作スタッフは選挙期間中の候補者を扱う場合には十分な注意が必要であるという認識はあったものの、知事本人が選挙期間中の候補者かどうかという確認ができていなかったとしている。
本件番組に対しても、これまでに複数の委員会決定や委員長コメントを出しており、つい最近の討議事案においても改めて注意喚起したにもかかわらず同様のミスが繰り返されていることについて厳しい意見があった。そのうえで、上記と同様に、視聴者に与える印象の程度、放送の時期が選挙期間中であるか否か、露出の時間の長短、番組の性質が候補者への投票を誘導するような影響を生じるものか否か等の観点から検討すると、本件番組は、他の候補者との間で公平・公正性が害されるおそれがあるという程度にまで達しているとまでは言えないだろうとの判断で一致した。
そして、当該放送局は、今回の放送では名前や顔写真を出さない手法もあったと反省しており、番組制作にかかわるスタッフ全員が改めて選挙の公正性について高い意識を持つように注意喚起をしたという。また、国政選挙だけでなく地方選挙も含めた全国の選挙スケジュールを可視化して各番組で共有するとともに、このようなミスを起こさないために運用している番組内容確認表に「選挙期間中の候補者の出演、紹介、映り込みの有無」という確認項目を追加するなど、チェック体制の強化を図ったとしている。
以上を踏まえ、委員会は、委員からの厳しい意見を議事概要に公表して、当該放送局に対して、当該担当部門だけでなく、全社をあげて選挙の公平・公正性の確保のために自主・自律に定めたルールが守られるよう注意喚起をすることとして、今回は審議に入らず討議を終了した。

【委員の主な意見】

  • 単純ミスであるとしても、告示の翌日という選挙期間中であることは軽視できない。

  • 政治家の写真を扱う際に、選挙に関係しているかどうかを調べることは、それほど難しい作業ではないと思う。

  • 今年2月の知事選挙に関連した討議事案があったことをBPO放送倫理検証委員会の議事概要で知っていたとのことであるが、その教訓が自らの番組作りに生かされなかったのは大変遺憾である。

  • 今年は参議院議員選挙もあるが、選挙事前運動に関する不注意には十分気をつけたうえで、選挙報道に関して萎縮することなく積極的に取り組んでもらいたい。

以上

2019年6月14日

読売テレビの報道番組『かんさい情報ネットten.』審議入り

放送倫理検証委員会は6月14日の第138回委員会で、読売テレビの『かんさい情報ネットten.』について、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、読売テレビが5月10日、夕方のニュース番組『かんさい情報ネットten.』で放送した企画コーナーの「迷ってナンボ!」で、一般男性の性別を執拗に確認するシーンが流れた。
番組は、お笑い芸人が大阪市内にある飲食店の店員の「性別が分からない常連客がいる」という声を取り上げ、芸人が常連客の男性に性別を確認。男性に名前や住所、恋人の有無を聞くなどしたうえで保険証の性別欄を撮影したり、胸を触ったりして、「男性」と確認できたと結論づけた。コーナーが終了しスタジオの映像に切り替わった際、番組のコメンテーターが「許しがたい人権感覚の欠如だ」などと批判。局には視聴者から多数の批判の意見が寄せられた。
読売テレビは、この男性に謝罪するとともに、番組ホームページで謝罪。番組でアナウンサーや解説デスク、報道局長が出演して人権的配慮に欠けた不適切な放送であったと謝罪したうえで、「迷ってナンボ!」のコーナーは当面の間、放送を休止すると発表した。
委員会は、当該番組の制作の経緯を知る必要があるとして、当該放送局に対して報告書と同録DVDの提出を求めたうえで討議し、審議入りを決めた。
神田安積委員長は審議入りについて、「事後の対応は自主・自律的に一定程度きちんと行われていたが、多様な性のあり方が社会で共有されている中で、放送局側の意識と視聴者の意識の差、その大きな違いを否定できない。なぜ放送に至ったのか、チェックできなかったのか、放送倫理に照らしてどう評価できるか、しっかり審議すべきだと判断した」と話している。
委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第137回 放送倫理検証委員会

第137回–2019年5月

"CMと誤解を招きかねず放送基準に抵触する疑い"長野放送『働き方改革から始まる未来』審議入り

第137回放送倫理検証委員会は5月10日に開催され、新年度になって委員3人が交代したため、冒頭、報道各社による委員会の写真撮影が行われた。
委員会では、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、審議を続けている日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、前回の委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が担当委員から示された。来月の委員会では、今回の議論を反映した再修正案が提出される予定である。
また、以下の3事案について、当該放送局から報告書と当該番組のDVDの提出を受けてそれぞれ討議した結果、1事案の審議入りを決めた。
まず、長野放送が3月に放送したローカル単発番組『働き方改革から始まる未来』という持ち込み番組について討議を行い、日本民間放送連盟放送基準(以下「民放連放送基準」という)等に照らし、番組で取り上げている特定企業の事業紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、また、広告放送であるにもかかわらず、CMのかたちをとっておらず、放送番組と識別できていないのではないか等の意見が大勢を占め、また、持ち込み番組であることを踏まえてどのような考査を行ったのか等について検証が必要であるとの意見も出され、審議入りすることを決めた。
また、テレビ朝日が、2月に放送した番組で差別的表現があったことをお詫びしたバラエティー番組『アメトーーク!』について討議を行い、委員会は、特定の地域や学校を差別する表現があり、民放連放送基準に照らして問題があると考えられるところ、さらに確認したい点があるとして当該放送局に追加の質問を行い、討議を継続することになった。
続いて東海テレビが、気象庁の訓練用「火山噴火情報」を誤って速報スーパーで放送した事案について討議を行い、事実と異なる放送であり放送倫理違反が認められるうえ、必ずしも速やかに誤報を訂正したとはいえない等の意見が出された一方で、問い合わせのあった視聴者に対しては適切な対応を取り、具体的な再発防止策なども取っており、最終的に自主的・自律的な対応がなされているとして討議を終了した。もっとも、従前の同種の事案において、「提言」や「委員長コメント」が出されていることを踏まえ、委員から出された意見を議事概要に掲載して、改めて注意喚起することとなった。

1.「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議

日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この二つの「祭り企画」を対象に審議を続けている。
この日の委員会には、前回出された意見を受けて担当委員が作成した意見書の修正案が提案された。各委員からは、修正案の構成や指摘しているポイントの表現方法などについてさまざまな意見や見方が示された。
次の委員会では、今回の議論を踏まえて、担当委員から意見書の再修正案が提出される予定になっている。
なお、神田委員長は『世界の果てまでイッテQ!』の審議には参加していない。

2.長野放送『働き方改革から始まる未来』について放送か広告か曖昧だとして審議入り

長野放送は3月21日に『働き方改革から始まる未来』という持ち込み番組をローカル放送した。この番組は、労働基準法などいわゆる「働き方改革関連法」が変わる4月を前に、その準備ができているか等を問う内容となっているが、視聴者から「放送なのか広告なのか曖昧だ」という趣旨の意見がBPOに寄せられた。このため長野放送に対し、放送した番組のDVDと報告書の提出を求めて確認したところ、その内容のほとんどは、長野県に本社がある特定の社会保険労務士法人の事業の紹介であり、本編28分間の間にCMはなかった。
そこで、委員会は討議を行い、民放連放送基準の広告の取り扱い規定(第92条、第93条)や「番組内で商品・サービスなどを取り扱う場合の考査上の留意事項」等に照らすと、番組で取り上げている事業の紹介が広告放送であるとの疑いが大きい内容になっているのではないか、広告放送であるにもかかわらず、CMのかたちをとっておらず、放送番組と識別できていないのではないか等、放送倫理違反の疑いが大きいという意見や、持ち込み番組であることを踏まえて考査の過程など放送に至った経緯についても検証が必要である等の意見が相次いで出され、審議入りすることを決定した。今後は、長野放送の社員らに対するヒアリングなどを行って、審議を進める。

3.放送内容の差別的表現をお詫びしたテレビ朝日の『アメトーーク!』を討議

テレビ朝日は2月14日に放送したバラエティー番組『アメトーーク!』の中で出演者の女性芸人が自身の体験を語った際、自身が中途退学した高校の実名を挙げ、学校側が不良生徒対策をしているかのような発言をした。また司会者も「僕らも学生の頃にそっち方面は行かんとことみんなで言うてた」と発言、また他の出演者の「道できれいな10円を12円で売ってる」人がいたとの発言にその様子をイメージするかのようなイラストを挿入するなどの内容を放送した。その後、当該放送局は、4月18日の同じ番組で、「事実と異なる内容や差別的な表現があった」として謝罪し、番組のホームページにも謝罪文を載せた。
当該放送局の報告書によると、3月に当該高校などから謝罪・訂正を求められ、番組担当者が関係者と面会して直接謝罪したという。また、当該放送局によると、当該高校などからは、番組の一連の対応に理解をしてもらったという。
そこで、委員会は討議を行い、特定の地域や学校を差別する表現があり、民放連放送基準に照らして問題があると考えられるところ、さらに確認したい点があるとして当該放送局に追加の質問を行い、討議を継続することになった。

4.火山噴火情報の「訓練用の速報スーパー」を誤報しお詫びした東海テレビの報道内容を討議

東海テレビは、1月22日午後3時過ぎ、「午後3時1分頃新たな活火山が噴火した(気象庁)登山者はすぐに下山または避難を」という内容を速報スーパーで伝えた。しかし、当日、実際には活火山の噴火はなく、気象庁が東京の放送キー局各局と行っていた訓練用の情報を誤って放送したものであった。
当該放送局の報告書によると、担当の報道部は、キー局から送られてきた情報に火山の地名がないことを不審に思ったものの「人命にかかわる緊急性の高い情報」「地震速報などでは続報で詳細な内容が追加される場合がある」と考え速報スーパーとして放送し、その後、情報が訓練用のものであることが確認されたため、訂正の速報スーパーを放送することを検討したが、速報スーパーでは十分な説明ができず、逆に視聴者の混乱を招きかねないと判断し、夕方のローカルニュース番組の開始まで待ち、その冒頭で訂正とお詫びをしたという。
委員会では、本件が事実に基づかないニュースであり、放送倫理違反が認められること、また、当該誤報を取り消して訂正しているものの、必ずしも速やかに対応したとはいえないこと、とりわけ、「登山者はすぐに下山または避難を」という災害情報であったことに鑑みれば、より速やかに速報スーパーで取り消し又は訂正を行う余地があったのではないかとの意見が出された。
他方で、災害情報であったことを踏まえると、まずは速報を行う必要性があったことも否めないこと、当該放送局では、誤報の可能性が高まった段階から、問い合わせのあった視聴者に対して誤報の可能性を伝え、誤報であることが確定した後は、誤報であることをお詫びとともに伝えていたこと、本件を契機として、訓練データが配信されないように当該放送局系列のキー局のシステムを改修し、訓練情報であることをデータに明記するなどの具体的な再発防止策がとられたこと、当該放送局の番組審議会や第三者諮問機関において、本件が取り上げられて厳しい意見が出されていることなど、最終的に自主的・自律的な対応がなされていることを踏まえ、審議の対象とはせず、討議を終了することとした。もっとも、かつて、誤字幕、誤映像のミスが生じた同種の事案において、委員会として「提言」(2011年9月)をおこなって注意喚起をした経緯が存すること、また、それとは別に、不適切テロップが送出された事案において、当該放送局が迅速な訂正をし、かつ訂正とお詫びを翌朝までに3度放送した事案においても「委員長コメント」(2012年4月)を出して注意喚起をした経緯を踏まえ、委員から出された意見を議事概要に掲載して、改めてBPO加盟の放送局に注意喚起することとした。

【委員の主な意見】

  • 火山の名前が記載されていなかったのであるから、まず火山を特定する必要があったにもかかわらず、その点を十分に確認しないまま誤った事実をスーパーで流したことは放送倫理違反にあたるのではないか

  • 災害情報であったことを踏まえると、火山の名前が記載されていなかったとしても、むしろ速やかに報道する必要性があったことも否めないのではないか

  • 「登山者はすぐに下山または避難を」という災害情報であり、人命にかかわる緊急性の高い情報でもあったことに鑑みれば、『ニュースの誤報は速やかに取り消しまたは訂正する』との放送基準に照らして、速やかに取り消し又は訂正を行うべきではなかったか

  • 災害情報を速報スーパーで誤ったのであれば、速やかに速報スーパーで取消又は訂正すべきだったのではないか

  • 誤字幕、誤映像の問題については「提言」や「委員長コメント」を行った先例があり、とりわけ災害報道や災害の緊急告知に際しての字幕や映像の正確性や訂正の必要性について、放送局全体が危機意識を有してほしい

以上

2019年5月10日

長野放送『働き方改革から始まる未来』審議入り

放送倫理検証委員会は5月10日、長野放送の『働き方改革から始まる未来』について、審議入りすることを決めた。
審議の対象となるのは、3月21日に長野県内で放送された30分番組の『働き方改革から始まる未来』で、放送は長野県内の社会保険労務士法人の働き方改革をめぐる取り組みを紹介している。委員会では、視聴者から寄せられた「放送なのか広告なのか曖昧だ」という意見を受けて、当該番組の制作の経緯を知る必要があるとして、当該放送局に対して報告書と同録DVDの提出を求め討議した。その結果、委員から、「番組ではなくCMではないか、民放連の放送基準に反しているのではないか」などの意見が出され、『働き方改革から始まる未来』を審議の対象として検証することを決めた。
審議入りについて神田安積委員長は、「広告放送とコマーシャルの区別ができているのかどうか、視聴者に広告放送と誤解を招くような演出になっていないか総合的に判断する必要がある」と述べた。委員会は今後、長野放送の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第136回 放送倫理検証委員会

第136回–2019年4月

日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』の審議

第136回放送倫理検証委員会は、3名の新しい委員(高田委員、長嶋委員、巻委員)が出席して4月12日に開催され、冒頭、神田委員長が鈴木委員を委員長代行に指名した。
そして、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、審議を続けている日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、担当委員から意見書の原案が示された。この日出された意見を受けて、次の委員会では意見書の修正案が示される予定。

議事の詳細

日時
2019年4月12日(金)午後5時~午後8時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、鈴木委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、高田委員、長嶋委員、中野委員、藤田委員、巻委員

◆「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議

日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この二つの「祭り企画」を対象に審議を続けている。
この日は、前回までの議論を受けて担当委員が作成した意見書の原案が示された。今回から新しく加わった3人の委員に対して、意見書の構成についての説明を交えながら委員会は進行し、当該放送局へのヒアリングの結果を踏まえて番組の制作過程に関する調査の結果を確認するとともに、当該放送局の報告書をどう読んだか、バラエティー番組の制作にあたる姿勢や最近のバラエティー番組の傾向などについて、新委員からもそれぞれの経験や知見にもとづいて発言があった。その上で、これまでの意見を集約して、委員会としての判断およびその表現方法について活発な意見が交わされた。
次の委員会では、今回出された意見を踏まえて、担当委員から意見書の修正案が提出される予定。
なお、神田委員長は『世界の果てまでイッテQ!』の審議には参加していない。

以上

第135回 放送倫理検証委員会

第135回–2019年3月

日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』を審議

第135回放送倫理検証委員会は3月8日に開催され、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、審議入りしている日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、前回の委員会の後に行われた制作者へのヒアリングの内容が担当委員から報告された。次の委員会では、意見書の骨子案が示される予定。

議事の詳細

日時
2019年3月8日(金)午後5時~午後7時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議

日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、委員会は、この二つの「祭り企画」を審議の対象としている。
この日の委員会では、担当委員が、前回の委員会の後に行われたヒアリングの内容について報告した。ヒアリングは、放送局や制作会社の社員のほか、現地ロケに関わった人たちを対象に3日間実施され、担当委員は、企画内容の決め方や現地でのロケ、東京での編集の様子などについて明らかになったことを説明した。これを受けて質疑応答があり、「バラエティーの面白さ、可能性を考えるきっかけになるような議論をしていきたい」といった意見が出された。
次の委員会では、ヒアリングの内容をさらに検討したうえ意見書の骨子案が提出される予定。
なお、神田委員長は『世界の果てまでイッテQ!』の審議には参加していない。

2. その他

宮崎県と鹿児島県のテレビ・ラジオ局9社を対象に鹿児島市で開かれた(2月14日)意見交換会の模様が、出席した委員から報告された。放送局の自主・自律を尊重するBPOの姿勢が理解できたという参加局の感想が紹介され、こうした意見交換会を今後も各地で開催していく意義を確認した。

以上

2019年2月14日

宮崎・鹿児島地区テレビ・ラジオ各局と意見交換会開催

放送倫理検証委員会と宮崎・鹿児島地区のテレビ・ラジオ局9社との意見交換会が、2019年2月14日、鹿児島市内で開かれた。放送局出席者は9局38人、委員会からは神田安積委員長、岸本葉子委員、渋谷秀樹委員、藤田真文委員の4人が出席した。
初めにBPOの濱田純一理事長が「BPOとはなんだろうか」と題してBPOの性格や活動を説明し、「放送人の誇りと緊張が、放送の自由と自律を支えていく。『職業倫理』の基本である、この誇りと緊張を思い起こしてもらう機会をつくることがBPOの役割だ」と話した。
意見交換会は二部構成で行われた。まず第一部では、各局が最近対応した具体的な事例を取り上げ、実際に放送したDVDを見ながら、意見を交わした。この中で、事件を報道した際、被害者側から実名や写真を放送しないでほしいと言われたという複数の放送局の報告に対して、神田委員長は「放送した理由をきちんと説明できるかどうかが大事だ。一律的な答えがあるわけではないので、各放送局が自律的に対応してほしい。その一方で、視聴者の知る権利の観点から、報道しなかった場合のデメリットにも配慮してほしい」と述べた。容疑を持たれている男性が自殺した際、この男性に「さん」を付けて報道したところ、視聴者から抗議が多かったという報告に対して、渋谷委員は「どういう放送をするかしないかは放送局の責任で判断する必要があり、抗議の量に左右されることは、報道機関としてあるべき姿ではないと思う」と述べた。
社会的に問題になった歌手の曲を放送するとクレームが多いというFM局の報告に対して、藤田委員は「一定期間、放送しないという姿勢は理解できるが、行き過ぎた『自粛』には批判もある」と指摘した。また岸本委員は「リスナーの意見に耳を傾けつつも、自分たちはこう考えて放送したときちんと説明できることが大切だ。事件や事故の報道の際に、こういう理由で放送したという説明責任が必要なことと同じだ」と話した。
続く第二部は、宮崎・鹿児島両県の放送局にとって大きな課題の災害報道から議論が始まった。鹿児島県の口永良部島の噴火警戒レベルが上がって住民説明会が開かれた際、取材のために島に入るかどうか、放送局によって判断が分かれた事例が報告された。また宮崎県の放送局からも、新燃岳の噴火取材の難しさについて話があった。東日本大震災のあと、岩手・福島の放送局からヒアリングをした経験がある藤田委員は、取材の安全の大切さを強調するとともに、「被災者の情報を匿名で発表する自治体がある中で、被災直後は、避難所の映像を放送することが大切な安否情報の提供になる。放送する時点で地元の人が必要としている情報を考えて発信することが必要だ」と述べた。
続いてインターネットを放送に利用する際に直面した問題について、実例が報告された。神田委員長は、委員会が2017年9月に出した委員長談話「インターネット上の情報にたよった番組制作について」に触れながら、まず情報の正確さが求められること、そのうえで著作権の権利関係のクリアが問題となることを指摘、また、市議会のホームページを引用して放送したところ議長から抗議を受けたという事例に対して、「公的な機関のホームページであり、放送で引用しても問題ない」と説明した。
意見交換会を通して藤田委員は「委員会が出す意見書を懲罰的に受け止めず、放送にいかしてほしい」と、また岸本委員は「きょうの参加各局は視聴者との距離が近いので、それを番組制作の力にしてください」と感想を述べた。また渋谷委員は「『これを伝えたい』という気持ちを大切にして番組作りにあたってほしい」と話し、神田委員長が「この番組を見たいという視聴者の信頼をそこなわず、放送する勇気をもってほしい」と締めくくった。
最後に、参加局を代表して南日本放送の有山貴史取締役が「私たちの一丁目一番地は『信頼』だということを改めて認識する有意義な会議だった」と述べて、3時間30分を超える会議を終えた。

終了後、参加者から寄せられた感想の一部を以下に紹介する。

  • 大切なのは、私たち放送する側の「覚悟」だと思った。これからも緊張感を持って業務にいかしていきたい。

  • 各社の事例紹介などを通じ、放送倫理とは「視聴者の信頼を裏切らないこと」だと感じた。

  • 報道する側、報道される側、双方から報道を考えるいい機会になった。

  • SNSが発達した時代、ニュースソースの正確さの見極めが大切だと痛感した。

  • ネットと放送局の大きな違いは「信頼」であることを再認識した。

  • 災害報道に関して、災害発生時はキー局から全国報道の要請が殺到するのが常だが、特に初動段階では地元住民に向けた「命を守るための情報発信」が大事、という参加局の意見はもっともで、賛同できた。

  • エリアを超えて、鹿児島・宮崎合同で開催されたことでお互い同じような問題、悩みを抱えていることが分かった。今後は益々こういう情報共有の機会を増やし団結して取り組んでいかなければならないと思う。

  • BPOは、我々のすぐ脇にいる組織なのだと認識し、力づけられた。今日の話を組織内で共有し、よりよい報道を出せるように努めていきたい。

以上

第134回 放送倫理検証委員会

第134回–2019年2月

知事選挙期間中に特定候補だけ放送したフジテレビ『ダウンタウンなう』の討議を終了

第134回放送倫理検証委員会は2月8日に開催された。
海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じた日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、委員会は、番組制作者から直接話を聞き、放送倫理上の問題について確認したいとして、前回審議入りを決めた。この日の委員会では、近く予定している番組制作者へのヒアリングについて、対象者や聞くべきポイント等について、委員の間で意見を交わして確認した。
また、2月3日に行われた愛知県知事選挙に立候補していた現職の候補者を、告示直後にもかかわらず番組内の企画で取り上げたフジテレビの『ダウンタウンなう』について、当該放送局に報告書の提出を求め討議した。報告書によると、番組制作スタッフも編成担当者も誰ひとりとして愛知県知事選挙が実施されていることに気付かなかった。このため、選挙を巡って過去に放送倫理上の問題が生じた際に設けた社内の再発防止策が機能せず放送に至ったという。委員会では、選挙に関する過去の委員会決定等を踏まえると放送倫理違反は免れないとの厳しい意見も出された。しかし最終的には、当該放送局が今回のケースを受けて、これまでの再発防止策に加えて、国政や地方のあらゆる選挙について、日程や立候補予定者などを細かくチェックして番組スタッフ間で情報共有をはかる等の再発防止策を新たに講じたとしていることを踏まえ、委員会は、今後、当該放送局が当該再発防止策を実効的に運用するかどうか見守るとの結論に至った。併せて、委員からの主な意見を記載して、当該放送局に対して、繰り返される問題点を見つめ直し、当該番組の担当部門だけでなく、全社で自主・自律に取り組むよう注意喚起をすることとし、討議を終了した。

議事の詳細

日時
2019年2月8日(金)午後5時~午後8時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』を審議

日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」の「世界で一番盛り上がるのは何祭り?」という企画で、2017年2月に放送された「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じ、日本テレビは当面「祭り企画」を休止にした。委員会は、バラエティー番組の演出の視点などについて番組スタッフの考えを直接聞きたいとして、二つの「祭り企画」を対象に審議入りしている。
この日の委員会では、まず担当委員が、ヒアリングのポイントとその理由を説明した。その上で、ヒアリング対象者の選定や、放送倫理上の問題をチェックするための要点などについて幅広く議論し、近く行われるヒアリングに備えることになった。
なお、神田委員長は『世界の果てまでイッテQ!』の審議には参加していない。

2. 知事選挙期間中にもかかわらず現職候補者の顔写真と名前を紹介したフジテレビのバラエティー番組『ダウンタウンなう』を討議

1月18日に放送されたフジテレビのバラエティー番組『ダウンタウンなう』の「有名人の豪邸で飲む」というコーナー企画で、大手ホテルチェーンの社長の自宅を訪問、これまで招かれたことがある主な著名人のひとりとして現職の愛知県知事を紹介した。番組では、首相経験者など5人の写真を張り付けたフリップを事前に準備し、司会役のタレントが順番に紹介、最後に愛知県知事の名前を読み上げた。写真は4回、計37秒間放送された。ところが、放送された18日は、愛知県知事選挙が告示された翌日であり現職知事も立候補していた。
委員会は、当該放送局に対して、選挙期間中にもかかわらず特定候補ひとりだけを放送した経緯について、報告書と番組DVDの提出を求めて討議した。報告書によると、番組制作に携わった関係者が誰ひとりとして愛知県知事選挙の実施を知らず、また社内のチェック体制が機能しなかったことから放送に至った。このチェック体制は、2016年フジテレビで選挙を巡って放送倫理上の問題が生じた際、その再発防止策として設けられたもので、選挙の情報を関係部局間で共有したうえで、番組ごとに配置されたプレビュー責任者が、番組プロデューサーや編成担当者と共に複数の目でチェックを行うというものであった。しかし、当該番組は、写真だけの使用であったことと地方選挙に対する制作スタッフの意識が薄かったことから、誰も気付かなかったという。
委員会では、選挙関連の放送を巡りこれまでに複数の委員会決定を出しており、当該決定等を踏まえると、当該番組の放送が選挙期間中であり、かつ番組があらかじめ写真を準備していたことなどからすれば、放送倫理違反は免れないのではないかという厳しい意見もいくつか出された。しかし最終的には、今回のケースを受けて当該放送局は、これまでの再発防止策に加えて、国政や地方のあらゆる選挙について、日程や立候補予定者などを細かくチェックして番組スタッフ間で情報共有をはかり、政治家に関しては、写真だけの使用や文字情報の場合でも細かく点検する素材担当責任者を設置し、チェック体制を強化する再発防止策を新たに講じたとしている。こうした対応を踏まえ、委員会は、今後、当該放送局が当該再発防止策を実効的に運用をするかどうか見守るとの結論に至った。併せて、委員からの厳しい意見を議事概要に公開し、当該放送局に対して、繰り返される問題点の本質を見つめ直し、当該番組の担当部門だけでなく、全社をあげて選挙の公平・公正性の確保のために自主・自律に取り組むよう注意喚起をすることとして、今回は審議に入らず討議を終了した。

[委員の主な意見]

  • 過去に同様の問題を起こし、猛反省して講じたはずの再発防止策が機能しなかったのは、地方選挙を意識していなかったことが原因では余りにお粗末過ぎる。

  • 「選挙の問題」をチェックするはずのプレビュー責任者が「選挙の問題」を見逃したのでは、担当を置いた意味がない。

  • 今年は統一地方選挙と参議院議員選挙の年なのに、番組制作に携わるスタッフが誰ひとりとして選挙を意識していないなどあってはならないことだ。

  • 選挙カレンダーを全社で共有し、政治家を取り上げる時は、必ず選挙の実施等をチェックすることを習慣にすべきだ。

  • 再発防止策として最終段階でのチェック役をひとり増やすだけでよいのか。制作現場の一人ひとりが、選挙期間中に候補者を登場させないというルールの意味を理解し、基本的な意識を高めることが必要ではないか。

以上

第133回 放送倫理検証委員会

第133回–2019年1月

日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』審議入り

第133回放送倫理検証委員会は1月11日に開催された。
海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じた日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、委員会は、当該放送局から提出された追加の報告書を含めて討議した結果、「どういう制作過程を経て番組ができたのか、番組制作者から直接話を聞いて、放送倫理上の問題について確認したい」として、審議入りすることを決めた。
なお、神田委員長は『世界の果てまでイッテQ!』の討議には参加していない。

議事の詳細

日時
2019年1月11日(金)午後5時~午後8時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』について審議入り

日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」の「世界で一番盛り上がるのは何祭り?」というコーナー企画で、2017年2月12日放送の「タイのカリフラワー祭り」と2018年5月20日に放送された「ラオスの橋祭り」にでっち上げの疑いがあると週刊誌が報じた。日本テレビは「みなさまに疑念を抱かせ、ご心配をおかけする事態に至ったことについて深くお詫び申し上げます」と謝罪した上で、当面「祭り企画」を中止にしている。
委員会は、週刊誌が報じた二つの企画のほかにも、当該放送局に追加の報告書と放送済みの番組素材(DVD)の提出を求めて討議を継続した。問題が指摘されている「祭り企画」では、本来あった“世界の「祭り」に挑戦する”という要素が希薄化し、「祭り」の舞台設定やルールを番組用にアレンジしてしまった点で、海外で行われている祭りそのものだと思っている視聴者の信頼を裏切ることになったのではないかといった意見が相次いだ。また、複数の「祭り企画」を見ると、異なる「祭り」を同じナレーションで紹介している放送があり、長寿番組になる過程で、ナレーションや作り方が定型化してしまい、そのことが今回指摘されたような問題を看過する背景にあったのではないかという意見も出された。
その結果、委員会は、バラエティー番組の演出の視点に加え、こうした点について番組スタッフがどう考えていたのか、直接話を聞いて放送倫理上の問題について確認したいとして、二つの「祭り企画」を対象に審議入りすることを決めた。

以上

2018年11月29日

北海道地区テレビ・ラジオ各局と意見交換会開催

放送倫理検証委員会と北海道地区テレビ・ラジオ各局との意見交換会が、2018年11月29日、札幌市で開催された。NHKと民放をあわせ放送局から51人が参加し、委員会からは升味委員長代行、鈴木嘉一委員、中野剛委員の3人が出席した。
前半は、9月に起きた北海道胆振東部地震にまつわる放送上の諸問題について、後半は番組制作におけるインターネット上の情報利用を主な議題として意見交換を行った。

北海道胆振東部地震については、参加各局から、日本で初めて発生したブラックアウト(大規模な電源喪失)によって引き起こされた、放送上のさまざまな問題が報告された。地震発生からおよそ20分後、全道ですべての電力供給がストップしたが、各局は自家発電等に切り替えることによって放送態勢を維持し、地震による被害の状況、食料や水の供給などの生活情報を伝えた。しかし家庭等への電力供給も停止し、放送はするものの視聴者がテレビをみることができないという前代未聞の状況が発生したため、テレビ各社はインターネットを使って番組の同時配信を行った。電力復旧の見通しが立たない中、発電用燃料の確保など各社の放送態勢維持のための作業は困難を極めたという。
こうしてインターネットを中心に番組や情報の提供が行われる中、SNS上では「数時間後に大きな揺れが来る」、「まもなく携帯電話が使えなくなる」、「札幌市内全域で断水」といったデマが拡散したが、発信元への情報確認ができず静観せざるを得なかったり、刻々と変わる事態に生活情報が追い付かず、情報発信がかえって混乱を招く事態も見られたという。
一方、地震による被害が最も大きかった厚真町の避難所や役場で、メディア取材が拒否されるという事態が起きたことも報告された。この状況は地震発生から3か月後、避難住民らが仮設住宅に収容されて避難所が閉鎖されるまで続いたが、参加者からはメディアスクラムというより、一部メディアの行き過ぎた取材に対する嫌悪感が長期化の原因ではないかという見方が示された。これに対し鈴木委員から、「避難所の取材には不安と混乱の生活空間に土足で入るのだという心構えが必要だ。取材に応じてもらえるよう、早い時期に各社の責任者が住民の代表者らと話し合うこともできたのではないか」との意見が出された。
また、液状化した住宅地の取材現場で、取材班が消防に救出されたことがネットで炎上したことについて、当該放送局は会社ホームページなどで謝罪したとの報告があった。これに対し升味委員長代行から、「放送に携わるスタッフも住民と同じ被災者だ。誰に対して謝る必要があったのか。無事救出されました、消防や住民のみなさんありがとう、でよかったのではないか」との発言があった。

一方、後半の議題であるネット情報の取り扱いについても、地震に関連した意見が目立った。メディアが出す情報に、ウソの情報を付け足してリツイートされるとデマ情報の拡散につながるため、情報は放送に集約して慎重に行ったとのラジオ局の報告に対し、升味委員長代行は「日ごろ行っているネット情報の精査、慎重な情報の出し方が今回のような非常時に役立つ。根拠のある、正しい、役に立つ情報を出し続けることで、デマは沈静化され乗り越えられる」と発言。中野委員は、「可能な限りの取材を尽くし、真実に近づく努力をして放送すべきだ。今回の地震では慎重な姿勢で裏付けを取るなど適切な非常時対応だった」との意見を述べた。

さらに最近、取材に関連したメールの誤送信問題が起きたことに関して、当該放送局から報告が行われ、一時的にでも未放送素材が外部に流出する恐れがあったことを重大な問題と受け止めているとし、報道機関としての再教育、ファイル転送システムの変更など、各種の再発防止策を実施しているとの説明があった。

最後に、北海道文化放送の高田正基常務取締役が、「地震の教訓からきちんと学び、日頃は競争関係にある各局が情報を共有し、次の世代に役立てていくことが重要だ。そのことが視聴者や住民の皆さんの役に立つ報道につながる」と述べ意見交換会を終了した。

終了後、参加者から寄せられた感想の一部を以下に紹介する。

  • ブラックアウトという状況の中で各局がどのように情報を伝えていたのか、取材の最前線ではどのような課題が発生していたのかを知ることができて有意義だった。参加者は皆自分たちの問題として引き付けて考えることができたように思う。

  • 地震に関する各局の報告に相当の時間が割かれ、放送倫理にかかわるテーマに肉薄できなかったのが残念。

  • 災害状況や数字も大切だが情報だけがラジオではない。ラジオはリスナーとの距離が近く、いつもの声、いつもの呼びかけが安心感につながる。「ラジオを聞いてほっとした」というリスナーの声が寄せられたことを報告し、他局からも共感をいただいた。

  • 地震の際の他局の状況を知ることができた。どのようなところで苦労したのかがよくわかった。

  • デマ情報への対応などは、正解はないものの情報共有ができ、今後の指針となるものを得ることができた。

  • SNS炎上やメディアスクラムについては、もっと掘り下げた議論や意見を伺いたいと思った。

  • 各社とも災害報道の前線では、まず伝えることが第一で、大切ではあっても倫理上の問題に配慮する余裕はあまりない。委員には、今後、現場の取材者が最低限何を意識すべきなのか、そのためには何が必要なのかを示していただきたかった。

  • 「自らも被災者でありながら放送を通じて被災した道民に呼びかけ寄り添った」という委員の言葉が印象に残った。

  • BPOのメルマガやウェブサイトの情報は参考になるが読みにくい。複雑な事実関係や対立する意見を扱っているので、正確を期すために省略やわかりやすい言い換えができにくいことは承知しているが、現場スタッフに読んでもらうには少しでも平易な表現や発信をお願いしたい。

以上

2019年1月11日

日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」審議入り

放送倫理検証委員会は1月11日の第133回委員会で、日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」について、審議入りすることを決めた。
審議の対象となるのは、「世界で一番盛り上がるのは何祭り?」というコーナー企画で、2018年5月20日に「ラオスでの祭り」として放送された「橋祭り」と、2017年2月12日に「タイでの祭り」として放送された「カリフラワー祭り」の二つの企画。
この企画内容について、でっち上げの疑いがあると一部週刊誌が報じるなど一連の報道を受けて、日本テレビは自社のホームページで、「祭り企画をめぐり、みなさまに疑念を抱かせ、ご心配をおかけする事態に至ったことについて深くお詫び申し上げます」と謝罪したうえで当面、「祭り企画」は中止にした。
委員会は、当該番組の制作の経緯を知る必要があるとして、当該放送局に対して報告書と同録DVDの提出を求めたうえで討議。さらに、二つの「祭り企画」以外にも確認したい放送内容があり、考え方を重ねて聞きたい点があるとして追加の報告書を求めて討議を継続した。その結果、『世界の果てまでイッテQ!』の二つの「祭り企画」を審議の対象として審議入りすることを決めた。
審議入りについて升味佐江子委員長代行は、「どういう制作過程を経て番組ができたのか、番組制作者から直接、話を聞きたい。番組に放送倫理上の問題があったのかどうか、事実を確認したい」と述べた。委員会は今後、日本テレビの関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第132回 放送倫理検証委員会

第132回–2018年12月

日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』について追加の報告書を要請し討議を継続

第132回放送倫理検証委員会は12月14日に開催された。
飲酒運転によって8人が死傷した交通事故で、発生当初、事実と異なるニュースを報道し、容疑者逮捕を受けてお詫び放送した青森テレビのローカルニュース番組について、当該放送局から報告書の提出を受け討議した。第一当事者や事故原因を誤って推認させる当該放送局の報道内容は、刑事事件に関するセンシティブな情報の取り扱いという観点からは裏付け取材が不十分で、放送倫理上の問題がなかったとは言えない。しかしながら、容疑者逮捕を受けて、お詫びの放送も行い、誤報に至った経緯を詳細に検証したうえ適切な再発防止策も実施しているとして、当該放送局の自主・自律の対応を評価して討議を終了した。
海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると一部週刊誌が報じた日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』について、委員会は、当該放送局からの報告書をもとに討議した結果、さらに確認したい点があるとして、追加の報告書を求めて討議を継続することになった。

議事の詳細

日時
2018年12月14日(金)午後4時~午後7時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 8人死傷の交通事故で事実と異なるニュースを報道し謝罪した青森テレビのローカルニュースを討議

青森県つがる市で2018年9月22日、4台の車が絡み8人が死傷する交通事故が発生し、この事故の続報として青森テレビは、翌23日の『JNNニュース』内ローカルゾーンと24日の『わっち!!ニュース』において、「対向する軽自動車同士の正面衝突に後続の2台が巻き込まれた可能性がある」と放送した。さらに25日の『ひるおび!JNNニュース』内ローカルゾーンと『わっち!!ニュース』で、「最初に正面衝突した軽自動車のどちらかの運転手が酒気帯びだった可能性がある」と報道した。ところが、10月22日、青森県警が、事故は後ろから来た飲酒運転の乗用車が暴走し前方の軽自動車に追突したことが原因とみられ乗用車の運転手を逮捕したと発表した。このため当該放送局は、一連のローカルニュースでの誤報を認め、お詫びの放送を行った。
当該放送局の報告書によると、県警から「放送内容は警察の見立てと違う」などと何度か示唆されていたにもかかわらずサインを見逃し、さらに当該放送局の誤報をもとにインターネット上で事故の犠牲者を容疑者扱いする中傷が広がっていたことにも気付かなかったという。

委員会では、刑事事件に関するセンシティブな情報の取り扱いという観点からは、当該番組は裏付け取材が不十分で、誤った情報がネットで拡散して被害者家族が心を痛めていたことは非常に重く、放送倫理上の問題がなかったとはいえないなどと厳しい意見が相次いだ。しかしながら、当該放送局は、誤報に至った経緯を社内で詳細に検証したうえ報告書に包み隠さず記載し、適切な再発防止策も実施しているとして、当該放送局の自主・自律の対応を評価して討議を終了した。

[委員の主な意見]

  • 「可能性がある」という表現とはいえ、酒気帯び運転の当事者をほぼ特定してしまうことが分かっていて、なぜ放送前にもっと取材して確証を得ようとしないのか理解に苦しむ。

  • 放送の結果生じる影響をどれだけ真剣に考えたのか。デスクや編集長という立場の人間こそ、一歩引いた冷静な目で見ることが必要。

  • 演出とか見せ方の問題でなく、事実の取り扱いを間違った事案だ。刑事事件のセンシティブな情報を扱っているという自覚が全く感じられない。

  • 血中アルコール濃度など科学的根拠を追加取材をしていたら、早い段階で誤報を修正できたのではないだろうか。

  • 事故で家族を失ったうえに、1か月もの間いわれのない中傷にさらされた被害者遺族が受けた報道被害は、容易に消えるものではなく、事案として極めて重い。

  • 関係者の内面にまで踏み込んで原因を追究する報告書には訴えるものがある。それほどの痛みを感じているのなら、それを糧にして自分たちの力で立ち直ってほしいと思う。

  • 刑事事件を扱った過去の事案と比較しても、生じた被害は深刻であるが、報告書に示された再発防止策が確実に実行されるのであれば、委員会で審議して意見を述べる必要はないのではないか。

  • 事後対応もきっちりとしており、当該放送局は自らを律することができる局だと思う。

2.「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』について日本テレビに追加の報告書を要請し討議を継続

2017年2月12日と2018年5月20日に放送された日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」で、海外ロケをした「祭り企画」にでっち上げの疑いがあると一部週刊誌が報じたことを受け、当該放送局から報告書と同録DVDが提出された。報告書には、「祭り企画」としてこれまでに放送した111本の企画すべてについても触れられている。委員会はこの報告書に基づき、委員会決定第7号「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」(2009年11月)や、委員会がこれまでに出した、そのほかのバラエティー番組についての意見も踏まえながら討議した。その結果、2件の「祭り企画」以外にも確認したい放送内容があり、考え方を重ねて聞きたい点があるとして、追加の報告書を求めて討議を継続することになった。
なお神田委員長は、法律顧問を務めたことがある制作会社が「祭り企画」の制作に参加していたため、この番組の議事に加わらないことになった。

3. その他

11月29日、北海道地区の意見交換会が開催され、9月に起きた北海道胆振東部地震を中心に意見を交わした。日本で初めて発生した「ブラックアウト」(大規模な電源喪失)によって、放送はするものの視聴者がテレビを見ることができないという前代未聞の状況下で生じたさまざまな問題等が報告された。

以上

2018年11月1日

独立テレビ局13社と意見交換会

放送倫理検証委員会と独立テレビ局13社との意見交換会が、2018年11月1日、東京・千代田放送会館で開催された。放送局出席者は13社31人、委員会からは神田安積委員長、中野剛委員、藤田真文委員の3人が出席した。独立テレビ局との意見交換会は、4年ぶりの開催。

はじめに、独立テレビ局の特徴や各局間の連携等について、代表して千葉テレビ放送から説明があり、続いて13社がそれぞれの会社の規模や看板番組等を紹介した。

次に放送倫理検証委員会の2つの委員会決定について、担当委員がポイントを解説した。昨年12月に公表した「東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見」(放送倫理検証委員会決定第27号)について、今回、委員会が独自調査を行った理由と目的を藤田委員から解説。「委員会が意見書をまとめる際、通常は放送局に制作過程をヒアリングするが、当該番組はTOKYO MXが制作に関わっていない持ち込み番組のため、制作プロセスについて制作担当者に直接聞くことができなかった。そのような理由から、番組の中で表現された"事実"について委員会独自に調査することになった特異な例」と説明した。また、「『ニュース女子』は時事的な問題を扱っており、特に当該番組の沖縄基地問題というテーマはさまざまな見解があるため、情報の正確性や差別的な表現はないかという点を中心に検証した」と述べた。
中野委員は、意見書で指摘した考査の問題点について、ていねいに説明。「当該番組は基地反対の立場で抗議活動をしている方々を揶揄するトーンで貫かれているが、抗議活動を行っている側に取材した形跡がない。考査の段階で番組内容について"これは本当なのか"と疑問を持ち、より慎重に裏付けの有無を確認してほしかった」と話した。
参加した放送局から「"基地の外の"というスーパーを放置した点が問題点のひとつとして挙げられているが、ネットスラングまで意識して考査することは難しい」という意見があった。これに対し委員は、「もちろんそれは理解できる。ただ、当該番組では、不自然に"基地の外の"という表現が多用されており、その点に引っ掛かりを覚えていれば、言外の意図を読み解くことができたはずだ」と述べ、多角的な視点で考査にあたってほしいと呼びかけた。
続いて、今年2月に公表した「フジテレビ『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見」(放送倫理検証委員会決定第28号)について、神田委員長がポイントを解説。2つの特集は、いずれも刑事事件というセンシティブな情報について十分な裏付けのないまま誤った放送をしてしまったという事例。神田委員長は「制作担当者にヒアリングしてみると、スタッフは皆、裏付け確認の重要性についてきちんと理解していたことがわかった」と述べ、「それなのに誤った内容を放送してしまったのは、確認を人任せにするなどスタッフ間の連携の力が足りなかったため」と説明した。
この決定について放送局から、「『とくダネ!』の誤りは、放送局としてあってはならないことだが、それを"倫理違反"とされることに違和感がある」との意見が出された。これに対し出席委員から、「人間はさまざまな倫理規範の中で生きているが、放送倫理検証委員会の言う"倫理違反"とは、あくまで放送人としての職業倫理に反しているという指摘だと考えてほしい」「放送倫理のよるべきところは放送局自らが定めた放送基準であり、放送倫理違反の指摘については、放送基準に立ち戻った上で、何が問題だったかを考えてもらいたい」との発言があった。

最後のパートでは独立テレビ各局から、考査や事実の裏付け確認作業について、日頃の悩みや取り組み例などが報告された。
比較的規模の小さな局が多く、いずれも少人数で番組チェックや考査にあたっているため、「法令に精通している担当者の育成が課題だ」「急増する新ビジネス、サービス・商品の知識を得るのに苦労している」などの声が聞かれた。また、めまぐるしく変化する社会にあって、数年前とは判断が変わることもあると説明した上で、「世の中の動きに対し、敏感であることが大切だ」との意見が出された。
ことばの使い方、表現についても、「古典落語や昔の時代劇に出てくることばが、現在では差別表現に当たる恐れがあり苦慮している。番組の最後に"おことわり"を加えるなど、そのつど対応している」という実例が紹介された。これに対し藤田委員から、「明らかに侮蔑的で許容できないものは削除すべきだと思うが、古い映像作品や歴史ある文化・芸能を放送する場合、過度なカットや改変は視聴者のためにならないのではないか」という発言があった。
事実の裏付けのあり方やチェック体制についても、複数の社から具体的な方法や事例の紹介があり、「過去の誤りやミスを参考にして、同様の事案が起きないよう注意している」などの報告があった。
最後に神田委員長が「独立テレビ局各社に共通する問題意識やそれぞれの悩みなどをうかがい共有することができ、貴重な機会となった。今後の参考にしたい。放送界の自由な雰囲気を維持し、国民の知る権利を守るためにも、これからも当委員会の職責を果たしていきたい」とあいさつし、意見交換会を締めくくった。

後日、参加者から寄せられた主な感想は次のとおり。

  • 意見書作成に至る解説を聞き、2つの決定についての理解を深めることができた。
  • 審議事案に対する委員会の具体的な取り組みが分かり、とても参考になった。忙しい委員の方々が、事実を一つひとつ確認するという地道な作業を行っていると知り、まさに放送局の考査と同じだと思い親近感を覚えた。BPOが少し身近な存在に感じられた。
  • 互いの理解を深める上で大変良い機会となった。今後もぜひ、このような場を設けてもらいたい。
  • 他局の考査や番組担当の方と会う機会は意外と少ないので、直接話を聞くことができて、その点でも意義深い会合となった。
  • 今回は主に管理職クラスが出席していたが、現場ディレクターに聞いてもらいたい内容だった。今後は、そのような機会もあるとよいと思う。

以上

第131回 放送倫理検証委員会

第131回–2018年11月

日本テレビ『世界の果てまでイッテQ!』について報告書の提出を要請

第131回放送倫理検証委員会は11月9日に開催された。一部週刊誌で「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられ、その後、新聞・放送各社も報じた日本テレビのバラエティー番組『世界の果てまでイッテQ!』について、当該放送局に対して当該番組の報告書と同録DVDの提出を求めることを決めた。

議事の詳細

日時
2018年11月9日(金)午後5時~午後8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1.「海外ロケの企画をでっち上げた疑いがある」と報じられた『世界の果てまでイッテQ!』について日本テレビに報告書の提出を要請

2018年5月20日に放送された日本テレビの「謎とき冒険バラエティー『世界の果てまでイッテQ!』」の「世界で一番盛り上がるのは何祭り?」というコーナー企画で、「ラオスでの祭り」として紹介された当該企画内容は、でっち上げの疑いがあると一部週刊誌が報じた。これを受けて、日本テレビは自社のホームページで、誤解を招く表現があったことに関して批判を真摯に受け止めているとした上で、今後は「誤解を招く事が無いような形で放送致します」という見解を明らかにした。この動きを新聞各紙が報道し、放送局もニュース番組や情報番組で放送したことから、委員会は、当該番組の制作の経緯を知る必要があるとして、当該放送局に対して報告書と同録DVDの提出を求めることを決めた。
このほか、11月1日に東京で開催された独立テレビ局13社との意見交換会について、参加した委員から、「出席者の率直な意見を聞くことができて有意義だった」等の報告があった。

以上

第130回 放送倫理検証委員会

第130回–2018年10月

フジテレビの『直撃LIVEグッディ!』と『報道プライムサンデー』について討議終了

第130回放送倫理検証委員会は10月12日に開催され、フジテレビの『直撃LIVEグッディ!』と『報道プライムサンデー』が放送したオウム真理教元幹部の死刑執行をめぐる特集で、オウム真理教時代の映像が後継団体内で配布された時期を誤って放送した事案について、前回に引き続き討議した。委員会は、当該放送局から提出された追加報告書について意見交換を行い、当該番組を制作したのが「委員会決定 第28号」で審議の対象とした番組を制作した部局と同じであり、決定通知から半年以内に当該事案が発生したことを懸念する厳しい意見が出されたが、当該事案については訂正とお詫び放送もしており、新たに具体的な再発防止策が策定・実施されているとして討議を終了した。

議事の詳細

日時
2018年10月12日(金)午後5時~午後6時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. オウム真理教元幹部の死刑執行に絡む特集で、オウム真理教時代の映像が後継団体で配布された時期を誤報したフジテレビの『直撃LIVEグッディ!』および『報道プライムサンデー』についての討議を終了

フジテレビの情報制作局が制作した情報番組『直撃LIVEグッディ!』は、オウム真理教元幹部7人の死刑が執行された後、後継団体の一つであるアレフがオウム真理教時代に作成された映像を広く配布したと7月13日(金)の放送で伝えた。また、7月15日(日)には、報道局制作の『報道プライムサンデー』が、『直撃LIVEグッディ!』が入手した放送素材を使って同趣旨の内容を報じた。しかし放送後、映像提供者から当該映像は元幹部らの死刑執行前から配布されているものであり、執行後に配布されたものではないとの指摘があったため、当該放送局は映像提供者に謝罪するとともに、7月22日に『報道プライムサンデー』、23日に『直撃LIVEグッディ!』でそれぞれ訂正とお詫びの放送を行った。
9月の委員会では討議の結果、(1)映像提供者が映像の配布時期について説明しているにもかかわらず、なぜ担当ディレクターが配布時期について誤った思い込みを持ったのか、(2)他のスタッフによるチェック、および「『とくダネ!』2つの刑事事件に関する意見(委員会決定 第28号)」に対応して提出された当該放送局の「再発防止に向けた取り組み」に記されたチェック機能等がなぜ働かなかったのかなどについて、さらに詳しい説明を求める必要があるとして、当該放送局に対し追加質問を行った。
これに対して当該放送局から追加の報告書が提出され、委員会では、この回答内容などを中心に意見が交わされた。委員からは、「当該番組企画のテーマである後継団体の動きそのものについて直接取材が行われておらず、映像の配布時期など基本的な活動状況を確認していない点は問題である」「他の放送局の番組がすでに当該映像について報じた"後追い"企画であったにもかかわらず、当該放送局が"独自"と銘打った背景には、自分たちの入手した情報を大きく見せたいという心理があり、都合の良い情報へすり替わってしまったのではないか」などの指摘があった。
また、「オウム真理教元幹部らの死刑執行後に、改めて当該映像が配布されたのであれば、それ自体が極めて重要なニュースだろう。番組スタッフ間でこの重要性を踏まえたやり取りが行われていれば、配布時期の確認につながったはずだが、報告書ではこの点が解明されていない。こうした報道における感性の問題は、これまでに打ち出された再発防止策ではカバーできないものであり、この点こそが、再発防止策に盛り込まれるべきではないか」との指摘もあった。
さらに、「『委員会決定 第28号』を踏まえて実施されているはずの再発防止策では、編集会議で決まった翌日の放送内容について報告を受けた担当局長は、注意すべきポイントを精査し、番組にフィードバックする仕組みとなっているが、追加報告書によれば、編集会議における議論や担当局長の対応は十分とはいえず、再発防止への問題意識が乏しいように感じられる」との意見も出された。
他方で、当該放送局は追加報告書で「チェックを担当するスタッフに『部下を信頼しても信用するな』という十分な意識の徹底がなされず、取材ディレクターの思い込みに適切に対応できなかったと述べている。これは、スタッフは信頼しても情報は疑ってかかる姿勢を表明したものと受け止められ、評価できる」との意見が出された。また、「今後、全員参加の編集会議で担当ディレクターが事実確認をどのように行ったかを取材先とのやり取りまでさかのぼって確認できるようにする、編集会議では実際に取材したディレクターが直接説明するなど、番組が新たに講じることになっている再発防止策について、その実施状況を見守りたい」との意見があった。
委員会では、上記のとおり、追加報告書を踏まえてもなお様々な懸念が存する旨の意見が出されたが、訂正とお詫びの放送が行われ、新たに具体的な再発防止策が策定・実施されており、自主・自律の対応がなされていることから、討議を終了することとした。

以上

第129回 放送倫理検証委員会

第129回–2018年9月

“オウム真理教の教材VTRの配布時期を誤報”フジテレビの『直撃LIVE グッディ!』などを討議

第129回放送倫理検証委員会は9月14日に開催され、フジテレビの『直撃LIVEグッディ!』と『報道プライムサンデー』が放送したオウム真理教元幹部の死刑執行をめぐる特集を討議した。当該番組は、教団が作成した教材映像の配布時期を誤って放送したもので、フジテレビは訂正とお詫びの放送を行った。委員会では当該放送局から提出された報告書を基に討議したが、誤報に至った経緯等について、さらに詳しく説明を求めるべきではないかとの意見が相次ぎ、委員会として当該放送局に追加質問を行い、討議を継続することとなった。

議事の詳細

日時
2018年9月14日(金)午後5時~午後7時15分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. オウム真理教元幹部の死刑執行に絡む特集で、後継団体で配布された教材VTRの配布時期を誤報したフジテレビの『直撃LIVEグッディ!』および『報道プライムサンデー』を討議

フジテレビの情報制作局制作の情報番組『直撃LIVEグッディ!』は、オウム真理教元幹部7人の死刑が執行された後、後継団体の一つであるアレフがオウム真理教時代に作成された教材映像を広く配布したと7月13日(金)の放送で伝えた。また、7月15日(日)には、報道局制作の『報道プライムサンデー』が、『直撃LIVEグッディ!』が入手した放送素材を使って同趣旨の内容を報じた。しかし放送後、映像提供者から当該映像は元幹部らの死刑執行前から配布されているものであり、執行後に配布されたものではないとの指摘があった。
当該放送局から委員会に提出された報告書によると、配布時期を誤って放送したのは担当ディレクターの思い込み等によるものと説明、映像提供者に謝罪するとともに、7月22日に『報道プライムサンデー』、23日に『直撃LIVEグッディ!』でそれぞれ訂正とお詫びの放送を行った。
委員からは、「インパクトのあるものを探す中、自分の思い込みに都合よく当てはめたのではないか」「個人の資質にも問題はあるが、チェックする人の役割も十分に発揮されたとは言えない」など、厳しい意見が相次いだ。
委員会では、映像提供者が映像の配布時期について説明しているにもかかわらず、なぜ担当ディレクターが配布時期について誤った思い込みを持ったのか、他のスタッフによるチェック機能が、なぜ働かなかったのか。また、「『とくダネ!』2つの刑事事件に関する意見(委員会決定第28号)」に対応して提出された当該放送局の「再発防止に向けた取り組み」に記されたチェック機能等が働かなかったことなどについて、より詳しい説明を求める必要があるとして追加質問を行い、次回の委員会でさらに討議することとなった。

以上

第128回 放送倫理検証委員会

第128回–2018年7月

6月の視聴者意見についてなど

第128回放送倫理検証委員会は7月13日に開催され、6月にBPOに届いた視聴者意見の概要が事務局から報告された。

議事の詳細

日時
2018年7月13日(金)午後5時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 6月の視聴者意見の概要

6月の30日間にBPOに届いた視聴者意見のうち、批判的な意見が寄せられた「新幹線車内での無差別殺人事件」や「大阪の震度6弱の地震」を巡る報道、「バラエティー番組の企画」について、事務局からその概要が報告されたが、個別の番組について特に踏み込んだ議論にはならなかった。

以上

第127回 放送倫理検証委員会

第127回–2018年6月

東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見への対応報告を了承など

委員会は、2017年12月、東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見を通知・公表した。これに対する対応報告書は、2018年3月に当該放送局から提出されたが、その内容が不十分だとして、委員会は4月に追加の質問を行い、5月に当該放送局の補充の報告書を受け取った。委員会では、これを受けて意見交換を行い、一連の対応報告を了承した。

議事の詳細

日時
2018年6月8日(金)午後5時~午後8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見への対応報告を了承

2017年12月14日に委員会が通知・公表したTOKYO MX『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見(委員会決定第27号)への対応報告書は、当該放送局から2018年3月に提出された。しかし、委員会は内容が不十分だとして4月に追加の質問をし、5月末に当該放送局から補充の報告書の提出を受けた。
委員会は、当該放送局からの二つの報告書を踏まえて意見交換を行った結果、「番組の放送を打ち切った経緯が具体的に明記された点は評価できる」「TOKYO MXは、委員会が意見書を通知する前の2017年2月、番組は放送基準に沿った内容だったという『当社見解』を発表した。補充の報告書ではこれが誤りだったと認めているのだから、『当社見解』を自社のホームページから削除するだけでなく、視聴者に対して撤回理由をきちんと説明すべきではないか」「問題が解決しない場合は毅然とした態度で放送を見合わせるなどの『凛とした矜持』を持つことを意識するというTOKYO MXの今後の放送に期待したい」等の意見が出された。そのうえで、かつて委員会は、情報バラエティー番組であっても報道番組と同様に放送局は事実に基づいて報道しなければならない(委員会決定第13号 2011年9月27日)との意見を述べたが、事実についての十分な裏付けの有無を吟味する必要は番組のタイトルに「ニュース」ということばが含まれるか否かによって変わるものではないという点を、当該放送局だけでなく各放送局に改めて訴えることを確認して、一連の対応報告を了承し、公表することとした。

以上

第126回 放送倫理検証委員会

第126回–2018年5月

TOKYO MX『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見への対応報告書に追加質問など

東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見への対応について、委員会は、報告の内容が不十分であるとして、当該放送局に対して追加の質問を行った。
委員会が2月に通知公表したフジテレビの『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見への対応について、当該放送局から報告書が提出された。委員会で検討した結果、きめ細かな研修会を開催するなど意見書で指摘した課題に取り組み再発防止を図っているとして、対応報告書を了承した。

議事の詳細

日時
2018年5月11日(金)午後5時~午後8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見への対応報告書に追加質問

東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』沖縄基地問題に関する特集について、委員会は去年12月、重大な放送倫理違反があったとする意見書を通知公表し、TOKYO MXからその後の取り組み状況について報告書が提出された。
この報告について4月の委員会では、「TOKYO MXは、委員会が意見書を通知する前の去年2月、番組は放送基準に沿った内容だったとする『当社見解』を公表したが、意見書通知後、この見解の内容について、改めて社内で検証をしたのだろうか」などの意見が出された。その結果、この対応報告では内容が不十分であるとして、担当委員を中心に追加の質問項目をまとめ、4月下旬にTOKYO MXに手渡したことを確認した。

2. フジテレビ『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見への対応報告書を了承

2月8日に委員会が通知公表した、フジテレビの『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見(委員会決定第28号)への対応報告書が、4月下旬、当該放送局から委員会に提出された。
報告書には、刑事事件報道への意識と知識を向上させるために、社内で100回以上の少人数の研修を実施したことや、報道被害者を招いて研修会を開く予定であること、また意見書の真意をより深く理解するために放送倫理検証委員会の担当委員を招いて勉強会を開催したことや、その際の参加者の声が具体的に記されている。
委員会では、勉強会に出席した委員からの報告などをもとに意見交換を行い、少人数の研修の実施など、意見書で指摘された課題についてひとつひとつ改善を図っていることがうかがわれるとして、この対応報告書を了承し、公表することにした。

以上

第125回 放送倫理検証委員会

第125回–2018年4月

TOKYO MXの『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見への対応報告書に追加質問を検討など

本年度最初の委員会の開催となり、冒頭、神田委員長が委員長代行に是枝委員と升味委員を指名し、継続している討議を再開した。
裁判所に入る被告の映像を取り違えて、別人の映像を被告として4回にわたって放送した毎日放送のニュースを巡り、当該放送局からその後の経緯について追加報告を受け討議した結果、十分な再発防止策が取られているとして討議を終了した。
覆面座談会の出演者を一部モザイク未処理のまま放送した東海テレビ『みんなのニュースOne』の企画について、当該放送局から詳細な映像編集プロセスの説明や番組審議会の議事概要などが追加報告書として提出された。討議の結果、委員会は、番組審議会や第三者機関が機能して自主・自律の対応がなされているとして討議を終了した。
東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)『ニュース女子』沖縄の基地問題に関する特集について、去年12月に委員会が意見書を通知公表した後の取り組み状況について当該放送局から報告書が提出されたが、報告の内容が不十分であるとして、追加の質問をすることになった。

議事の詳細

日時
2018年4月13日(金)午後5時~8時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

神田委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 裁判の被告として別人の映像を4回にわたって放送した毎日放送の『ニュース』を討議

毎日放送は、元神戸市議会議員の政務活動費詐欺事件の裁判を報道する際、3人の被告のうちの1人の被告の映像を通行人とみられる別人の映像と取り違え、去年12月の初公判から今年2月の判決公判のニュースまで4回にわたって放送した。
毎日放送は、誤って放送された人を見つけて謝罪するため、撮影した時刻と同じ時間帯に、同じ場所を中心に通行人を目視で確認する作業を続けていることから、委員会は、この推移を見守ることとし、討議を継続することとなった。当該放送局の追加報告書によると、この人物の特定はまだできていないものの(2018年4月13日現在)、映像のチェックシステムの強化など再発防止に向けて十分な対策が取られているとして、委員会は討議を終了した。

2. 覆面座談会の出演者を一部モザイク未処理のまま放送した
東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議

東海テレビのニュース番組『みんなのニュースOne』は2月23日、「働き方改革」をテーマに中小企業経営者や医師ら5人による座談会の模様を放送した。5人は、顔にモザイクをかけるなどして個人が特定されないことを条件に出演したが、2か所でモザイクがかかっていない映像が放送された。前回の委員会では、モザイクが一部未処理のまま放送に至った経緯の報告を求め、番組審議会などでの議論を見守りたいとして、討議を継続することとなった。
新たに提出された報告書では、編集機の操作のミスからモザイクの未処理が起きたこと、編集済み素材が適切にチェックできなかったプロセスなどが詳細に説明されるとともに、番組審議会や第三者機関「オンブズ東海」で厳しい意見が相次いだことが報告された。また、再発防止策として、完パケ作業の一日前倒し、モザイクなど放送に配慮が必要な場合はスタッフ全員で情報を共有する、チェックできていない企画は放送しない、などを定めたことが報告されている。これに対し委員会では、「さまざまな指摘を今後に生かす取り組みに着手するなど、番組審議会が十分に機能している」などの意見があり、問題は社内全体で共有され、自主・自律の対応がなされているとして討議を終了した。

3. 東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄の基地問題に関する特集についての意見への対応報告書を検討

東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』沖縄の基地問題に関する特集について、委員会は去年12月、重大な放送倫理違反があったとする意見書を通知公表し、TOKYO MXからその後の取り組み状況について報告書が提出された。
この報告について委員会では、「TOKYO MXは、委員会が意見書を通知する前の去年2月、番組は放送基準に沿った内容だったとする『当社見解』を公表したが、意見書通知後、この見解の内容について、改めて社内で検証をしたのだろうか」などの意見が出された。その結果、この報告書では、報告の内容が不十分であるとして、TOKYO MXに対して追加の質問をすることになり、その内容について担当委員を中心に検討することになった。

以上

2018年1月25日

沖縄地区の各放送局と意見交換会

沖縄地区の放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、1月25日、那覇市内で開催された。沖縄地区の放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会は今回が初めてである。意見交換会には、NHK沖縄放送局、琉球放送、琉球朝日放送、沖縄テレビ、ラジオ沖縄、FM沖縄の6局から24人が出席した。委員会からは、川端和治委員長、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員が出席、BPOの濱田純一理事長が同席した。
意見交換会の冒頭、濱田理事長が開会のあいさつに立ち、「BPOはNHKと日本民間放送連盟とが組織した第三者機関であるが、放送局に物言いや注文をつけるだけの組織ではない。放送局の皆さんと一緒になって放送の自由を守り、放送が国民にとってより良いサービスを提供できることを目指す組織である。各委員会との意見交換もその一環であり、参加した委員は放送現場の生の声を聞いて糧にする。また、放送局の皆さんは、委員の意見を現場に持ち帰って放送の自主·自律の実現に反映させてほしい」と呼びかけた。そして、会場内のテレビモニターで、BPOのガイダンスDVDを視聴した。
意見交換会では、2017年12月14日に委員会が公表した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見書(決定第27号)と、基地問題に関連してインターネット空間で出回っている沖縄ヘイトやデマ情報に対し、地元の放送局がどう向き合っているのか、テーマをこの2点に絞り込んで意見が交わされた。
まず、『ニュース女子』の意見書について、川端委員長から意見書の論理構成が丁寧に説明されたうえで、委員会決定のポイントについて解説が行われた。川端委員長は、当該番組は、放送局が制作に関与していない、いわゆる「持ち込み番組」であるため、委員会が意見を通知した相手は、放送したTOKYO MXという放送局であり、制作した制作会社は、審議の対象とならない。しかし、当該番組が伝えた内容に放送倫理上の問題があったということになるのかどうかを検討しなければ、放送した結果、放送局に放送倫理違反があったのかどうか、つまり放送局の考査が適正だったかどうか問うことができない。そこで、制作会社にも直接ヒアリングを申し込んだが、「TOKYO MXにすべてお任せしている」として、直接のヒアリングはかなわなかった。当該放送局を経由して、文書で質問し文書で回答をもらった。委員会では、当該放送局へのヒアリングの内容も含め提出された回答書や資料について慎重に検討したが、いくつかの疑問点が残ったため、委員会として独自に調査をする必要があると判断して、担当委員が沖縄で現地調査を行った。
この結果、委員会は、意見書で述べたとおり当該番組には複数の放送倫理上の問題が含まれていたにもかかわらず、TOKYO MXは適正な考査を行うことなく放送した点において、重大な放送倫理違反があったと判断した。本件は、委員会が「持ち込み番組」に対する放送局の考査が適正であったかどうかを検証した初めてのケースである、などと詳細に解説した。
沖縄の各放送局の出席者からは、「沖縄では放送されておらずネットで見たが、番組は緊迫感もなく突っ込んで取材していないことがすぐに分かる」「沖縄に対する悪意を感じる。裏付けのないものを安易に制作しているなと思った」「なぜ、このような内容の番組が放送されたのだろうと思う。営業の力が大きく、考査のハードルが下がったのだろうか」など、インターネットで視聴した感想が述べられた。
現地調査の説明や印象を求められた中野・藤田両委員は、名護警察署周辺や二見杉田トンネル前など、当該番組のロケ地で確認を行った際の写真を紹介しながら、距離感を肌で感じることができ、当該番組の取材班は比較的狭い範囲を効率よく回ったと感じた、ラジオDJの聴き取りで新たな事実も分かり、調査は有意義だったと話した。
中野委員は、「委員会が行った調査は、誰にでも簡単にできる調査である。例えば、救急車の走行が妨害されたのかどうかは消防で確認できること。しかし、TOKYO MXは、報告書を提出するにあたって確認した形跡がない。委員会が行った今回の調査を放送局自身がやれないことはない」と述べ、事後対応で、当該放送局に自主・自律の精神が欠けているのではないかと厳しく指摘した。藤田委員は、「審議入りした直後に、TOKYO MXは、放送法及び放送基準に沿った制作内容であったなどと、内容について問題がなかったとする自社の見解を発表した。当該放送局が、審議中の事案についてこのような見解を発表したのは初めての経験だ。しかも、TOKYO MXのこの判断は誤っている」と指摘した。岸本委員は、「当該番組を、視聴者の視点で視聴した。第一印象は、視聴者を甘く見ているのではないかと思った。スタジオトークの内容も、そこまで言えるのだろうかと疑問のほうが大きかった。取材による裏付けを欠かさず、自ら発信する情報の質を常に検証してほしい。インターネット上の情報との向き合い方という課題にも真摯に取り組んでほしい」と、視聴者の信頼を裏切らないよう各放送局に不断の努力を呼びかけた。
また、出席者から考査について、「考査は"最後の砦"という委員会の意見は理解できるが、放送局の考査の過程で、すべて事実関係の裏取りが必要なのか。今後、持ち込み番組に対してBPOはどんな対応を考えているのか」という質問があった。これに対して川端委員長は、「すべての内容について裏取りを要求するのは非現実的である。番組の主張の骨格をなす部分について、本当にそんなことがあったのだろうかと、誰もが疑問に思うポイントを考査の過程でチェックすべきと考えている。合理的な裏付けがあるのかどうかについて、放送局がきっちりと調べて放送している限り、放送倫理違反にはならない」また、「今回のように放送局が制作に全く関与していない"持ち込み番組"については、委員会と放送局との合意書でも、制作会社に調査への協力義務を負わせていない。必要ならば、日本民間放送連盟などで議論されることと思うが、当委員会が意見を述べる立場にはない」と、委員会の基本的な姿勢も合わせて説明した。
休憩をはさんで、地元の放送局の間で最近増加していると感じている沖縄ヘイトや基地問題をめぐるデマ情報をテーマに意見交換を行った。
米軍ヘリから小学校や保育園に部品が落下した問題をめぐり、学校や教育委員会に誹謗中傷の電話が相次いだことについて、各局とも複雑な県民感情を慮って放送するか否か迷ったり悩んだりしていることが具体的に報告された。
NHK沖縄放送局は、「ネットに書き込みが多数あり一過性のニュースにしてはいけないと思い報道のタイミングをみていた。発生から1週間後に基地の歴史的背景も含めて全国ニュースで放送した」 琉球放送は、「小学校に偏見の電話がかかり始め、ニュースにするかどうか迷っていたが数十件にも達した。これは沖縄ヘイトを如実に示している。県民だけでなく県外の人にも考える材料を提供すべきと判断し、積極的に報道した」 沖縄テレビは、「基地の歴史を紐解きながら丁寧に報道しなければならないと考えた。基地問題に詳しいフリーのジャーナリストのインタビューを交えて伝えた」 ラジオ沖縄とFM沖縄のラジオ局からも、「現場にアナウンサーを派遣してリポートした」「基地の歴史的背景を伝えた」と報告があった。一方、琉球朝日放送からは、「小学校に沖縄ヘイトの電話がかかってきていることは承知していたが、詳細を伝えれば伝えるほど地元の県民は悲しむのではないかと考え、あえて報道しなかった」などと報告があった。
この他、高速道路で起きた玉突き事故に絡んで、米軍兵士が日本人を救助したのに沖縄のマスコミはこの美談を無視して報じないと一部全国紙が非難した件について、参加局から議論したいと提案があり、当時のニュース映像を視聴した。「継続取材をしているが、そんな事実は確認できない」「県警も否定している」「県外の視聴者に対して、いかに情報発信していくべきか悩んでいる」など現場の報告や意見が相次いだ。川端委員長は、「この件は、ネットニュースを読んで知ったが、いま地元の報告を聞いて事実関係が異なることに驚いた。継続取材で調べた結果、事実関係が違うのであれば冷静に伝えていくことが大切なのではないかと思う。放送できなくともホームページの活用など発信できる手段は工夫すれば、いろいろあると思う」と応じた。また、他の委員からも、「追加取材で得た事実は報じてほしい」「地元各社の取材で事実が一つに収れんされたのならば、一つにまとまって事実を伝えることも大切だ」などと発言があった。
さらに、沖縄の各放送局と系列のキー局との間には、ニュース価値に対して温度差があるのかどうかについて、"ホンネ"の意見が相次ぎ、参加した委員からは、沖縄の放送現場の葛藤が聞けて非常に有意義だったと感想が述べられるなど、予定の時間をオーバーして活発な意見交換となった。

今回の意見交換会について、参加者から以下のような感想が寄せられた。

  • 今回の、意見交換会は、大変勉強になることが多い会合でした。テーマ設定そのものが、TOKYO MXの『ニュース女子』問題という、沖縄の報道にとって重要な問題だったこともありますが、本音の部分で議論ができたのではないかと思っています。その中でも、委員の方々から出た「ネット上のデマやフェイクニュースに対して、逐一反論するのは難しくても、そうしたデマやフェイクを拡散させるマスコミに対しては、遠慮の無い批判をすべき」との言葉には、とても勇気づけられました。デマやフェイクにどう対応していくのか、そのときの芯となる考え方をもらえたように思います。そのうえで、BPOの意見書の指摘にもあった言葉をお借りすれば、放送局がヘイトやフェイクニュースへの"砦"になっていかなければならないと強く感じました。他のテレビ局の方々との議論も、大変興味深く、こういった機会が増えると意義深いと思います。

  • 『ニュース女子』の件では、番組を見た視聴者が情報を鵜呑みしてしまう危険性をあらためて感じました。放送基準には、「社会·公共の問題で意見が対立するものについては、できるだけ多くの角度から論じなければならない」とあります。視聴者から偏向報道だと思われないように、また、情報の根拠·裏付けは確実に行うべきであると、番組考査の大切さを再認識させられました。メディアにいる者として、発信した情報の責任は重大だと認識しています。ところで、SNSや動画サイトなどは個人で情報を発信できる時代となり、トランプ大統領がツイッターで発言している内容もニュースなどで取り上げられています。ネット配信はいろんな情報が拡散され影響が見られますが、一方で情報が操作される危険性も感じています。メディアが多様化されていく中で、テレビは信頼されるメディアでなければならないと思います。県民に支持される放送局としての使命と影響力を認識して頑張りたいと思います。

  • 「TOKYO MX」からヒアリングを行うだけでなく、地元消防などからも取材をして番組内容の検証をしているところに委員会の本気度を感じた。外部ディレクターによる番組や持ち込み番組については制作段階から密にかかわることができないうえ、番組枠を変更することも難しいことから、どうしても放送局側もチェックが甘くなりがち。TOKYO MXの例は他人事とは思えず、意見書は緊張感をもって読んだ。ただ、全体的に持ち込み番組を考査する放送局側への指摘・批判に多くを割いている印象で、制作会社側への指摘をもう少し増やしてほしかったほか、なぜこのような番組が生まれてくるのか、いわゆる「沖縄ヘイト」と呼ばれる現象の背景にまで踏み込んでほしかった。

  • 一般の人々に対してどの程度理解してもらっているか不明だが、個人的には、同じ「番組」を視聴できるメディアとはいえ、放送とウェブの違いはここにある!と知らしめた内容と感じた。「放送」する番組には裏付けを伴うという当然の話で、昨今流行りのウェブ発の番組に決定的に欠けている点だと思っていた。当該番組はバラエティーであり報道番組ではないとの認識だが、まことしやかな物言いや分かりやすいストレートな表現は、沖縄の基地や反対運動について知識のない視聴者に大小さまざまな誤解・反感を招く。事実ならばともかく、伝えられた「事実」のいくつかで裏付けが確認できないと立証された点は大きかった。放送により考えられる視聴者の反感を考えると、沖縄や反対運動に携わる人々に無用の大きなダメージを与えることになる。とはいえ、番組の意見そのものについては言及していない点は大事だと思う。

  • BPOの意見書については、「事実と異なる」という観点から一つひとつ検証されていて、番組に対して感じていた違和感や嫌悪感が、事実を確認することなく、制作意図に都合の良い情報の元に制作されたものということが確認できた。委員の皆さまが、この事態に真摯に向かい対応されたご努力に敬意を表します。一方、懸念は、今回のケースのように、BPOの調査に応じない制作会社が制作した持ち込み番組が増えないかということです。そして意見交換会は、なぜ、どのように委員会意見が出されたのか分かり、さらによい会だったと思います。また、意図的に発信される事実とは異なるネット情報への対応について意見が交わされたことは、大変有意義だったと思います。テレビが積み重ねてきた信頼を崩されないよう、さらに丁寧な番組づくりが必要だと感じました。

  • 持ち込み番組ということで、放送局や制作会社の協力が得られない中、調査しないといけない初のケースということで、BPOの委員の皆さんはかなりご苦労なさったことが分かった。独自に調査した分、直に沖縄にふれて、現状を理解いただけたと思うのでよかった。
    キー局と違ってローカル局は余計に持ち込み番組が多いので、砦である考査の責任が大きいことを再認識した。あらためて放送の信頼性と信ぴょう性を失ってはいけないと感じた。ややもすると放送がネットに飲み込まれる時代がくるなどと言われることもあるが、むしろ自由で危険なネットの裏取りをして真実を伝える放送の役割は今後ますます大きくなっていくと感じた。

以上

第124回 放送倫理検証委員会

第124回–2018年3月

"裁判の被告として別人の映像を4回にわたり放送"毎日放送の『ニュース』を討議
"モザイクをかけるべき出演者の顔を一部未処理のまま放送"東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議など

毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』で、皇后陛下の肖像写真を放送した際、撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたなどという誤ったエピソードを伝えたことに関し、委員会は事実の裏付けを取らなかったことや写真のキャプション内容を見落としたことは問題だとしながらも、再発防止のための対応策が取られているなどとして、討議を終了した。
裁判所に入る被告の映像を取り違えて、全く別人の映像を被告として4回にわたって放送した毎日放送のニュースについて、当該放送局の報告書をもとに討議した。その結果、毎日放送は、誤って放送された人に謝罪するため、この人を探し出す作業を続けていることから、この推移を見ながら、次回の委員会で討議を継続することになった。
東海テレビのニュース番組『みんなのニュースOne』で覆面座談会の模様を放送した際、一部モザイクが未処理のまま放送が行われたことについて討議が行われた。委員会はモザイクがかけられなかった理由について当該放送局からさらなる報告を求めるとともに、番組審議会等での議論も見極めたいとして、次回委員会で討議を継続することになった。

議事の詳細

日時
2018年3月9日(金)午後5時15分~7時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した
毎日放送『教えてもらう前と後』を討議

毎日放送は、1月9日に放送したバラエティー番組『教えてもらう前と後』で、皇后陛下の肖像写真の撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたと伝えたエピソードなどに誤りがあったとして、1月23日に訂正放送を行うとともに、番組ホームページでも訂正と謝罪をした。
前回の委員会では、「写真の撮影時期の誤りよりも、ご成婚前の撮影を前提としてありえないエピソードを伝え、それにコメントを加えたことが問題だ」といった意見が相次ぎ、制作の経緯などについてさらに詳しく聞くために、当該放送局に追加の質問を行うとともに、誤った情報が書かれていたという書籍の部分のコピーの提出を求めて、討議継続となった。
今回の委員会では、書籍に書かれた内容の裏付けをきちんと取らなかったことや、写真に添えられたキャプションには撮影時期がご成婚後であり、場所も違うことが書かれていたのに、それに十分な注意が払われなかったことは問題だとしながらも、放送法による訂正放送がなされるとともに再発防止のための対応策が取られ、また宮内庁とも話し合いをして了解を得ているとして、討議を終了した。

2. 裁判の被告として全く別人の映像を4回にわたって放送した
毎日放送の『ニュース』を討議

毎日放送は、去年12月に開かれた元神戸市議会議員の政務活動費詐欺事件の初公判を報道する際、3人の被告のうちの1人としてただの通行人とみられる全く別人の映像を放送した。この誤った映像は、その後の論告求刑公判や判決の報道の際など、合わせて4回放送された。2月に視聴者からの指摘で誤りに気づいた後、訂正放送を行うとともに、ホームページで訂正と謝罪をした。
当該放送局の報告書によると、神戸地方裁判所の正面玄関で取材していたカメラマンが撮影した映像に、被告のほか、通行人とみられる全く別人も写っていた。翌日朝のニュースに向けて映像を編集している過程で、担当記者は、この別人の静止画が被告であるかどうかの確認を求められた際、持っていた顔写真と少し違うとは思ったものの、「写真と実際は違う」と自分を納得させて「大丈夫です」と答えたという。また撮影したカメラマンも、誰を撮影したかなどを記載するキャプションに、映像全体として「神戸市議入廷」と書いただけで、どの部分が誰の映像であるか特定をしていなかった。
委員会では、「被告人ではない人を被告人として4回も放送したことは軽視できない誤りだ」「誤って放送された人が特定できていないので、謝罪もされていないのは問題だ」など厳しい意見が相次いだ。
毎日放送は、誤って放送された人を見つけて謝罪するため、撮影した時刻と同じ時間帯に、同じ場所で通行人を目視で確認する作業を続けていることから、委員会は、この推移を見ながら、次回の委員会で討議を継続することになった。

【委員の主な意見】

  • 映像の取り違えはこれまでもあったが、4回も放送されることはなかった。
  • 担当記者の経験が浅いとはいえ、放送されたニュースを見ていないのには驚いた。カメラマンも見ていないということで、理解できない。
  • 間違って放送された人は、被告本人とよく似ているが、結果的に無関係な人を被告としてしまったことは罪深い。誤って撮影された人を特定して、きちんと謝罪できるか、しばらく様子をみたい。
  • 具体的な再発防止策が取られてはいる。

3. モザイクをかけるべき出演者の顔を一部未処理のまま放送した東海テレビの『みんなのニュースOne』を討議

東海テレビは2月23日に放送したニュース番組『みんなのニュースOne』で、「働き方改革」をテーマにした座談会を放送した際、経営者や医師など5人の出演者との約束で顔にモザイクをかけるべきところ、一部未処理のまま放送したため、番組の中でお詫びをして、出演者にも謝罪した。
この問題について委員会では、「なぜ特定のシーンだけモザイクが未処理のまま放送されたのかがよくわからない」として、シーンの一部にモザイクがかけられなかった理由について当該放送局からさらなる報告を求めるとともに、番組審議会等での議論の内容も見極めたいとして、次回委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • 約束したモザイク処理がされないと、番組に出演した方が経営する企業の評判を落とすことにもつながりかねない。
  • 今後の取材協力者が得られなくなるかもしれないという、放送人にとって大きな問題であるはずなのに、その危機感が報告書からは読み取れない。
  • 時間が間に合わないから放送で使わないという判断もあったはず。
  • 番組審議会や当該放送局が作っている第三者機関による審議を見守りたい。

以上

2018年2月8日

フジテレビ『とくダネ!』
2つの刑事事件の特集に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、2月8日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、升味佐江子委員長代行、神田安積委員の3人が出席し、フジテレビからは専務取締役(報道局・情報制作局担当)ら5人が出席した。
まず川端委員長が、「7月の映像の取り違えは、多くの人が関与しながら誰もチェックできなかったことが問題だ。また8月の放送は、当初、担当者たちは『警察に確認する必要がある』という正しい認識を持っていたのに、時間的に追い込まれて間違いが放送されてしまったわけで、必要な人員や時間が確保されているのかが課題。フジテレビに対しては9月に委員長談話を出したばかりで、会社の文化として事実の確認を取るというジャーナリズムの基本がおろそかになっているのではないかという危惧を感じる。きちんと事実を伝えないと、社会からメディアに与えられている使命を果たせないということを、全社的に考える雰囲気を醸成してほしい」と要請した。
升味委員長代行は、「聴き取りをした社員やスタッフはまじめで熱心な方々なのに、放送倫理違反があったという結果になったことは残念だ。その理由として、分業体制の中で、この番組は自分たちが作る番組だという『熱さ』が、現場に欠けてきているのではないかと懸念する」と述べた。
神田委員は、「7月の放送では誤って全く別の人のインタビューを使ったことが問題となったが、その発言内容が、放送したいテーマと関連があったのか疑問に感じた。同一人物かどうかの確認の問題とは別に、その内容のインタビューを使うことの是非について、誰も声を上げておらず、また、この点について検証した様子がみられないことも問題だ」と指摘した。
これに対してフジテレビは、「今回の決定を重く、真摯に受け止めている。今後の番組制作にいかして、会社として、再発防止に継続的に努めていきたい」と述べた。

その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、26社52人が出席した。
はじめに川端委員長が、刑事事件の容疑者の情報という、確認にとりわけ慎重さが求められるセンシティブな事実の報道に際し、裏付けをきちんと取っていなかったため、同じ番組で1か月の間に2件の間違いが続いて視聴者に誤った情報を伝えたと、放送倫理違反があったと判断した理由を説明した。そして「裏付けを取るべき相手にきちんと裏付けを取っていれば、こういう間違いは起きなかった。チームで取材するときに、役割分担の思いが強すぎると、その隙間に、確認するという手順が陥ってしまいかねないことを明らかにした事案だ」と述べ、フジテレビに限らず、なぜ事実の確認が必要なのかを現場の人が理解してほしいと話した。さらに、テレビはきちんとした裏付けがある情報を伝えるメディアだという認識を視聴者が持たなければ、ネットに対してテレビの優位性は保てないと、意見書に込めた気持ちを明らかにした。
升味委員長代行は、「誰かがもう一声あげていれば、防げたミスだ。分業体制が進んで自分に割り当てられた仕事ではない、他の人に任された仕事だという気持ちになり周囲に遠慮しているのかもしれないが、テレビがネットと違うためには、そこを乗り越えなければいけない」と、同じ番組を作る者として感じた疑問点を放置しない情熱を現場に求めた。また、「情報番組は人や事柄のエピソードの面白さを追求するので、裏付けの必要性についての厳しい意識が欠けていたのではないかと危惧する」と述べ、先輩が現場の若い制作者を指導し、経験を伝承する必要性を強調した。
神田委員は、「正確な報道と裏付け取材が必要だということは十分に理解されていたが、理解していることと実践できていることとは違うので、裏付け取材が不十分なまま誤った放送がされてしまうことがある」と指摘した。そのうえで、どのようなプロセスを経て間違った結果を招いてしまったのか、再発を防ぐためにはどうすればいいのかについて、「個別のケースについての意見書ではあるが、ほかの放送局にも共有していただき、今後の番組作りにいかしてほしい」と、制作現場によびかけた。

記者との主な質疑応答は以下のとおり。

Q: 間違いが1件だけなら審議入りしなかったのか?
A: 容疑者の映像の取り違えはこれまでにもあったが、静止画の場合が多かった。今回はインタビューを含めて映像を長い時間放送してしまい、しかもそのミスをキー局がおかしたということが問題。そのうえ、同じ番組での事実確認のミスが重なったので審議した。(川端委員長)
   
Q: 『とくダネ!』は、けさの放送でも存命の方を亡くなっていると紹介してしまうミスがあったようだが?
A: 放送局として、事実の確認を取った上で放送するという文化を育ててほしいと強く思っている。そのために、事実の確認は譲れないという気構えをみんなが持つような方策を考えて、全社的に取り組んでほしい。(川端委員長)

以上

第123回 放送倫理検証委員会

第123回–2018年2月

毎日放送『教えてもらう前と後』皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した特集を討議など

2月8日に、当該局への通知と公表の記者会見を行ったフジテレビの『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見について、出席した委員長と担当委員から当日の様子が報告された。
皇后陛下の肖像写真の撮影時期や撮影のエピソードに誤りがあったとして訂正放送を行った毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』について、1月の番組と訂正放送を改めて視聴し、当該放送局の報告書をもとに討議した。その結果、当該放送局に、誤った情報の"ネタ元"とされる資料の提供を求めるとともに追加質問を行い、次回の委員会でさらに討議することとなった。
1月25日、沖縄地区の各放送局と委員会との意見交換会が、那覇市内で開催された。

議事の詳細

日時
2018年2月9日(金)午後5時00分~6時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. フジテレビ『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見の通知・公表

フジテレビの『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見(委員会決定第28号)の当該放送局への通知と公表の記者会見が、2月8日に実施された。2017年7月、医師法違反事件で逮捕された容疑者として別人の映像を放送したのに続いて、翌8月にも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について「書類送検された」などと放送し、刑事事件の容疑者に関する最もセンシティブな情報に関して、同じ番組で間違いが続いたことは大きな問題だとして、10月の委員会で審議入りしていた。
委員会は、事実に反する報道で誤った情報を視聴者に伝えた2つの特集は、放送倫理基本綱領や日本民間放送連盟放送基準に抵触し、放送倫理違反があったと判断した。そのうえで、2つの特集の制作過程においては、何度も誤りに気づいて修正するチャンスがあったにもかかわらず見逃されてしまったことを指摘、放送現場に、改めて刑事事件報道の原則を再確認するとともに、番組スタッフの連携の力をさらに高めるよう求めた。
委員会では、委員会決定を伝えたフジテレビのニュースと当該番組を視聴し、委員長や担当委員から、通知の際のやりとりや記者会見の内容などが報告された。

2. 毎日放送『教えてもらう前と後』皇后陛下の肖像写真の説明とエピソードを誤って放送した特集を討議

毎日放送のバラエティー番組『教えてもらう前と後』は、1月9日に放送した皇后陛下の肖像写真の撮影時期や天皇陛下がご成婚前に撮影されたと伝えたエピソードなどに誤りがあったとして、1月23日に訂正放送を行うとともに、番組ホームページでも訂正と謝罪を行った。
当該放送局の報告書によると、番組では、写真は陛下が皇太子時代の昭和32年に撮影され、「女ともだち」と題して「宮内庁職員組合文化祭美術展」に出品されたなどと紹介したが、実際に撮影されたのはご成婚後の昭和38年で、写真撮影と美術展出品をめぐるエピソードも根拠がないものだった。放送中に視聴者から指摘があり、事実確認を行った結果、誤りが判明したという。
毎日放送は宮内庁に謝罪するとともに、総務省近畿総合通信局に報告し、1月23日の同番組で訂正放送を行った。
委員会では、「写真に添えられたキャプションを見れば時系列的に矛盾していることがわかったはず」「写真の撮影時期の誤りよりも、ご成婚前の撮影を前提としてありえないエピソードを伝え、それにコメントを加えたことが問題だ」「訂正放送の内容や番組ホームページに掲載された謝罪文では、視聴者に何が問題だったのか全く伝わっていないのではないか」など、厳しい意見が相次いだ。
委員会では、訂正放送のあり方や制作の経緯について詳しく調べる必要があるとして、当該放送局に追加の質問を行うとともに、誤った情報の"ネタ元"とされる書籍など関連資料の提出を求め、次回委員会で引き続き討議することになった。

【委員の主な意見】

  • 写真撮影の時期と経緯が正しいものであることを確認した上で作られなければならない番組であるのに、肝腎の写真の入手がスタジオ収録の前日までできないまま制作が進められていたというのには驚く。
  • 誤った撮影時期を伝えたという点では単純なミスだが、そのミスをもとに、ご婚約前に承諾を得て撮影したとか、「女ともだち」というタイトルで美術展に出品したというフィクションを放送してコメントを加えている。
  • 写真の誤使用よりも、伝えた事実に誤りがあったことが問題だ。
  • エピソードが間違っていたことについて、間違った箇所を明示しての訂正やお詫びがないのは問題だ。

3. 沖縄地区の各放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会開催

1月25日(木)沖縄地区の放送局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、那覇市内で開催された。委員会が沖縄地区の放送局と意見交換会を開催したのは今回が初めてである。意見交換会には琉球放送、琉球朝日放送、沖縄テレビ、ラジオ沖縄、FM沖縄、NHK沖縄放送局の6局から24人が出席した。委員会からは川端和治委員長、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員が出席、BPOの濱田純一理事長が同席した。なお意見交換会は、双方が率直な意見を述べることにより、相互の理解を深めるという趣旨から、非公開で行われている。
意見交換会の前半は、昨年12月14日に委員会が公表した東京メトロポリタンテレビジョンの『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見書について、後半は、基地問題に関連してインターネット空間で出回っている沖縄ヘイトやデマ情報に地元の放送局がどう向き合っているのかをテーマに活発に意見が交わされた。
意見交換会では、『ニュース女子』の意見書ついて、まず川端委員長から委員会決定のポイントの解説が行われたあと質疑に移った。特に、委員会が独自に行った現地調査について各局から質問や意見が相次ぎ、調査に赴いた担当委員を中心に詳しく説明するとともに活発な議論が展開された。また、米軍ヘリから小学校や保育園に部品が落下した問題をめぐり、学校や教育委員会に誹謗中傷の電話が相次いだことについて、各局とも複雑な県民感情を慮って放送するか否か迷ったり悩んだりしていることが具体的に報告され、参加した委員からは沖縄の放送現場の葛藤が聞けて非常に有意義な意見交換になったと感想が述べられた。この他、高速道路で起きた玉突き事故に絡んで、米軍兵士が日本人を救助したのに沖縄のマスコミはこの美談を無視して報じないと一部全国紙が非難した件について、当時のニュース映像を視聴した。「継続取材をしているが、そんな事実は確認できない」「県警も否定している」など現場の報告や意見が相次いだ。予定の時間をオーバーして活発な意見交換会となった。

以上

第28号

フジテレビ『とくダネ!』2つの刑事事件の特集に関する意見

2018年2月8日 放送局:フジテレビ

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、2017年7月、医師法違反事件の容疑者として全く別の男性の映像をインタビューも含めて放送し、また翌8月には放送時点では書類送検されていなかった男性を「書類送検された」などと放送した。委員会では、刑事事件の容疑者の映像と刑事手続きの進捗状況という最もセンシティブな情報について、同じ番組で誤りが続いたことは大きな問題だとして審議入りしていた。
委員会は、事実に反する報道で誤った情報を視聴者に伝えた2つの特集は、放送倫理基本綱領や日本民間放送連盟放送基準に抵触し、放送倫理違反があったと判断した。そして、いずれの特集でも、その制作過程で誤りに気づいて修正するチャンスがあったにもかかわらず見逃されてしまったことから、刑事事件報道の原則を再確認するとともに、番組スタッフの連携の力をさらに高めるよう求めた。その上で、玉石混交の情報が溢れる時代では、テレビが持つ優位性は情報の正確さと取材の深さにあるとして、取材は徹底的に、裏付けは慎重に、しかし、放送は果敢にと、現場のスタッフに呼びかけた。

2018年2月8日 第28号委員会決定

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目 次

2018年2月8日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2月8日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。また、午後2時30分から記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には26社52人が出席した。
詳細はこちら。

2018年5月11日【委員会決定を受けてのフジテレビの対応】

標記事案の委員会決定(2018年2月8日)を受けて、当該のフジテレビは、対応と取り組み状況をまとめた報告書を当委員会に提出した。
5月11日に開催された委員会において、報告書の内容が検討され、了承された。

フジテレビの対応

全文pdf

目 次

  • 1.委員会決定に伴う放送対応
  • 2.委員会決定内容の社内での周知
  • 3.再発防止に向けた取り組み

第122回 放送倫理検証委員会

第122回–2018年1月

2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビ『とくダネ!』の審議など

昨年12月14日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行った、東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見について、出席した委員長や担当委員から当日の様子が報告され、意見交換が行われた。
委員会が昨年10月に出したTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見について、当該放送局から提出された対応報告書を了承し、公表することにした。
刑事事件の容疑者に関するセンシティブな情報の間違いが2件続いたことから審議入りしているフジテレビの情報番組『とくダネ!』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が示された。委員会で意見交換の結果、大筋で合意が得られたため、一部の表現について手直しをしたうえで、2月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

議事の詳細

日時
2018年1月12日(金)午後5時00分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見の通知・公表

東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見(委員会決定第27号)の当該放送局への通知と公表の記者会見が、昨年12月14日に実施された。2017年1月2日放送の当該番組の特集は、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などと伝えた情報や事実について裏付けが十分であったのか、いわゆる「持ち込み番組」なので、放送内容をチェックする放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして、2月の委員会で審議入りしていた。委員会は、制作会社が制作して持ち込んだ本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと判断した。
委員会では当該放送局のニュースを視聴したあと、委員長や担当委員から、通知の際のやり取りや記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。

2. TBSテレビ『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見への対応報告書を了承

昨年10月5日に委員会が通知公表した、TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見(委員会決定第26号)への対応報告書が、12月下旬、当該放送局から委員会に提出された。
報告書には、意見書内容の社内周知のため18回にわたり少人数のセミナーを開催したこと、その真意をより深く理解するために検証委員会の担当委員を招いた勉強会を開催したこと、そして、番組制作スタッフ一人ひとりの人権意識向上への取り組みなど、意見書で指摘された課題についてひとつひとつ改善を図っていることが記されている。
委員会では、勉強会に出席した委員からの報告などをもとに意見交換を行い、少人数の多数回セミナーなど、局の対応が適切であるとの意見がだされた。その上でこの対応報告書を了承して公表することにした。

3. 2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビ『とくダネ!』の審議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、2017年7月、医師法違反事件で逮捕された容疑者として全く別の男性の映像をインタビューも含めて放送し、謝罪した。翌8月には、放送した時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について「書類送検された」などと放送し、事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。委員会は10月、刑事事件の容疑者の映像と処分内容という最もセンシティブな情報について、同じ番組で間違いが続いたことは大きな問題だとして審議入りを決めた。
委員会では、前回委員会で意見書原案に示された意見や議論を踏まえた意見書の修正案が担当委員から提出され、内容や表現をめぐって意見交換が行われた。その結果、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しをしたうえで、2月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

以上

2017年11月28日

四国地区テレビ・ラジオ各局と意見交換会

放送倫理検証委員会と四国地区テレビ・ラジオ各局との意見交換会が、2017年11月28日、愛媛県松山市で開催された。放送局側からは14社51人が参加し、委員会からは川端和治委員長、神田安積委員、斎藤貴男委員、渋谷秀樹委員の4人が出席した。放送倫理検証委員会は、毎年各地で意見交換会を開催しているが、四国地区での開催は初めてである。
今回は、第1部で、9月に委員長談話が公表された「インターネット上の情報にたよった番組制作」について、第2部では、2月に公表された「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見(決定第25号)」と10月の衆議院議員選挙の各局の報道を主な議題として意見交換を行った。

第1部では、川端委員長が、「インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話」を公表するきっかけとなった、フジテレビの『ワイドナショー』『ノンストップ!』の二つの番組事例を取り上げ、問題点などについて説明した。
その上で、「インターネットの情報はさまざまな人が発信している。信頼できる人が参考になる情報を書いている一方で、悪意を持った人が故意にニセの情報を流すこともある。また、悪意はないが、間違った情報を前提に意見を書いてネット上で話題になっているものもある」と指摘。「番組制作にあたっては、ディレクターなどより現場に近い人が確信を持てない情報を扱うときや、プロデューサーなどチェックを行う人が情報が正しいかどうかわからないときには、放送しないという決意とそれを貫く強さを持つことが重要だ」と発言した。また、「番組制作者は番組をきちんと作っていることに対して矜持を持たなければならない。矜持を持てる番組を作ることのできる制作体制や現場環境が、放送局の中に用意されることが必要だ」と述べた。
参加者からは、「若い人を中心にインターネット上の情報によって情報を確認する傾向が強まっている。インターネットは情報の端緒をつかむものであって、そこから先は対面や電話で当事者に情報を確認するよう指導しているが、時間の制約などがあり、常にリスクを感じている」「効果的なのはインターネット上の情報には間違いがあることを実体験させることだ。それを経験したことで慎重になった事例がある」などの感想や意見が出された。
これに対して、斎藤委員は「ネットと同じものをテレビがやるならば、かつて速報性で新聞がテレビに負けていったように、ある意味での面白さではテレビもネットに負ける日が来る。今のうちからテレビならではの放送のあり方を模索していく必要がある」と述べた。また、神田委員は「SNSなどからの写真の引用は、使い方次第でメディアの選択基準が重く問われる。取り扱いを間違えると、本来使える写真や実名が使えなくなることにもつながるので、自問自答を繰り返していく必要がある」と指摘した。
続いて、意見交換会の直前に松山市内で発生した車両暴走事件のニュース映像を視聴し、視聴者提供の映像使用について意見交換が行われた。
参加者からは「車が広範囲に走ったため、当初、事件の実態がつかめなかったが、ネットには個人のスマホで撮影した映像や情報が瞬時にアップされた。そうした映像を探し許諾を得て使用した」「一般のニュースでも投稿映像を使用することは数多くあるが、その映像がどういう状況で撮られたかなど、背景を確認しなければ確実な放送はできない」などの報告が行われた。また「悪意や金銭目的、マスコミをだましてやろう、などと思う人もいることを常に意識して映像を使用することを考える時代に来ている」という意見も聞かれた。
これに対し渋谷委員は、「ネットは情報の海で玉石混交だ。見極めるのがメディアの仕事であり、真贋が確かめられないときどういう態度をとるかが重要だ。いったん信頼が失われると、積み上げてきたものが一気に崩れてしまう」と指摘した。なお、参加者からは「昨今は事件が発生した際、そこにいる一般の人の多くが現場にカメラを向けている状況にある。メディアが一般の人からの投稿をあおるような社会が行きつく先に懸念を感じている。一枚の写真を使う重さを、どのように次の世代に伝えていくかを考えている」との意見が聞かれた。
一方、ラジオ局の参加者からは「ネットの情報をうまく使い、人手不足やコストの問題に対応することはテレビ以上に切実だ」という意見が出された。

第2部では、まず、台風の直撃と開票が重なった10月22日の衆院選について、開票速報と災害報道の扱い方について各局の状況が報告された。これに続き川端委員長から、「2016年の選挙をめぐるテレビ放送についての意見」を公表した背景について説明があった。この中で川端委員長は、「選挙は社会に大きな影響をもたらすにもかかわらず、本当に大事なことが視聴者にきちんと伝わっていないのではないかという危機感を持った。背景にはテレビ局側が選挙報道を非常に窮屈に考えている傾向がある」と述べた。一方、10月に行われた衆院選については、「昨年の参院選に比べ萎縮は少なかったと感じるが、投票率が示すように、非常に重要な政治的選択についての国民の反応が低調である状況は変わっていない」と指摘した。
その上で、「テレビは選挙における役割を果たすため、さらに工夫をし、視聴者が関心を持つような企画をやってほしい。事実をゆがめない限り放送は自由であり、勇気をもってやってほしいというのが願いだ」と述べた。
これに対し参加者からは、「質の平等というが、選挙陣営から候補者を取り上げる時間についてクレームが寄せられ、対応に苦慮することもある。インタビューなど各候補を取り扱う時間が同じというのが一番わかりやすい説明になる」「何が争点で、ここをもっと見てほしいという部分を打ち出したいと思いながら、扱いの尺やサイズ合わせといった守りに入りがちだ」などといった現場の悩みが聞かれた。
これに対し渋谷委員は「各局がどういう判断で放送内容を絞ったかをきちんと説明できることが重要だ。できるだけ真実を確かめて有権者に知らせ、判断材料を提供することが放送局の使命だ」と指摘した。また斎藤委員は「各政党はそれぞれ都合のよい争点を打ち出してくるが、何を重視して投票したらよいのか、日頃取材しているメディアだからこそわかることを、きちんと伝えてほしい」と要望した。神田委員は「今回の選挙を振り返り、意見書の内容に基づいた実践ができたのか、反論がありうるのかを検証し、その視点から憲法改正の際にあるべき報道、放送を今から考えてもらいたい」と述べた。
最後に川端委員長が「民主主義のために皆さんが背負っている責務は極めて大きい。憲法改正のための国民投票が行われる際には、どういう報道がなされるかによって日本の将来が決まる。つまり報道する皆さんが日本の将来を決めることになる。その役割を担っていることを肝に銘じ頑張ってほしい」と、放送に対する強い期待を表明し、3時間にわたる意見交換会の幕を閉じた。

終了後、参加者から寄せられた感想の一部を以下に紹介する。

(インターネット情報について)

  • 他社の事例等を聞き、使おうとしている情報が正しいものかどうか、きちんと裏取りすることの重要性を改めて認識した。疑問が残る場合はその情報の使用を「あきらめる」勇気を持つことが、ネット社会で番組を作る私たちに今後いっそう求められると感じた。理想論、建前論ではなく、マスコミとしての責任であると同時に自分たちの価値を守ることにもつながるものと考える。

  • ネット上の画像を確認なく使うことはないが、データや文言などを参考にするときは真贋がグレーであるケースも少なくなく、大きな影響がないときは突っ走ってしまうときもある。「はっきりしない時には放送しないという決意とそれを貫く強さを持つことが必要」との言葉は重く受け止めた。また、他局の現場での苦労や取り組みを聞けたのも参考になった。

(選挙報道について)

  • 反省を込めて言えば、眼や耳で客観的に量ることができる量的公平性だけが、一種のエクスキューズとして情報発信者の拠り所となってしまいがちだ。しかしマスコミ側がこうした安易な報道をする限り、視聴者(有権者)が得るべき情報の質は向上しない。その結果、選挙そのものが「軽い」ものになってしまい、量的公平性でしか判断されない報道の土壌を作ってしまうのだと思う。自分たちの報道の自由のためにも、質的公平性を一義とした報道のあり方を模索したい。

  • 選挙報道についてのBPO意見書は、最近萎縮しがちな報道現場への激励メッセージと受け止めた。意識を根本的に改め、「質的公平性」を追求していきたい。

(BPOについて)

  • BPOという機関を一放送局としては「俎上に載せられる、載せられない」といった視点でとらえてしまいがちだが、意見交換会に出席し、改めて自分たち自身の利益、つまり放送の価値向上や報道の自由のために存在しているのだとの思いを強くした。今回は各局の管理職の方の参加が目立ったように感じたが、若い記者やディレクターにも参加してもらいたいと思う。

  • BPOという組織が、顔が見える組織になった。その意味で地方での開催は意義深い。若い現場世代が参加できるものであれば、本当にBPOの意義が高まるのでは、と思った。

  • もっとざっくばらんに具体的な話(悩み、葛藤)ができる雰囲気がほしかった。

  • 日々の番組制作に忙殺されて、普段は意識が薄くなる恐れがある放送の本質的なことを改めて指摘され、大変参考になった。今後とも“責任ある放送”を心がけていきたい。

以上

2017年12月14日

東京メトロポリタンテレビジョン
『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、12月14日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、岸本葉子委員、中野剛委員、藤田真文委員の4人が出席し、当該局の東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)からは、常務取締役(編成局担当)ら4人が出席した。
まず川端委員長が「審議の対象となったのは"持ち込み番組"であるが、TOKYO MXには、放送倫理上の問題がある番組は放送しないという責任がある。委員会は、放送内容には裏付けがないか裏付けが十分でないものがあったという放送倫理上の問題を指摘したうえで、TOKYO MXは考査でその問題点を発見して、制作会社に内容の修正を求めるか、このままでは放送できないと判断すべきだったという結論に至った。TOKYO MXは、委員会の審議中にもかかわらず、2017年2月、放送倫理上の問題も放送法違反もないという自社の見解を発表した。しかし、今回の委員会決定で明らかなとおり、自社が定めた放送基準を自ら裏切るような内容の"持ち込み番組"を放送してしまった点において、TOKYO MXには非常に重大な責任があると考える。意見書で指摘されたポイントを重大に受け止め、具体的な対応策を早急に示していただきたい」と強く要請した。
藤田委員は、「委員会で独自の調査を実施し、事実関係の確認と表現について6つの問題点を指摘したが、この意見書を、TOKYO MXの社内で共有し、議論してほしい。その結果を改めてお伺いしたい」と述べた。
中野委員は、「委員会は、特別な調査をしたわけではない。審議の対象となったあと、TOKYO MXは、なぜ自律的な検証を行わなかったのか。その点が重大な問題だと思っている」と指摘した。
岸本委員は、TOKYO MXが発表した見解について、「視聴者への視点の希薄さを感じた。視聴者の支持なくして放送の未来はありえない。視聴者の視点にたった意識を持ってほしい」と述べた。
これに対してTOKYO MX側は、「委員会の審議が開始されて以降、当社は、社内の考査体制の見直しを含め、改善に着手している。改めて、今回の意見を真摯に受け止め、全社を挙げて再発防止に努めていきたい」と述べた。

その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には、30社72人が出席した。
はじめに川端委員長が意見書の概要を紹介し、今回の審議の過程について詳しく説明した。審議の対象とした番組は、放送局が番組制作に関与していない"持ち込み番組"であったため、放送倫理検証委員会としては、当該局の考査について審議する初のケースとなった。番組を制作した制作会社のスタッフに直接ヒアリングできず、TOKYO MXの報告書と考査関係者へのヒアリングでも当該番組が伝えた内容に裏付けがないか裏付けが不十分だと思われる放送倫理上の疑いが解消されなかった。このため、委員会として沖縄で独自に調査する必要を感じ、担当委員が沖縄に赴き意見書に記載したとおりの調査を実施した。「基地建設反対派は救急車を止めたのか」「基地建設反対派は日当をもらっていたのか」「いきなりデモ発見の場面」で伝えられた抗議活動の参加者が「1人、2人と立ち上がって」「敵意をむき出しにしてきてかなり緊迫した感じになりますんで」という内容に裏付けとなる事実があったのかなど、放送倫理上の問題があったかどうかをチェックした。その結果、委員会は、TOKYO MXには、適正な考査をしなかったために、放送倫理上の問題があり、そのままでは放送してはならないものを放送してしまったという重大な放送倫理違反があったとの結論に至ったと述べた。そして、川端委員長は、「自らの放送倫理のとらえ方について考え直していただくことを期待している」と、TOKYO MXに早急に対応するよう求めたことを明らかにした。
藤田委員は、「"持ち込み番組"と放送局の接点は考査である。本件放送を考査担当者になったつもりで初めて視聴した際、何かひっかかる場面や立ち止まる場面があるかどうかというポイントを中心に検証した。本件放送を見たときに浮かんだ疑問が解消されなかったので現地調査を行ったが、その結果、裏付けがないか不十分なまま放送されたことが確認できた」と述べた。
中野委員は、「放送に携わる人たちには、放送番組で事実を提示する場合、事実に対する畏れを抱き、このような内容で本当に大丈夫なのだろうかと自問を繰り返し、慎重に扱ってもらいたい。TOKYO MXには、放送倫理上の問題が指摘された中、放送で伝えた内容の裏付けを確認するなど真摯な検討を加えた報告書を提出してもらいたかった。しかし、早々と放送倫理上問題なかったとする見解を出したため、『放送の自律の放棄ではないか』と言った委員もいた」と述べ、当該局の審議入り直後の対応を厳しく批判した。
岸本委員は、「TOKYO MXをはじめ放送局のみなさんには意見書の『おわりに』まで読み込んでほしい。インターネットと比較した放送の情報の質について言及している。視聴者は、放送局の情報は、放送局が事前にチェックしているため不確実、不適切な情報ではないだろうと信頼を寄せている。今回のようにチェック機能が十分に機能しなければ視聴者の信頼への裏切りにつながる。放送人としての矜持をもって考査に当たってほしい」と訴えた。

記者との主な質疑応答は以下のとおりである。

Q: 独自調査は、どのような議論をして誰が行ったのか。また、委員会による調査の前例はあるか。
A: 1回目は委員1人と事務局、2回目は委員2人と事務局で沖縄に赴いた。このほか、人権団体から話を聞いた。調査したのは、放送内容に裏付けとなる事実があるのか、裏付けとして示されている事実が裏付けとして十分なのかどうかという確認であり、"ある事実"が本当に存在したのかどうかという調査ではない。また、放送倫理検証委員会の独自の調査としては4例目である。(川端委員長)
   
Q: "持ち込み番組"であり意見書は放送内容に踏み込んでいない。委員会の調査の限界と思うか。"持ち込み番組"の対応について委員会として働きかけるつもりはないのか。
A: 委員会はNHKと日本民間放送連盟(民放連)加盟局の放送倫理上の問題を「審理」「審議」するのが職責である。今後、本件放送のような完パケ"持ち込み番組"が増加するのならば、意見書を受けて民放連で検討されると思う。(川端委員長)
   
Q: 『ニュース女子』は、他の放送局でも放送している。本件放送を考査して放送を取りやめた局はあったのか。
A: 『ニュース女子』は、レギュラー編成していない放送局を含めて、TOKYO MX以外に27局で放送実績(2017年5月30日現在)がある。しかし、本件放送を放送した局はなかった。いくつかの放送局は本件放送について独自の考査をして放送しなかったと聞いているが審議対象ではないので調査していない。(川端委員長)
   
Q: 過去の審議事案で、"重大な放送倫理違反"とされたケースを教えてほしい。
A: フジテレビ『ほこ×たて』「ラジコンカー対決」に関する意見(委員会決定20号)、NHK総合テレビ『クローズアップ現代』"出家詐欺"報道に関する意見(委員会決定23号)に続き、今回が3例目である。(川端委員長)

以上

第27号

東京メトロポリタンテレビジョン
『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見

2017年12月14日 放送局:東京メトロポリタンテレビジョン

放送倫理検証委員会は、「東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)『ニュース女子』が2017年1月2日に放送した沖縄基地問題の特集を審議してきたが、このたび委員会決定第27号として意見書をまとめ公表した。当該番組はTOKYO MXが制作に関与していない“持ち込み番組”のため、放送責任のあるTOKYO MXが番組を適正に考査したかどうかを中心に審議した。
委員会は、(1)抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった、(2)「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを制作会社に確認しなかった、(3)「日当」という表現の裏付けの確認をしなかった、(4)「基地の外の」とのスーパーを放置した、(5)侮蔑的表現のチェックを怠った、(6)完パケでの考査を行わなかった、の6点を挙げ、TOKYO MXの考査が適正に行われたとは言えないと指摘した。そして、複数の放送倫理上の問題が含まれた番組を、適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと判断した。

2017年12月14日 第27号委員会決定

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目 次

2017年12月14日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、12月14日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。また、午後2時30分から記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には30社72人が出席した。
詳細はこちら。

2018年6月8日【委員会決定を受けてのTOKYO MXの対応】

標記事案の委員会決定(2017年12月14日)を受けて、当該の東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)は、2018年3月、対応と取り組み状況を委員会に提出した。委員会では、この対応報告では内容が不十分であるとして4月に追加の質問をし、5月、TOKYO MXから補充の報告があった。
6月8日に開催された委員会において、これらの報告書の内容が検討され、了承された。

TOKYO MXの対応

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目 次

  • 1. 委員会決定について放送した報道および情報番組
  • 2. 委員会決定の当社社内での報告と周知
  • 3. 放送番組審議会での取り扱いについて
  • 4. 考査部の取り組みについて
  • 5. 報道特別番組について
  • 6. 研修会の実施
  • 7. 終わりに

追加の質問

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TOKYO MXの補充の報告

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第121回 放送倫理検証委員会

第121回–2017年12月

2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビの『とくダネ!』を審議など

フジテレビの情報番組『とくダネ!』で、刑事事件の容疑者の映像と処分内容という最もセンシティブな情報についての間違いが2件続いた事案について、担当委員から、ヒアリングの結果を踏まえ作成された意見書の原案が示され、意見交換が行われた。今回の議論を受けて、担当委員がさらに検討を加えた意見書の修正案を作成し、次回の委員会で意見の集約を目指すことになった。

議事の詳細

日時
2017年12月8日(金)午後5時00分~7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビの『とくダネ!』を審議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、2017年7月、医師法違反事件で逮捕された容疑者として別の男性の映像をインタビューも含めて放送し、謝罪した。翌8月には、放送した時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について「書類送検された」などと放送し、事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。委員会は10月、刑事事件の容疑者の映像と処分内容という最もセンシティブな情報について、同じ番組で間違いが続いたことは大きな問題だとして審議入りを決めた。
委員会では、担当委員から、ヒアリングで明らかになった点や先月の委員会で出された意見を踏まえた意見書の原案が示された。原案について「広く放送現場に伝わる内容の意見書にしたい」「どうしてミスが起きたのか、もう少しわかりやすくできないか」など、表現や構成についての意見交換が行われた。今回の議論を受けて、担当委員がさらに検討を加えた意見書の修正案を作成し、次回の委員会で意見の集約を目指すことになった。

以上

第120回 放送倫理検証委員会

第120回–2017年11月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』を審議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、担当委員から、前回の委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。内容や表現をめぐって意見交換が行われた結果、大筋で了解が得られたため、一部手直しをしたうえで、12月14日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報についての間違いが2件続いたことから前回委員会で審議入りしたフジテレビの情報番組『とくダネ!』について、担当委員から、3日間にわたって行われた制作担当者などへのヒアリングの報告と意見書の構成案の説明があり、意見交換が行われた。次回の委員会で意見書の原案が提出される。

議事の詳細

日時
2017年11月10日(金)午後5時00分~8時25分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXが制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、検証を深める必要があるとして、制作会社に文書によるヒアリングを行うとともに、担当委員が沖縄の現地に赴くなど委員会として独自の調査も行ってきた。
委員会では、前回の意見書原案に示された意見や議論を踏まえた修正案が担当委員から提出され、内容や表現をめぐって意見交換が行われた。その結果、大筋で了解が得られたため、表現の細部など一部手直しをしたうえで、12月14日に当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

2. 2件の刑事事件で容疑者や処分内容を誤って放送したフジテレビの『とくダネ!』を審議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、2017年7月、医師法違反事件で逮捕された容疑者としてまったく別の男性の映像を、インタビューを含めて放送した。翌8月も、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について「書類送検された」などと放送し、いずれも事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。委員会は10月、刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報について、同じ番組で間違いが続いたことは大きな問題だとして審議入りした。
委員会では、3日間にわたって行われた制作担当者などへのヒアリングの概要が担当委員から報告され、取材のいきさつ、間違いがチェックされずに放送にいたった経緯などが説明された。そのうえで、ヒアリングの結果に基づいた意見書の構成案が示され、意見交換が行われた。次回の委員会で、意見書の原案が担当委員から提出される。

以上

2017年10月5日

TBSテレビ『白熱ライブ ビビット』
「多摩川リバーサイドヒルズ族エピソード7」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、10月5日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、斎藤貴男委員、渋谷秀樹委員、鈴木嘉一委員の4人が出席し、当該局のTBSテレビからは取締役(情報制作局担当)ら3人が出席した。
まず川端委員長が「ホームレスの男性を『犬男爵』と呼び、極端に誇張したイラストとともに『人間の皮を被った化け物』と決めつけたこと、カメラに向かって怒鳴る出会いのシーンを3回も使い、男性の人格について『すぐに怒鳴り散らす粗暴な人物』という印象を与えたこと、『人間の皮を被った化け物』という別のホームレスの男性の発言を本人に断りなく撮影し、了解もないまま放送したことは、明らかな放送倫理違反と認められる」と指摘した。一方で、「TBSテレビは的確な訂正と謝罪を行うとともに、ホームレス支援を行っているNPOの人を招いて研修会をすぐに開催した」と事後の対応について評価した。その上で、「現場の記者や番組制作者らの間に生まれつつある『問題をもう一度考え直す』という空気をぜひ育て、より良い番組を作ってほしい」と今後への期待を表明した。
鈴木委員は「ネーミングなどでホームレスの人たちを茶化していると最初から疑問を呈する番組制作スタッフがいたことや、放送直後から局内で表現などについて疑問や批判の声が上がったことなど、健全さもみられる。事後の対応も適切で真摯な自律的姿勢もみられるのに、なぜ問題が起きたのかを考えてほしい」と指摘した。
斎藤委員は「ホームレス問題は貧困や障害など複雑な要素を持っている場合が多い。報道番組以外で扱うときは報道よりはるかに深く取材し、注意深く放送すべきだ」と訴えた。
渋谷委員は「自分の視点だけではなく、取材される側、視聴者がどう思うかを、プロとしてさまざまな角度から表現を考えて放送してほしい」と述べた。
これに対し、TBSテレビ側は「取材や番組づくりの過程で何度も違和感がありながら止められなかった。いくつものレベルでチェックしたが、たくさんの人がチェックしているにもかかわらず結果として無責任になってしまった。報道、情報、制作を含め、全社でスタッフの意識と各レベルでのチェック体制を向上させていきたい」と述べた。

その後、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には21社37人が出席した。
はじめに川端委員長が意見書の概要を紹介し、明らかな放送倫理違反と認められるという結論に至った理由を説明した上で、こうした番組作りの背景には、社会的弱者、特にホームレス問題に対するスタッフの無理解と偏見があったと指摘した。
鈴木委員は「非常に複雑な社会的背景があるホームレス問題に対する認識の希薄さ、バラエティー的な表現を許容し放置するという『集団的無意識』の延長線上に、今回問題となった『エピソード7』がある。この『集団的無意識』をどうやって乗り越えればよいか、現場の一人ひとりが考えてほしい」と要望した。
斎藤委員は「ホームレス問題の背景には、貧困だけでなくさまざまな問題がある。報道以外のジャンルの番組でこうした問題を扱う場合は、報道以上に詰めた取材をして、深く考え、慎重な表現をしなければならない」と指摘した。
渋谷委員は「行政当局に代わって自分たちが懲らしめている、問題を解決していると考えるのは放送としていかがなものか。取材する側とされる側は立場が違う。取材される側がどう思うか、自分が作る映像がどう受け取られるかというところまで考えて番組を作ってほしい」と訴えた。

記者との主な質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:ホームレス男性との河川敷での「出会いのシーン」が、「過剰な演出とまで言い切れるかどうかは微妙」と判断した背景を説明してほしい。
    A:ディレクターの実際の指示は「『なんでこんなところに入ってくるのか』と言いながら出てきてください」というだけの指示だった。ところが実際は、撮影していたカメラマンも驚くほど怒鳴りながら出てくる映像になっている。これは頼まれたホームレス男性が、「こうやらなければならない」と思い込んで行ったことで、ディレクターがそのような演出をしたわけではないのでこのように判断した。(川端委員長)

  • Q:「人間の皮を被った化け物」ということばは、取材ディレクターがホームレス男性に言わせたのではないかという疑念を感じるが、確認は行ったのか?
    A:もちろん確認した。言わせたとか誘導したということは全くなく、突然このような表現が出てきた。(川端委員長)

以上

第119回 放送倫理検証委員会

第119回–2017年10月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』を審議など

10月5日に当該局への通知と公表の記者会見を行った、TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見について、出席した委員長や担当委員から当日の様子が報告され、意見交換が行われた。
フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』と同局の情報番組『ノンストップ!』で、ネット情報の真偽を確認しないまま放送が行われたことを受け、9月に委員長談話「インターネット上の情報にたよった番組制作について」が公表されたが、この談話に関する当該局の放送を視聴し、意見交換が行われた。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、担当委員から意見書の原案が示された。委員会では構成や表現を含めて意見交換が行われ、次回委員会で今回の議論をふまえた意見書の修正案が担当委員から提出されることになった。
フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月に医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違え、別人の映像をインタビューを含めて放送したのに続いて、翌8月の放送でも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について、十分な確認をしないで「書類送検された」などと放送し、いずれも次の日の放送で謝罪した。委員会は、刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報についての間違いが2件続いたことは問題だとして、審議入りすることを決めた。

1. TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見の通知・公表

TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見(委員会決定第26号)の通知と公表の記者会見が、10月5日に実施された。1月31日放送の「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、4月の委員会で審議入りしていた。
委員会ではTBSテレビのニュースと当該番組を視聴したあと、委員長や担当委員から、通知の際のやり取りや記者会見での質疑応答の内容などが報告され、意見交換が行われた。

2. インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』および同局の情報番組『ノンストップ!』で、ネット情報の真偽を確認しないまま放送が行われたことを受け、9月に「インターネット上の情報にたよった番組制作について」と題する委員長談話が公表された。
委員会では、当該局のニュースや『ノンストップ!』などを視聴したあと、意見交換が行われた。

3. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、検証を深める必要があるとして制作会社にも文書によるヒアリングを行うとともに、担当委員が沖縄の現地に赴くなど委員会として独自の調査も行ってきた。
委員会では、これまでの調査と検証に基づいて担当委員が作成した意見書の原案が示され、各委員から構成をはじめ表現など具体的な内容についてもさまざまな意見が出された。今回の議論を受けて担当委員がさらに検討を加えて意見書の修正案を作成し、次回の委員会で意見の集約を目指すことになった。

4. 刑事事件を扱った際の情報確認が不十分で2件続いて謝罪したフジテレビの『とくダネ!』について討議(審議入り)

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月27日に「医療プロジェクト・違法なさい帯血投与の実態」と題する企画の中で、医師法違反事件で逮捕された容疑者として、道路でインタビューに応じている男性の映像を放送した。しかし翌日、この男性は別人だったと訂正し、謝罪した。また8月28日の放送でも、京都府議会議員の夫婦間トラブルを扱った際、府議が「書類送検された」、妻が「ストーカー登録された」と放送し、翌日、いずれも事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。
委員会は、なぜ同じ番組で問題が続いたのかなど、当該局から追加の報告を求めて討議した結果、「刑事事件の容疑者と処分内容という最もセンシティブな情報なのに、同じ番組で間違いが2件続いたことは大きな問題だ」として、審議入りすることを決めた。

[委員の主な意見]

  • 医師法違反事案の映像の取り違えは、制作の過程でディレクターらが疑問を感じたにもかかわらず、結果的に放送されてしまっていて、相当深刻だ。この時に反省したというのに、また1カ月後に事実確認が不十分なまま放送したことも問題だ。
  • 放送現場で事実の重み、特に刑事事件の容疑者についての情報の重みについての認識が軽くなっているから、不十分な確認しかしないという同種のミスが続くのではないか。キー局でこのような間違いが起こるのは、ジャーナリズムの現場が下から揺らいでいるといえる。
  • フジテレビの報告書では「系列局に問題はない。自分たちが悪い」となっているが、なぜ系列局との連携がうまくいかなかったのか。
  • それなりに社内調査を尽くし、事実関係を調べているのではないか。

以上

2017年10月13日

フジテレビの『とくダネ!』審議入り

放送倫理検証委員会は10月13日の第119回委員会で、フジテレビの『とくダネ!』について当該放送局に追加の報告書を求めたうえで討議し、審議入りすることを決めた。
対象となったのは、7月27日の医師法違反事件関連企画で、容疑者としてまったく別人の映像をインタビューを含めて放送したことと、8月28日の放送で、確認できていないにもかかわらず京都府議会議員が妻とのトラブルで「書類送検された」などと放送したことのあわせて2件。いずれも翌日の放送で謝罪・訂正したが、川端和治委員長は審議入りした理由について、「刑事事件の容疑者と処分内容という事実として最も慎重に扱わなければならない情報で、間違いが2件続いたことは大きな問題だ」と述べた。
委員会は今後、当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

第26号

TBSテレビ『白熱ライブ ビビット』
「多摩川リバーサイドヒルズ族 エピソード7」に関する意見

2017年10月5日 放送局:TBSテレビ

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』(2017年1月31日放送)の「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして、4月の委員会で審議入りした事案。
委員会は、男性の人間性を否定するような強烈な言葉を使ったこと、視聴者に「すぐに怒鳴り散らす粗暴な人物」という印象を与えたことなどの編集や表現方法について、男性の人格を傷つけるだけでなく、ホームレスの人々への偏見を助長する恐れがあり不適切だったとして、放送倫理違反は明らかであるとした。さらに、別のホームレス男性の話を断りなく撮影し放送した点も、取材対象者との信頼関係を損ねる行為であり、これも放送倫理違反と判断した。そのうえで、番組制作スタッフにホームレス問題に対する認識の希薄さがあったことを指摘した。

2017年10月5日 第26号委員会決定

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目 次

2017年10月5日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、10月5日午後1時30分から、千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。また、午後2時30分から記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には21社37人が出席した。
詳細はこちら。

2018年1月12日【委員会決定を受けてのTBSテレビの対応】

標記事案の委員会決定(2017年10月5日)を受けて、当該のTBSテレビは、対応と取り組み状況をまとめた報告書を当委員会に提出した。
1月12日に開催された委員会において、報告書の内容が検討され、了承された。

TBSテレビの対応

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目 次

  • 1 委員会決定に伴う放送対応
  • 2 委員会決定の社内周知
  • 3 貴委員会との「研修・意見交換会」の実施
  • 4 総括

第118回 放送倫理検証委員会

第118回–2017年9月

TBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議 委員会決定を10月上旬にも通知・公表へ
インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話など

インターネット上の情報・映像の真偽を確認しないまま事実でない放送をした、フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』、および同局の情報番組『ノンストップ!』について、これまで2回にわたり委員会での討議が行われたが、その議論を受けて川端委員長から「インターネット上の情報にたよった番組制作について」と題された委員長談話の文案が委員会に示され、テレビの番組制作におけるネット情報利用の問題点について広く注意喚起するため、BPOのホームページなどで公表することになった。
沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、委員会が独自に行っていた沖縄の現地調査などについて担当委員から詳細な報告があった。さらに、委員会では担当委員から示された意見書の構成案の概略についても意見交換が行われ、次回の委員会で意見書の原案が提出されることになった。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。委員会での意見交換の結果、大筋で了解が得られたため、一部手直ししたうえで、10月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。
医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違えたフジテレビの情報番組『とくダネ!』について議論が交わされた。7月に放送されたこの番組では、間違われた人の映像だけでなくインタビューも使われるなど、委員会がこれまでに扱った映像の取り違えと質が異なり、制作体制に問題があるのではないかといった厳しい意見が相次いだ。
同じ『とくダネ!』では、翌8月の放送でも、放送時点では書類送検されていなかった京都府議会議員について、十分な確認をしないで「書類送検された」などと放送して謝罪した。この件も合わせて議論した結果、同じ番組で立て続けにミスが起きたことをどう考えるかなど、当該放送局からさらなる報告を求めて討議を継続することになった。

1. インターネット上の情報にたよった番組制作についての委員長談話

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、5月28日、ジブリの宮崎駿監督が過去に何度も引退を表明しては撤回したとして、同監督の引退表明歴をフリップで紹介し、それをもとにスタジオで出演者がコメントしたが、このフリップはネット上に掲載されている誤った情報を転用したもので、「実際には宮崎氏の発言ではなかった」として6月4日の番組内と番組ホームページで謝罪した。また、同局の情報番組『ノンストップ!』は6月6日、人気アイス特集で「ガリガリ君」を紹介した。この中で「火星ヤシ」味のアイスのパッケージ画像を放送したが、これは実在しない商品であり、ネットに掲載されていた画像の真偽を確かめないまま使用したものだった。フジテレビは、翌日の番組内で謝罪を行った。
このふたつの事案について、委員会で2回にわたり討議が行われた結果、間違った情報を放送された側は、そのことを問題にしておらず、また間違った内容それ自体は大きな問題とはいえない上に、当該放送局によって適切なお詫びと訂正や再発防止策の策定が自主的・自律的になされているので審議の対象とはしないが、テレビの番組制作におけるネットの安易な利用という根の深い問題が背景にあるとして、前回委員会で「委員長コメント」により改めて注意を喚起することになった。しかし、今回、同じような問題が他の局でも起こりうることを鑑み、インターネット上の情報を利用するときに起こりがちな問題点について注意喚起するための、より詳細な「委員長談話」が出されることになった。
委員長談話では、インターネット上の情報の利用にあたってはその真贋を見極めて使うというリテラシーが必要だとしたうえで、すくなくとも制作現場の担当者が、その情報自体について疑わしいのではないかというレベルの判断ができる能力を持たなければならないが、まず、どんなに時間に追われていても、真実でないことが紛れ込まないよう手抜きをせず注意し考える習慣を身につけることだ、と指摘している。また、放送局は、それを身につけさせるための実践的な研修と、疑問を提起できる制作体制と職場環境の構築を行うべきだとしている。この委員長談話の末尾には参考資料として、2011年に公表された「若きテレビ制作者への手紙」が再掲されている。

2. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集し、「反対派が救急車を止めた?」、「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、制作会社にも文書によるヒアリングを行うとともに、検証を深める必要があるとして担当委員が沖縄の現地に赴くなど委員会として独自の調査も行ってきた。この調査結果についての詳しい説明が担当委員から行われ、疑問点については再確認を行うことになった。
さらに、委員会では担当委員から示された意見書の構成案の概略についても意見交換が行われ、次回の委員会で意見書の原案が提出されることになった。

3. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

1月31日に放送された「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りしているTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、前回委員会の議論を踏まえた意見書の修正案が提出された。そして、委員会の考えや今後の番組制作への期待をどのような表現で伝えればよいか、詰めの議論が交わされた。その結果、大筋で了解が得られたため、表現などについて一部手直しをしたうえで、10月上旬にも当該放送局への通知と公表の記者会見を行うことになった。

4. 医師法違反事件で逮捕された容疑者の映像を取り違えたフジテレビ『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、7月27日に「医療プロジェクト・違法なさい帯血投与の実態」と題する放送の中で、医師法違反事件で逮捕された容疑者として、道路でインタビューに応じている男性の映像を伝えた。しかし翌日、この男性は逮捕された容疑者とは別の一般の方だったと訂正し、謝罪した。
この番組ついて、委員会では「男性の映像だけでなくインタビューも使っていて、委員会がこれまでに扱った映像の取り違えとは質が異なる」、「間違って放送された男性の顔は逮捕された容疑者の顔とはまったく異なり、理解できないミスだ」、「容疑者の写真を出すことの是非の議論にも影響しかねない」、「時間的、人員的な制作体制に問題があるのではないか」といった厳しい意見が相次いだ。その結果、同じ『とくダネ!』で8月にも、京都府議会議員をめぐる放送で事実確認ができていない部分があったと謝罪したことから、なぜミスが頻発しているかなどについて報告を求めて討議を継続することになった。

5. 京都府議会議員のトラブルの特集で、事実確認ができていない部分があったと謝罪したフジテレビ『とくダネ!』を討議

フジテレビの情報番組『とくダネ!』は、8月28日の放送で京都府議会議員の夫婦間トラブルをめぐる問題を扱った。しかし翌日の放送で、府議が「書類送検された」、また妻が「ストーカー登録された」と放送した点は、いずれも事実の確認がとれていない報道だったと謝罪した。
この放送について、委員会では「夫婦間のドメスティック・バイオレンスとストーカーでは問題が違うのに、一緒にしているのではないか」、「府議は放送の翌日に書類送検されていて、容疑者の映像を取り違えた7月の放送とは質の異なる事案ではないか」、「刑事事件の処分はセンシティブな情報であり、もっとも慎重な確認が必要なはずだ」といった意見が出された。フジテレビではインターネット上の情報にたよってミスが続いたため、番組制作について委員長談話が出されるという事態となったばかりなのに、1か月の間に同じ番組で、かつ慎重さが求められる刑事事件の放送でミスが相次いだことを軽く考えるべきではないとして、当該放送局からさらなる報告を求めて討議を続けることになった。

以上

委員長談話

インターネット上の情報にたよった番組制作について

2017年9月8日 放送局:フジテレビ

放送倫理検証委員会
委員長 川端和治

 最近フジテレビの2番組で、インターネット上の情報・画像に依拠して番組を制作した結果、事実ではない発言を事実として辛口のコメントを加えたり、実在しない商品を紹介するという事案が発生した。いずれも事実ではない放送であるから放送倫理違反があることは明らかであるが、インターネット上のもっともらしい情報を真実と信じてしまったという不注意からの過誤であり、誤った内容は、過去に何度か引退表明と撤回を繰り返したことが広く知られているアニメ映画監督についての事実ではない引退宣言集と、珍しい味が売り物のアイスの実在しない味のパッケージ画像であるから、それ自体はそれほど重大とは言えない。その上、虚偽の発言集を放送された本人のプロダクションや実在しない商品を発売したと報じられた会社は、この過ちを問題としておらず、また番組を制作したフジテレビは、直ちに訂正と謝罪の放送を行い、過ちが発生した経過と原因を検証した上で、再発防止策を講じている。委員会はこれらの点を考慮して、審議の対象とはしなかった。しかし、この2つの事案は、番組制作にあたり、まずインターネット上の情報を利用することが広く行われている現状で、十分な裏付け取材なしにそれを利用することがあれば、同じ問題が他の局でも発生する可能性があることを示したものと言える。かつて委員会が公表した「情報バラエティー2番組3事案に関する意見」(委員会決定第12号)は、インターネットで探し出した出演者の話の裏付け取材をしないまま、それを事実と思い込んで制作された番組についての事案である。今回の事案は、専らインターネット上の情報だけにたよって番組を制作したという点でそれと異なっているが、それだけに一層、インターネット上の情報を利用するときのリスクを明確に示していると言える。そこで、番組制作にあたってインターネット上の情報を利用するときに起こりがちな問題点について注意喚起するために、委員長として談話を発表することにした。
 まずはじめに、この2つの事案を他局での研修の際に事例として参照できるようやや詳しく内容を紹介した上で、どのような対策を講じるべきなのかについて考えることとしたい。

1. 宮崎駿氏の事実でない引退発言集の放送

 2017年5月28日、フジテレビは情報バラエティー番組『ワイドナショー』で、宮崎駿氏の引退宣言撤回をとりあげた。宮崎氏がこれまでに何度も引退宣言しては撤回しているとして、1986年公開の「天空の城ラピュタ」から2013年公開の「風立ちぬ」まで、7本の作品制作後の引退宣言を一覧できるフリップを使い、引退表明と撤回を繰り返したことについてコメンテーターが辛口のコメントを加えた。ところが放送直後に、これはネットで流布している「嘘ネタ」であり、本人の発言ではないとの指摘があり、フジテレビも「宮崎氏本人の発言ではなかった」として訂正・謝罪した。
 放送に至った経緯は、フジテレビの委員会に対する報告書によれば次のとおりである。

 この引退発言集のフリップは、インターネット上の記事から担当アシスタントディレクター(以下「担当AD」)が作成したものであった。その後、このフリップの内容を、担当ディレクター、総合演出、チーフプロデューサー、コンプライアンスプロデューサー(以下「コンプラP」)、出演者担当プロデューサー(以下「出演者担当P」)が確認し、インターネット上の情報のみで構成されていることを認識した。その上で、宮崎氏が引退発言を何度か繰り返したことは本人も認めていること、フリップに記載された発言内容はネット上に多数出ていること、宮崎氏が引退宣言を撤回して新作長編アニメの制作を始めたというニュースの一部であることから、発言内容の真偽に些少の違いがあってもニュースそのものの正当性に大きく関わる問題ではないと判断した。ただ情報が誤っていた場合の対策として、当初「宮崎駿 引退宣言集」となっていたフリップのタイトルを「宮崎駿 引退宣言!?」に改め、「放送上の表現として真実とは断定していない、ということを提示するという」対応をした。また総合演出、出演者担当Pは、最終的な放送の可否の判断をコンプラPに委ねた。コンプラPは、時間的な制約があってより確度の高い情報源を見つけ出すことが困難であり、インターネット上の情報であることだけを理由にこのニュースをカットして再作業することにより納品期限に遅れ、生送出することになるのは避けたいと考えて、そのまま放送することを決定した。

 以上のフジテレビの報告書を読んで真っ先に疑問になるのは、意識されていた問題点が、情報源がインターネット上のみにあり、それでは信用性に問題があるという事だけであったことである。そのために、より信用できる紙媒体と紐付いているものをインターネットで探そうとしたが時間切れになったというのである。しかし、これだけ多数の人間が関わっていながら、「人生で最高に引退したい気分」「100年に一度の決意」「ここ数年で最高の辞めどき」「出来は上々で申し分の無い引退のチャンス」という発言が並べられているのを見て、これは引退発言としてはどれもおかしいと思わなかったのだろうか。まして、発言者は、職人肌の生真面目な仕事ぶりで知られるあの宮崎氏なのである。
 実は、ネットで流布している宮崎氏の引退宣言集は、2013年9月1日にA氏がツイッターで
 86年ラピュタ「人生で最高に引退したい気分」
 92年紅の豚「86年を上回る引退の意思」
 97年もののけ姫「100年に1度の引退の決意」
 04年ハウル「ここ数年で最高の辞めどき」
 13年風立ちぬ「出来は上々で申し分の無い引退のチャンス」
と、つぶやいたのが拡散したものである。
 これは、当時、毎年それまでにない出来であるかのようなキャッチコピーをつけて売り出すことで評判になっていたボジョレー・ヌーヴォーの宣伝文句をもじってA氏が創作したもので、宮崎氏の実際の発言とは全く関係がないものであった。そのことがはっきり判るのは2013年の引退宣言が「出来は上々で申し分の無い引退のチャンス」とされていることである。宮崎氏は、2013年の「風立ちぬ」の公開後、引退声明を公表し同時に長時間の記者会見を行っており、そのいずれもがインターネットで容易に確認できるが、そのなかのどこにもこのような発言はない。あるのは加齢による衰えから長編アニメの制作はやめざるをえないという意思表示であり、この発言集にあるような祝祭的な気分はうかがえない。そもそもフジテレビのこのニュースは、宮崎氏の引退撤回と新作長編アニメ始動を報じるもので、番組の中で2013年の引退記者会見での発言も紹介しているのだから、まず、そのときの引退声明と記者会見の内容をきちんと確認していなければならなかったはずである。そうしていれば、フリップにある2013年の引退声明が明らかに事実に反していることに気づいたと思われる。
 また、フジテレビのフリップは、1992年「紅の豚」公開時の引退表明を「アニメはもうおしまい」としており、A氏のツイッター発言とは異なる。フジテレビの報告書によれば、これはニュース情報サイトであるビジネスジャーナル上の記事に依拠するもので、事実この記事では「紅の豚」のあと「やりたいことはやった、アニメはもうおしまい」という発言があったと記載されている。しかしこの記事は、「2ちゃんねるやツイッター上では『引退詐欺』の常習犯だとして、次のような"コピペ"が出回っている」として、つまりそれ自体として信用性が保証されていないという前提で、一連の引退発言を紹介しているのであり、しかも、その発言のどれひとつとしてA氏の発言集に一致するものはない。フリップを作成した担当ADは、二組の異なる事実がネットに出回っていることを認識したはずで、こういう場合、そのどちらが信用できるのか、あるいはどちらも信用できないのかが判明するまでは放送できないと判断するのが常識的だろう。ところがフジテレビのフリップは、「紅の豚」の際の発言はビジネスジャーナルの記事を採用し、また「もののけ姫」の際の発言については、A氏の「100年に1度の引退の決意」とビジネスジャーナルの「これを最後に引退」という記事を足して2で割って「100年に1度の決意。これを最後に引退」という発言があったとし、その他の発言は、A氏の発言集を使っている。これでは、情報の信憑性についていったいどんな根拠で判断をしたのかと問われても仕方がないだろう。なお2008年の「崖の上のポニョ」の後の「引退宣言」はA氏の発言集にはなく、フジテレビの報告書は、出所をNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』としているので、密着ドキュメントの撮影中の発言と思われる。
 さらに問題なのは、フジテレビの報告書を読む限り、放送前に誤りが判明する契機になったと思われる上記のような疑問に、放送後に検証を行った際にもまったく気づいていないと思われることである。フジテレビの報告書によれば、この番組の制作を行った第二制作センター内では、委員会が2011年に発表した 「若きテレビ制作者への手紙」を参考にしてネット上の情報のみに基づいて放送することを禁止するルールを作り、周知徹底してきたということであり、そのためこのルールがあることを知りながら、番組の放送を優先したというコンプライアンス違反を専ら問題にすることになったようである。
 しかし、そもそも「若きテレビ制作者への手紙」は、ネット情報のみに基づいて放送することを禁止するものではない。ここで委員会が述べたのは、インターネット上に出ている情報には不確かなものが多いから、たとえバラエティー番組でも情報を見せるときにはウラ取りをしなくてはいけない、インターネットにあふれかえる情報の中から正しい情報を選り分けるのは大変だが、そこを「いいかげん」にやってしまうとテレビ番組が誤った情報を「拡散」してしまいかねないので、慎重にいかなければならない、というアドバイスなのである。
 たしかに禁止してしまえば、インターネット上の情報のみに基づく放送であることから起こりうる間違いは根絶されるだろう。しかし、インターネット情報の検索が欠かせない手段になっている今日の社会で、このような禁止をしても、今回の番組制作のように、それは必ず侵犯され、誤りを引き起こすだろう。必要なのは禁止ではなく、正しい情報を選り分けるための能力の涵養であり、おかしいのではないかと疑問を持つ感性を身につけることなのではないか。そして疑問が残るときには放送しないという判断が許される番組制作の体制を構築することだろう。それをどうやって実現するのかを問わない限り、同様の問題が繰り返されることになるだけであろう。

2. 実在しないアイスのパッケージ画像の放送

 2017年6月6日、フジテレビは情報番組『ノンストップ!』で、B乳業の「ガリガリ君」を紹介した際、季節限定商品として「火星ヤシ」味のアイスの商品画像を使用したが、これは実在しない商品のパッケージ画像を何者かが作ってネットに掲載したものであった。
 放送に至った経緯は、フジテレビが当委員会に提出した報告書によれば次のとおりである。

 『ノンストップ!』は「人気アイス特集」の放送をすることを決め、そのなかでB乳業の「ガリガリ君」も紹介することにして、工場の内部映像、CM動画の提供を受けたが、ディレクターが、「ガリガリ君」の期間限定商品のパッケージ画像はネット上から取るよう指示されたものと誤認し、また編集オペレーターから画像が足りないと指摘されたため、アイス関連のまとめサイトから「火星ヤシ」味を含むパッケージ画像をダウンロードし画像オペレーターに渡した。放送時間が迫っていたため、画像の真贋の確認までには気が回らなかった。火曜日担当のプロデューサー、映像加工が適切かどうかのチェックを担当するプロデューサーがVTRをチェックしたが、映像処理が適切に行われているのかについてのチェックに意識が集中し、権利者からの許諾の確認や、画像の真贋については確認しなかった。

 この事案の最大の問題は、誰も「火星ヤシ」味のアイスという商品の実在性に疑問を持たなかったことだろう。確かに「ガリガリ君」は、ナポリタン味など、アイスとしては普通考えられない味の商品を発売してきたことで知られているが、いずれも実在する食品の味であって、実在しないことが明らかな食品の味のアイスではない。もし仮にB乳業が実在しない食品の味のするアイスを本当に発売することにしたのであれば、それ自体がニュースであり、どんな味のするアイスなのかを番組で特別に紹介するくらいの価値のある出来事であろう。当然B乳業に取材することになったはずである。ところが制作に関与した人々の念頭にあったのは、放送日までに商品パッケージ映像の数をそろえるという事だけであり、その商品自体には関心が無かったために「火星ヤシ」味という、誰が聞いてもあり得ない商品を実在するかのように紹介してしまったものと思われる。
 フジテレビの報告書によれば、この番組を制作した情報制作局は「確認もせずにネットの画像を使うのは、落ちているものを拾って食べるのと同じこと」という強烈な言葉でネット情報を鵜呑みにする危険性を研修しているということだが、この番組を制作したディレクターは、インターネットにアップされた画像を使う場合本人の許諾を取る必要があることや事実関係を確認する必要があることなどの、インターネット取材のリテラシーを一応身につけていたが実践できなかったという。
 フジテレビは、再発防止策として、インターネットから動画や画像をダウンロードしたり、情報を引用したりする場合は、当該画像・映像の真実性は確認できているのか、当該画像・映像は引用・報道利用にあたるのか、あるいは著作権者からの許諾があるのかについてプロデューサーなどのチェックを受けることを徹底するというルールを作ったということだが、放送までに厳しい時間の制約のある現場で、このルールが実効性を持ちうるのかは疑問が残る。まさにこの事案が示しているように、真実性に疑いをもってない人々にとっては、チェックを受けることは、単なる形式であり余計な負担としてしか意識されないであろうからである。

3. 番組制作時のインターネット情報利用について考えるべきこと

 番組の制作にあたりインターネット上の情報を検索して利用すること自体は、現在の社会では避けることが出来ない。それなしでは仕事が非効率的になって進まないからである。問題は、虚偽の情報が、悪意でそれを広めようとしている人だけでなく、罪のないジョークやネタとして掲載され、面白いと思われれば直ちに拡散されるというインターネット上の情報の特質にある。誰も情報の拡散やそれを利用して加工した情報の発信にあたって真実性のチェックをしていないので、インターネットは、貴重な情報に容易にアクセスできるきわめて有用な場であると同時に、一見もっともらしくても真実性の保証のない情報があふれる場でもあるのである。
 従ってインターネット上の情報の利用にあたっては、その真贋を見極めて使うというリテラシーが必要となる。
 まずなすべきは、そのサイトあるいは発信者が信用できるかどうかというチェックであり、そのためには相当な知識と経験が必要となる。しかし信用できそうに見えるサイトや発信者であっても、真実性についてどれだけ吟味しているかは不明なのであり、この点で、全国紙の記事が校閲の専門家によってチェックされているなど、活字メディアの記事が程度の差はあれ、校閲担当者によるチェックを受けているのとは全く異なる。
 そうなると裏付け取材が必要となるが、インターネット上の情報は容易に拡散されるという特質があるから、いくら同じような情報が他のサイトにあっても、その数は真実性の保証とはならない。従って裏付けはインターネット以外の場で行わなければ確実ではないということになる。しかしそれには時間と手間がかかるので、テレビ番組の制作のように時間の制約がある場合には、なかなか実行できないであろう。現に、このフジテレビの事案でも「納品期限」が優先されてしまっている。
 この事案が示したように、いくら包括的な禁止条項を並べても、それが制作現場の実情に合わなければ実行されないのだから、まず必要なのは、制作現場の担当者が、その情報自体について、疑わしいのではないかというレベルの判断ができる能力ではないだろうか。その疑問が持てれば、追加取材をしたり、社内の専門家に問い合わせをするだろうし、その余裕のないときには、このままでは放送できないという判断ができるようになるだろう。しかし、このレベルの能力といえども一朝一夕で身につくものではない。第一歩として始めるべきなのは、制作する番組について、どんなに時間に追われていても、真実でないことが紛れ込まないよう手抜きをせずに注意し考えるという習慣を身につけることであり、疑問が生じたときは疑いが解消するまで放送するべきではないという声をあげる強さを一人ひとりが持つことだろう。放送局が行うべきなのは、それを身につけさせるための実践的な研修と、疑問を提起できる制作体制と職場環境の構築であろう。
 放送倫理検証委員会は、その発足直後に公表した最初の見解で「番組は、もっとちゃんと作るべきだ」という委員の発言を、委員会の総意として記載している。この見解が出された10年後に、また同じ事をコメントしなければならないというのはまことに残念である。もっと制作現場の一人ひとりが、番組制作者としての誇りと矜恃をもって仕事をして欲しいと思う。
 委員会は、「若きテレビ制作者への手紙」で「必要なのは、やはり『強さ』ではないだろうか。時間に追われていても情報を慎重に扱う強さ、出演者に対する礼儀正しい強さ、自分の仕事に最後まで責任を持つ強さ……。それを支えるのは、きみの番組を楽しみに待っている全国の視聴者なのだ」と書いた。6年前の手紙だが、現在のテレビ制作の現場にもまだ必要な手紙であろう。この談話の末尾に再掲することにしたので、ぜひ各局の研修で役立てて欲しい。

以上

「若きテレビ制作者への手紙」pdf
委員長談話全文(PDF)pdf