2023年12月25日

2023年 12月25日

年末年始のBPO業務について

BPOでは、2023年度年末年始の業務対応を次のとおりといたしますので、お知らせいたします。

  • 通常業務は、年内は12月27日(水)まで、新年は1月5日(金)からといたします。
  • 12月28日(木)~1月4日(木)は、視聴者応対電話、放送人権委員会の相談電話を含め、
    業務を休止します。
  • 業務休止期間中、郵便物の受領と、メール、ファクスの受信は行いますが、対応は原則として業務再開後となります。

第322回

第322回 – 2023年12月

ドイツFSFとのオンライン交流…など

議事の詳細

日時
2023年12月19日(火) 午後4時 ~ 午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室 (千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

2.ドイツFSFとのオンライン交流

放送人権委員会とドイツの放送番組に関する自主規制機関FSFとの交流会が約1時間、現地ベルリンとオンラインで結んで行われ、意見交換した。
詳細はこちら

3.意見交換会について

来年1月開催の二つの意見交換会についての細かな段取りなどを事務局から報告した。

4.その他

12月4日に大日向理事長名で公表した「芸能事務所における性加害問題について」について事務局から報告した。曽我部委員長から「そして放送がこれからも視聴者の信頼の上に公共的な役割を果たしていくため、適時、さまざまな形で放送局と議論する場を設けて、意見をたたかわせていきたいと考えております。」という見解の結語が重要だとする補足があった。

以上

2024年度「中高生モニター」募集のお知らせ

2024年度「中高生モニター」募集のお知らせ

募集は締切ました。

BPO・放送と青少年に関する委員会[青少年委員会]では、2024年度「中高生モニター」を下記の要領で募集します。モニターには、毎月1回、様々なジャンル(バラエティー・ニュース報道・ドラマなど)の番組をテーマに、率直な意見や感想を送ってもらいます。報告は、青少年委員会の議論の参考となり、各放送局にも送られます。任期は1年です。

 応募要領

  • 【任期】 2024年4月~2025年3月

  • 【応募条件】

    • (1) 上記の任期中、中学1年生から、高校3年生までであること

    • (2) 保護者の同意を得ていること

    • (3) テレビやラジオに関心があり、月1回放送に関する意見を報告できること
      ※上記に加えて、青少年委員会が実施するアンケート調査等に協力していただく場合があります

  • 【募集人員】 30人程度

  • 【応募方法】
    • 専用の応募用紙に氏名・住所・年齢・学校名・電話番号・メールアドレス(ある方)・「モニター応募の理由」など必要事項をお書きいただき、必ず保護者が署名および押印を行ったうえで、以下の宛先までご郵送ください。
      応募用紙(PDF形式)は、ここをクリックしてプリントアウトしてください。

    • ※いただいた個人情報は、モニター申し込みに関する受付確認やモニター運営業務のために利用いたします。ご本人の同意なく目的外で利用したり、第三者に開示したりすることはありません。

  • 【応募締切】 2024年1月24日(水)※当日消印有効

  • 【あて先】

    〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館7階
    BPO・青少年委員会 中高生モニター係

  • 【採用決定】
    採否については、2023年3月下旬までにご連絡します。

  • 【報告への謝礼】
    月々のリポート提出者には、毎月図書カード1000円分をお送りします。

  • 【報告の公表】
    毎月送っていただくモニター報告は、BPO会員の各放送局に送られるとともに、BPOウェブサイト等に概要を公表します。


以上

「中高生モニター制度」について

このたび、2024年度「中高生モニター」を募集するにあたり、制度のご説明をさせていただきます。

放送倫理・番組向上機構[BPO]の放送と青少年に関する委員会[青少年委員会]では、青少年の育成に資する放送の在り方について、一般視聴者から寄せられる意見などをもとに話し合いをしています。しかし、一般視聴者から寄せられる意見を年代別に分類すると、青少年からの意見が大変少ないのが現状です。そこで、青少年のテレビ・ラジオに関する考え方や、番組に対する意見を知り、より良い番組作りにつなげるため、2006年4月「中高生モニター制度」を設けました。
毎年、全国の中高生30人前後をモニターに選出し、月に一度、様々なジャンル(バラエティー・ニュース報道・ドラマなど)の番組について、率直な意見や感想を報告してもらっています。中高生モニターのみなさんの「声」は、概要をBPOウェブサイト等に掲載するほか、当該放送局にもお送りし、制作現場に伝えられ、番組作りの参考にしていただいています。

つきましては、上記趣旨をご理解の上、ご協力をお願いいたします。

2023年12月5日

NHK『ニュースウオッチ9』 新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見の通知・公表

上記委員会決定の通知は、12月5日午後2時から千代田放送会館7階のBPO第1会議室で行われた。委員会からは小町谷委員長、米倉委員、大村委員の3人が出席し、NHKからは報道局長ら3人が出席した。
まず小町谷委員長から委員会決定について説明し、本件放送には放送倫理違反があると判断したことを伝えた。続いて担当委員から、インタビューで話しているのがワクチン接種後に亡くなった人の遺族なのに、コロナ感染で亡くなった人の遺族であるように受け取られる放送だったことや、取材相手に意図を明確に説明し十分な了解をもらい、そのうえで取材するという当たり前のことができていなかったこと等について指摘があった。これに対してNHKの報道局長が「ご指摘いただいたことを、報道局長として非常に重く受け止めている。取材・制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする基本的な姿勢を再確認し、ジャーナリズム教育の徹底など現在進めている再発防止策を着実に実行したい」と述べた。

その後、午後3時から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には28社42人が参加した。
はじめに小町谷委員長が、意見書のポイントとして4つの問題を挙げた。1番目は、取材のやり方に基本的な問題があり、その具体例として、遺族への説明が不十分で、ワクチンの問題を取り上げないという考えが遺族に対して事前に説明されることがなかったこと。2番目は、VTR制作の担当者が、コロナを巡る取材経験が必ずしも十分ではないのに、周囲からの十分なサポートを受けていなかったこと。3番目は、内部のチェック機能が働かず、提案票に「ワクチン」という言葉が書いてあったにもかかわらず、これを認識していたスタッフがほとんどいなかったこと。4番目は、大切な家族を亡くした遺族3人の声を短く切り取って合計24秒で伝えるという編集の仕方が、「人の死」を巡る情報の扱い方としてあまりに「軽かった」のではないかという指摘だった。
続いて米倉委員が「結果論になるかもしれないが、ご遺族の方々をいわば、だますような形で放送が出てしまった」と指摘した。そのうえで、NHKの中で「徹底して議論し考えるという雰囲気のようなものが、もしかしたら欠如してはいなかったか」などと述べた。大村委員からは、小町谷委員長と米倉委員の発言を補足する形で、ジャーナリズムを担う者として備えるべき現実社会への知識、関心、そして問題意識の低下という事態が進行してはいないだろうかという危惧が述べられた。このあと、以下のような質疑応答があった。

〇質問・委員会は、NHK内のサポートに関することを最も重要な問題であると
    考えているのか。
 回答・取材者の経験が必ずしも十分でなかったのであれば、そのサポートが
    十分だったかを調べることになる。それも不十分だったとなれば、
    かなり重要視することになる。

〇質問・VTR制作の担当者と遺族の間で認識が食い違っていることを、委員会は
    どのように捉えたのか。
 回答・放送倫理の観点からすれば、やはり取材者側に十分な説明責任がある
    ということになる。

記者会見は約1時間15分で終了した。

以上

第190回

第190回–2023年12月

NHK『ニュースウオッチ9』委員会決定の通知・公表について報告

第190回放送倫理検証委員会は、12月8日に千代田放送会館で開催された。
委員会が12月5日に公表した、委員会決定第44号NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見に関して、担当委員から当日の様子などが報告された。
TBSテレビが11月5日に放送した『サンデーモーニング』の生成AIの特集コーナーについて、当該放送局から提出された報告書を基に討議したが、審議入りはせず議事概要に意見を掲載することで終了した。
11月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見等が報告された。
関西地区ラジオ局との意見交換会開催の進捗状況が報告された。

議事の詳細

日時
2023年12月8日(金)午後5時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見の通知・公表について報告

NHKは2023年5月、『ニュースウオッチ9』の中で「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常 それぞれの思い」という1分5秒のVTRを放送した。3人の遺族のインタビューが含まれており、そこには「父を亡くした〇〇さん」などのテロップが付けられていた。前後の脈絡などから3人は、家族が新型コロナウイルスに感染して亡くなった遺族であると受け取るのが自然な映像だったが、実際には、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族であった。委員会は、ワクチン接種による被害を訴える遺族を、新型コロナウイルス感染によって亡くなった人の遺族と誤認させるような放送が、なぜ、どのようにしてなされたのか検証する必要があるとして、同年6月の委員会で審議入りを決めた。審議を経て、次のような事実を認めた。①VTR制作担当者は、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族であると認識しながら、その旨を明示せずに放送に臨んだことについて、コロナウイルスに感染して亡くなった人と、ワクチン接種後に亡くなった人を、広い意味でのコロナ禍で亡くなった人に変わりないと考えたと述べ、直属の上司も同様の認識を示した。②制作担当者はインタビュー取材の相手である遺族に対し、ワクチンの問題を放送で扱わないという自分の意図を明確に説明せず、取材者としての基本を実践していなかった。③この担当者が取材経験などの面で十分ではないにもかかわらず、組織内で十分なサポートを受けることがなかった。④放送前に行われた試写においても適切なチェックがなされなかった。以上のことから委員会は、放送が放送倫理基本綱領やNHKの放送ガイドラインに反しているとし、放送倫理違反があったと判断した。
委員会は12月5日、当該放送局に委員会決定を通知し、引き続き記者会見を開いて意見書を公表した。この日の委員会では、委員会決定を伝えたNHKの『ニュースウオッチ9』の録画を視聴し、委員長と担当委員が通知・公表時の様子について報告した。
通知と公表の概要は、こちら

2. TBSテレビ『サンデーモーニング』について討議

TBSテレビは2023年11月5日に、報道番組『サンデーモーニング』内で「生成AI」をテーマにしたコーナーを放送した。その中でイスラエル・ハマス戦争に関係する画像計5枚について、「生成AIでつくられたフェイク画像」と断定できる根拠がないにもかかわらず、断定して放送した。その後、番組ホームページや翌週の当該番組でおわびと訂正をした。
委員会は当該放送局に報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。報告書によれば、ハマス幹部に関する4枚の画像については、インターネット上に画像が出回った時期からして、実際にあったシーンを撮影した本物の画像である可能性が高いことが分かったという。そもそもこのコーナーは、まん延する生成AIによる創作物やフェイク画像の扱いについて警鐘を鳴らす目的で制作されており、まさにその中で、生成AIに関する誤った情報を放送し、視聴者の信頼を損ねてしまったことを重く受け止めているという。
ミスを起こした大きな原因は、放送内容をチェックする立場にあるプロデューサー陣の管理態勢に問題があり、また担当ディレクターも放送内容の事実確認に関する基本認識に欠けた部分があったほか、プロデューサー陣、担当ディレクターともに、生成AIやフェイク画像に関する認識が不十分だったからだという。当該番組の再発防止策として、事前プレビュー・チェックの強化や画像ファクトチェックの強化等をする。また報道局全体の再発防止策として、フェイク情報共有システムを新設し、ニュースに関連するフェイク情報や画像を発見した場合、系列各局で即座に情報を共有できるようにする等が打ち出されている。さらに当該放送局の放送倫理委員会で議論をして、全社的にも問題点の周知・徹底を図ることが報告書に記載されている。
委員会は、誤った情報を放送するにあたって事実確認が不十分であった点で放送倫理違反の疑いはあるものの、当該放送局の調査が詳細になされており、さらに踏み込んだ調査の必要性に乏しいこと、生成AIやフェイク画像を含むファクトチェックに関する再発防止策が速やかに取られており、経過を見守ることが望ましいと考え、討議を終了し、審議入りはしないこととした。もっとも、生成AI画像の問題は、他局にも同様の課題を突き付けていると考えられ、警鐘を鳴らすという意味において、委員からの意見を議事概要に掲載することとした。

【委員の主な意見】

  • 基本的なチェックが行われずに事実と違うことを放送した点で、放送倫理違反があったと言える。
  • 放送では、プロパガンダと生成AIの話が交錯しているが、おわび放送で生成AIのフェイク画像が誤りであることについては触れているものの、写真自体がフェイクであったのかについては説明がない。プロパガンダという面からみると、視聴者に対しては写真自体がフェイクかどうかについても説明すべきだったのではないか。
  • VTRが非常に分かりにくい。生成AIのフェイク画像であることを専門家が説明しているが、この画像がどのような状況で使われたか、なぜ取り上げているのかについての説明がない。
  • 単に事実確認の基本を怠っているだけであり、生成AIのような新しいものが出てきたから事実確認のハードルが上がった、というような事案ではないのではないか。
  • ローマ法王がトランプ(前米大統領)を支持しているというフェイクニュースを例に取れば分かるとおり、フェイクニュースは、それを作った人の意図と流通させている人の意図がまったく違う可能性が多い。当該放送局がどこまでこれを認識していたかは分からないが、フェイクニュースの問題は単純に捉えない方が良い。
  • 現実のニュース報道においても、生成AIによるフェイク画像が潜んでいる可能性がないとは言えない。これを全て検証する術があるのだろうか。SNSをリソースとしてはならない、という厳しい規制になりかねない。
  • 生成AI画像問題を取り上げるコーナーにおいて、フェイク画像にだまされたのではなく、本物である可能性が高い画像をフェイク画像と断定したのは、事実確認が甘すぎる。
  • 放送前に、画像分析ツールや複数の分析会社を利用すれば防げたのではないか。
  • 生成AIの技術はどんどん進化していくので、放送局に対してしっかりと確認するように伝えたとしても、現在の技術状況では確認に限界があり、一罰百戒にならないか。今後放送局が「これはフェイク画像だ」と言えなくなってしまう恐れがあると思う。
  • フェイク情報共有システムの構築などは、他の放送局にとっても参考になると思う。

3. 11月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

11月に寄せられた視聴者・聴取者の意見の総数は約2500件で10月から半減した。主な要因は芸能事務所関連の意見が大幅に減少したこと。一方で、BPOに対する意見が90件と急増。「検証番組が不十分」「第三者に調査させよ」といった内容で、事務局からは「NHK、民放キー局の検証番組が出そろったことで検証内容についての意見がBPOに寄せられている」などの報告があった。

4. 関西地区ラジオ局との意見交換会の開催について報告

2024年1月26日に開催予定の「関西地区ラジオ局意見交換会」に関して、日程、会場および議題となるテーマ「政治的公平性」「パーソナリティー発言への対応」などの報告が事務局からあった。

以上

第262回

第262回-2023年11月28日

中高生モニターからのリポートについて… など

2023年11月28日、第262回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、10月後半から11月前半までの約1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
11月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見た教育番組(役に立った、勉強になった番組など)について」でした。
芸能事務所創業者による性加害問題について、前回、前々回に引き続き3回目の意見交換をしました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年11月28日(火) 午後4時00分~午後6時30分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
芸能事務所創業者による性加害問題について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

10月後半から11月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
多数の芸人が運動会に参加する形式のバラエティー番組で、「人間体重計」と称して男性芸人が、指名された女性芸人を抱きかかえて体ごと上下させて自らの下腹部に当てる動きを見せたことに対して批判的な視聴者意見が寄せられました。担当委員は「女性芸人に対するパワハラやセクハラではないかとの意見があった。この番組が特段問題とは言えないが、暴力的ないし性的な表現について、視聴者の理解を得るのが難しくなっていると思う」と述べました。
指名された女性芸人が一瞬躊躇する表情を見せたことについて別の委員は「『えっ』という感じだった。『いや』と言えない雰囲気はよくないと感じた」と指摘し、さらに別の委員も「いやでも『ノー』と言えないこと(が問題だ)。(性加害を受けそうになった)子どもの安全という点では『いやです。ノーです』と言えることが最も重要。そういう自由度がない番組はつくってほしくない」と強調しました。
性にまつわる世界の話題や悩みについて出演者が語り合う教養バラエティー番組に対し、視聴者から批判的な意見が寄せられたことについて担当委員は、「番組の中で『これから性的な映像や音声が流れます』と字幕で示すなど、事前に慎重な検討を重ねて制作されたことがうかがえる内容だった」と報告しました。
性的違和の感情をかかえる中学生とその保護者の問題を正面から取り上げた番組についても、視聴者から批判的な意見がありましたが、担当委員は「みずからの性別に違和感があるという未成年者の悩みから出発して、番組では体の性別と心の性をはっきり区別して展開していた」として、問題ないとの見方を示しました。
このほかに議論になる番組はなく、「討論」に進むものはありませんでした。

中高生モニター報告について

11月のテーマは「最近見た教育番組(役に立った、勉強になった番組など)について」で、モニターからは合わせて21番組への報告がありました。“教育番組”を幅広く捉え、学校の教科に関連する番組だけではなく、報道番組や情報バラエティー番組、環境ドキュメンタリー番組、クイズ番組や歴史ドラマなど、さまざまな“学び”があった番組への報告も多くありました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『アイ・アム・冒険少年』(TBSテレビ)に8人から、『ティーンズビデオ2023~第70回NHK杯全国高校放送コンテスト~』(NHK Eテレ)と『テレビ朝日ドラマプレミアム 友情 ~平尾誠二と山中伸弥『最後の一年』~』(テレビ朝日)、『第102回全国高校サッカー選手権 北海道大会 決勝』(札幌テレビ放送)にそれぞれ2人から、報告がありました。

◆モニター報告より◆

【最近見た教育番組(役に立った、勉強になった番組など)について】

  • 『笑わない数学』(NHK総合)
    • 「1+1=2」はとても簡単だと思ってきましたが、「なぜ」と問われると分からなくなります。視聴者の疑問をパンサー尾形さんがなくしていってくれるので理解しやすく、難しくて堅苦しい雰囲気ではなくバラエティーの一つとして見ることができました。(中学3年・男子・神奈川)
    • 「超越数」は中学生でギリギリ分かるような内容だったので、もっと分かりやすくかみくだいた内容にしてほしい。普段私たちが見ている数学はほんの一部でしかなく、そのほとんどがまだ解明されていないということが分かったので、さらに数学に興味を持つきっかけになった。(中学3年・女子・広島)
  • 『地球ドラマチック「渡り鳥を守れ!大移動1万キロの危機」』(NHK Eテレ)
    この番組を見るまでに、こんなにも渡り鳥が激減しているという事実を知らなかった。このようなショッキングな事実を知らず、また地球の大変化のさなかにいるわたしは、どうしてこんなに何も考えず生きていられるんだろうかと心から思った。(中学1年・女子・福岡)
  • 『いじめをノックアウト「“スクールカースト”って・・・」』(NHK Eテレ)
    10分尺で見やすく、ナレーションの2人が非常に優しい声をしていて、いろいろな人に見てもらいやすいのではないかと思った。ただ番組の終わり方が非常に残念だった。「出演者の高橋みなみさんの意見を聞いてみたいな」と思わせて終わらせるのではなく「尺がそこまでだからそこで終了!」という感じで終わらせているように思えた。(中学2年・男子・埼玉)
  • 『NHKスペシャル「ハマスとイスラエル 対立激化どこまで」』(NHK総合)
    今回の紛争はテレビやネットニュースで連日報道され、SNSでもさまざまな情報が発信されている。一方で、この番組のように一連の経緯を根拠とともに示してくれるメディアはほとんどなく、ニュースについてあまり調べる時間がない僕たち中高生にはとても貴重で価値があると感じた。(中学2年・男子・東京)
  • 『英会話フィーリングリッシュ ~データで選んだ推しフレーズ~』(NHK Eテレ)
    小学校高学年の頃からこの枠で放送されている英語番組を親子で毎回見ています。ミニドラマと解説の組み合わせなので見やすく、解説が丁寧でわかりやすいです。発音や視聴者の作文コーナーも、とても勉強になります。今年の番組は文法的な解説が少ないので、中学生の私にとっては難しい部分があります。この枠は1年ごとに番組内容が変わるため毎年新鮮です。自分の好きなタレントが出演していたらもっと英語の勉強を頑張れると思います。(中学2年・女子・愛知)
  • 『日立 世界ふしぎ発見!』(TBSテレビ)
    「信長の首を探せ」というテーマでの放送だった。結局、信長の首がどこに行ったのかは分からなかったが、いろいろな資料を見て話を聞くことでより謎が深まり、面白かった。途中でクイズが出たが、VTRで出されたクイズに対して出演者の誰が正解するのかを当てる問題で、正直、必要性を感じなかった。VTRで出されている問題を視聴者も一緒に考えるほうがよいのではと感じた。(中学2年・女子・東京)
  • 『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)
    すぐに難しい解説になるのではなく、イスラム教や宗派やコーランの解説が先にあったので、その後の複雑な中東の問題もすぐに理解することができました。イスラエルとハマスの問題は、第3次世界大戦にもなりかねない状況だと番組で知って、すごくびっくりしています。(中学2年・女子・栃木)
  • 『世界の何だコレ!?ミステリー』(フジテレビ)
    学校では習わないような雑学が増えてとても面白かった。地元福井の恐竜博物館が出てきてうれしかった。バラエティー番組としても面白いので、家族全員で笑ったり驚いたりしながら見た。1つの動画につき時間が結構短くテンポが良かった。世界中の不思議な映像を紹介する番組はいくつかあるが、そういう映像をどこから仕入れてくるのか不思議に思う。(中学2年・女子・福井)
  • 『出川哲朗のクイズほぉ~スクール』(NHK Eテレ)
    この番組を見ていないと一生知ることの無かった知識もあったと思う。覚える知識ではなく、はじめて知ることのできる知識だったので、他とは違う楽しさがあった。(中学3年・男子・神奈川)
  • 『大河ドラマ「どうする家康」』(NHK総合)
    私が昔漫画で見たものは茶々が主人公で、徳川家康はとても嫌な感じで描かれていました。このドラマは家康が主人公で、また違う視点から関ヶ原やその後が見られて面白かったです。(中学3年・女子・福岡)
  • 『クローズアップ現代「卵も肉もまるで本物!“フードテック食品”で食卓は変わる?』(NHK総合)
    私の身近にもフードテックは活用されていて、大豆ミートは私も食べたことがあります。食品の安全性や廃棄食材の問題がフードテックで解決されたり、食品ロスにつながったりなど、知らない情報が多くありとてもためになりました。(中学3年・女子・山梨)
  • 『漫画家イエナガの複雑世界を超定義』(NHK総合)
    この番組の特徴は圧倒的なスピード感ですが、とにかくわかりやすく、CGや漫画を用いて一人語りのプレゼン形式で15分間にギュッと凝縮されています。また集中してみないと取り残されるので、より内容が入ってきます。ホームページで放送内容を記事化されていて、見返してより内容が深まるのでいいと思いました。(高校1年・男子・群馬)
  • 『バリューの真実』(NHK Eテレ)
    出演者の実際の経験にとても共感しました。教授や心理士の方の説明もわかりやすかったです。また、番組中にさまざまな流行りの曲や人気な曲が流れていて「〇〇の曲だ!」とより楽しく聞けると感じました。(高校1年・女子・茨城)
  • 『カズレーザーと学ぶ。』(日本テレビ)
    テーマで挙げられていた話題の単語は全然聞いたことがなかったが、説明の際は普段耳にするような表現に言い換えたり、図やグラフで視覚的に説明したりと工夫されていた。最先端の研究で分かってきたことが、なんの負担もなく納得できてとてもおもしろかった。出演者から大学教授への質問が、私の疑問点を代弁してくれたように的確だったのもとても良かった。(高校2年・女子・愛知)
  • 『はなしちゃお! ~性と生の学問~「2023年夏号②」』(NHK Eテレ)
    出演者のサーヤさんの「学生時代、生理の話を女子にだけ話されて違和感を覚えた」というエピソードに共感しました。自分も中学生のときに男女別で性の話をされたことがあり、そうやって分けてしまうから理解の隔たりが生まれていってしまうのではないのかと感じました。サーヤさんがフラットな雰囲気を作っていて、まっきぃ(マキタスポーツ)とのコンビも見ていて楽しく、普通に見ていて面白い番組でした。(高校3年・男子・神奈川)
  • 『林修の今知りたいでしょ!』(テレビ朝日)
    テレビ欄で“年金”のテーマを見つけて、見てみようと思いました。「40年支払い、元を取れるのか」という問いは愚問だと思いました。高齢になったら生活できる程度の支給をもらえばいいのであって“元がとれたのかどうか”は長生きした結果で考えればいいはずだと思います。また私たちが65歳になったとき、年金制度は継続されているのでしょうか。(高校3年・女子・京都)

【自由記述】

  • 季節の変わり目は特番が多いので、たくさん見られてうれしいです。(中学1年・女子・島根)
  • 同じ時間に同じようなジャンルの番組を放送するのは、減らしてほしいです。そのジャンルに興味がなくて、見る番組がないと思うことがよくあります。(中学3年・男子・広島)
  • 「NHK for school」のホームページは、学校にいけない子どもや家で復習したい人、大人で学びなおしたい人がテレビで勉強できて、素晴らしいと思います。(中学3年・女子・滋賀)
  • 祖母に聞いた話ですが、テレビ局や番組によって音声のボリュームが異なるらしいです。私も、ある番組を見た後に別のテレビ局の番組を見ると、とてもうるさく感じてしまうことがあります。(高校1年・女子・京都)
  • 今年の『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に旧大手芸能事務所のタレントを一組も起用しないことが発表されたが、タレントが不祥事を起こしたわけでもないのにそのような判断になったことにとても違和感を覚えた。独占状態が崩れた今こそ、他のグループと同様の視点で比べたうえで出演するか検討する、という本来あるべき状態に戻すべきではないか。(高校2年・女子・愛知)
  • 今年の『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の出演者について、K-POPのグループが目立つのが気になった。K-POPが流行っているのはわかるが、日本の伝統的な番組の出演者に日本アーティストが少ないのはおかしいのではないかと思った。(中学2年・女子・東京)
  • パレスチナとイスラエルの軍事衝突が連日大きく報道されています。しかし、いまだにロシアによるウクライナ侵攻は終わっていません。これらを一種のエンタメとしてトピックを扱っているから、流行りのように話題が移り変わってしまうのではないでしょうか。ウクライナ情勢についても引き続き報道する必要があると思います。(高校3年・女子・北海道)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『アイ・アム・冒険少年「脱出島SP☆千原ジュニア最強助っ人とリベンジ参戦VSジョンソンメンバー」』(TBSテレビ)
    • ゲストが毎回違うので、同時進行で放送されるのが面白い。特にナレーターのつっこみに笑ってしまう。(中学1年・女子・千葉)
    • 昔のドラマの再現や、昔の曲が出てくるシーンがあったが、見たことも聞いたこともないものばかりで例えがピンとこず、楽しむことができなかった。(中学2年・女子・東京)
  • 『世界一の九州が始まる!「反わびさび!とがってアップデート」』(RKB毎日放送)
    番組が15分で見やすく、内容が凝縮されていた。九州ならではの情報に触れられる良い機会となった。(中学1年・女子・福岡)
  • 『ティーンズビデオ2023~第70回NHK杯全国高校放送コンテスト~』(NHK Eテレ)
    同級生が全国大会に出場していたので見ました。普段どんな活動をしているのか知りませんでしたが、とてもおもしろく、言葉で表現する放送部の良さを知りました。(高校2年・男子・山形)
  • 『FIFA U-17 ワールドカップ インドネシア 2023』(J SPORT)
    年齢制限のある試合は中継されるイメージがほとんどないので、とても良い番組でした。大人のプレーを見るのも楽しいし勉強にもなるけれど、自分と同世代のプレーを見たほうが、自分もこれくらいになれるかもなど、良いイメージを持てる人が増えると思います。(中学3年・男子・広島)
  • 『テレビ朝日ドラマプレミアム 友情 ~平尾誠二と山中伸弥『最後の一年』~』(テレビ朝日)
    英語の教科書に平尾さんが出てきたが、生徒は誰も平尾さんのことを知らなかった。でもドラマを見て、何事にも頭を働かせて考えている、とてもステキな人だと感じた。山中さんとの友情にもじんときた。(高校2年・男子・山形)
  • 『おはよう朝日です』(朝日放送テレビ)
    朝の情報番組の中で、他の番組では“オススメ”が東京にあることが多くて行くのをあきらめがちですが、京都や大阪にある!と思うととてもワクワクするし、親近感を持ちながら見ています。(高校1年・女子・京都)
  • 『第102回全国高校サッカー選手権 北海道大会 決勝』(札幌テレビ放送)
    札幌ドームではプロの試合しか見たことがなかったため、高校サッカーが行われているのを見て、とても不思議な感じがした。同じ年代の人たちが一致団結して頑張っている姿を見て、自分もいろいろなことをあきらめないで頑張らなくてはいけないなと思った。(高校1年・女子・北海道)

◆委員のコメント◆

【最近見た教育番組(役に立った、勉強になった番組など)について】

  • 『地球ドラマチック「渡り鳥を守れ!大移動1万キロの危機」』(NHK Eテレ)を視聴した中学生モニターは、地球環境の大変化やその事実を知らない自分に、とても深く感じるところがあったようだ。最近の中高生はSDGs教育の中で様々な知識を得ていると思っていたが、違う切り口だと新しい発見があるのだと分かった。
  • 『いじめをノックアウト』(NHK Eテレ)について、金曜日の午前9時40分から放送しているのが難点だという意見があったが、不登校の子がテレビを見ることもあるので、平日午前中という時間帯で放送する意味はあると思う。
  • 『笑わない数学』(NHK総合)について「NHK for school」などで視聴できればより多くの人が学ぶことができるという提案があった。中高生モニターに大変人気な番組なので、放送時間(午後11時から)ももったいないと感じる。
  • 中高生にとっての「教育番組」は「自分が知らなかったことを知ることができる」「学校で習わない雑学の知識が増える」番組のようだ。情報番組・報道番組・教養番組など、とてもバラエティーに富んでいて面白い。

【自由記述について】

  • 「元大手芸能事務所のタレントが毎年出演していた、大みそかのカウントダウン番組がなくなり残念だ。ただ世界の目があるので、企業やテレビ業界もそのタレントを使いにくいと思う」という意見があった。外圧のようにとらえているところが興味深い。
  • 「考える時間を与えてくれるクイズ番組のほうが、ゆっくりクイズを楽しむことができるので好きだ。出演者と一緒に考えることができて楽しい」という意見があった。インターネット上の動画は総じて慌ただしく、まくし立てるような話し方が多いため、最近のテレビ番組も、若い人の心をつかもうとして似たような編集になっているものも増えているように思うが、逆にゆっくりした時間が流れるのが貴重で新鮮だと受け止める中高生もいるようだ。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『テレビ朝日ドラマプレミアム 友情 ~平尾誠二と山中伸弥『最後の一年』~』(テレビ朝日)を視聴した高校2年生から報告があったが、若い世代は平尾誠二さんを知らないという事実に驚いた。
  • 『密着26年!大家族石田さんチに新たな命が誕生!~人生は続くよ、どこまでもSP~』(日本テレビ)を視聴した中学生から「思春期の子をそのまま放送している切り抜き動画を見た。人には誰にもプライバシーがあるので、番組の放映する部分を確認する必要があると思った」と報告があった。番宣の切り抜きではなく、おそらく別の視聴者がSNSなどに切り抜き動画を投稿し問題提起したのに同意したのだろう。

芸能事務所創業者による性加害問題について

芸能事務所の創業者(故人)が、所属する多数の未成年のタレントに性加害を繰り返していた問題について、BPO、あるいは青少年委員会としてできることはないかとの観点から、前回、前々回に引き続いて意見交換しました。
はじめに事務局から、本件に関してBPO理事長の見解を近く公表する(2023年12月4日公表「芸能事務所における性加害問題について」参照)方向であることが示されました。
委員のひとりが「事態がさらに動くかもしれないが、いまの時点で見解を出しても大丈夫か」と懸念を示しました。ほかの委員は、理事長見解の中で「『(BPOが)放送局と議論する場を設けて、意見をたたかわせていく』という文言があれば対応は可能である」と指摘しました。
こうした議論を経て、委員会としての意見交換を終えました。

今後の予定について

次回は12月18日(月)に定例委員会を開催します。 

以上

2023年11月に視聴者から寄せられた意見

2023年11月に視聴者から寄せられた意見

性加害問題をめぐる各局の検証番組や所属タレント起用の是非などへの意見、「フェイク画像」という紹介が誤っていたことなどへの意見が寄せられました。

2023年11月にBPOに寄せられた意見数はほぼ平常ペースの2,502件で先月からほぼ半減、 2,648 件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 90.2% 電話 8.7% 郵便・FAX計 1.1%
男女別(任意回答)は、男性25% 女性24 % で、世代別では 30歳代 24% 40歳代 22% 
50歳代 20% 20歳代 18% 60歳代 8% 70歳以上 3% 10歳代 3%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、11月の送付件数は697件、56事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から15件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

芸能事務所創業者の性加害問題をめぐる各局の検証番組、当該事務所の所属タレント起用の是非などについて意見が寄せられました。また、イスラエルが主張の根拠としている画像を番組が「フェイク」と説明したことなどへの意見もありました。
ラジオに関する意見は25件、CMについては18件でした。

青少年に関する意見

11月中に青少年委員会に寄せられた意見は102件で、前月から86件減少しました。
今月は「要望・提言」が54件と最も多く、次いで「表現・演出」が21件、「編成」が7件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 「生成AIによるフェイク」の危険性を考える企画で、イスラエル側が主張の根拠としている画像を「フェイク」と説明していたが、実際は本物の写真だった。ネット上の情報に惑わされる人が多い中で、テレビまでこういうことをすると収拾がつかなくなる。

  • 死体遺棄事件の容疑者として無関係の人の顔写真を何度も放送した。テレビで放送してしまった以上、ネット上の画像を完全に消し去ることはできない。まったくの濡れ衣(ぬれぎぬ)で人生が変わる可能性があることを考えると市民として恐ろしい。

【教養・バラエティー】

  • 昆布だし500mlを2週間飲み続ける味覚改善法や「昆布・ワカメを毎日たくさん食べている」というタレントのコメントを紹介していたが、昆布は食べ過ぎによる甲状腺機能低下などのデメリットも知られている。番組で注意を呼びかけるべきだったと思う。

  • 「豆腐を食べ続けるとやせるのか太るのか」、タレントに実際に食べさせて「検証」というが、わずか3日間で検証などできるはずがない。また3,000kcalすべてを豆腐で取るためにタレントが無理して大量に食べていて心配になった。

  • タレントがチェーンソーでの立木伐採を体験するシーン。指導者が立ち会っていたが、かかり木の元玉切りなど厚生労働省が注意を呼びかけている危険な行為があった。切断された瞬間は編集でカットされていたが現場ではヒヤっとしたのではないか。出演者を危険にさらしただけでなく、視聴者にも死傷する可能性のある危険な方法を拡散していた。

  • クイズで負けたら40メートル上に飛ばされる罰ゲーム。もし金具がはずれたら、と考えると怖い。落とし穴に落ちたタレントがケガをしたこともある。危険な罰ゲームはやめてほしい。

  • 性加害問題のあった事務所所属のタレントが年末恒例の音楽番組に1組も選ばれなかった。「出演者の人権を尊重する」とのことだが、所属タレントたちが人権侵害をしているわけではなく、理不尽だと感じる。

  • 問題の深刻さと照らし合わせれば、当該事務所所属のタレントを選ばなかったのは当然のことだと思う。

  • 人気アイドルが街中で市民を撮った写真に短いタイトルをつけて楽しむコーナー。大変面白く、撮影者の感性にひかれる場面が多かったが、昨今、SNSで肖像権を無視して人を笑い者にするような風潮もあり、ストリートスナップについての注意喚起をしたほうがいいと感じた。

  • 家庭のシンクに取り付けるディスポーザー(生ごみ粉砕処理機)を紹介していたが、水道局に照会したところ、設置に法的な規制はないものの、集合住宅の場合は敷地内に下水処理設備がないと下水道に負荷がかかり、耐久性を損なうなどの問題があるとのこと。こうした点も明確に示すべきだったと思う。

  • 過積載が疑われる解体業者のトラックを芸人たちが追跡するという企画だった。面白くするためか出演者たちはトラック置き場を「アジト」呼ばわり。過積載か否かの判定は「見た目」。確定もできないのに「逃げた」「まかれた」。VTRを見たスタジオでも「悪いことしているという意識はありますよね」など犯罪者扱い。本当に犯罪なのか確認した上で放送してほしい。

  • 緊張するとトイレに行きたくなるのはなぜか、あるタレントを被験者にして検証。偽の番組収録に呼び出し、被験者が「恐れている」という先輩が対談相手であることを告知。到着した先輩が「いつにもまして不機嫌」という演技…。楽屋で被験者が動揺していく様子はとても気の毒だった。

  • ショッピング番組で価格を示した後に「それを半額で」などと大幅に値引きしたように表示しているが、最初から実際の販売価格を示すべきではないのか。

  • 若いころ保育の仕事がきっかけで部落差別問題を知り、気に留めてきた。このドキュメンタリー番組はできるだけ多くの人に見てもらいたいと思う内容だった。

【その他】

  • 子どもへの性加害がなぜ数十年にもわたって放置され続けたのか、各局の検証番組は到底その構造的な問題を明らかにできるものではなかった。このままでは新たな人権侵害や虐待が起こったときに、各局が適切に報道できないのではないかと懸念する。視聴率や利益のために人権侵害を見て見ぬふりをする報道機関では意味がない。第三者機関による網羅的な調査によって二度と被害者が生まれないようにしてほしい。

  • 各局の検証番組は「男性への性加害について認識が薄かった」というが、何百人もの児童が芸能事務所やテレビ局の金儲けのために性加害を受ける環境に置かれてきたという重大性が正しく認識されているのか疑問だ。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • 芸能事務所創業者による性加害問題をめぐるテレビ各局の検証番組は、男性同士の性加害を軽くみてしまったというだけで、問題の本質をまったく検証しない不十分なものだった。この問題の本質に迫るためには、テレビ局自身に任せて調査することには限界があると実感した。

  • 性加害の被害者はトラウマを抱えながら命がけで告白している。影響力を持つ放送局は被害者に寄り添い、しかるべき対応を早めに取るべきだった。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 紀行バラエティー番組の女性リポーターが取材先の外国で、番組スタッフと、楽器代わりのビーチサンダルで頭をはたき合う演出があった。子どもが真似して友だちの頭をたたく原因にもなるので、はたき合いで笑いを取ることはやめてほしい。

  • バラエティー番組で、芸能人をジップラインで滑らせて、池の上でロープを切るというドッキリ企画が放送されたが、とても笑えない。仕事とはいえ、一歩間違えれば重傷を負うかもしれない。なぜスタジオのMCたちが笑っているのか、子どもに説明できない。

【「編成」に関する意見】

  • サスペンスドラマの再放送を平日の日中に放送しているが、殺人などの凶悪シーンもある。夜の時間帯に放送すべき内容だ。子どもが見られる時間に放送するのはとんでもないことだ。

【「性的・表現」に関する意見】

  • 深夜のバラエティー番組で、番組MCの芸人らがひとりの若手芸人をつるし上げて、下着を脱ぐよう強要する演出があった。「早く脱げ!」と迫り、下着を下ろすと股間をのぞき込んで「脱毛しているのか!」と笑い転げた。子どもたちがいじめで真似するおそれがある。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 大麻グミ問題のニュース。報道の中で成分を含め「現在も購入可能」などと紹介していたが、その存在を知らなかった人も興味を持って、インターネット購入する可能性がある。中高生がとくに興味を持つだろう。報道の仕方を再考してほしい。

第44号

NHK『ニュースウオッチ9』新型コロナワクチン接種後に亡くなった人の遺族を巡る放送についての意見

2023年12月5日 放送局:NHK

NHKは2023年5月、『ニュースウオッチ9』の中で「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常 それぞれの思い」という1分5秒のVTRを放送した。3人の遺族のインタビューが含まれており、そこには「父を亡くした〇〇さん」などのテロップがつけられていた。前後の脈絡などから3人は、家族が新型コロナウイルスに感染して亡くなった遺族であると受け取るのが自然な映像だった。しかし実際には、3人は、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族であった。
委員会は、ワクチン接種による被害を訴える遺族を、新型コロナウイルス感染によって亡くなった人の遺族と誤認させるような放送が、なぜ、どのようにしてなされたのか検証する必要があるとして、同年6月の委員会で審議入りを決めた。関係者のヒアリングや議論を重ね、次のような事実を認めた。①VTR制作担当者と直属の上司は、コロナウイルスに感染して亡くなった人と、ワクチン接種後に亡くなった人を、広い意味で、コロナ禍で亡くなった人にかわりないという不適切な認識をして放送に臨んだ。②この担当者はインタビュー取材の相手である遺族に対し、ワクチンの問題を放送で扱わないという自分の意図を明確に説明せず、取材者としての基本を実践していなかった。③この担当者が取材経験などの面で十分とはいえないにもかかわらず、組織内で十分なサポートを受けていなかった。④放送前に行われた試写において、適切なチェックがなされなかった。
以上のことから委員会は、放送が放送倫理基本綱領やNHKの放送ガイドラインに反しているとし、放送倫理違反があったと判断した。

2023年12月5日 第44号委員会決定

全文はこちら(PDF)pdf

目 次

2023年12月5日 決定の通知と公表

通知は、2023年12月5日午後2時から、BPO第1会議室で行われ、
午後3時から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。
記者会見には28社42人が出席した。詳細はこちら。

2024年3月8日【委員会決定に対するNHKの対応と取り組み】

委員会決定 第44号に対して、当該のNHKから対応と取り組みをまとめた報告書が2024年3月4日付で提出され、委員会はこれを了承した。

NHKの対応

全文pdf

目 次

  • 1) 委員会決定の放送対応
  • 2) 放送現場への周知
  • 3) 経営委員会・放送番組審議会への報告
  • 4) 放送倫理委員会の開催
  • 5) コンテンツ品質管理連絡会の実施
  • 6) BPO 放送倫理検証委員会との研修会
  • 7) 再発防止に向けて

2023年度

芸能事務所における性加害問題について

2023年12月4日
BPO [放送倫理・番組向上機構]
理事長 大日向雅美

芸能事務所における性加害の問題につきましては、今年3月にBBCの報道を一つの契機として日本社会において重大問題とする認識が高まり、その後、9月以降、当該事務所の会見および具体的対策への動き等が認められております。未だ解決の道筋は見えず、むしろ緒についたところとも言える本問題ですが、社会的関心は言うまでもなく非常に高く、BPOにも視聴者からの意見が数多く寄せられています。

これまでいただいている視聴者意見は、概ね本問題に対する驚愕と許しがたい思いをベースとしていることで一貫していますが、当初の加害者や当該事務所の責任をもっぱら追及するもの、所属タレントの人権を擁護するものから、やがてそれを放置してきた放送界やマスメディア、さらには企業や社会全体のあり方を問うものへと、時間と共に様相を変えつつあります。

そうした中、本問題に対しBPOの各委員会が速やかに審議入りをして、放送局を諫めるべく動きをとることを期待する声も多数いただいております。

BPOは、放送界が市民社会に果たす公共的使命を自覚し、自ら第三者の意見を聴く仕組みを設けて放送内容の向上を図ることを目指して設立された機関です。具体的には「放送倫理検証委員会」「放送と人権等権利に関する委員会」「放送と青少年に関する委員会」の3つの委員会が、放送された番組について、その制作過程や取材方法、内容等に関して、倫理上、人権上、さらには青少年に及ぼす影響上の問題の有無の判断を行い、解決に向けて「勧告」「見解」「意見」等の決定の形で放送界に要請を行うものです。

BPOの設立趣旨から、これまで視聴者意見に真摯に向き合ってきたことは言うまでもなく、本問題に関しても3つの委員会の委員は、それぞれに当初から関心を寄せ、各委員会の中でも放送番組とのかかわりをめぐり議論を重ねております。

他方、各放送局は本問題について検証番組を放送し、あるいは番組審議会において議論を行っています。
放送局の自主・自律に寄与することがBPО設立の本来の目的であり、各放送局の動向に非常に注目しているところです。

放送局の自主・自律は、放送内容の向上はもちろんのこと、この社会に生き、暮らしているすべての人の人権と自由を尊重することに貢献し、ひいては日本社会の文化の質の向上につながるものです。
本問題は、特定の芸能事務所のことにとどまらず、それを取り巻くさまざまな媒体、さらには社会を構成する私たちが、一人ひとりの自由と人権をいかに守り、尊重することができるのか、換言すれば成熟した市民社会のあり方につながる問題でもあります。

こうした観点から放送局は、本問題の精査と反省を通して、自らの果たす使命をさらに認識し、今後も起こりうる諸問題に対しても真摯に検証し、改善を行うことが求められます。
視聴者と放送局を繋ぐ第三者機関の役割をもつBPОは、各放送局の今後の取り組みをたゆまず注視してまいります。そして放送がこれからも視聴者の信頼の上に公共的な役割を果たしていくため、適時、さまざまな形で放送局と議論する場を設けて、意見をたたかわせていきたいと考えております。

第321回

第321回 – 2023年11月

「判断ガイド2023」について…など

議事の詳細

日時
2023年11月21日(火) 午後4時 ~ 午後7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室 (千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

2.「判断ガイド2023」について

「判断ガイド2023」の作業進捗状況と、ウェブサイトでの画面イメージや活用の仕方などについて、事務局から報告した。

3.意見交換会について

来年1月開催の二つの意見交換会について、概要や進行案を事務局から報告した。

4.その他

ドイツFSF(テレビ自主規制機関)とオンラインでの意見交換を近く実施予定であることを事務局から報告した。

以上

第189回

第189回–2023年11月

NHK『ニュースウオッチ9』とTBSテレビ『news23』
委員会決定を通知・公表へ

第189回放送倫理検証委員会は、11月10日に千代田放送会館で開催された。
6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、担当委員から意見書の再修正案が報告され意見交換した結果、合意が得られたため、今後当該放送局へ通知して公表することになった。
8月の委員会で審議入りしたTBSテレビの報道番組『news23』について、担当委員から意見書の修正案が提出された。意見交換の結果、合意が得られたため、今後当該放送局へ通知して公表することになった。
10月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見等が報告された。
関西地区ラジオ局との意見交換会を開催することを決めた。

議事の詳細

日時
2023年11月10日(金)午後5時~午後7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

ワクチン接種後に亡くなった人の遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りしたNHK『ニュースウオッチ9』(5月15日放送)について引き続き審議が行われた。
今回の委員会では、意見書の再修正案が担当委員から報告された。これについて意見が交わされた結果、合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、今後しかるべき時期に当該放送局に対して通知し、記者会見を開いて公表することになった。

2.TBSテレビ『news23』について審議

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。委員会は、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決め、9月の委員会で担当委員から当該放送局の関係者に行ったヒアリングの結果を基に議論し、10月の委員会では担当委員から提出された意見書案について議論した。
今回の委員会においては、担当委員から示された意見書の修正案について意見交換した結果、合意が得られたため、表現などについて一部手直しの上、当該放送局へ通知して公表することになった。

3.10月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

10月に寄せられた視聴者・聴取者の意見総数は5千件を上回り、月間の意見数としては記録が残っている中で最も多かった。そのうち芸能事務所創業者による性加害問題について、東京キー局が相次いで検証番組を放送したことに関する意見が数多く寄せられたことや、芸能事務所側が記者会見を開いた際に、個々の記者に関する「NGリスト」が存在していたという報道に関する意見が多数寄せられたことなどが事務局から報告され、議論した。

4.関西地区ラジオ局との意見交換会の企画について

2024年1月26日(金)に放送倫理検証委員会と関西地区のラジオ13局との「意見交換会」を開催することを決めた。テーマは「政治的公平性」や「パーソナリティの発言対応」など。現場からの報告のほか、各局が日々直面している課題や悩みを共有していく場とする。

以上

2023年10月に視聴者から寄せられた意見

2023年10月に視聴者から寄せられた意見

性加害問題についての芸能事務所記者会見の報道や在京キー局の自己検証番組への意見、放送事業者のあり方に関する意見などが寄せられました。

2023年10月にBPOに寄せられた意見は 5,150件で、先月からほぼ倍増、2,647件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 92.9% 電話 6.6% 郵便・FAX計 0.5%
男女別(任意回答)は、男性18% 女性34 % で、世代別では 30歳代 25% 
40歳代 24% 50歳代 24% 20歳代 14% 60歳代 8% 70歳以上 2% 10歳代 2%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、10月の送付件数は2,971件、41事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から19件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

創業者(故人)による性加害問題をめぐって芸能事務所が2回目の記者会見を行うなどの動きがあり、10月も多くの番組でこの問題が取り上げられました。また、前月のNHKに続いて民放各局がこの問題に関する自己検証番組を放送しました。こうした報道や検証番組などへの意見、放送事業者のあり方に関する意見などが寄せられました。
ラジオに関する意見は25件、CMについては15件でした。

青少年に関する意見

10月中に青少年委員会に寄せられた意見は188件で、前月から102件増加しました。
今月は「要望・提言」が102件と最も多く、次いで「報道・情報」が28件、「表現・演出」が27件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • アメリカ連邦議会議事堂でユダヤ人団体がイスラエルに抗議している映像を流し、「パレスチナ人が座り込み」「生活に不満」などと説明していた。在米ユダヤ人の中にも反イスラエルの動きがあることを示す映像を使って真逆のことを報じており、パレスチナ人に対する偏見をあおっていると受け取られかねない。

  • パレスチナとイスラエルに関する報道で、日本赤軍の元最高幹部の娘を単なる「ジャーナリスト」として出演させたことは妥当だったのか。母親の罪とは無関係だとしても、彼女の立場・背景について番組内で全く触れないのは問題があるように思う。

  • (日本赤軍の元最高幹部の娘かどうかとは関係なく)彼女の出演によってパレスチナとイスラエルの問題を双方の見方から知ることができた。今回のできごとについて彼女の話で初めて知った一面もあるなど、とても興味深く参考になった。

  • ニュースで、不祥事を起こした企業のトップがパニック障害を理由に記者会見を欠席したことについて関係者が「そんな甘えた話があるか」と発言したビデオが放送された。これをカットせず放送したということはそのテレビ局も同じ認識だということ。パニック障害や他のメンタルの疾患の人への差別や偏見を助長すると思う。

  • メディアは性加害問題に関して連日、芸能事務所を批判しているが、メディア自身を批判しないことが理解できない。さまざまな場面で沈黙、忖度(そんたく)することをなぜ改めないのか。日本のメディアがどう変わるか、視聴者はいつも見ている。

  • 男が女性のスカートの中を盗撮しようとした現場に記者が居合わせたとして、容疑者が追跡・逮捕される様子をその顔、実名とともに伝えていた。容疑者は否認、スマホには写真・動画がひとつも残っていなかったという。顔と実名をテレビで全国に拡散された人の人生に責任を負えるのか。

  • 番組スタッフからX上で「商業施設でのライトアップの画像を使わせてほしい」と連絡があり、快くOKしたが、実際の放送では「ハロウィーンでマナー違反」とマイナスのイメージで使われていた。

  • 立てこもり現場の報道ヘリの騒音で、昼間は警戒を呼びかける市の防災無線が聞き取れず、夜は22時を過ぎても飛んでいて眠れないほど。協定などで制限すべきではないのか。

【教養・バラエティー】

  • ゲスト出演した京都大学准教授の「オミクロン株は何者かが人工的に改変し、ばらまいたもの」といった主張を紹介。番組内でそれを否定したり、注意を呼びかけたりすることもなかった。公衆衛生・医療に関する情報は人命に関わる。慎重に扱ってほしい。

  • 「安いスーパー」を特集、業者が開店前に商品に「半額」のシールを貼り、販売する様子を紹介していた。これでは「半額」は値引きの結果ではなく、最初に設定した価格であり、景品表示法にふれるのではないのか。

  • 地元の食堂が紹介されたが、この店には駐車場が4台分しかなく、放送後は路上駐車で渋滞が発生し、住民はとても困っている。駐車場の小さい店を紹介する時は臨時駐車場を用意するなど放送後のことまで考えてほしい。

  • ドッキリを仕掛けられたタレントが痛がる様子を笑う。テレビでは「仕事」だが、実社会ではいじめの構図だ。テレビ局はこうした番組を放送する一方、報道番組ではいじめを厳しく批判していておかしい。

  • 男性芸人が「人間体重計」と称して女性芸人の全身を持ち上げ、性行為を思わせる動きをして笑いにしていた。女性芸人が後輩であること、番組収録中であることなど断りづらい状況がある。芸人自身はもちろん、“面白いシーン”としてそのまま放送したテレビ局も感覚を改めてほしい。

  • レギュラー出演者が交代したが、後任は同じ芸能事務所の後輩だ。こういった「○○(事務所名)枠」の継続は忖度につながらないか。他事務所のタレントには平等なチャンスを与えず、特定の事務所のタレントの露出を増やしてスターを作り上げていく。このようなことが繰り返されてきたことが性加害の黙認という結果にまでつながったのではないか。

  • 先日亡くなったタレントのパートナーが対談番組に出演。故人の人となり、偏見・誹謗中傷との闘い、多様性についての考え方などを深く掘り下げていて良かった。普段の放送でもディープな内容を増やしてほしい。

  • 「性について真面目に語る」とうたいながら、アダルトグッズを紹介したりポルノを肯定する発言を取り上げたりしていた。未成年者に誤解させる危険がある。

  • 性に関する情報、世界の性教育事情などを明るく楽しく知ることができた。人間は生きる上で性の問題と無縁ではいられない。10代の頃にこの番組を見たかったと心底思った。教育現場にも生かしてほしい。

【ドラマ】

  • 自衛隊の「陰の組織」とテロ組織との闘いを描いたドラマ。ダイナミックな演出が毎週楽しみだった。このような大規模な番組が、ドラマに限らずバラエティーからも出てくるといいなと思う。

【スポーツ】

  • バレーボールの国際試合の中継中に、天井に張ったカメラ用のワイヤーが切れて試合が中断。ボールがどこに飛ぶか分からない競技で、必須ではない天井カメラを使うという選択はどうだったのか。

  • ラグビーW杯日本戦の中継当日の報道番組で画面右上に「決戦まであと○分」と表示されていたが、実際には「試合直前スペシャル」という特別番組が始まるまでの時間だった。「決戦まで」と表示されれば試合開始までの時間だと思ってしまう。問題ではないか。

【その他】

  • 性加害問題に関する放送局の自己検証番組では「芸能事務所側の圧力はなくテレビ局側が忖度した」というが、テレビ局は過去、同様の説明をした政権・政府を厳しく批判しており、矛盾を感じる。また今回のようにメディアが「忖度=報道しない」選択をした場合、視聴者側には打つ手がない。メディアを監視する仕組みが必要ではないか。

  • 芸能事務所との関係についてテレビ局が「社内調査の結果」を伝えていたが、自身による調査では信ぴょう性に欠ける。調査は芸能事務所と同様、第三者に委ねるべきではないか。

  • 性被害に対する補償は当該芸能事務所だけではなく、創業者の行為を結果的に容認してきたマスコミ各社も行う必要があるのではないか。

  • 人気男性アイドルグループの「公開謝罪」は所属事務所によるパワハラであった可能性はないのか。タレント本人の人権を軽視する事務所とテレビ局の姿勢が、性被害拡大の背景にもあるのではないか。また性加害問題を皆が「うわさ」と受け流したことが被害拡大の大きな要因になったことを考えれば、多くの人が違和感を持った「公開謝罪」問題を何の検証もなく終わらせるべきではないと思う。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • 芸能事務所の創業者(故人)の性加害が本当であれば許されることではないが、事務所は被害者への補償を進め、新事務所を立ち上げると前向きだ。これにテレビで毎日のように批判を繰り返すのはただのいじめにしか見えない。

  • 問題の芸能事務所の若いタレントが出演する番組の観覧募集に当選していたが、4日前に突然、収録中止のメールが来た。新幹線やホテルをキャンセルしなければならない。もう少し早めの連絡がほしかったし、なにより才能ある若者たちの活躍の場を奪わないでほしい。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 情報番組やバラエティー番組の中で、週刊誌が報じた芸能事務所の性加害問題の記事をなぞるだけの報道が多い。(番組自身で)検証した内容でなかったり、記事の一部だけを切り取ったりしたものだ。人権侵害にならないのだろうか。

  • 大学運動部の大麻事件報道で、逮捕された特定の容疑者の扱いが大きい。氏名はもちろん、顔写真も毎回大きく映される。他大学でも類似の事件が報じられるが顔写真は出ない。なぜ特定の容疑者だけが「標的」になるのか。まだ21歳だ。メディアによる制裁はもう十分ではないか。

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、回転寿司チェーン店の寿司をアレンジしての食べ方を紹介。お茶の中に海苔で巻かれた寿司を入れ、かき混ぜて食べていたが、見ていて不快になった。子どもが真似してほしくない。

  • バラエティー番組で、男性芸人が「人間体重計」と称して、女性芸人を抱きかかえて体ごと上下させた。性行為の体位を連想させるもので、子どもも視聴する番組でやるべきではなかった。

【「言葉」に関する意見】

  • ニュースの中で、特定の政治家を「増税メガネ」と表現していた。見た目を揶揄(やゆ)する表現は侮辱だと感じる。私の子どもも視力が弱くてメガネをかけているが、「〇〇メガネ」とあだ名を付けられる可能性があって、教育的によくない。報道番組ではなおさら問題だろう。

第261回

第261回-2023年10月

視聴者からの意見について… など

2023年10月24日、第261回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、9月後半から10月前半までの約1カ月間に寄せられた視聴者意見について担当の委員から報告がありました。
10月の中高生モニターリポートのテーマは「最近見たバラエティー番組について」でした。
また芸能事務所創業者の性加害問題について、前回に引き続き意見交換しました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年10月24日(火) 午後4時00分~午後6時30分
放送倫理・番組向上機構BPO第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
芸能事務所創業者の性加害問題について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

9月後半から10月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から、「この間の意見は、芸能事務所創業者(故人)の性加害問題に関するものが大半だった。9月後半は、同事務所所属のタレントを番組に出演させることや、性加害を連想させるような番組タイトルを続けることへの批判が多かった。10月前半は、『所属タレントは加害者ではない』として、これを擁護する意見も増えてきていた」と報告がありました。
性加害問題に関連して昼のバラエティー番組で、「芸能事務所経営者がハワイで豪遊」との週刊誌報道をそのまま紹介したところ、「偏向報道だ」とする視聴者意見が寄せられたことについて担当委員は、「番組がみずから取材して『豪遊』としたのではなく、週刊誌の記事や見出しを持ってきただけだった」として、番組側の事実のとらえ方が問題だったという見方を示しました。
しかし、これ以上の議論になる番組はなく、「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

10月のテーマは「最近見たバラエティー番組について②」で、モニターからは合わせて22番組への報告がありました。トークバラエティーをはじめ、教養バラエティーやドキュメントバラエティー、ゲームやクイズ、旅企画など、多彩な番組に関する報告が集まりました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『笑わない数学』(NHK総合)に7人から、『日曜日の初耳学』(毎日放送)に4人から、『サスティな!』(フジテレビ)と『朝メシまで。』(テレビ朝日)にそれぞれ3人から、報告がありました。

◆モニター報告より◆

【最近見たバラエティー番組について】

  • 『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京)
    家庭や個人の病気、深刻な家族状況などはあまり知る経験がないので、様々な人生について、この番組を通して知ることができました。悪性リンパ腫になったという23歳の女性は、たとえ病気でも深く思いこまずに明るく笑顔でいて、とても尊敬できる人だと思いました。(中学1年・女子・千葉)
  • 『バナナサンド』(TBSテレビ)
    「歌詞イス取りゲーム」は、少し大変そうだけど自分のペースでゲームができるし、ふつうのイス取りゲームより頭に良さそうで楽しそうだし、学校でもできそうです。子どもがすぐにマネできるあそびがたくさんあっていいなと思いました。(中学1年・女子・島根)
  • 『プレバト』(毎日放送)
    私は特に俳句コーナーが好きです。俳人の夏井いつき先生が、出演者の俳句の添削で、バッサリと、ずばっと言うところが痛快でおもしろいです。当たり障りない発言を意識してしまう時代ですが、夏井先生のユーモアと愛に満ちた辛口な添削は、見ていて心地よいです。(中学1年・女子・福岡)
  • 『わが家の給料広げてみた』(テレビ朝日)
    金額が多いか少ないかを語るのではなく、どんな思いが詰まっているかに注目しているところが魅力的だと思った。僕自身は、普段わからない親の姿に触れることができ、純粋に「親に感謝するべきなんだな」と思った。(中学2年・男子・東京)
  • 『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)
    「0円食堂」の企画は、食品ロスの改善や地産地消をしていて、面白いだけでなくSDGsの勉強になります。様々な地域を盛り上げていくという考え方は素敵だと思います。ただ、毎回おなじ人が出演していて新鮮さに欠けるので、いろいろなジャンルのゲストに出てほしいです。(中学2年・女子・愛知)
  • 『オールスター感謝祭』(TBSテレビ)
    はじめから盛りだくさんのクイズや企画があり、おもしろかった。100人分の焼肉弁当をかけて戦うコーナーでは、解答者だけでなくドラマスタッフも団扇などを持って一緒に応援している様子から、それぞれの作品のスタッフの仲の良さが感じられて、ドラマを見るのが一層楽しみになった。(中学2年・女子・東京)
  • 『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』(フジテレビ)
    ランキングを予想しての投票は新鮮だったので、自分も盛り上がって楽しかったです。画面のイラストやスタジオのセットが、すごく可愛くて好きです。(中学2年・女子・栃木)
  • 『小泉孝太郎&ムロツヨシ 自由気ままに2人旅』(フジテレビ)
    バラエティー番組は、人を“いじる”ことで笑いをとることがよくあるしそれも面白いが、それをせずに視聴者を笑わせることができる出演者の2人は、本当にすごいと思う。(中学3年・女子・滋賀県)
  • 『所さん!事件ですよ』(NHK総合)
    今まで観光地には人が来れば来るほどいいと思っていたけれど、オーバーツーリズムで混み合う富士山の山頂や、世界遺産に登録されているがゆえに汚れているベネチアを見て、これが日本と世界の実情なのだと思った。問題提起するような番組をこれからも作ってほしい。(中学3年・女子・広島)
  • 『超無敵クラス』(日本テレビ)
    若者の視点で社会が見られて面白いし、未来を切り開く行動をもっと自分もしていかなければならないと感じます。それは簡単なことではないので、好きを極めている人はすごいと思いました。(高校1年・男子・群馬)
  • 『アメトーーク!』(テレビ朝日)
    「ビビリ1グランプリ」を見た。「ビビリロード選手権」では様々な人のビビリを次々に見ることができて、全く飽きなかった。また、映像に対するスタジオからのツッコミをしっかり放送しているところも、面白くていいなと思った。(高校1年・女子・北海道)
  • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)
    ニワトリの鳴き声など、誰もが楽しめる祭りの話題でした。外国の良さや人情を知ることができるとても良い企画だと思います。昔は、危険な祭りの話題で、体を張って体力と根性で笑いを届けていましたが、これからは見るほうも安心して楽しめる祭りを放送してほしいです。(高校2年・男子・山形)
  • 『世界一受けたい授業』(日本テレビ)
    今年の都道府県魅力度ランキングの結果を発表していたが、県が生み出した、全く聞いたことない新しい取り組みが多く紹介されていて面白かった。ただ、下位の県の紹介が多くなくて、違和感が残った。ランキング40位台だと紹介することは、その県のイメージを大きく下げることになるので、「この結果ではあるがこんなに魅力がある」と紹介して、イメージを引き上げてほしいと思った。(高校2年・女子・愛知)
  • 『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ)
    水ダウは、現行のテレビ番組の中でも、ひときわ目立つ異質な番組で、それは恐らく視聴者が良い意味で置いて行かれる番組だからだと思います。どんな内容なのかいつもワクワクするし、どの企画も今まで見たことのない斬新で面白い素晴らしいものだと思います。構成作家を調べたところ、若手の作家さんがいたり数人でやっていたりして、興味深いと思いました。(高校3年・男子・神奈川)
  • 『クレイジージャーニー』(TBSテレビ)
    自分から好んで見る内容ではないからこそ、テレビでこのような知らない世界を見ることができて、とても興味深かったです。現実とは思えない異国の現状を知ることができる、教育的な良い番組だと思います。(高校3年・女子・北海道)
  • 『ジャンクSPORT』(フジテレビ)
    ゲストの恥ずかしい一面を晒すことになっても本人がそれを嫌がることなく、ゲストへの「いじめ」とならないような“笑い”になっているので、楽しく見ることができます。アスリートは引退が早く、ゲストが途切れることはないと思うので、長く続いてほしいです。(高校3年・女子・京都)

【自由記述】

  • 「確実に“優しい”人」「確実に“ノリだと分かる悪口”を言える人」は安心してみていられる。そういう人をもっと増やしてほしい。また、芸能人とはいえ、人としての気持ちもあるし限界もあるから、笑いの対象として見るだけではなく、ひとりの人間だと考えてほしい。(中学2年・女子・福井)
  • 番組でよく「特別に許可を得て〇〇しております」と小さく書いてあるが、そのシーンの冒頭のみで、途中から消えている。途中から番組を見た人は勘違いすることがあるのではと思うが、注意書きがずっと書いてあるのも気になる。(高校2年・男子・山形)
  • 朝のワイドショー番組のエンタメコーナーを見ていると、いくつかの局で、エンタメコーナーがかぶっている。なぜ同じコーナーの時間をそろえているのか、不思議に思う。(高校1年・女子・茨城)
  • 最近は見逃し配信の視聴者が増えてきて、深夜番組の視聴者獲得チャンスも増えてきた。クオリティの保証をしていかなければならないと思う。(中学2年・男子・埼玉)
  • テレビはリアルタイム視聴が基本ですが、帰宅時間が遅くてもどうしても見たい番組は、見逃し配信サービスを利用しています。働いている人もリアルタイム視聴は難しいので「テレビのリアル放送は必要ないかも」「テレビがなくても困らないのではないか」と疑問が生じました。ただ「災害時にはテレビはあった方がいいのかも」と、なかなか難しい問題だと思います。(高校3年・女子・京都)
  • 芸能事務所の性加害問題の報道について、子どもが見ている昼・夜の番組で(特に土日の昼)、生々しい証言をそのままの表現で報道するのは適切ではないと思う。(高校3年・女子・北海道)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『笑わない数学』(NHK総合)
    • 数学には興味があまりわかないのですが、今回の説明で、少しわかったような気になりました。視聴後にネットで「非ユークリッド幾何学」を検索したり、「非ユークリッド幾何学」が成り立つ異世界が世の中には存在するのではないかと想像したりして、無色だった数学のイメージに少し色が加わりました。(中学1年・女子・福岡)
    • パンサー尾形さんの、問いかけるような話し方がわかりやすく、話が入ってきやすかった。(中学2年・女子・東京)
  • 『日曜日の初耳学』(毎日放送)
    インタビュアーの林修さんがゲストと1対1で話すところが、他のバラエティーとは違って、面白いけれど深い感じがして、とても好きです。(高校1年・女子・京都)
  • 『サスティな!』(フジテレビ)
    SDGsをバラエティー感覚で楽しく学べました。17の目標のアイコンを一緒に出すといいと思いました。(中学1年・女子・島根)
  • 『朝メシまで。』(テレビ朝日)
    高級列車の整備員や農家など、自分の身の回りの生活の中に、そうやって支えてくださる方がいるおかげで生きられるという、当たり前だけど忘れがちなことを改めて確認できてよかったです。また、大人の弁当を見たとき、意外と小食だなと思いました。(高校3年・男子・神奈川)
  • 『ラグビーワールドカップ2023 フランス大会 プールD 日本×アルゼンチン』(J SPORT)
    父が高校までラグビーをやっていて、その影響で私も試合を見るようになり、一緒に応援しています。ラグビーはマイナーな競技かと思ったので、友達に「面白いから見たほうがいい」と紹介したところ、見てくれた友だちもいて盛り上がりました。(中学3年・女子・福岡)

◆委員のコメント◆

【最近見たバラエティー番組について】

  • 『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)の企画について、出演者の人権や体調を心配しているという意見があったが、“優しい笑い”に慣れた若年層の見方だと思う。
  • 『世界一受けたい授業』(日本テレビ)について「原因不明の事件や現象の解決策として、諸説ではなく、最も有力な説を1つだけ説明していたので満足できた」という感想があった。物事を多角的に紹介する番組が多いと思うが、一つだけだから満足したという視点は独特だと感じた。

【自由記述について】

  • 『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』(フジテレビ)について「最近見つけて面白かった番組」だとモニターが報告していた。この番組は放送3年目を迎え、お笑い界でトップクラスの芸人2組が出演しているにもかかわらず、番組の存在自体が今まで中学2年生に届いていなかったという事実は、もったいなくもあるし深刻でもある。少し前までは、新聞やネットのテレビ欄を眺めながら何となく番組を認識していた可能性もあったろうが、もう今の中学生はそのような状況にないのだということに、改めて気づかされた。
  • 「平日の夜に長時間テレビを見る時間はとれないので、2~3時間スペシャルのバラエティー番組は、学生は視聴しにくいのでは」という意見があったが、今はこういった考え方が主流なのだと思う。
  • 芸能事務所の性加害問題について「所属タレントの仕事にまで影響が及ぶのは違う気がするし、とても残念だ」という感想があったが、若年層の間ではわりとメジャーな受け止め方だと思う。テレビで報道されているトーンとは一線を画して、社会の分断を感じるところではある。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『笑わない数学』(NHK総合)を取り上げたモニターが多く、このような番組が興味を集めることに驚いた。
  • 『もやもやパラダイム』(NHK Eテレ)をはじめ、『わが家の給料広げてみた』(テレビ朝日)など、給料の話題に興味を持つモニターが多かった。

芸能事務所創業者の性加害問題について

芸能事務所の創業者(故人)が、所属する多数の未成年のタレントに性加害を繰り返していた問題について、BPO、あるいは青少年委員会としてできることはないかとの観点から、前回に引き続いて意見交換しました。
ある委員は、「この問題が長い期間かけて起きてきたことを考えると、(BPOが)きちんとした企画を長いスパンで考えることも必要だろう。子どもの人権、とりわけ男の子を性加害からどうしたら守れたのかを考えなければならない」と述べました。複数の在京テレビ局が検証番組を放送したことを受けて別の委員は、「報道してこなかったのは『当時(1980~90年代)は、男性の性被害について意識が弱かったから』としているものが多く見られたが、当時の児童福祉法でも18歳未満の子どもに性的なことをすれば処罰の対象だった。そこに焦点を当てた検証はあまり見られなかった。児童虐待の観点で真剣に考えるべきだということを言うべきだ」としました。
またほかの委員は、「この巨大な性加害が何十年も放置されてきた背景には、放送局がビジネスをやるうえで、ここ(当該の芸能事務所)とことを構えるのは損だという構造的な問題があった。忖度が生まれた背景まで切り込まないと、また同じ轍(てつ)を踏むことになるが、具体的に何をやるべきなのか」と指摘しました。
こうした議論を経て、ひきつづき次回も本件の議論を続けることになりました。

今後の予定について

11月22日(水)に石川県金沢市で開催する地元放送局との意見交換会で議論するテーマなどを確認しました。
次回は11月28日(火)に定例委員会を開催します。 

以上

第320回

第320回 – 2023年10月

「判断ガイド2023」について…など

議事の詳細

日時
2023年10月17日(火) 午後4時 ~ 午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室 (千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

2.「判断ガイド2023」について

現行の「判断ガイド2018」に新規委員会決定などを書き加える形で作業が進行し、鈴木・二関両委員長代行による監修を受けて改訂している。また、今回の判断ガイドからウェブサイト上にも公開していくことも報告された。本文表現などについて議論した。

3.意見交換会について

来年1月開催の二つの意見交換会について、テーマなどを事務局から報告した。

4.その他

最近の視聴者意見の状況などにつき事務局から報告した。

以上

第188回

第188回–2023年10月

TBSテレビ『news23』について審議

第188回放送倫理検証委員会は、10月13日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員から意見書の修正案が報告され議論した結果、次回の委員会までに再修正案を作成することになった。
1月12日放送のTBSテレビの報道番組『news23』において、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、職員やその家族が不必要な契約を結ぶ“自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、内部告発した職員が退職に追い込まれたとの週刊誌報道やテレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢が問題だという視聴者の声がBPOへ寄せられ、委員会は、取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、8月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では、担当委員から意見書の原案が提出され議論した結果、次回の委員会までに修正案を作成することになった。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するために7月の委員会で討議入りした。今回の委員会では、当該放送局から番組審議会の指摘を受けて作成された報告書が提出され議論したが、一連の取り組みについて自律的な自浄作用が機能していることを評価して、討議を終了した。
9月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見等が報告された。

議事の詳細

日時
2023年10月13日(金)午後5時~午後8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

ワクチン接種後に亡くなった人の遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りしたNHK『ニュースウオッチ9』(5月15日放送)について引き続き審議が行われた。
前回の委員会では、担当委員から提出された意見書の原案に対し、詳細な指摘と意見が出された。今回の委員会では、それ以降に実施された関係者数名のヒアリングの内容等を総合的に検討して反映された意見書の修正案が報告された。これに対し、委員からはさらなる指摘と意見が出され、意見書の修正作業を続けることになった。

2.TBSテレビ『news23』について審議

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。委員会は、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決めた。
今回の委員会では、担当委員から意見書の原案についての報告があった。委員からは「身元を隠す措置についてどこまで対応する必要があるのか、この意見書でルールを示す必要があるのではないか」、「取材相手との対話などの事実関係によって放送倫理違反が左右される可能性はないのか」という意見が出た。一方で、「放送局の自主・自律を侵さないように、委員会として明確な基準を示すことは謙抑的であるべきだ」といった意見や「身元を隠す措置がもっと良くできたはずなのに、できなかった点を丁寧に挙げることで、放送現場の人が自ら法則を読み取って活かせるような意見書にすべきだ」といった意見が出され、次回の委員会までに意見書の修正案を作成することになった。

3.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議

大阪放送(ラジオ大阪)が2023年1月12日~29日の間、15回にわたって、特定の政党に所属する地方議員らをゲストに招いた番組『大阪を前へ!』『兵庫を前へ!』を放送したことについて、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から7月の委員会で討議入りした。
今回の委員会では、当該放送局から番組審議会での厳しい指摘を受けて作成された2回目の報告書を基に討議した。委員からは「最初の報告書のことが言及されていないが、当該放送局は当初は問題性はないとしていたのであり、番組審議会の指摘で初めて意識が変わったといえ、同じことを繰り返してしまうのではという問題意識はある」、「今回の報告書を読んでも事実関係は明らかとはいえず、危機感なく企画を安易に通している」、「審議入りすることによって初めて問題が放送界に共有され現場に届くのではないか」等の厳しい意見もあったが、「政治的公平性」について、社長をリーダーとした組織横断チームを作って幹部社員間で意識を共有し、全社員を対象とした研修会を実施していくなどの再発防止への取り組み等を一定程度評価し、討議を終了した。

4.9月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

9月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、芸能事務所創業者による性加害問題について、街頭インタビューを紹介する際、事務所を擁護する声しか放送しないのは偏っているといった意見や、事務所に所属するタレントがMCを務めていた週末の情報番組で、その週にあった事務所の会見を全く伝えないのはおかしいといった意見、大手酒造メーカーが事務所に所属するタレントとの広告契約を更新しないと報じた際、タレントの名前や顔写真を放送したことについて、当該タレントが不祥事を起こしたように受け取られかねず問題だといった意見などが事務局から報告され、議論した。

以上

2023年9月に視聴者から寄せられた意見

2023年9月に視聴者から寄せられた意見

芸能事務所創業者による性加害問題をめぐって、報道内容、放送事業者の責任など
さまざまな観点から意見が寄せられました。

2023年9月にBPOに寄せられた意見は 2,503件で、先月から 388件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 87% 電話 12% 郵便・FAX 1%
男女別(任意回答)は、男性31% 女性26 % で、世代別では 40歳代 24% 30歳代 23%
50歳代 22% 20歳代 12% 60歳代 11% 70歳以上 3% 10歳代 2%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、9月の送付件数は1,175件、49事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から18件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

9月も芸能事務所創業者による性加害問題をめぐって、報道内容、出演者の起用、放送事業者と芸能事務所との関係、放送事業者自身の責任などさまざまな観点から意見が寄せられました。ラジオに関する意見は30件、CMについては17件でした。

青少年に関する意見

9月中に青少年委員会に寄せられた意見は86件で、前月から38件減少しました。
今月は「要望・提言」が39件と最も多く、次いで「表現・演出」が23件、「報道・情報」が14件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 電動キックボードによるひき逃げの疑いで20代の女が逮捕されたニュースで、警察車両内の容疑者の顔を何度も繰り返して放送していた。一般人でもあり、事案からみてもやり過ぎではないか。

  • 芸能事務所での性被害問題で、情報番組の出演者が、当該事務所の所属タレントのテレビ出演について「今までのように見られない人もいると思う」などと発言。彼らが世間の好奇の目にさらされることを助長しないか。

  • 芸能事務所の性加害問題に関する当該事務所の会見について、その所属タレントがMCを務める情報番組はその直後の放送回で一切触れなかった。放送すべき責任があるのではないのか。

【教養・バラエティー】

  • カセットガスコンロにホットサンドメーカーを乗せて調理、さらに上からガストーチであぶっていた。両面を加熱することで時間短縮を図ったようだ。出演者は安全に配慮していたようだが、危険が潜む行為を放送する際はテロップで注意喚起するなど、より一層慎重であってほしい。

  • 取材対象の家族が、軽トラックの荷台に子どもらを乗せて走行していたシーンは道路交通法違反ではないか。事故につながりかねない。

  • 番組で発表されるキーワードをX(旧twitter)でつぶやくとプレゼントが当たるという企画のキーワードが「#○○(タレント名)逮捕」だったため、番組を視聴していないXユーザーは「○○が逮捕されたのか」と惑わされた。フェイクニュースが問題視されるなか、不適切だ。

  • イタリアで13歳の少女が殺害された事件の顛末(てんまつ)を描きながら、いくつかのポイントをクイズにしていた。人が死んでいる事件の内容をクイズにし、出演者がふざけて笑ったりしているのは不適切だ。

  • 最近、バラエティー番組やワイドショーで、特定のスーパーや量販店の商品ランキング、オススメ商品紹介といった内容がとても多いと感じる。番組そのものがCMのような放送はいかがなものか。

  • 素朴な疑問を、その道のプロの協力を得て本気で実験・検証する番組。「こうしたら?ああしたら?」と思考が自然に番組に向かい夢中で見た。大人から子どもまで楽しく見られ、とてもいい番組だと思う。世の中、まだまだやってみないとわからないことが沢山あると思えた。「四角い花火」など今後もいろんな実験にチャレンジしてほしい。

  • タレントの人権を尊重すべきなのはもちろんだが、性加害問題に揺れる事務所のタレントをモヤモヤしながら見続けるのは苦痛。大好きだった番組も楽しく見られない。

【その他】

  • 芸能事務所創業者による性加害問題について、日本の報道機関はなぜ取材・調査しなかったのかなど、具体的に説明してほしい。海外の報道機関が調査できたのに国内の報道機関がなぜ真摯(しんし)に取り組まなかったのか疑問に思う。

  • 調査した再発防止特別チームは被害拡大の一因として「マスメディアの沈黙」を指摘している。報道機関はCM契約など他企業の動向を伝えるだけでなく、一当事者として経緯を検証し、明らかにしていく責務があるのではないか。

  • タレントの起用を継続すれば児童虐待や人権侵害をした組織への金銭の支払いが発生することになる。放送局はそうした組織をサポートすると理解されてもいいのか。

  • 視聴者プレゼント当選の連絡の電話が番号非通知で発信されるため、それを受けられる設定をするよう求める番組があるが、私たち高齢者世帯には詐欺被害等を防ぐため番号非通知の電話を受けない設定が推奨されている。ほかの連絡方法にしてほしい。

【ラジオ】

  • 紹介したリスナーからのメールが「スズメの巣をカラスが狙っているのでエアガンで追い払っている」という内容だった。鳥獣保護法でそのような行為はできないはず。リスナーの法律違反はともかく、それを公共の電波で放送し、アドバイスまでしている。スタッフ、出演者、誰もおかしいとは思わなかったのか。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • 性加害の問題を起こした芸能事務所所属のタレントが出演する番組を止めてほしい。海外でこの問題は報道され続け、日本社会全体が未成年者への性加害に寛容だと思われている。

  • 芸能事務所の性加害問題をめぐって、各企業がCM契約の終了や番組スポンサーの降板などを表明しているが、故人の犯罪から矛先が事務所批判になり、現に活躍するタレントたちが仕事を失う事態になっている。これはタレント個人に対する権利侵害になるのではないかと感じる。

【「表現・演出」に関する意見】

  • 出演者が捕まらないように逃げ回るバラエティー番組で、横浜中華街での逃走が放送されたが、通行する車両や一般人が映りこんでいた。飲食店街での全力疾走であり、それをカメラマンが追いかける。出演者の安全以上に、通行人らが負傷する危険が伴うだろう。

  • 路線バスを利用した旅番組で、出演者が出くわした女子生徒に「マスク、取れる?」「お小遣い、いる?」などとしつこく話しかけていた。もし自分の娘がそんな言葉をかけられたら、警察に通報するレベルだ。その出演者や番組の神経を疑う。

【「報道・情報」に関する意見】

  • プロ野球セ・リーグの優勝報道で、大阪・道頓堀を映すのをやめてほしい。熱狂したファンによる迷惑行為がなくならないのは、メディア報道のせいだと思う。

【「喫煙・飲酒」に関する意見】

  • 評判の飲食店を紹介するバラエティー番組で、従業員が店内で喫煙している飲食店に、20歳未満の客が入るシーンが映ることがある。喫煙可能な飲食店には、20歳未満は立ち入れないはずだ。こうした店を番組で取り上げることに問題があるだろう。


第260回

第260回-2023年9月

視聴者からの意見について… など

2023年9月26日、第260回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、7月後半から9月前半までの約2カ月の間に寄せられた視聴者意見の中から、子ども向けミニ枠番組で流れた体操の歌の歌詞に不適切な表現があるとされた問題などについて議論しましたが、「討論」に進むことはありませんでした。
9月の中高生モニターリポートのテーマは、「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」でした。
その他、新しい調査研究のテーマ、11月22日の金沢地区放送局との意見交換会のテーマ、芸能事務所創業者の性加害問題について意見が交わされました。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年9月26日(火) 午後4時00分~午後7時00分
放送倫理・番組向上機構[BPO]第一会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
芸能事務所創業者の性加害問題について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

7月後半から9月前半までの約2カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
古代文明の展覧会の紹介を兼ねた子ども向けミニ枠番組で流れた体操の歌に、「集団生け贄200人」「心臓どくどく捧げよう」などの歌詞があり、視聴者から「非常にグロテスクな表現だ」「子どもに歌わせてどんな影響があるかわからない」などの意見が寄せられました。
担当委員は「歴史教育的な内容を子どもたちに楽しく伝える視点はいいが、大人の受け手の解釈まで番組制作者が予測できなかったのではないか」と報告しました。各委員からは「子どもがショックを受ける映像を見せるわけではないので、あまり問題ないだろう」とする一方で、「今回は滅びた文明のことで当事者がいないが、『文化の尊重』という点では配慮が足りないだろう」との見方も示されました。
バラエティー番組で、長いゴムのベルトの上で演技するスポーツの「スラックライン」を実演した際、選手の高校生に制服姿で演技させたところ、「スカートから太ももやお尻が見えそうでかわいそう」「女性へのセクハラになる」などの視聴者意見がありました。
委員からは「(スカートの制服を着せる)演出の視点がどうかと思う。今のジェンダー感覚からずれているのではないか」「(番組制作者の)男性目線が透けてみえる」などの声が上りました。
別のバラエティー番組では、ロケ中にミスした番組スタッフが男女とも、罰として丸刈りを命じられる演出がありました。委員からは「子どもが真似して勝手に(友だちの)髪を切ったら、大人の暴行罪と同じこと」「スタッフ本人は(髪を切られて)うれしくはないが、『それが仕事につながるのなら』ということでやっているとしたら構造的問題があるだろう」などの意見が出されました。
しかし、これ以上の議論になる番組はなく、いずれも「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

9月のテーマは「終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について」で、合わせて11番組への報告がありました。複数のモニターが取り上げたのは4番組で、『NHKスペシャル Z世代と“戦争”』(NHK総合)に5人、『僕たちは戦争を知らない~戦禍を生きた女性たち~』(テレビ朝日)に4人、『NHK特集「夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~」』(NHK総合)と『ETV特集「“玉砕”の島を生きて(2)~サイパン島 語られなかった真実~」』(NHK Eテレ)にはそれぞれ2人が感想を寄せています。一方で、「戦争関連の映像を見るのが苦手で視聴できなかった」というモニターもいました。
「青少年へのおすすめ番組」では、『ハートネットTV「#8月31日の夜が来るまえに。」』(NHK Eテレ)と『「東大王」3時間SP』(TBSテレビ)をそれぞれ3人が、『加藤浩次&中居正広の歴代日本代表256人が選ぶこの日本代表がすごい!ベスト20』(日本テレビ)、『アイ・アム・冒険少年 2時間スペシャル』(TBSテレビ)、『今夜はナゾトレ』(フジテレビ)を、それぞれ2人が取り上げています。

◆モニター報告より◆

【終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

  • 『NHKスペシャル Z世代と“戦争”』(NHK総合)
    • Z世代の人が意見を述べたり、真剣に考えているのを見て、戦争がすごく近い問題と考えることができました。私たちはただ情報を得て、知るということだけでなく、自分ごとにして、身近な存在にしていくことが大切だと分かりました。(中学2年・女子・栃木)

    • 「日本が戦争に巻き込まれる可能性はあると思うか」という問いに深く考えさせられ、私は日本では戦争は二度と起きないと思っていたから、Z世代の人や専門家の人の意見を聞いて、少し考えが変わりました。また、戦争についての番組は当時の映像や画像が流れることが多く、それが苦手な人もいると思いますが、この番組ではそういったものが少なく、討論が中心になっていたので、よかったと思います。(中学2年・女子・愛知)

    • 番組内でバーチャル映像を使い、戦争中の町の風景や音を視覚・聴覚で体験するコーナーがありましたが、より一層戦争の恐怖を知ることができ、とても分かりやすかったです。(高校2年・男子・山形)

    • この番組を見て、私はもう一度、自分達の国で起こった戦争だけでなく、現在世界で行われている戦争についても学び、あってはならないことだけれどもしまた日本で戦争が起こったときに自分は何ができるのか考えていきたいです。(高校2年・女子・東京)

    • 今も続いているウクライナ戦争について、NHKのウクライナ出身の人は「交渉が理想だけど、交渉ができない状況の時もある」と言っていて、難しい問題であると思いました。戦争の時、日本はどうすればいいのか考えたいです。(中学3年・女子・福岡)

  • 『僕たちは戦争を知らない~戦禍を生きた女性たち~』(テレビ朝日)
    • 女性にスポットライトが当てられていて、多くの番組は兵士として動員された男性をメインに紹介しているので珍しいなと感じました。また、写真だけでなくイラストを多用していたので、殺している様子や血など、過激な写真が苦手な人でも見やすいと感じました。(高校1年・女子・茨城)

    • 今回番組を視聴して、戦争はまだ続いているのだと思えた。なぜなら、実体験している方が今も生きておられ、伝えているという事実があるからだ。また、私の今、この平和な時代は過去の壮絶な歴史があったからこそ成り立っているというつながりをこの番組から痛感できた。(中学1年・女子・福岡)

    • 話をきいてとてもつらく悲しかったが、戦争を体験した本人達はもっと辛かったと思う。この思いを伝えるためにもこのような番組があって良かったと思った。(中学2年・女子・東京)

    • このような戦争に関する番組は、終戦記念日近くだけ放送するのではなく、もう少し放送回数の頻度を増やしてほしいと思う。また、若い人がよく見るネットニュースなどに、実際の戦争の体験談を一週間に一回載せたりしてもいいかなと思う。(高校1年・女子・北海道)

  • 『NHK特集「夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~」』(NHK総合)
    • 学校に入っても授業はなく、食べ物を作ったり、警報が鳴り、防空壕に逃げる生活はつらいだろうなと思いました。原爆によって娘をなくした人たちの悲しみは計り知れないし、戦争は絶対にあってはならないなと感じました。(高校1年・女子・京都)
    • 少女たちの日記が8月5日で途切れているものを見て、とても切ない気持ちになった。女学校の生徒達は、13歳。今、私は、12歳なので、1つしか歳が変わらないのに、どれだけ大変で、苦しい世界で、懸命に生きた証があり、私たちは、その少女たちが暮らすことのできなかった毎日を大切に過ごしていこうと思った。(中学1年・女子・千葉)
  • 『ETV特集「“玉砕”の島を生きて(2)~サイパン島 語られなかった真実~」』(NHK Eテレ)
    • 終戦番組の中ではこの番組のように、日本人は加害者であるという視点からの番組もあっていいと思うし、むしろさらに作っていくべきだと思う。戦争を本当の意味で知るためにも、日本が外国にしたことなどを、テレビを通じてさらに知っていきたい。(中学3年・女子・広島)
    • 生き残った人がインタビュー中に泣いていて、それだけ辛かったのだと改めて実感した。戦争の、教科書に書いてないことなどを、詳しく知ることが出来た。映像などもあり残酷で、印象に残った。(中学3年・男子・神奈川)
  • 『NHKスペシャル 新・ドキュメント太平洋戦争1943 国家総力戦の真実(前・後編)』(NHK総合)

    若者特攻として、(旧制)中学生を対象に志願兵を募り、3万人が手を挙げたとのことですが、裏では国が村にノルマをかけ、あたかも志願したかのようにしていたらしい。志願兵の多い学校は新聞で報道してあおっていたとのことで、マスコミが関わっていることを知りました。国に強制されているとはいえ、マスコミの罪は重いと思います。マスコミは本当のことを、そして「おかしいことはおかしい」と報道することで、国民を味方につけていくことをすべきだったのでないか。(高校3年・女子・京都)

  • 『映像の世紀バタフライエフェクト「太平洋戦争 “言葉”で戦った男たち」』(NHK総合)

    太平洋戦争の勝敗に大きな影響を及ぼしたのが、米軍が急いで養成した日本語情報士官だったことを初めて知ることができました。最初は通訳したりするのかな?と思っていましたが、それだけでなく多くの戦後復興に携わっていたことに驚きました。(高校1年・男子・群馬)

  • 『軍港の子~よこすかクリーニング1946~』(NHK総合)

    孤児たちが一生懸命生きようとする姿を見て、国同士の戦争は終わっても、今度は生きるために人と人との間で争わなければならず、戦争は絶えないと思った。この時代に生まれなくてよかった。今、屋根のある場所で風や雨をしのぎ、ごはんを食べられていることに感謝の気持ちがあふれた。(高校2年・男子・山形)

  • 『NHKスペシャル アナウンサーたちの戦争』(NHK総合)

    戦争の表面ではなく、陰に隠れてしまいがちな視点を僕たちに提供し、それらの視点を現在のウクライナ戦争などと結び付けており、様々な価値を見出すことができた。作中でも語られていた事実のジャーナリズムが感じられた。今後、このような番組が増えてほしい。(中学2年・男子・東京)

  • 『新日本風土記「鎮魂の旅」』(NHK BSプレミアム)

    授業で学ぶ戦争は、広島や長崎、東京などばかりです。ですが、私はこの番組で様々な人のお話を聞いて「どんな小さな村でも戦争が原因で血や涙を流した人がいる」ということに実感がわきました。本当に伝えるべきは地方の戦争なのではないか…と思いました。(中学3年・女子・滋賀)

  • 『徹子の部屋 スターが証言「戦争と私」』(テレビ朝日)

    特に印象に残ったのは、四人目の三代目江戸家猫八さんという方でした。自分は猫八さんが芸人ということすら知らなかったのですが、その話し方につい引き込まれてしまいました。(高校3年・男子・神奈川)

  • 『よんチャンTV「特集 学徒出陣から80年/親友は戦死…学問を手放した元京大生の残した日記」』(MBS毎日放送)

    映像の最後の部分の秀村氏の日記は、心を打つものだった。このような悲惨な戦争というものを起こしてしまったことは日本の取り除ききれない真実だと思う。20年後、戦争を経験した方々がいなくなるだろう。それまでに僕らが戦争について知り、後世に伝えていくべきではないのかと思った。(中学2年・男子・埼玉)

【自由記述】

  • 思っていたよりも、8月6日、8月9日の原爆についてのドラマやニュースが少なかった。戦争や災害でたくさんの人々が亡くなってしまっているのに、年々、その放送が減ってしまい、とても悲しく思う。(中学1年・女子・千葉)

  • 今回、いろいろな番組を見たが、大人向けの内容が多く、とても難しいように感じた。戦争の経緯や出来事を、学習番組を作って詳しく解説すると、より戦争に関しての考え方が変わり、小中学生の意識が変わるのではないかと感じた。(高校2年・男子・山形)

  • 自分たちが大人になった時、二度と戦争が起こることの無いように、核兵器や、生物兵器などはなくしたほうが良いと思った。それと同時になぜ日本は核兵器禁止条約に参加しないのか疑問に思った。(中学3年・男子・神奈川)

  • 『VIVANT』(TBSテレビ)というドラマを見ているのだが、毎週ハラハラドキドキする内容になっていてとても面白い。様々なイベントもあって、ドラマ本編以外にも楽しめて家族や友達と話す話題が増えた。(中学2年・女子・東京)

  • 先日、あるニュース番組のコーナーで、他局が半年ほど前に特集していた問題について報道していた。内容がほぼ同じだったので、他局の特集を報道するなら、もう少し違った視点で伝えてほしい。(中学3年・女子・広島)

  • 芸能事務所の問題の報道を見ていて改めて思ったのが、タブー・自主規制です。「いままで報じなかったメディアの責任」というのを何度も耳にしました。インターネットではみんなが騒いでいることも、テレビは黙っているということが前々からひっかかっていました。今の時代はもう黙っていればなんとかなる問題ではないと思います。大きな影響力をもつテレビだからこそ考えなければいけないと思います。(高校1年・男子・群馬)

  • 最近、芸能事務所のニュースがよく放送されているが、同じようなニュースばかり毎日やっていてニュースがつまらないなと感じてしまっている。そのため、アニメやバラエティーを多く見て気持ちを上げている。(高校1年・女子・北海道)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『「東大王」3時間SP』(TBSテレビ)

    女性の解答者が少なかったです。私も戦ってみたいと思いました。(中学1年・女子・千葉)

  • 『今夜はナゾトレ』(フジテレビ)

    おじいちゃんやお母さん、私、弟など、どの世代も楽しめていいと思いました。花の値段は、都会といなかで違うので、とても難しかったです。(中学1年・女子・島根)

  • 『加藤浩次&中居正広の歴代日本代表256人が選ぶ この日本代表がすごい!ベスト20』(日本テレビ)

    メジャーなものが順位に入るのは当然で、逆に、メジャーな種目でなくてもすごい日本代表を紹介する方がいいのではないか。みんなが知らないところで、こんな種目ですごい代表がいることを伝える企画の方が、インパクトがあっておもしろい。紹介される方も種目を知ってもらえる機会になるので、協力が得られるはず。(高校3年・女子・京都)

  • 『ハートネットTV「#8月31日の夜が来るまえに。」』(NHK Eテレ)
    • 同年代の人達の悩みなどを知ることができました。自分も学校に行くのがいやだなと思ったこともあるので、いろんな人たちがいることが分かりました。(高校1年・男子・群馬)

    • 今年になって初めて「学校に行きたくない。行くのが怖い」と考えるようになり、この番組を選びました。率直な感想としては安心と同時に辛くなってしまいました。自分の中では言語化できていなかったことが、他の人によって言語化されることで自分に刺さってしまったためです。元気な時に同じ番組、似たような番組がまた配信されていたら聞いてみようと思いました。(高校2年・女子・東京)

  • 『アイ・アム・冒険少年 2時間スペシャル』(TBSテレビ)

    日本語が話せなくても、ちゃんとコミュニケーションをとっているのがスゴいと思いました。話せなくても楽しそうなのに、話せたらもっと楽しいだろうなと思います。(中学3年・女子・福岡)

◆委員のコメント◆

【終戦関連番組(ドラマ・ドキュメンタリーなど)について】

  • 『NHKスペシャル Z世代と“戦争”』(NHK総合)のようなディスカッション型の番組は、他にも夏休みの期間中、「ゲームとどう付き合うか」などといったテーマで、子どもが討論する番組もあった。当事者として考えることはとても大事だと思う。

  • 『徹子の部屋 スターが証言「戦争と私」』(テレビ朝日)は、過去の放送の中から、スターたちが語る貴重な「戦争体験」を特集したもの。古い番組でも、お話がうまい芸能関係の方々の体験を聞くことは、ある種の直接的な話を聞くということであり、中高生にとってかなりインパクトがあったようだ。たとえ過去に放送されたものでも、直接的に働きかけてくれる人の映像を再放送することは、とても意義があると感じた。

  • 報告全体を通して、戦争を実体験した人たちの映像とインタビューは、中高生の印象に強く残るのだと感じた。

  • 今回のテーマはいつもより報告数が少なかった。終戦関連番組は、中高生にとって、「ちょっと重い」「面倒くさい」ものに感じているのではないか。

【自由記述について】

  • 放送に関することではないが、古くからある地域の風習について記述しているモニターがいた。毎年続く習わしに関連付けて、恐らく「年に1度であっても、戦争や平和について目を向ける機会として、終戦関連番組が続いているということが大事だ」と言いたいのだと思った。

  • ある番組に対して「面白いが、放送時間がとても遅い」と報告したモニターがいた。「午後9時~10時台に放送してほしい」という声は、中学生らしい感想だと思う。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『「東大王」3時間SP』(TBSテレビ)について、「女性の回答者が少なかった」という感想があったが、この一文は結構クリティカルかと思う。

芸能事務所創業者の性加害問題について

芸能事務所の創業者(故人)が、所属する多数の未成年のタレントに性加害を繰り返していたことが、同事務所の外部専門家による特別チームの調査結果で明らかになり、その際、放送局が本件をほとんど報道してこなかったとして、「マスメディアの沈黙」と指摘されました。
この問題について、ある委員は「あの調査結果を聞いたとき、(被害を受けた男児が)何百人もいたとされていることに驚いた。(「マスメディアの沈黙」と指摘されていることは)放送局の大きな危機ではないか。経緯を検証して、きちんと乗り越えないと、局の信頼がなくなってしまう。BPOとしても何ができるのかを考えたい」と述べました。  
別の委員からは「放送業界はいま、(加害者である)創業者が健在のうちは不問に付しながら、その事務所のタレントを起用しつづけてきた姿勢が問題にされている。まさに放送倫理や人権の問題だと思う」という意見がありました。
また、「たとえば国連の『子どもの権利とビジネス原則』についての勉強会を開いたらどうか。今回のような問題が二度と起きないようにするために放送局はどうすべきなのか議論していきたい」と提案する意見や、さらに「視聴者である青少年にとってみると、タレントに罪はないと信じているのに、その人がテレビから消えてしまう。『推し活』やファン・カルチャーが発展しているなかで、青少年の人たちにとって大きなショックだ。それに対する何の説明もないし、大人の事情でそうなったとしか言われない」とテレビ局の対応を懸念する意見もありました。
青少年委員会ではこの性加害問題について引き続き議論していくことになりました。

今後の予定について

次回は10月24日(火)に定例委員会を開催します。

以上

第319回

第319回 – 2023年9月

意見交換について…など

議事の詳細

日時
2023年9月19日(火) 午後4時 ~ 午後5時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO]」第1会議室(オンライン開催)
議題
出席者
曽我部委員長、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、野村委員、丹羽委員、松田委員、水野委員

1.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

2.意見交換会について

来年1月に予定されている意見交換会の概要を事務局から報告した。

3.その他

本人の申し出により今月末に退任することになった丹羽委員から挨拶があった。

以上

第187回

第187回–2023年9月

NHK『ニュースウオッチ9』について審議

第187回放送倫理検証委員会は、9月8日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員からヒアリングの内容と意見書の原案についての報告があり、次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の修正案を作成することになった。
1月12日放送のTBSテレビの報道番組『news23』において、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、職員やその家族が不必要な契約を結ぶ”自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、内部告発した職員が退職に追い込まれたとの週刊誌報道やテレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢が問題だという視聴者の声がBPOへ寄せられ、委員会は、取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決めた。今回の委員会では担当委員から当該放送局の関係者にヒアリングした結果が報告された。今後は意見書の原案の作成を進める。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するために7月の委員会で討議入りし、今回の委員会には当該放送局から番組審議会の議事録等が提出され議論したが、さらに討議を継続することとした。
証言の一部を誤解して放送した報道情報番組について、当該放送局から提出された報告書を基に議論した。
8月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2023年9月8日(金)午後5時~午後8時10分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、大石委員、
大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

NHKの『ニュースウオッチ9』(5月15日放送)は、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りとなった。
今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの内容と意見書の原案についての報告があった。委員から組織的な問題をより照射する方向性の意見などが出され、次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の修正案を作成することになった。

2.TBSテレビ『news23』について審議

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。委員会は、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして8月の委員会で審議入りを決めた。
今回の委員会では、担当委員から当該放送局の関係者にヒアリングした結果が報告された。委員からは「内部告発者を取材する際は高いレベルの取材源の秘匿が求められる。今回は最終的にそれが徹底できなかった。なぜ徹底できなかったのかについて意見書では説明を尽くすべきだ」「今回BPOが一石を投じたことによって、調査報道に対する取り組み方を抜本的に改めようとか、調査報道の取材にもっと力を入れようとか、いい方向へ進んでいくのであれば、本事案を問題化したことが放送業界にとってプラスになると思う」といった意見が出た。これらを踏まえて今後は担当委員が意見書の原案の作成を進める。

3.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議

大阪放送(ラジオ大阪)の番組『大阪を前へ!』、『兵庫を前へ!』は、統一地方選挙前半(3月31日告示、4月9日投票)の約2カ月前の2023年1月12日~29日までの間に計15回(15分番組×13回、30分番組×2回)放送された。ゲストは各回とも同じ政党の公認立候補予定者だった。
7月の委員会で、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から討議入りした。今回の委員会には、当該放送局が8月に臨時開催した番組審議会の議事録と現状報告等が提出され議論した結果、今後の対応等をまとめた報告書の提出を待つこととし、引き続き討議を継続することにした。

4.証言の一部を誤解して放送した報道情報番組について議論

報道情報番組で販売店の元店長の証言をVTRで放送した後に、関係先の企業から事実と異なる点を指摘され、テレビ局が後日お詫びした。当該放送局から委員会に提出された報告書によると、改めて調査した結果、証言の一部を番組側が誤解していたことが判明し、また事前に関係先に対する確認取材を行っていなかったことも分かった。関係先へは当該放送局の幹部が説明とお詫びに行き、理解を得られたという。委員会では、相手先にとっての不利益な情報を放送するにあたり、報道の基本である裏付けや確認取材を怠ったことは、にわかに信じがたい事である等の非常に厳しい意見が出た一方で、事実関係を速やかに解明し関係先へも対応していることから、現時点では委員会が調査をする必要性までは認められないとし、議事概要で取り上げるにとどめ、議論を終えた。

5.8月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

8月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、芸能事務所創業者による性加害問題について、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の記者会見と、当該事務所が設置した外部の専門家による「再発防止特別チーム」の調査結果公表があり、さまざまな意見が多数寄せられたこと、その中にはBPOに対応を求めるも意見が含まれていることなどについて事務局から報告があり、BPOの審議には、規約・委員会規則による制約があることなどの議論を行った。

以上

2023年8月に視聴者から寄せられた意見

2023年8月に視聴者から寄せられた意見

芸能事務所創業者による性加害問題について、外部の専門家による調査結果の公表などがあり、さまざまな意見が多数寄せられました。

2023年8月にBPOに寄せられた意見は 2,115件で、先月から 508件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 86% 電話 13% 郵便・FAX 1%
男女別(任意回答)は、男性33% 女性28 % で、世代別では 40歳代 26% 50歳代 24% 
30歳代 21% 60歳以上 15% 20歳代 11% 10歳代 1%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、8月の送付件数は1,109件、61事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から20件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

芸能事務所創業者による性加害問題について、国連ビジネスと人権の作業部会の記者会見と、当該事務所の「外部の専門家による再発防止特別チーム」の調査結果公表があり、さまざまな意見が多数寄せられました。8月の意見のうち3分の1以上がこの問題に関するものでした。ラジオに関する意見は43件、CMについては24件でした。

青少年に関する意見

8月中に青少年委員会に寄せられた意見は124件で、前月から6件増加しました。
今月は「表現・演出」と「要望・提言」が44件ずつと最も多く、「報道・情報」が10件、「性的表現」と「言葉」が7件ずつと続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 芸能事務所の再発防止特別チームが指摘した、“マスメディアの沈黙”について、当該事務所の所属タレントを起用して番組を制作するなど関係の深かったメディアは、“忖度”の有無などを検証し結果を公表してほしい。

  • 芸能事務所の性加害問題で、国連ビジネスと人権の作業部会の会見の後、メディア各社の報道やSNSの投稿が再び増えた。創業者や事務所に対する批判にとどまらず、現在事務所に所属するタレントを好奇の目で見るような投稿が存在するという。所属タレントが精神的に追いつめられないか心配だ。

  • 国連作業部会の会見後、性加害問題「当事者の会」が、テレビやネットメディアなどの報道関係者と“慰労会”を行い、その費用は報道側が負担したと、「当事者の会」幹部がSNSに投稿し、その後削除した。削除された投稿の内容が事実であるとすれば、報道内容が偏ったものになりはしないかと心配。

  • 強い風雨の中、記者がヘルメットを被っただけの姿で路上に立ち、「安全を確保してお届けしています」などと中継しているが、映像を見る限り“安全を確保している”というのは無理があるように感じる。

  • 高校野球夏の甲子園大会。決勝に進出した2校のうち1校だけをクローズアップする情報番組などが目立った。取り上げ方をすべて平等にしろというわけではないが、マスコミがこぞって一方だけを応援しているようで違和感を覚えた。

【バラエティー・教養】

  • 毎年恒例のチャリティー番組のマラソン企画。今年は特に暑さが厳しく、猛暑日や熱帯夜が続いたので、出演者やスタッフの健康が心配になった。

  • 収録中にミスをしたスタッフの頭髪を丸刈りにして謝罪させるという設定のバラエティー番組の企画。実際に丸刈りにされたスタッフ役の出演者たちは、丸刈りになることを了承した若手芸人やエキストラだと断りを入れていたが、なかには番組の要望を断りにくい立場の人もいるのではないかと気になった。笑えなかった。

  • 男性タレントの服が溶けて裸になる、ズボンを下ろして下着を見せるなどのドッキリは不適切。男性が相手ならば仕掛けていいということではない。男女を問わず、こうしたドッキリ企画はありえないと思う。

  • バラエティー番組や情報番組で、頻繁に使われている、「え~」という人工的な相づちの音声が耳ざわりだ。使い古された演出を漫然と繰り返す番組制作者が、テレビ離れを促していると思う。

  • ここ数年バラエティー番組が面白くなくなったと感じる。コンプライアンスなどを意識しすぎて個々の出演者が委縮してしまい、自由な発言や表現が出来なくなっているのではないか。もっと面白い笑いを期待したい。テレビ局に自由な番組作りを望みたい。

【その他】

  • 東京では21時00分まで番組が続いているのに、地方によっては途中の20時54分で終わってしまうことがある。楽しみにしていた番組を最後まですべて見たいので、何とか改善してほしい。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、(細いベルト状のラインの上でバランスを楽しむスポーツ)スラックラインの女子高校生にスカートをはかせて競技させた。太ももやお尻が見えそうでとてもかわいそうだった。女性へのセクハラになると思う。

  • バラエティー番組の「えっちな野菜を取りたい」という企画。畑から二股や三つまたに育った大根やニンジンを引き抜いては人間に見立てて女性の下着をはかせたり、性行為のポーズをさせたりした。深夜の放送でも夏休み期間では子どもの目に簡単に触れてしまうし、そもそもテレビで放送すべきではない。

【「要望・提言」】

  • 毎年恒例のチャリティー番組に、創業者による性加害が明らかになった芸能事務所所属のアイドルグループがメインパーソナリティーとして起用されるという。海外にも知れ渡ったこの問題の当事者の名前を冠する事務所のタレントを多数出演させることは、その性加害を日本社会が認めていると思われるだろう。

  • 路線バスを利用した旅番組で、出演者が道路の左側を歩くシーンが放送された。学校では歩行者は右側通行と教えられた。道路交通法でも(歩道や路側帯のない車道では)歩行者は右側通行となっている。子どもも見る番組なので、出演者には右側通行を徹底してほしい。

【「性的表現」に関する意見】

  • 情報番組で伝統行事「赤ちゃんの土俵入り」を紹介。このなかで、男児の性器を映像処理せずに大きく映した。SNSに放送画像が投稿された場合、削除依頼ができず、画像が残り続けてしまうおそれがある。

【「言葉」に関する意見】

  • 字幕放送で、謝礼や謝罪の言葉「すみません」がしばしば「すいません」と表示される。子どもが間違えて覚えてしまうので、字幕作成の担当者は正しい表記を徹底してほしい。

第186回

第186回–2023年8月

TBSテレビ『news23』が審議入り

第186回放送倫理検証委員会は、8月4日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリング内容の報告があった。これに対して、他の委員からは事実関係についての質問などが出された。次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の原案作成を目指すことになった。
1月12日放送のTBSテレビの報道番組『news23』において、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、職員やその家族が不必要な契約を結ぶ「自爆営業」が横行していると報じた。放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、内部告発した職員が退職に追い込まれたとの週刊誌報道やテレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢が問題だという視聴者の声がBPOへ寄せられた。委員会は、取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するために前回の委員会で討議入りしたが、さらに討議を継続することとした。
7月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告された。

議事の詳細

日時
2023年8月4日(金)午後5時~午後7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

NHKの『ニュースウオッチ9』は、ワクチン接種後に亡くなった遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りとなった。
同番組は5月15日に「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」と題する1分5秒のVTRを放送した。VTRには、ワクチン被害者の遺族の会から遺族3人が出演したが、3人がワクチン接種後に亡くなった人の遺族であるとの説明は無く、テロップで「夫を亡くした」「母を亡くした」と紹介するにとどまった。
今回の委員会では、担当委員から当該番組の関係者に対して実施したヒアリングの報告があった。これに対して、他の委員からは事実関係についての質問などが出された。次回の委員会までにさらに必要なヒアリングを実施し、意見書の原案作成を目指すことになった。

2.TBSテレビ『news23』について審議

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。その中で、A地方のJAに勤める男性が、顔をぼかし声も変えてインタビューを受け、ノルマ達成のために1歳と5歳の子供に必要のない共済をかけていると語った。このインタビューには顔をぼかし声も変えた別のJAの職員も同席していた。また、JAのBに勤める男性は、顔をぼかし声も変えて、上司から給与やボーナスが支払えなくなるといわれ職員や農協の為にノルマを無くせないと述べた。
放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。
委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDを求めて協議した。その結果、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

3.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議

大阪放送(ラジオ大阪)の番組『大阪を前へ!』、『兵庫を前へ!』は、統一地方選挙前半(3月31日告示、4月9日投票)の約2カ月前の2023年1月12日から1月29日までの間に計15回(15分番組×13回、30分番組×2回)放送された。ゲストは各回とも同じ政党の公認立候補予定者だった。
番組最終回の放送翌日、聴取者からBPOに「特定政党のキャッチフレーズをそのままタイトルにした番組で、ゲストはこの党の政治家と決まっており、内容は党の活動や今後の取り組みを紹介し宣伝することに尽きる。特定政党のPR番組を一般の番組と同じ扱いで放送することは問題だ」という趣旨の意見が寄せられた。
前回の委員会で、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から討議入りし、今回の委員会では様々な意見が出されたが、引き続き討議を継続することとした。

4.7月に寄せられた視聴者・聴取者意見を報告

7月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、シングルマザーとして娘を育てる女性が、スリランカ出身の男性と恋に落ち、3人で家族を作るというストーリーのテレビドラマに対して、「違法滞在を美化している」「不法移民を正当化している」などの意見が寄せられたことなどについて事務局から報告があった。

以上

第259回

第259回-2023年7月

視聴者からの意見について… など

2023年7 月25日、第259回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、6月後半から7月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見の中から、事件報道における小学生へのインタビュー取材などの問題について意見を交わしましたが、「討論」に進んだものはありませんでした。
7月の中高生モニターリポートのテーマは、「最近聴いたラジオ番組について」でした。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年7月25日(火) 午後4時00分~午後6時00分
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第一会議室(千代田放送会館7階)

議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

6月後半から7月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
午後の情報番組の芸能ニュースで、有名女優が夫以外の男性と交わしたとされる交換日記の内容を読み上げたところ、「内容を公表する必要があったのか。番組がいじめに加担しているように思えた」などとする視聴者意見が寄せられました。
担当委員は「問題があるとすれば放送倫理の問題で、青少年に対するものではないだろう。当委員会で取り上げる内容ではないと思う」と述べるなど、「討論」に進むことはありませんでした。
宮城県栗原市の公立小学校に軽トラックが侵入して児童4人がはねられた事件の報道で、目撃者である小学生のインタビューが複数の報道・情報番組で放送されたことについて、視聴者から「児童が精神的・心理的に不安定になっている状況でマイクを向け、事件の様子を思い出させる行為は容認できない」などの意見がありました。
ある委員は「子ども自身のPTSD(心的外傷後ストレス障害)のリスクを考えると、ハイリスクなインタビューだと思う」と指摘しました。
別の委員は「この子どもは事件を客観的に見ていて、自分の言葉でしっかり伝えようとする意志が明確に感じられた。心配のないケースではないかと思う」としたうえで、「そこに目撃者がいて、その子どもが話してくれるのであれば、それを聴くというのは(報道機関の)ひとつの役割だろう。ただし同時に(子どもに対する)アフターケアは大事だ」と述べました。
また、「インタビューでしっかり話してくれる子どもがいたら、取材及び報道の必要性を肯定する判断になるのはうなずける。ただ今回の事件を契機に、改めてこの問題を考えてみることが重要だと思う」と呼びかける意見が出されました。その結果、「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

7月のテーマは「最近聴いたラジオ番組について」で、合わせて21番組について報告がありました。複数のモニターが取り上げたのは『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送)、『福山雅治 福のラジオ』(エフエム東京)、『安住紳一郎の日曜天国』(TBSラジオ)で、「楽屋で話しているようなゆるいおしゃべりがとても新鮮だった」などの感想が寄せられました。
「自由記述」では、普段あまりラジオを聴かないというモニターから「自然にいろいろなジャンルの曲が耳に入ってくるので音楽の幅が広がった」、「野球をラジオで聴くと頭の中で局面を想像でき、一味違う楽しみ方があった」などの声が届いています。
「青少年へのおすすめ番組」では、『アイ・アム・冒険少年 2時間SP』(TBSテレビ)、『ニュー試』(NHK Eテレ)、『チャリキシャ!~走ってみたいグルっとMAP~』(テレビ大阪)、『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)に複数のモニターから感想が寄せられました。

◆モニター報告より◆

【最近聴いたラジオ番組について】

  • 『アナウンサー百年百話』(NHKラジオ第2)

    Jリーグが開幕したときにアナウンサーはどのように実況し、これまでの30年でどのように変化してきたのかが分かって面白かった。現役のアナウンサーが、「熱い試合で何を言ったか覚えていない」というエピソードを話していた。映像がないからこそさまざまな想像ができて面白かった。(高校1年・男子・群馬)

  • 『Top of the Morning』(LOVE FM)

    今はサブスクやYouTubeなども音楽を聴くことができますが、火曜日限定のレコードのコーナーではあえてレコードが紹介されています。私はレコードが家になくテレビなどでしか見たことがないので、紹介やその曲がとても新鮮でした。レコードは昔のものだと思いがちですが、レコードにはレコードの良さがあることに気づけました。音楽をゆっくり楽しんだり古い名曲に親しんだりするところがラジオにもぴったりの魅力だと思いました。(中学3年・女子・福岡)

  • 『ショウアップナイター プロ野球フレッシュオールスターゲーム』(ニッポン放送)

    フレッシュオールスターはおもに期待の若手中心に選手が出場しているため、将来を想像しながら聴くことが出来た。声だけで局面などがすべて理解でき、分かりやすかった。少し声のテンポが早いと追いつかないところがあった。ある程度細かいところも説明していて、テレビを見ていなくても同じくらい分かりやすかった。(中学3年・男子・神奈川)

  • 『ジェーン・スー 生活は踊る』(TBSラジオ)

    自分もお便りを送ろうと思うがうまく文章が書けないのに、常連のリスナーさんは文章が上手だなと改めて思った。普段は“ながら”で聴いているが、じっくり聴いているととてもいいことを言っていたので、ときどき真剣に聴くのもいいなと思った。(高校2年・女子・東京)

  • 『福山雅治 福のラジオ』(エフエム東京)
    • (福山さん主演の)ドラマの裏話を聞くことができたり、(共演者の)永瀬廉さんのモノマネをしたりしていたのが面白く、とても楽しく聴くことができました。さまざまなトークを通して出演者の知らない一面も知ることができ、新鮮でよかったです。ラジオはトークと音楽が中心になりますが、寄せられた質問をもとに貴重な話や面白い話をしていてラジオの良さがよく伝わりました。(中学2年・女子・愛知)
    • 番組全体としては、視聴者からのメールを紹介してその内容をきっかけにトークをする展開で、年の功なのかどんなメールでもそれなりにトークができるのはさすがだなと思いました。ただ「ファンクラブに入っていないと・・」と、入会の勧誘が多いように感じました。(高校3年・女子・京都)
  • 『なにわ男子の初心ラジ!』(ニッポン放送)

    メンバーとスタッフさんの仲の良さがとても伝わってきてほのぼのした平和なラジオだと感じた。一番好きなコーナーは、最後の「5年後のわたしへ」だ。自分と同年代の人の5年後の未来への手紙を聞き、目標を立てて夢に向かって頑張ってみようという気持ちにさせてくれた。(中学2年・女子・東京)

  • 『マイあさ!「健康ライフ」』(NHKラジオ第1)

    身近に感じる疑問をインターネットで調べるよりも正確に、子どもにも分かりやすいように説明していました。司会者の声は高めでとても聴きやすく耳に入りました。(中学1年・女子・千葉)

  • 『レコレール』(FM福井)

    リスナーの方と一緒に番組をやっているという感じがあり、とてもよかった。みんなが共感できる内容や、えー!そうなんだ!と思う内容のどちらも詰め込まれていて、聞いていて全然飽きなかった。これを機にこれからラジオを聞いてみたいと思った。(中学2年・女子・福井)

  • 『SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル』(ニッポン放送)
    • ほぼ毎週(この)番組名やトーク中に出た単語がトレンド入りしていて、ラジオだけでなくSNSでもかなり盛り上がっている。パーソナリティーがアイドルで生放送というのがこの番組の特徴であり、SNSを通してトークの面白さが伝わり人気につながっているのかなと思いました。(高校1年・女子・茨城)
    • まるで楽屋で話しているかのような終着点が見えないゆるいおしゃべりがとても新鮮だった。ちゃんと会話の内容が面白いし、テレビではなかなか聞けないジャニーズのプライベートトークを聴けるのが面白かった。(高校2年・女子・愛知)
  • 『My Humming Time』(ラジオNIKKEI第2)

    普段はテレビやスマホなど視覚で理解することが多いものをよく使っている。しかしラジオのように聴覚だけで理解するものを使ってみると、視覚化できるものが無かったため理解に時間がかかった。だが自分で情景をたくさん想像することができた。今回は外国の湖の話だったため、湖のある場所を思い浮かべながら聴いたり、湖はどうして小さくなっているのかな?と原因を考えたりした。テレビやスマホなら実際の写真やイラストを見て理解するだけだっただろう。ラジオは想像力が豊かになるとても良い方法だなと思った。(高校1年・女子・北海道)

  • 『TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING』(J-WAVE)

    この番組は聴いているだけで時間の流れを感じることができ、まさに聴くだけで一つの「旅」だと感じる。またゆっくりとした時間の流れは自分を見直すことにつながり、新しい気づきを与えてくれた。(高校2年・男子・東京)

  • 『安住紳一郎の日曜天国』(TBSラジオ)
    • この番組を聴いて「ラジオって意外と難しくなく、飽きないしすごく面白いな」と思いました。とくにリスナーのお便りがラジオパーソナリティーの人たちによってどんどん深まり面白くなっていく感じが聴いていてすごく楽しくて好きでした。自分で音楽を選ぶと好きな曲だけに偏ってしまいがちだけど、ラジオだと自然にいろいろなジャンルの曲が耳に入ってくるので音楽の幅が広がりました。(中学2年・女子・栃木県)
    • YouTubeやポッドキャストなど最近の流行りに合わせた聴き方をすることができ、昔のものや名作も聴くことができてうれしいです。せっかく魅力がつまった番組なので、CMやYouTubeショートなどを活用するともっと魅力が伝わると思います。(中学3年・男子・神奈川)
  • 『正司紗千の夕暮れチョコレート』(山形放送)

    何気ない山形の話(地元トーク)や、元気の出る曲で前向きになれました。とくに番組が始まるときのピアノのオープニングメロディーは頭から離れません。ぜひ山形に来たら聴いてほしいと思います。(高校2年・男子・山形)

  • 『サカナクション・山口一郎~Night Fishing Radio~』(NHK FM)

    パーソナリティーの山口さんが自分の言葉で作品やアーティストについて解説してくれるのだが、毎回その言葉に納得させられている。感覚として音を楽しむに過ぎない私だが、山口さんはその感覚を言語化してくれる。だからなぜ良いのか、なぜすごいのかがより明確となる。毎回私にとっては知らないアーティストが登場するのだが、私にも山口さんの解説は的確でしっくりくる。だからよく聴いているラジオ番組です。(中学1年・女子・福岡)

  • 『TALK ABOUT』、『荻上キチ・Session』(いずれもTBSラジオ)

    ラジオはテレビと異なり「見る」でなく「聴く」なので、作業しながらでも聴くことができると思いました。初めてニュース以外のラジオを聴きましたが、面白かったので別のジャンルも聴いてみたいと思いました。(高校2年・女子・東京)

  • 『大窪シゲキの9ジラジ』(広島FM)

    この番組のパーソナリティーは日々県内各地の学校の取材をしているが、それは無償で行っている。現在、若者のラジオ離れどころかそもそものリスナーが減っているなか、このような取材と番組制作はリスナーの増加につながっていくと思う。ほかの局でも若い世代のリスナー獲得のためにこのような思い切った番組制作をしてほしい。(中学3年・女子・広島)

  • 『森谷佳奈のはきださNights!』(山陰放送)

    BSSのイベント案などをリスナーさんたちと一緒に考えたり丸投げしていたりするところが、パーソナリティーの人とリスナーさんたちがつながっているなと感じました。姿が見えないラジオだからこそ、声だけで状況が把握できるよう詳しく説明してくれるのがラジオの魅力だなと思いました。(中学1年・女子・島根)

  • 『アルコ&ピース D.C.GARAGE』(TBSラジオ)

    何年も毎週欠かさず聴いているお気に入りの番組です。自分がラジオにのめりこむきっかけになった番組であり、安定して毎週大笑いできる唯一の番組です。個人的には作家の笑い声も丁度よくてコーナーもクオリティが高く、全てが無駄でできた無駄が一切ないラジオだと思っています。(高校3年・男子・神奈川)

  • 『乃木坂46の「の」』(文化放送)

    普段は見えない意外な一面がたくさんあって「素」の話を聴くことができてよかった。メジャーな曲ではなくマイナーな曲も流していたのでよかった。(高校3年・男子・千葉)

  • 『SDGs学部 ミライコード』(エフエム東京)

    番組で教授が訴えていたのは「同じ地球の同じ仲間たち」ということを考えなければならない、他人事と考えた時点でその問題は解決しないということです。自分はニュースなどで報道されている内容は自分からはほど遠いものだと思っていましたが、地球という視点から考えると自分にとって身近なものなのだなと思いました。(中学2年・男子・埼玉)

【自由記述】

  • 野球はテレビ(で見る)しか楽しくないと思っていたが、ラジオで聴くと新鮮で意外と分かりやすかった。頭の中で局面を想像でき一味違う楽しみ方があった。(中学3年・男子・神奈川)

  • ラジオは映像がないので最近の若者はつまらないと思っているようだが、想像力が培われるのでとてもいいと思う。(高校2年・女子・東京)

  • これを機にスマホにラジオを聴くことができるアプリをインストールした。アプリから番組表を見て驚いたのはテレビであまり見ない人がメインの番組が「人気番組」や「急上昇」に挙がっていたことだ。テレビは万人受けするようたくさんの人に向けて放送される番組が多い印象だが、ラジオは「この人が出ているから聴く!」というその番組を聴く目的を持った視聴者がしっかり楽しめる番組をつくることがメインなのだと思った。自分の好みの番組を探してみたいと思う。(高校2年・女子・愛知)

  • 最近、テレビのニュース番組などで「若者はテレビ離れで何でもネットで情報を入手しており、それは危険だ」というコメントがなされるが、高い割合でなくても若い視聴者がいることを忘れないでほしい。そしてそれを踏まえた上での心あるコメントをしてほしい。(中学3年・女子・広島)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『ニュー試』(NHK Eテレ)
    • 国によっていろいろな入試の方法があり、日本とは全然違うところが多く
      とても難しかったです。日本も年々入試の方法が変わるので勉強になりました。(高校1年・女子・京都)
    • ハーバード大学の問題から、これからさらに変化し続ける社会との向き合い方や考え方を学べた。またリーダーの在り方についても知ることができ、自分の立場と置きかえて考えることができた。(中学3年・女子・広島)
  • 『やまがたZIP!「夢はかなえるもの~新米教師と校長先生の物語~』(山形放送)

    15分という短い番組でしたが、見ごたえがあって面白かった。校長先生の教育に対する熱量が伝わってきた。いかにして生徒との距離を縮めてよい関係を築くかを考えていて、校長先生面談などはいいと思った。インスタに毎日投稿していて保護者の人も学校の様子を見られるのがすてきだと思った。(高校2年・男子・山形)

◆委員のコメント◆

【最近聴いたラジオ番組について】

  • 『TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING』(J-WAVE)という番組を評価する感想があり、実際に聴いてみてとても面白い番組だった。パーソナリティーが低音で淡々と語り音楽をゆっくり紹介していく真夜中の番組のようで、私自身も引き込まれた。

  • 『大窪シゲキの9ジラジ』(広島FM)という地元の中高生を応援する番組の感想を読み、このようなローカル番組があるのだなと新鮮だった。自分のメッセージが読まれたりリクエスト曲がかかったりすることは本格的なラジオリスナーへの道につながるので、リスナーを増やすためにもこのような切り口はよいのではないか。

  • トレンド入りした“芸誕生日”という言葉が気になり『SixTONESのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)を視聴したというモニターが、SNSを通してトークの面白さが伝わっているのだろうと書いていた。注目を浴びる人たちが生放送で出演し、まさにSNSとリンクしながらいろいろな相乗効果を呼ぶのは今どきのラジオ放送の在り方なのだろうと思った。

  • 特定のラジオ局一筋で聴いているという感想があったが、せっかくなのでいろいろな番組を聴いてみるといいのではないか。自分も若いとき、たくさんの深夜番組のなかから曜日ごとにハシゴをして聴いていたが、それぞれの違いや特徴が分かって面白かった。そういう聴き方のなかから自分に合う番組がもっと見つかるかもしれない。

  • 全体的にラジオを聴き慣れていないというか、新鮮な感想が多かった。メジャーな曲ではなくマイナーな曲を流していてよかったという感想もあったが、たまにラジオを聴くとそのように新鮮に受け止めてもらえる。だが、サブスク全盛の時代にそれがラジオに定着するきっかけになるかどうかは、少し難しいのかなと思った。

【自由記述について】

  • 新しいドラマやアニメを見ているが、なぜ再放送があるのか疑問だという声があった。サブスクが当たり前の時代、アプリやサイトで前の番組を見られるのになぜ再放送が必要なのかという若い世代の新鮮な感想だった。

  • 仕事に焦点を当てた番組が面白いという複数の感想があった。若い人たちは、職業を選ぶなど何か将来の勉強や参考になるようなところに注目するのだろう。青少年向け番組の中で職業を楽しく紹介するのは一つの在り方かもしれないと思う。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『ちびまる子ちゃん』(フジテレビ)への感想が多かった。この番組は、多様な子どもたちがたくさん登場し、誰一人同じ子どもはいない。それこそ多様性の象徴のようで、いじめも起きないしうまくできた番組だなと思いながら感想を読んだ。

  • 『ちびまる子ちゃん』に、「懐かしかった」「昔から変わっていなくて安心した」という感想があったが、なかなか複雑な感想だと思った。確かに見れば楽しめるけれど、普段は見るきっかけがないのでおすすめされないとなかなか見てくれないのではないか、とも思えた。いい番組でも中高生に普段から見る習慣を持ってもらうのはなかなか難しいのだろうかと考えさせられた。

今後の予定について

石川県金沢地区の放送局との意見交換会を11月22日(水)に金沢市で開催することを確認しました。
8月の定例委員会は休会とし、次回は9月26日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で開催します。

以上

2023年7月に視聴者から寄せられた意見

2023年7月に視聴者から寄せられた意見

古代メキシコ文明に親しもうという子ども向け番組の歌の歌詞に、子どもに聞かせたくない表現がある、などの意見が寄せられました。

2023年7月にBPOに寄せられた意見は 1,607件で、先月から 166件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 83% 電話 15% 郵便 1% FAX 1%
男女別(任意回答)は、男性41% 女性19 % で、世代別では 40歳代 26% 50歳代 22% 
30歳代 20% 60歳以上 15% 20歳代 13% 10歳代 2%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、7月の送付件数は635件、53事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から15件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

コメンテーターが福島第一原発の「汚染水の放出」と繰り返し発言したが「処理水の~」であるべき、古代メキシコ文明に親しもうという歌の歌詞が「しゅうだんいけにえ200人」といったもので子どもに聞かせたくない、などの意見が寄せられました。ラジオに関する意見は42件、CMについては16件でした。

青少年に関する意見

7月中に青少年委員会に寄せられた意見は118件で、前月から48件増加しました。
今月は「表現・演出」と「言葉」が34件ずつと最も多く、「報道・情報」が17件、「要望・提言」が10件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 4歳女児虐待死のニュースで、現場となった自宅アパートが特定できる映像が使われている。きょうだいは近くの小学校に通っているのですぐに特定されてしまう。配慮が必要ではないだろうか。

  • タレントの自殺の扱いかたを朝の番組で見比べたところ「今から10分ほど伝える。気分がすぐれないという方は10分ほど後にテレビの前に戻ってきてほしい」と断ってから始めるなど配慮を感じる番組もあれば、センセーショナルと感じる番組もあった。命の問題。ガイドラインを遵守してほしい。

  • 福島第一原発の話題でコメンテーターが繰り返し「汚染水の放出」と表現した。国際的な安全基準を満たしていると科学的に判断されている「処理水」の海洋放出が、さも危険であるかのように視聴者に誤認させるおそれがある。

  • 虐待の疑いで母親が逮捕された事件の報道で、被害児童の同級生に「やせ細っていなかったか」などと質問していた。事件の細部を同級生が知ることで被害児童の生活への影響が増大するのではないだろうか。

  • 番組で「危険な暑さ」「熱中症に厳重な警戒を」など呼びかけながら自社の屋外イベントを紹介している。矛盾している。

【バラエティー・教養】

  • 「河川で溺れた本人よりも救助者のほうの死亡率が高い」というデータを紹介していたが、あわせて示された出典を確認したところ、「二次被害が発生した場合」という前提条件がついていた。視聴者に誤解を与える。

  • 声を変えて他人になりすますことが可能な「AIボイスチェンジャー」という装置を、出演者に使わせて楽しんでいた。すでに犯罪に利用されている技術だ。生成AIに対する規制が議論されている現在、その一面だけを安易に紹介するのは危険だ。

  • 変装したアイドルグループのメンバーたちに「買い物」など街中でのミッションを課し、視聴者にはSNSなどで彼らを探すよう呼びかけた「かくれんぼ」企画。出演者が見破られまいと猛然と走って逃げるなど危険だと感じる場面があった。もう少し安全面に配慮して撮影してほしい。

  • 「7月28日は自由研究の日」の中で、ドライアイスを風船に入れてぬるま湯を注ぎ、破裂させるという実験をスタジオで実演していた。「たいへん危険なので家庭でまねしないでください」というテロップと説明があったが、危険なものをわざわざ紹介する必要があったのか疑問。

  • 日本語を理解できない外国人に、男性器を想起させるひらがなをプリントしたTシャツを着せて笑いにしていた。他国の人々を侮辱し、おとしめる企画で非常に不快。

  • いわゆるドッキリで、わんこそばの途中に酢入りの椀(わん)を出し、むせる様子を笑っていた。気管に入ったりすると危ない。

  • 全裸でいることを余儀なくされた男性の前に仕掛け人の女性が現れ、あわてふためく男性の様子を笑うドッキリ企画。「LGBT理解推進法によって心は女だと言えば男が女湯に入れる」などのヘイトスピーチが激化している状況下、あり得ないと思う。

  • 安倍元首相銃撃を機に霊感商法の危険性が再認識されたが、テレビは毎年夏になると心霊番組を放送し霊感商法を助長していると感じる。メディアは「心霊番組と霊感商法」の関係について議論してほしい。

  • 番組のサブタイトルが前週放送のスペシャル番組の「裏側に完全密着」。大々的な予告もあって楽しみにしていたが、この内容が放送されたのはわずか10分ほどで「裏側」もなし。本当にガッカリだ。

【ドラマ・アニメ】

  • ドラマで子どもが戸棚に隠れていたシーンをコミカルに描いていた。子どもがまねをすると危険。熱中症で亡くなった事例もある。

【その他】

  • 日々、相撲中継でたまり席の同じ女性がたびたび映る。手にしたうちわに大書された文字をネットで検索すると、女性は飲食店の経営者でうちわの文字は本人の源氏名だという。本人のSNSには過去、自分が映ったテレビ画面の画像。放送が宣伝に使われているような状況はいかがなものか。

【ラジオ】

  • 安倍元首相襲撃から1年というニュースで現在の警備体制、旧統一教会に対する質問権の行使状況などを伝えたが、批判が高まっていた「政治家と教団との関係」にはまったく触れなかった。不自然な報道だと思う。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 紀行バラエティー番組。ロシアのある民族に関するVTRで、動物の血などを映像処理せず見せた。非常に生々しく気分を悪くした。その民族には日常の光景だろうが、そのまま放送するのはおかしい。子どもが見たら、悪影響があるかもしれない。

  • バラエティー番組で、男性芸人が温泉宿で入浴中にロッカーの暗証番号を変えたうえ、男湯を女湯に入れ替えるドッキリがあった。女性入浴客が徐々に迫ってきて、全裸の男性芸人を困惑させた。男性の尊厳を無視し、その性的プライバシーを軽視するものだ。

【「言葉」に関する意見】

  • 最近の犯罪報道で「闇バイト」という言葉をよく聞く。なんとなく響きが軽く、実態がうまく伝わらない。これに加担する若者が後を絶たないのも、言葉の持つ軽さが一因かもしれない。凶悪犯罪につながることを適切に表現する言葉を使うべきだ。

  • 子ども向けミニ枠番組のなかの体操の歌に「集団生け贄200人!」「天国行きたきゃ…心臓どくどく捧げよう!」などの歌詞があった。非常にグロテスクな表現で、子ども向け番組には不適切だ。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 自殺したとみられる若手タレントの元妻の女性タレントが、5歳の息子を連れて帰京した際、空港でテレビカメラが向けられた。幼児がいる場の対応としてはあまりにおかしい。そもそも遺族への取材は不要だと思う。

  • 小学校の校庭に軽トラックが侵入して児童がはねられた事件で、複数の報道・情報番組が目撃者である子どものインタビューを放送。子どもが精神的、心理的に不安定になっている状況でマイクを向け、当時の様子を思い出させる行為は容認できない。とても気分が悪くなった。

【「要望・提言」】

  • 近ごろは子ども向けアニメ番組が減っている。ゴールデンタイムにアニメが放送されなくなって寂しい思いだ。子ども向けアニメの放送枠を増やし、子どもに夢と希望を与えてほしい。

【「低俗、モラル」に反する】

  • 深夜のバラエティー番組で、女性の下着を数メートルの高い位置から落として、芸人が口でキャッチしたり、凍らせた下着をブーメランのように投げて飛距離を競ったりしていた。セクハラまがいの内容で、女性が見たら、さぞかし不愉快だろう。

2023年8月4日

TBSテレビ『news23』が審議入り

TBSテレビは1月12日、報道番組『news 23』の調査報道23時のコーナーにおいて、農業協同組合(JA)で職員が共済営業の過大なノルマを課され、ノルマ達成の為に職員やその家族が不必要な契約を結ぶ、いわゆる“自爆営業”が横行していると報じた。その中で、A地方のJAに勤める男性が、顔をぼかし声も変えてインタビューを受け、ノルマ達成のために1歳と5歳の子供に必要のない共済をかけていると語った。このインタビューには顔をぼかし声も変えた別のJAの職員も同席していた。また、JAのBに勤める男性は、顔をぼかし声も変えて、上司から給与やボーナスが支払えなくなるといわれ職員や農協の為にノルマを無くせないと述べた。
放送後、身元を隠す措置が不十分だったため、A地方のJAに勤める男性は職場で身元がばれて居づらくなり、退職に追い込まれたとの週刊誌報道があった。また、取材を受けた職員とは3回程度会話をしたことがあるという人から「放送を見て誰であるかを私ですら特定できた。彼は農協の問題を告発し多くの職員の声を代弁してくれた。退職になりとても残念だ。テレビ局の取材対象に対する不誠実な姿勢を問題にしてもらいたい」といった声がBPOへ寄せられた。
委員会は、当該放送局に報告書と番組DVDを求めそれらを踏まえて協議した。その結果、報道の取材源の秘匿という原則が損なわれるという放送倫理違反の疑いがあり、取材から放送に至る経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。今後は当該放送局の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2023年7月18日

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」通知・公表の概要

[通知]
2023年7月18日午後1時からBPO会議室において、曽我部真裕委員長と事案を担当した二関辰郎委員長代行、松田美佐委員、補足意見を書いた水野剛也委員、少数意見を書いた國森康弘委員が出席して、委員会決定を通知した。申立人本人と代理人弁護士、被申立人のあいテレビ(愛媛県)からは番組プロデューサーら3人が出席した。
曽我部委員長がまず、「本件番組には人権侵害は認められず、放送倫理上も問題があったとまでは言えない」という委員会の判断を示したあと、今回は申立人の心情を深刻に受けとめた結果、「問題点の指摘と要望」という形で委員会の考えをまとめたと伝えた。
申立人の「番組内での他の出演者からの下ネタや性的な言動により羞恥心を抱かせられ、放送によってイメージが損なわれ、人権侵害を受けた」という主張については、本件の特徴として、他の出演者の言動が番組内に限られており、視聴者に見られることを意識したやりとりで特殊な場面と考えられ、通常のセクハラの判断基準とは異なるという見解を説明したうえで、本件では、①放送局が申立人の意に反していたことに気づいていたか、あるいは、気づいていなかったとしても気づくことはできたと言えるかどうか、②深夜バラエティー番組として許容範囲を超える性的な言動があり、あるいは、申立人の人格の尊厳を否定するような言動があったと言えるかどうか、という基準を採用したと述べた。それに照らすと、①について、あいテレビが当時気づくことは困難であり、②については、委員の中には番組内での性的な言動は非常に悪質だという意見はあったものの委員会で一致は見られず、最終的には、人格の尊厳を否定するような言動があったとまでは言えないとした。また、申立人が番組プロデューサーに悩みを打ち明けたあとの放送対応については、申立人が問題だと指摘した部分は放送しなかったという経緯があり問題があるとまでは言えないとした。これらを総合して判断した結果、人権侵害は認められなかったと説明した。
さらに、放送倫理上の問題に関しても人権侵害の判断と同様に、問題があるというのは妥当ではないとの結論に至ったと伝えた。
ただし、あいテレビに問題点として指摘される部分がなかったかというとそうではなく、要望として大きく取り上げたと伝えた。言動が繰り返され、言われた側の役割が固定化し、放送を通じてそれを公開されることは内心で意に反していると考える申立人を極めてつらい立場に追い込んだ。今後、あいテレビはそのような状況を招かないよう環境整備に努めること、また、ハラスメントに対する人々の問題意識が高まってきた今日において、本件番組で指摘されたような表現が放送するのに適当だったか否かをよく考えてほしいこと、そして、フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、他の出演者との関係性、男性中心の職場におかれた女性の立場というジェンダーの視点に照らしても申立人は圧倒的に弱い立場に置かれていたことが明らかで、放送局としては降板するほどの覚悟がなくても出演者が自分の悩みを気軽に相談できるような環境やジェンダーに配慮した体制を整備する必要があること、そのうえで、日頃から出演者の身体的、精神的な健康状態につねに気を配り、問題を申告した人に不利益を課さない仕組みを構築するなど、よりよい制度を作るための取り組みを絶えず続けること、という要望が付いたと説明した。さらに、ジェンダーバランスが適切にとれていれば下ネタや性的な言動が本件番組ほどになされることはなく、申立人に対する性的な言動への歯止めがかけられた可能性があったことも指摘した。
最後に、要望は直接的にはあいテレビが対象であるが、本件を契機として、放送業界全体が自社の環境や仕組みの見直しを行い改善に努めてほしいと伝えた。
続いて二関委員長代行が、「放送人権委員会決定における判断のグラデーション」に基づき、あくまでもグラデーション上の人権侵害や放送倫理上の問題というカテゴリーに照らすならば、問題があるとまでは言えないと判断した旨説明した。そして、今回の委員会決定の「問題点の指摘と要望」の部分が異例の長文であることに触れ、あいテレビに問題がなかったわけではないと述べた。あいテレビに対して、自社で設置した相談窓口が本当に機能しているのかをきちんと検証してほしいと要望した。
松田委員は「本件で申立人に向けられ、放送された性的な言動は悪質であり、放送を控えるべきであった」と個人の思いを伝えた。しかし一方で、表現内容だけを取り上げて問題ありとすることについては、「表現の自由」の観点から謙抑的であるべきだという委員会の判断に賛成だと述べた。そして、あいテレビに対し、表現によって誰かを傷つける可能性にもっと意識を向けてほしいと要望したうえで、「なぜ、申立人の悩みに気づけなかったのか」「なぜ、申立人は悩みが外部に伝わらないよう振る舞わざるをえなかったのか」と問いかけ、放送業界全体に、さまざまなジェンダー構造上の問題に対して社会がよりよい方向に向いていくための取り組みを求めたいと述べた。
次に、補足意見を書いた曽我部委員長がその内容を説明した。放送業界全体にジェンダーの観点から考えてもらうため、放送とジェンダーに関する近年の状況について紹介したと伝え、ジェンダーに関する偏見を再生産するのではなく率先して社会の多様性を番組に反映していくこと、そのための組織の整備を行うこと、自主的な取り組みを進めてほしいことを述べた。
同じく補足意見を書いた水野委員が「あいテレビには申立人との関係が良好だという思い込みがあったように見える」と述べ、人の心のうちは外からはうかがい知れないということを肝に銘じ、放送局は職場環境の見直しに取り組んでほしいと伝えた。
続いて、少数意見を書いた國森委員が「ハラスメントとは、気づいているか否か、あるいは、悪気があるか否かということとは関係なく、相手に苦痛や不快、不利益を与えること、あるいは相手の尊厳を傷つけることであって、その観点から、本件では人権侵害があったと考えている」と述べ、その論拠を説明した。「一般社会でハラスメントにあたるものが番組内で許されるはずはなく、申立人と性的な要素を過度に結びつけて描いている表現は非常に悪質。ましてや本人が下ネタや性的表現に同意をしていない、番組制作のあり方に納得をしていない、スタッフや共演者に不信が募る、という状況では一層深刻なハラスメント被害にあたる」とし、今回の表現が問題ないと捉えられれば、ハラスメントは今後も助長され、番組制作の現場でも一般社会でも被害はなくならず、苦しみ傷つく人が増えるだろうと述べた。
この決定を受け申立人は「残念という言葉しかない。不満だ。あいテレビが“要望で済んだ”と受け取ってしまうことが心配。長年、苦痛を訴えてきたのは事実。あいテレビが気づかなかったから今回の判断になった、と言われたことはショックである」と述べた。
あいテレビは「真摯に受け止めている。今回の申立てを受け、相談しやすい環境を作るために、現在、組織的に動いている」と述べた。

[公表]
午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見し、委員会決定を公表した。放送局と新聞社、民放連合わせて25社1団体から36人が出席した。テレビカメラの取材はTBSテレビが代表取材を行った。曽我部委員長がパワーポイントを使いながら、決定の結論とそこに至る考え方を説明した。特に、結論部分にある「問題点の指摘と要望」の内容について強調し、もっとも時間をかけ、丁寧に説明した。
二関委員長代行は「本当に難しい事案で、委員の間でさまざまな議論が交わされた。申立人と被申立人の言い分が食い違う中での審理となったが、委員会は証拠調べや証人尋問等をするわけではない。双方から提出された資料に基づいて認定していった結果が今回の判断の骨格となっている」と補足した。
松田委員は「本件番組を視聴して驚き、あきれ、気分が悪くなった。理由は番組内での性的な言動やからかいが、女性である申立人に対して、その人格と絡める形で向けられたものであったからにほかならず、これまで自分が経験してきた、さまざまな場面で受け流すことを暗黙のうちに要請されたからかいを想起させられ、非常につらかった。しかし一方で、表現内容だけを取り上げて問題があるということは表現の自由の制約につながりうることも理解しており、謙抑的であるべきという多数意見に賛同している。放送局は、『気がつかなかった』で済ませずに、自らの表現がどういう可能性を内包しているかをもっと意識して制作を行ってほしい」と述べた。
続いて、曽我部委員長が委員会決定における補足意見と少数意見の位置づけを説明したうえで、自身の補足意見の内容について説明した。要望でも取り上げたジェンダーバランスの観点から、「放送業界は全体として、社会に存在する偏見をただ再生産するのではなく、社会の多様性を番組に反映し促進していけるよう組織を整えるために自主的な取り組みを進めることが期待されている」と述べた。
水野委員は、「申立人の苦痛は非常に深刻なのに、あいテレビはまったく気づいていなかった。その乖離に非常に戸惑った。あいテレビには、申立人とはなんでも言い合える関係であるという過信があったようだ。心の内は外からうかがい知ることはできないことを肝に命じておくことが重要である」と述べた。
國森委員は、「多数意見では構造的な問題点を指摘した上で、今後のよりよい制度作りに向けた取り組みを放送局に対して要望し、また、放送業界全体における改善も期待している。その点においては賛同している」と前置きしたうえで、「ただ、ハラスメントとは本人の意図とは関係なく、その言動が相手を困らせ傷つけるものであるという観点から、本件には人権侵害があったと考えた。審理対象期間外であるが、背中のファスナーを他の出演者から下ろされるようなシーンなどもあり、申立人が性を売りにして世を渡るような人物であるかのように、過度に人格に性的な要素を結びつけてイメージを損なった。本人も性的な表現に同意や承諾をしておらず、かなり悪質だ」と、結論に至った理由を説明した。

<質疑応答>
(質問)
申立人、被申立人双方の受け止めは?
(曽我部委員長)
申立人は委員会決定に不満だと述べた。放送局に苦痛を何度も伝えてきたのに委員会決定にそれが反映されていないというのは事実認定としておかしい、というのが申立人の言い分。本件の問題の深刻さに委員会が一定の理解を示しているというのはわかるが、結論として問題がないというのはあいテレビのやり方を認めることになってしまうと懸念していた。あいテレビは、委員会決定を真摯に受けとめていることと、体制についてはすでに一定の見直しを行い、相談体制やジェンダーバランスに関しても社内の意識を高め取り組みを進めていることをコメントした。

(質問)
2022年3月に番組が終了したことは本件と関わっているか。
(曽我部委員長)
大いに関係している。2021年11月に申立人が番組プロデューサーに悩みを伝え、降板すると申し出た。番組は開始当初から出演者3人でやってきたため申立人だけが降板するのではなく、番組自体を終了しようという判断となった。

(質問)
これを機に、委員会や委員長として、深夜番組について何か意見を出すようなことは考えているか。
(曽我部委員長)
民放連、あるいはNHKの放送基準には性的な表現についての規定があり、それに則って番組は作られている。委員会として「ここまでは許される、ここからはNGだ」ということを一概に言うということは難しく、行わない。

(質問)
あいテレビのジェンダーバランスについて、考査体制の点からお考えがあれば。
(曽我部委員長)
今まで女性が0だったのを1人入れたからもうそれでよい、というのではなく、実質的にジェンダーバランスが確保されるような、そういう体制を目指すことが重要だと思う。

(質問)
あいテレビは、申立人に対して謝罪を行ったか。
(曽我部委員長)
きちんとした形で謝罪したということにはなってない。
(二関委員長代行)
本人があいテレビ側との接触を嫌がったこともあり、コミュニケーションがお互い取れないような状態で現在に至っていると理解している。

(質問)
本件番組の表現について、あいテレビは現在どのような認識でいるのか。
(曽我部委員長)
まったく問題がないという言い方ではなかったが、ただ、番組は6年間続いており、基本的には他愛のないトークが繰り広げられる中で時々下ネタや性的な言動があるということで、「全体を見てほしい」ということを強調していた。

(質問)
少数意見の中に、申立人がプロデューサーへの不満等を伝え、それに対して、プロデューサーから「真意確認」というメール返信があったという記述があったが、多数意見ではまったく触れてはいない。これは委員会として、客観的な証拠として確認できなかったということか。
(二関委員長代行)
客観的に判断できる範囲で判断したというのが多数意見のスタンス。少数意見で言及しているが多数意見では言及していないのは、そのメールが資料として提出されてないからであり、そのため特に触れていない。
(國森委員)
委員会に証拠を提出することは義務付けられず、委員会では証拠調べはしないという制約がある中で、何に重きを置くかということを考えた。記述内容は具体的で信憑性があるとみた。双方の主張に争いのない部分で判断するというより、争いのある部分にこそ申立人が訴えたい問題があるのではないか。今回は、さまざまなものを犠牲にして訴えた申立人の方に重きを置くべきだと思った。

(質問)
「真意確認」というメールの資料提出を、例えばあいテレビに求めるような対応はできなかったのか。
(曽我部委員長)
例外的な場合を除き、基本的に委員会が資料提出を求めることはない。今回は求めていない。

(質問)
本件について人権侵害や放送倫理上の問題を判断するうえで先例やガイドラインはなかったという理解でよいか。
(曽我部委員長)
本件で直接参照できる先例やガイドラインがあったとは認識していない。そのため、委員会でどういう枠組みで判断するのかということを相当議論した。
(二関委員長代行)
ハラスメント関連の法律や厚労省のガイドラインなどは職場環境を害する言動を広く含むものとしてセクハラを定義したセクハラ防止のためのルールであるため、本件には当てはまらないと委員会で議論し、独自の基準を立てた。パワハラなどに関する実際の裁判例なども参考にした。

(質問)
少数意見で、申立人のファスナーを他の出演者が下ろすことなどの記述があったが、あいテレビが気づけたかということとは別に、そのようなシーンを放送することは性加害と視聴者に受けとられかねず、その点で人権侵害とは考えられなかったか。
(曽我部委員長)
当該シーンは背景事情として考慮しているが、直接の審理対象ではない。職場で行えば犯罪だと思うが、番組の場合、演出なのかどうかということがわからない部分がある。当時の申立人のブログ等では積極的に本件番組を宣伝していたし、ファスナーのシーンも比較的肯定的にブログに書いていた。そこからすると、あいテレビは気づかなかっただろうというのが委員会の考えである。他方で、行き過ぎた性的表現を放送するということ自体は、もちろん、放送基準の問題が発生するが、問題か否かの判断は一概にはできない。
(二関委員長代行)
申立人は、お尋ねのシーンの収録時にカメラを向けられてニコニコしている自分の写真を、自分からブログにアップしており、委員会ではこのシーンの位置づけが曖昧だと議論し、申立てから遡って1年以内の放送ではなく審理対象でもなかったので多数意見では触れなかった。

以上

第185回

第185回–2023年7月

NHK『ニュースウオッチ9』について審議

第185回放送倫理検証委員会は、7月14日に千代田放送会館で開催された。
ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪し、6月の委員会で審議入りしたNHKの『ニュースウオッチ9』について、今回の委員会では、担当委員が作成した資料をもとに議論した。今後は当該番組の関係者に対してヒアリングを行っていく。
統一地方選挙を前に公認立候補予定者が出演したラジオ大阪の番組『大阪を前へ!』等について、当該放送局から提出された報告書と番組CDを踏まえて議論した。その結果、政治的な公平性の観点から問題はないか等を判断するため、討議事案としてさらに議論を継続することとした。
タマネギの糖度を紹介する特集で数値をねつ造した鹿児島読売テレビの情報番組『かごピタ』について、当該放送局から提出された報告書と番組DVDを踏まえて討議したが、一連の訂正とお詫びの放送や再発防止策等を受け、今回で討議は終了し審議の対象としないこととした。
6月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論した。

議事の詳細

日時
2023年7月14日(金)午後6時~午後9時20分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

NHKの『ニュースウオッチ9』は、ワクチン接種後に亡くなった遺族を、新型コロナウイルスに感染して亡くなった人の遺族と受け取られるような伝え方をし、放送倫理違反の疑いがあるとして6月の委員会で審議入りとなった。
同番組は5月15日に「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」と題する1分5秒のVTRを放送した。VTRには、ワクチン被害者の遺族の会から遺族3人が出演したが、3人がワクチン接種後に亡くなった人の遺族であるとの説明はなく、テロップで「夫を亡くした」「母を亡くした」と紹介するにとどまった。
今回の委員会では、担当委員から企画の提案、取材、編集、試写などの各段階において、詳細な疑問点と問題のある可能性が提示され、議論した。
委員会は今後、当該番組の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2.ラジオ大阪『大阪を前へ!』等について討議

大阪放送(ラジオ大阪)の番組『大阪を前へ!』、『兵庫を前へ!』は、統一地方選挙前半(3月31日告示、4月9日投票)の約2カ月前の2023年1月12日から1月29日までの間に計15回(15分番組×13回、30分番組×2回)放送された。ゲストは各回とも同じ政党の公認立候補予定者だった。
番組最終回の放送翌日、聴取者からBPOに「特定政党のキャッチフレーズをそのままタイトルにした番組で、ゲストはこの党の政治家と決まっており、内容は党の活動や今後の取り組みを紹介し宣伝することに尽きる。特定政党のPR番組を一般の番組と同じ扱いで放送することは問題だ」という趣旨の意見が寄せられた。
これを受けて委員会では報告書と番組CDの提出を当該放送局に求めた。報告書によれば、2022年11月末に広告代理店から番組企画の打診があり、社内で検討。同年12月に統一地方選まで2カ月を逆算し、空いている放送枠を確認して収録した。放送期間は2023年1月12日から1月29日に決定したという。また、すべての回でゲストが特定政党から公認を受けた立候補予定者であり、番組CDで放送内容を聴取すると、立候補予定者の議会や地元選挙区などでの活動実績や抱負、経歴などが紹介されていた。委員会は、政治的な公平性に抵触しているのではないか等の観点から、番組を討議事案としてさらに議論を継続することとした。

3.鹿児島読売テレビ『かごピタ』について討議

鹿児島読売テレビは2023年2月24日に、情報番組『かごピタ』内でタマネギの糖度について約13分半にわたる特集を放送した。その後6月14日に地元地方紙が数値のねつ造等を報じ、同日当該放送局からも自主申告があったため委員会は報告書と番組DVDの提出を求め、討議を行った。
報告書によれば、新タマネギと普通のタマネギの糖度の違いを糖度計で比較した映像を流したが、普通のタマネギについては、タマネギを使わずに砂糖水を計測した数値を紹介。新タマネギについては加熱した場合の糖度を表示していたものの、計測時の現場では値が高く出過ぎたと判断し、水を加えて数値を低くして放送したという。
当該特集について3月に、業務委託をしている制作会社のスタッフから「納得がいかない」旨の相談を当該放送局の社員が受け、調査したところ数値のねつ造・改ざんが明らかになった。番組担当者は「インターネットで調べた一般的な数値に近づけるために行った」などと説明している。番組では3月31日に、不正確なところがあったとして内容の訂正とお詫びをしたが、糖度を偽ったことについては全く説明がなかった。
6月14日の地元紙報道を受けて、6月16日の同番組で「砂糖水を使って数値を『ねつ造』したこと」、「水を加えて数値の『改ざん』をしたこと」、「3月31日の訂正とお詫びの放送で『誤った計測方法について伝えていなかったこと』」の3点を認めて放送し、改めて謝罪した。
当該放送局は、タマネギの糖度の数値についてねつ造・改ざんを把握したにもかかわらず、3月のお詫び放送ではその旨の説明を全くしておらず、地元紙報道を受けてようやくねつ造・改ざんを認め謝罪したのであって、放送倫理が内発的に遵守されるべき点からは問題があると言わざるを得ない。もっとも、再発防止の対応策として、番組プロデューサーに報道経験者を加えることや取材における留意事項を記載したチェックシートを新たに導入したこと、また、研修会の実施、番組審議会で審議されたこと等が示されていることを踏まえ、委員会での意見を議事概要に掲載した上で討議を終了し、審議の対象としないこととした。

【委員の主な意見】

・数値を変えたという、事実と異なる内容を放送したことは放送倫理違反と言えよう。類似事例では『発掘!あるある大事典Ⅱ』があるが、その番組はかなりの構造的な問題点や、繰り返し改ざんがされていたというような案件であり、それと比較して提出された報告書以上の事実が出てくるとは思われず、恒常的なものとは認められないだろう。
・初回(3月31日)のお詫び放送では、数値改ざん等には触れておらず新聞報道後に、初めてねつ造・改ざんの事実を2回目のお詫び放送の中で伝えた。この報道がなければそのままになっていたのではないか、という点では猛省してほしい。
・事後的な是正も一定程度なされていると考えられ、再発防止策も報告されている。

4.6月に寄せられた視聴者・聴取者意見を議論

6月に寄せられた視聴者・聴取者の意見のうち、芸能人の不倫の問題をめぐって、本人たちの自筆の手紙や交換日記を映したり、内容を報道したりすることはプライバシーの侵害ではないかといった批判的な意見が多数あったことや、歌舞伎俳優の自殺ほう助事件に関して、睡眠薬の種類、量、その方法などについて詳しく報じるのはあきらかに過剰であり、WHOの自殺報道ガイドラインに抵触し、視聴者の自殺を助長するのではないかといった疑問を呈する意見などが事務局から報告され、議論した。

以上

第318回

第318回 – 2023年7月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」通知・公表…など

議事の詳細

日時
2023年7月18日(火)  午後4時 ~ 午後5時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」通知・公表

審理入りしていた「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」について、委員会決定第79号として、申立人と被申立人双方への「通知」と「公表」記者会見を、委員会当日に行った。今回の委員会では委員長と事務局からその様子が報告された。

2.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

3.その他

事務局から今年度開催予定の意見交換会について報告した。

以上

2023年度 第79号

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」に
関する委員会決定

2023年7月18日 放送局:あいテレビ(愛媛県)

見解:要望あり(補足意見・少数意見付記)
申立ての対象は、あいテレビが2022年3月まで6年間放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組に出演していた女性フリーアナウンサーが、番組内での他の出演者からの度重なる下ネタや性的な言動によって羞恥心を抱かせられ、そのような番組を放送されたことでイメージが損なわれたとして、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと申し立てた。あいテレビは、番組の内容は社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はないと反論していた。委員会は審理の結果、人権侵害は認められず、放送倫理上の問題もあるとまでは言えないと判断した。そのうえで、制作現場における構造上の問題(フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、ジェンダーバランスの問題)に触れ、あいテレビに対して職場環境や仕組みを見直し改善していくための取り組みを続けるよう要望し、また、放送業界全体に対しても注意を促した。

【決定の概要】

申立人はフリーアナウンサーであり、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで6年間にわたって週1回放送した深夜バラエティー番組『鶴ツル』(「本件番組」)に出演していた。申立人は、番組内での他の出演者からの下ネタや性的な言動により羞恥心を抱かせられ、放送により申立人のイメージが損なわれたとして人権侵害と放送倫理上の問題を理由に本件を申し立てた。申立人は、放送開始当初その悩みをあいテレビに伝えたと主張するのに対し、あいテレビは、番組の趣旨を十分理解して申立人は出演していたと主張し、申立人が悩んでいたこと自体を否定する。
決定の概要は以下のとおりである。
本件番組における性的な言動によって長年悩んできたという申立人の主張は真摯なものである。ただし、そのことに関連して放送局に責任が認められるためには、本件番組が申立人の意に反していたことに放送局が気づいていたか、あるいは気づかなかったことに過失が認められる必要がある。この点、2021年11月に申立人が自己の番組降板を伝えつつ本件番組に関する悩みを本件番組のプロデューサーに伝えた際の録音反訳があり、プロデューサーがその時点で申立人の悩みを初めて知って驚いたことがわかる。このことから、あいテレビは同年11月に初めて申立人の意向を知ったと考えられる。それ以前にあいテレビに過失があったかを検討するに、申立人自身が、仕事として引き受けた以上アナウンサーの矜持として悩みが人にはわからないようにしたと述べていることや、申立人の番組関係者へのメールやブログからは、本件番組に対する積極性や好意的評価が少なくとも外見上窺われることから、あいテレビに過失があったとは言えない。
2021年11月以降について検討すると、あいテレビは、申立人から悩みを伝えられて直ちに下ネタをやめるよう他の出演者に伝え、収録時に申立人が不快と伝えた部分は放送しない措置をとるなどしており、あいテレビの対応に問題があったとは言えない。
さらに、本件番組で仮に深夜バラエティー番組として社会通念上許容される範囲を超えた性的な言動があり、あるいは申立人の人格の尊厳を否定するような言動があれば、申立人の意向に関するあいテレビの認識にかかわらず人権侵害が成立しうる。この点、本件では、下ネタや性的な言動が申立人に向けられていた場合がある点を特に問題とする複数の意見があったが、表現内容に着目して放送局の責任を問うことは表現の自由に対する制約につながりうるので、人権侵害ありとの判断には謙抑的であるのが妥当である。本件番組では眉をひそめたくなるような言動もあるが、人権侵害に当たる言動があったとは認められない。
以上から、本件番組において申立人に対する人権侵害があったとは認められない。
放送倫理上の問題の有無としては、まず、民放連の放送基準に照らして表現に着目した検討を行う。本件番組は、一般に子どもや青少年が視聴しない深夜の時間帯の放送であり、トークショーとしてその場の演出として出演者間でやりとりをしている事情に照らし、表現に着目して放送倫理上問題があると判断するのは控えるのが妥当である。
本件番組では、回を重ねるごとに出演者間で相手に対し「ここまで言っても許されるだろう」と考える範囲が広がっていき、申立人に対する下ネタや性的な言動も、冗談として言う分には許されると他の出演者が考える範囲が次第に広がったと認められる。そうすると、この問題は、個別具体的な言動について放送倫理上の問題として取り上げるより、制作現場における構造上の問題として捉えるのが妥当である。
また、出演者の身体的・精神的な健康状態に放送局が配慮すべきことは社会通念上当然であり、配慮が欠けていれば放送倫理の問題になりえる。この点、あいテレビは、申立人から悩みを打ち明けられて前述の措置をとるなどしている。したがって、放送倫理上の観点から問題があったというほど、あいテレビについて出演者への配慮に欠けていたとは言えない。
以上より、本件において放送倫理上の問題があるとまでは言えない。
最後に、制作現場における構造上の問題について要望を述べる。フリーアナウンサーとテレビ局という立場の違い、男性中心の職場におかれた女性の立場というジェンダーの視点に照らし、本件において申立人は圧倒的に弱い立場にあった。しかし、あいテレビは、申立人が構造的に弱い立場にあるという視点を欠いていた。あいテレビに対しては、降板するほどの覚悟がなくても出演者が自分の悩みを気軽に相談できる環境や職場でのジェンダーバランスなどの体制を整備したうえで、日ごろから出演者の身体的・精神的な健康状態に気を配り、問題を申告した人に不利益を課さない仕組みを構築するなど、よりよい制度を作るための取り組みを絶えず続けるよう要望する。
ここでの指摘事項は放送業界全体に共通する面があり、放送業界全体が、本事案を自社の環境や仕組みを見直し改善していくための契機とすることを期待する。

全文PDFはこちらpdf

2023年7月18日 第79号委員会決定

放送と人権等権利に関する委員会決定 第79号

申立人
女性フリーアナウンサー
被申立人
株式会社あいテレビ
苦情の対象となった番組
『鶴ツル』(毎週火曜日 午後11時56分~午前0時11分)
(2016年4月5日放送開始、2022年3月29日放送終了 全304回)
放送日
2021年2月9日
2021年3月23日
2021年4月20日
2021年5月4日
20211年6月1日
2021年8月3日
2021年8月31日
2021年12月21日

【本決定の構成】

I.事案の内容と経緯

  • 1. 放送の概要と申立ての経緯
  • 2. 本件放送の内容
  • 3. 論点

II.委員会の判断

  • 1.本件の特徴
  • 2.人権侵害の有無
  • 3.放送倫理上の問題の有無

III.結論と要望

  • 1.結論
  • 2.問題点の指摘と要望

IV.補足意見及び少数意見

  • 1.曽我部真裕委員長の補足意見
  • 2.水野剛也委員の補足意見
  • 3.國森康弘委員の少数意見

V.放送概要

VI.申立人の主張と被申立人の答弁

VII.申立ての経緯および審理経過

全文PDFはこちらpdf

2023年7月18日 決定の通知と公表の記者会見

通知は、2023年7月18日午後1時からBPO会議室で行われ、午後2時30分から千代田放送会館2階ホールで公表の記者会見が行われた。詳細はこちら。

  • 「補足意見」、「意見」、「少数意見」について
  • 放送人権委員会の「委員会決定」における「補足意見」、「意見」、「少数意見」は、いずれも委員個人の名前で書かれるものであって、委員会としての判断を示すものではない。その違いは下のとおりとなっている。

    補足意見:
    多数意見と結論が同じで、多数意見の理由付けを補足する観点から書かれたもの
    意見 :
    多数意見と結論を同じくするものの、理由付けが異なるもの
    少数意見:
    多数意見とは結論が異なるもの

2023年6月に視聴者から寄せられた意見

2023年6月に視聴者から寄せられた意見

芸能人の不倫の話題を伝える際に、その私信とされるものの文面が詳しく紹介されたことなどに意見が寄せられました。

2023年6月にBPOに寄せられた意見は 1,773件で、先月から 808件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 83% 電話 16% 郵便・FAX 計1%
男女別(任意回答)は、男性35% 女性24% で、世代別では 40歳代 24% 50歳代 23% 
30歳代 21% 60歳以上 15% 20歳代 13% 10歳代 1%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、6月の送付件数は746件、38事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から12件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

芸能人の不倫の話題を伝える際に、その私信とされるものの文面が詳しく紹介されたことなどに意見が寄せられました。ラジオに関する意見は27件、CMについては5件でした。

青少年に関する意見

6月中に青少年委員会に寄せられた意見は70件で、前月から6件減少しました。
今月は「表現・演出」が26件、「報道・情報」が17件、「要望・提言」が8件、それに「性的表現」と「危険行為」がそれぞれ4件ずつと続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 横浜市の路上殺人事件について「犯行直前に被害者宅近くで不審な人物が目撃されていた」ことを伝える際、被害者宅や事件現場の位置関係を示す衛星写真が使われた。被害者宅が特定できる大きさで町名も示されていた。行き過ぎだと思う。

  • 暴力団組員がマンション内で逮捕されたニュースで、逮捕の端緒となった通報をした住民の住戸と、組員らが使用していた住戸との位置関係が分かる表現があった。通報者が報復されたらどう責任を取るつもりなのか。

  • 子どもの虐待に関するニュースで「亡くなった子どもが首輪をされ、つながれているのを見た」という近隣の人のインタビューがあった。自殺に関するニュースで相談機関を案内するように、子どもの虐待に関するニュースでこどもの人権110番のような相談先や通報先を案内してはどうか。心当たりのある人がアクションを起こすことで救える命があるのではないだろうか。

  • 陸自射撃場内での銃撃のニュースで、献花に訪れた近隣の小学生くらいの子どもの「自衛官は手を振ったら振り返してくれる(親しみを感じる)」という声を伝えていた。このケースで子どもにインタビューする必要はあったのか。

  • 芸能人の不倫の話題で、当事者がノートなどでやりとりしていた私信とされるものの文面を具体的に紹介していた。本人の承諾なく公表していいのか。家族の人生もある。子どもたちがからかわれたりいじめを受けたりしないかも心配だ。

  • 夕方のローカル情報番組に「謎の人」が「乱入」し、気象情報が放送されなかった。キー局のバラエティー番組の企画で「謎の人」はその出演者だった。地元では先日、浸水被害があったばかり。こういう企画は非常に迷惑だ。いわゆるドッキリのために多くの視聴者を巻き込まないでほしい。

  • テレビの情報番組で紹介された「新タマネギの糖度」が、実際には砂糖水の糖度だったことを新聞報道で知った。放送局の情報はインターネットよりも信頼できると思っていただけに驚きを通り越して、そんな放送局なのかと呆れた。

  • ニュースをランキング形式で扱うことについて。災害に遭った人、事故で亡くなった人、殺された人がいる、そういったニュースにまで順位が付けられるのは心が痛む。

【バラエティー・教養】

  • お笑い芸人がブロワーの風を至近距離で相方の口に当てながらクイズのヒントを言わせていた。落ち葉や塵(ちり)を空気で吹き飛ばすための器具であり、取り扱い説明書には「人に向けない。事故の原因になる」とある。危険だと思う。

  • 視聴者プレゼントの応募に必要なキーワードが「#もうホタテ食べません」で、一時Twitterのトレンドキーワードになっていた。ネガティブキャンペーンにもなり得るのでよく考えて放送してほしい。

  • 北海道で「幸せを呼ぶ白い動物」白いエゾシカを探す企画。「縁起がいい」という理由として「鹿島神宮の祭神が白鹿に乗っていた」という言い伝えを紹介していたが、アイヌ文化にはアイヌ文化のエゾシカの位置づけがある。無理に日本文化とこじつけて「幸運の生き物」と紹介していたのは問題だと思う。

  • いわゆるドッキリで、コンビ芸人の一方に「相方が倒れて意識が戻らない。命の危険がある」とウソを伝え、動揺して泣いたりする様子を隠し撮り。親しい人の生死を心配する感情を娯楽にするのはいかがなものかと思う。

  • 番組内で野生のノビルを食べていた。ノビルはヒガンバナやスイセンなど毒のある植物と混生していることがある。このリスクも伝えてほしかった。

  • 2時間番組のサブタイトルが「○○(大手外食チェーン名)SP!絶対食べるべき○○メニュー」。一企業の宣伝のような番組が多いと感じる。

【ラジオ】

  • パーソナリティーはマーケティングセミナーの主宰者、ゲストは受講者。ゲストが「受講した結果、2週間で2,000万円を売り上げることができた」など受講を勧めるような内容だった。ラジオ番組としてどうなのか。

  • ラジオ番組のパーソナリティーが人的被害の出た大雨に触れ、「(前回までの放送で)『見に行くな』って言ったのに…流されちゃったおじいちゃん、いたし」などと笑いながらコメント。心ない発言だと思う。

  • 18:55に大きな地震があった。震源地、地震の規模、津波の有無などが知りたくて地元局をつけっぱなしにしていたが、地震情報が始まったのは19:12ごろだった。最大震度5弱の地震でこの姿勢はさすがにないと思う。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • オムニバスドラマのなかで、自宅をテーマパークにし、父母と長女が拘束した長男(若手サラリーマン)を、訪れた客にチェーンソーで傷つけさせる猟奇的なアトラクションの設定があった。子どもが見るゴールデン帯の番組としては非常識なものだ。大人の私でさえ気分が悪くなった。

  • バラエティー番組で、マジシャンが口に入れた小さい飴を左目から出す手品を披露した。子どもが真似たら危険だろう。「真似をしないで」というテロップを入れるべきだと思った。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 芸能人の不倫の話題を取り上げた午後のワイドショーで、週刊誌が報じたという交際相手との「交換日記」の内容を読み上げていた。地上波の番組で日記の内容を公表する必要があるのか。番組がいじめに加担しているようで不快だった。

  • 夜の報道番組の不登校特集で、発達障害の児童が実名で紹介された。この子の将来を考えたとき、たとえ保護者の同意があったとしても、実名や顔を報じるのは不適切だと思う。

【「要望・提言」】

  • バラエティー番組に東京大学の学生だけが出演。東大だけがよいと思わせるもので、一部の家庭で「教育虐待」につながらないか心配だ。どの大学にも価値はあるというメッセージを同時に打ち出してほしい。

【「性的表現」に関する意見】

  • ドキュメンタリー番組が相撲に取り組む高校生の兄弟に密着。自宅での入浴シーンがあったが、男児への性的配慮に欠ける。男の裸だけを軽んじて放送するのはいかがなものか。

【「危険行為」に関する意見】

  • バラエティー番組で、プロの女子バレーボール選手が、自陣の前衛にいる男性タレントの背中にサーブの球を当てるドッキリがあった。手加減していただろうが、危険なことだ。誤って後頭部にも当てていたが、本当に危ないと思う。子どもが学校で真似たら、取り返しのつかない事故になる。

第258回 放送と青少年に関する委員会

第258回-2023年6月

視聴者からの意見について… など

2023年6月23日、第258回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
委員会では、5月後半から6月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見の中から、バラエティー番組のドッキリ企画などについて意見を交わしましたが、「討論」に進むことはありませんでした。
6月の中高生モニターリポートのテーマは、「最近見たドラマについて」でした。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年6月23日(金) 午後4時00分~午後6時00分
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

5月後半から6月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
バラエティー番組のドッキリ企画で、プロの女子バレーボール選手が自陣の前衛にいる男性タレントの後頭部にサーブの球を当てたことについて、「手加減していたかもしれないが、非常に危険だと思う。子どもが学校で真似たら大変なことになる」などの視聴者意見がありました。
担当委員は「背中に当てるはずが、2回、頭に当ててしまった。確かに『危ないな』とは思うし、ほめられたものではないが、委員会で取り上げるまでではないだろう」と述べるなど、「討論」に進むことはありませんでした。
また、大手芸能事務所の創業者(故人)による男児の所属タレントへの性加害の問題が長らく報道されなかったことについて視聴者意見が多く寄せられましたが、担当委員は「放送局全体の信頼を考えたときに、今後の対応が大きな課題になる」という見方を示しました。別の委員は「子ども自身に男児の性被害の知識がなく、被害を自覚できないケースもあり、教育現場で教えていかなければならないだろう」と指摘しました。子ども番組の監修者を務めたことのある委員は「番組制作において、徐々に、包括的な性教育の一環として、『男女を問わず体のプライベートなゾーンは他人に触らせない』『嫌なことは嫌と言っていい』などをベースにされるようになってきている」などの説明がありました。全体として意見が出尽くし、「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

6月のテーマは「最近見たドラマについて①」で、25人から合わせて17番組(うちラジオ1番組)への報告がありました。およそ半数のモニターが録画または見逃し配信で視聴していました。
「自由記述」では「SNSで番組の予告を投稿してくれるので、興味を持つ機会が増える」などの意見が届いています。
「青少年へのおすすめ番組」では『偉人の年収 How much?』(NHK Eテレ)を最も多い8人が取り上げ、「使命感や達成感が偉人を動かしたことが分かり、人生における価値観を考えさせられた」などの感想が寄せられています。

◆モニター報告より◆

【最近見たドラマについて】

  • 『だが、情熱はある』(日本テレビ)
    • (オードリーの若林さんと南海キャンディーズの山里さんの)2人がどういう道のりで芸人になり、芸人として売れるためにどういう努力をしてきたかを交互に映して対比しているのが面白い点だと思います。そうすることで2人の努力の相違点や共通点を分かりやすく知ることができ、とても関心を持てたし応援したくなりました。(中学2年・女子・愛知)

    • とにかく俳優さんの演技が素晴らしく、漫才のシーンは漫才として笑ってしまったくらい同じ空間に引き込まれました。現役のお笑い芸人さんが色々な役で出演していて、キャスティングや細かいところまで芸人さんへのリスペクトが伝わってきます。今、若い人は作り込まれていないドラマを求める傾向があり、台本が本当にあるのかと思わせられるようなこのドラマは、俳優さんはもちろんスタッフさん全員が同じ意思をもって作品を届けていることが伝わってきます。(高校3年・女子・北海道)

  • 『ラストマン-全盲の捜査官‐』(TBSテレビ)
    • 主人公のFBI 捜査官が日本に来て事件の捜査をするということ自体、今までにはないような設定で斬新で面白いなと思いました。作り手がどのような思いで作っているのかを考えながら見てみると、今までと違った視点でドラマを見ることができ、面白かったです。(中学3年・男子・広島)

    • 私はまだSNSをやっていないが、いつかSNSを始めたときに誰かを傷つけてしまったり傷ついたりするかもしれないので、すごく気をつけていきたいと思った。(中学2年・女子・東京)

  • 『わたしのお嫁くん』(フジテレビ)

    このドラマはコミカルでマンガのような展開でおもしろく、現実ではありえないキャラやストーリーが痛快だ。取り上げているテーマは、従来は女性が家事で男性が仕事という既成概念をくつがえす社会派なものである。男女の役割が逆転しているからおもしろいテーマになりうるのだが、これは今までの日本社会が男女の役割を固定しすぎていたからこそ新鮮に映るのだと思う。私が大人になるころには主夫も増え、このテーマはおもしろい題材にならないかもしれない。(中学1年・女子・福岡)

  • 『FMシアター「桜は、散らない」』(NHK-FM)

    FMシアターは毎回とても物語に引き込まれます。今回の物語は高校生の話でしたが、演劇部の2人は苦しい状況でも逆風に負けずに頑張っていて、くじけないことの大切さを学びました。自分もこんな情熱的な高校生活を送りたいと思いました。(高校1年・男子・群馬)

  • 『月読くんの禁断お夜食』(テレビ朝日)

    いろいろなことで悩んでいるときにこのドラマを見ると、そよぎさんみたいに頑張るぞ!と思えます。ドラマのなかで出てくる料理はどれも美味しそうなので、放送局でサイトを作っていつでも見られるようにしておくといいのではないかと思います。(中学1年・女子・島根)

  • 『それってパクリじゃないですか?』(日本テレビ)

    知的財産といってもたくさんの種類があることに驚いた。ドラマのなかで出てきたことばなどをすぐに公式ツイッターアカウントで説明してくれるため、理解しながら視聴することができた。(高校3年・男子・神奈川)

  • 『墜落JKと廃人教師』(毎日放送)

    自殺という重いシーンから始まるのですが、テンポ感やコメディ要素によって最後まで明るい気持ちで見ることができました。自殺がテーマの作品は、“自殺はいけない”“悲しむ人がいるからダメ”といった、いかにも道徳という感じのものが多いと思うのですが、この作品は“1日ぐらい遅らせてもいいじゃないか”“なにかやり切ってからでもいい”といったように一概に自殺を止めるような道徳の授業感がなく、逆に心に響きやすいと思いました。(高校1年・女子・茨城)

  • 『ペンディングトレイン』(TBSテレビ)
    • このドラマについてたくさんの人が次の回や今後の考察をしたり、ツイッターに考察を載せていたりする。このように日本全国でネットを通して盛り上がるドラマはいいなと思った。島などで大がかりな撮影をしているので、6ヵ月ぐらい放送してもいいのではないかと思います。(高校1年・女子・北海道)

    • それまで無人島のような場所で過ごしてきた(ワープした電車の)乗客たちは、現代に戻ってお店でご飯を食べたり、家で生活したりすることに感動していました。当たり前のことだと思っていても、決してそれが普通だと思ってダラダラしてはいけないと考えさせられました。ワープすることは実際にはないかもしれないですが、ネットの恐ろしさは実際のものだと思います。日々の生活に感謝し、ネットには気をつけたいと思いました。(中学3年・女子・福岡)

  • 『風間公親 教場0』(フジテレビ)

    木村拓哉さん演じる指導員が、指導される刑事に見切りをつけようとするときに交番勤務になってもらう旨のことを言っていますが、実際に交番勤務の警察官はいい気分ではないだろうなあと思います。刑事になれずに交番勤務をしていると視聴者が勘違いしないだろうか、と思いました。(高校3年・女子・京都)

  • 『王様に捧ぐ薬指』(TBSテレビ)

    悩みながらも誠実な姿を見せて2人で乗り越えるなかで、2人の間柄がさらに良くなっていくのがこのドラマを見る中で1番の喜びだ。幸せな感情と緊迫な瞬間がハイスピードで入れ替わり、忙しすぎて目が離せない。退屈しない展開が繰り広げられているのが見ていてとても楽しい。(高校2年・女子・愛知)

【自由記述】

  • 最近ドラマやバラエティー番組がYouTubeやツイッターなどのSNSで予告やオフショットを投稿していて、若い人が興味を持つ機会が増えるのでとても良いなと思います。(高校1年・女子・茨城)

  • 情報番組で画面の隅のほうに視聴者の声としてつぶやかれたコメントが流れることがありますが、あれは何のためにあるのでしょうか。つぶやく意味が分からず、気になります。(高校2年・男子・山形)

  • 初めてラジオドラマを聴きました。本と同じような感じかなと思っていましたが、まったくそんなことはなく本当に面白かったです。想像力を働かせることができるからです。ラジオドラマのよさをみんなに知ってほしいと思いました。(中学3年・女子・滋賀)

  • 中学生のときよりリアルタイムでテレビを見る時間が減った。通学や授業・部活の時間が長くなり、(帰宅後も)あっという間にゴールデンタイムが終わってしまう。そこで最近はTVerなどの見逃し配信をよく活用している。ここ2~3年で無料配信の番組量が増え、より便利になったのがとてもありがたい。週1回の番組を2話連続で見られると前回の内容を思い出したいときにもう1回見ることができるので、1週間の見逃し配信期間を10日や2週間に延ばしてもらえたらさらにうれしい。(高校2年・女子・愛知)

  • テレビの番組は視聴率で評価されていますが、TVerなどで見逃し配信されており、私もクラブで定時に見られなかった番組は見逃し配信を利用しています。見逃し配信は視聴率には含まれないと思うので、視聴率で番組を評価するのはおかしいのではないかと思います。(高校3年・女子・京都)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『偉人の年収 How much?』(NHK Eテレ)
    • 一般的に偉人についてはその人が何をしたかとか、その人が生きてきた歴史をひも解くことが普通だが、偉人の年収というお金から半生を知るのは新しいと思いました。その時代のお金を現代風に例えることで分かりやすくなるのも良いと思いました。(高校2年・女子・東京)
    • 伊能忠敬の人生と偉業について年収をキーワードに深く知ることができた。歴史に残る偉業を成し遂げたのに対して年収は低くて驚いた。お金には換算できない使命感や達成感が動かしたのだと思った。人生における価値観を考えさせられた。今と当時を中継しているようなコントめいた演出がおもしろかった。(中学1年・女子・福岡)
    • 番組名にある年収(を伝えること)が目的ではなく、歴史の教科書だけでは収まらないこまかい知識や新しい考え方を学べるとてもよい番組だった。(高校2年・男子・山形)
  • 『LOVE HOKKAIDO』(北海道テレビ)

    ひとつの観光地を取り上げるのではなく、現地のいいところや人とのつながりを紹介していて大好きな北海道の魅力が伝わってうれしいです。アジアを中心に海外でも放送され、番組のホームページも英語や中国語表記に対応していることを知り、グローバルなとても良い取り組みだと思いました。(高校3年・女子・北海道)

  • 『日本に憧れ日本に学ぶ~スティーブ・ジョブズものづくりの原点~』(NHK BS1)

    スティーブ・ジョブズやアップル製品と日本の文化の意外な関係性が分かって驚いた。この番組を見て、日本の陶器などの技術をさらに知りたくなった。(中学3年・女子・広島)

  • 『サザエさん』(フジテレビ)

    タラちゃんの声優さんが変わってしまったので、まだ少し違和感がありました。番外編(知り合ったわけや家族関係)をやってほしいです。(中学1年・女子・千葉)

  • 『高校生のじかん』(九州朝日放送)

    早口言葉という身近な話題が番組になっていて新鮮だった。年代が近いこともあって共感しやすく、テレビ離れが進む若者にも理解を得られすい番組だと思った。(中学2年・男子・東京)

◆委員のコメント◆

【最近見たドラマについて】

  • 『わたしのお嫁くん』という番組に対して『社会が男女の役割を固定しすぎていたからこそ新鮮に映る番組だ』という感想があった。男女の役割についての考え方は、数十年前から比べるとかなり変わってきたと思っていたが、中学生には今も変わらずに固定観念があると映っているのだと思い、考えさせられる意見だった。

  • SNSに潜むリスクの面に言及したモニターが多かったが、SNSの問題は子どもたちも日ごろ向き合っている切実な問題なのだと改めて思った。

  • 自殺を扱ったドラマについて「道徳っぽさがなく心に響いた」という感想があり、考えさせられた。自死に関する報道でいえば、日本の放送局は免罪符的に相談窓口を一律に紹介するが、それによって憶測を呼び、いたずら電話で窓口がパンク状態になるというデメリットのほうが大きくなっている。一律にやるのではなく、よく考える必要があると思う。

【自由記述について】

  • 番組の放送中、なぜ画面に視聴者のつぶやきを流すのかという意見があった。番組としては双方向性を意識しているのかもしれないが、他人の意見が次々と入ってくると自分の考えが左右されそうになることもあり、そういうところが気になる若い人もいるのだろう。

  • 「週1回の番組を2話連続で見られるよう見逃し配信期間を延ばしてほしい」という声があった。放送局側の事情があって難しいだろうが、前編・後編があれば一気に見たいという気持ちは分かるし、いわゆるサブスクに親しんだ世代にはとくにそうした要望はあると思う。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • サザエさんの番外編の放送を望む声があった。かつて番外編を見た記憶があるが、確かに今の中学生にサザエさん一家の人間関係はすぐ理解できないかもしれないので、改めて番外編を放送すれば興味を持たれるかもしれないと思った。

今後の予定について

次回は7月25日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します。

以上

第317回

第317回 – 2023年6月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2023年6月20日(火)  午後4時 ~ 午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、これまでの審理をもとにまとめた決定文の最終案が起草委員から示され議論し、委員会決定として了承した。その結果、7月中に通知・公表を目指すことになった。

2.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

3.その他

新たに就任した神田真介理事・事務局長が挨拶した。

以上

第184回

第184回–2023年6月

NHK『ニュースウオッチ9』が審議入り

第184回放送倫理検証委員会は、6月9日に千代田放送会館で開催された。
NHK『ニュースウオッチ9』は、エンディングVTRにおいて、ワクチンを接種後に亡くなった人の遺族の訴えを、新型コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、適切ではなかったと謝罪した。当該放送局から提出された報告書や番組DVDを踏まえて協議した結果、放送倫理違反の疑いがあり、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
前回の委員会に引き続き、民放ラジオのコメンテーター発言について議論したが、当該放送局の番組審議会での意見や是正措置を評価し議論を終了した。
5月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論した。

議事の詳細

日時
2023年6月9日(金)午後5時~午後8時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. NHK『ニュースウオッチ9』について審議

NHKは5月15日の『ニュースウオッチ9』のエンディングで「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」と題する1分5秒のVTRを放送した。
VTRには、ワクチン被害者の遺族の会から遺族3人が出演。「遺族の人たちの声を届けていきたい」「風化させることはしたくない」などと語ったが、3人がワクチン接種後に亡くなった人の遺族だとの説明は無く、テロップで「夫を亡くした」「母を亡くした」という紹介にとどまった。このため視聴者には、新型コロナウイルス感染により亡くなったかのような印象を与える放送となった。
NHKは遺族の会から抗議を受け、16日の同番組で「新型コロナに感染して亡くなったと受け取られるように伝えてしまった。適切ではありませんでした」と謝罪した。
委員会は、NHKから提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議を行った。その結果、企画、取材、編集の各段階で不明な点が多く報告書は納得できる内容ではなく、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該番組の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2. 民放ラジオのコメンテーター発言について議論

民放ラジオ局でコメンテーターが発言した内容とそこに至る経緯について、前回に引き続いて議論が行われた。当該放送局の番組審議会で厳しい意見が連続して出されていることや、当該放送局でとられたコンプライアンスの強化や発言に関する知識を深めるなどの活動があり、是正措置が一定程度評価できるものであることを考慮し、議論を今回で終了することにした。

3. 5月に寄せられた視聴者・聴取者意見を議論

5月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、過大なノルマを達成するために職員やその家族が不必要な契約を結ぶいわゆる“自爆営業”がJAで横行している実態を放送した際、インタビューに応じたJA職員の身元を隠す措置が不十分だったため、特定され退職に追い込まれたとする報道を受けて、取材対象に対する不誠実な姿勢は問題だとの意見が寄せられたことなどを事務局が報告し、議論した。

以上

2023年6月9日

NHK『ニュースウオッチ9』が審議入り

NHKは5月15日の『ニュースウオッチ9』のエンディングで「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」と題する1分5秒のVTRを放送した。
VTRには、ワクチン被害者の遺族の会から遺族3人が出演。「遺族の人たちの声を届けていきたい」「風化させることはしたくない」などと語ったが、3人がワクチン接種後に亡くなった人の遺族だとの説明は無く、テロップで「夫を亡くした」「母を亡くした」という紹介にとどまった。このため視聴者には、新型コロナウイルス感染により亡くなったかのような印象を与える放送となった。
NHKは遺族の会から抗議を受け、16日の同番組で「新型コロナに感染して亡くなったと受け取られるように伝えてしまった。適切ではありませんでした」と謝罪した。
委員会は、NHKから提出された報告書と番組DVDを踏まえて協議を行った。その結果、企画、取材、編集の各段階で不明な点が多く報告書は納得できる内容ではなく、放送倫理違反の疑いがあることから、放送に至った経緯等について詳しく検証する必要があるとして審議入りを決めた。
委員会は今後、当該番組の関係者からヒアリングを行うなどして審議を進める。

2023年5月に視聴者から寄せられた意見

2023年5月に視聴者から寄せられた意見

ワクチン接種後に死亡した人の家族に取材しながらそのことに一切触れない編集がなされたこと、芸能事務所創業者の性加害問題をめぐって当該事務所と放送局との関係、報道のあり方などについて意見が寄せられました。

2023年5月にBPOに寄せられた意見は 2,581件で、先月から 1,016 件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 88% 電話 11% 郵便・FAX 計1%
男女別(任意回答)は、男性33% 女性23% で、世代別では 40歳代 25% 30歳代 24% 
50歳代 23% 60歳以上 13% 20歳代 11% 10歳代 1%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、5月の送付件数は1,541件、55事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から12件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

ワクチン接種後に死亡した人の家族に取材しながらそのことに一切触れない編集がなされたこと、総理大臣がバラエティー番組に「講師」として出演したことなどに意見が寄せられました。また芸能事務所創業者の性加害問題をめぐって、当該事務所と放送事業者との関係を疑問視する意見、その報道のあり方についての意見などが寄せられました。ラジオに関する意見は33件、CMについては4件でした。

青少年に関する意見

5月中に青少年委員会に寄せられた意見は76件で、前月から60件減少しました。
今月は「要望・提言」が23件、「表現・演出」が20件、「報道・情報」が10件、それに「いじめ・虐待」と「言葉」がそれぞれ4件ずつと続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 新型コロナワクチン接種直後に死亡した人の遺族に取材しておきながら、そのことには一切触れず、まるでコロナ感染症で死亡したかのようにインタビューが切り取られていてとても怖いと感じた。
  • これが許されるなら放送局は事実を都合良く「編集」していくらでも嘘を放送できてしまうことになり、信用できなくなる。
  • 謝罪はあったが、なぜこのような編集をしたのか説明がなかった。他にもこのようなことが行われているのかと疑ってしまう。

  • 芸能事務所創業者の性加害問題について、同事務所に所属する情報番組の司会者が「最年長の私が最初に口を開くべきだと思い、後輩たちに(発言を)極力待ってもらった」。当事者である事務所や事務所所属の出演者の意向で当該局や他局の報道内容が左右されるのはおかしい。
  • 土日、朝から夜までこの芸能事務所のタレントに頼り切った番組がずらりと並んでいる局があり、その局は性加害問題を正面から伝えていない。報道する側としての矜持はどこに消えたのか。

  • 強盗殺人事件の防犯カメラ映像で、殺害された瞬間のものと思われる被害者の悲鳴が字幕付きで放送された。あまりにもショッキングな音声で怖い。事件の残酷さを伝えるにしても過剰なように感じる。

  • 風俗店で従業員女性が刺殺された事件で、被害女性の名前と年齢が報じられていた。実名報道により、顔写真と本名と風俗店で働いていたという事実がネットで拡散されている。遺族の苦痛は計り知れない。

  • 生成AIを使って自分の作品を盗用され、著作権を侵害されたと訴える画像クリエーターを取材していたが、「偽物の方が好き」という街頭インタビューが並び、コメンテーターは「コピーされる前提で作るしかない」などと発言。世界中でAIによる著作権侵害が問題視され議論されている中でこのような内容を報道番組で流すことに疑問を感じる。

【バラエティー・教養】

  • 密着取材した男性の作業の要領の悪さや言動に他の出演者が大笑いしていた。私は発達障害の当事者と関わる立場にあり、こうした放送は同じようなことに生きづらさを感じている人を傷つけるのではないかと思う。見ていてとても心が痛かった。

  • タレントに簡単な割り算をさせ、できないことを笑いにしていた。「おバカタレント」というカテゴライズ自体が好ましくない。

  • 認知症を発症してテレビ出演から遠ざかっている漫画家と、彼と親交の深い番組MCが触れ合うシリーズ企画。2人で絵を描いた今回は、漫画家の脳の活性化にも役立ったようで、かつてのタッチが戻ってきていた。いい企画だと感じた。

  • 韓国取材。陳列された大皿から店員がカップに取り分けて販売する形態の惣菜店で、タレントが自分の使っている爪楊枝で大皿からじかにつまみ食い。両腕で大きな×印を作って制止する店員に対して、笑いながら番組名を繰り返していた。ネットの迷惑行為動画とかわらないものをテレビで堂々と流すことが信じられないし、日本人として恥ずかしい。

  • 博物館が収蔵している古いゲームカセットの元の持ち主を探そうと生放送で呼びかけた企画。「自分のものではないか」と電話をかけてきた視聴者に、カセットに書かれている名前や発売年などと照らし合わせるためにフルネームと生年月日を言わせていた。個人情報の取り扱いとして大丈夫なのだろうか。

  • 旅客機の元パイロットが飛行中に「迫りくる巨大な謎物体」を目撃したというエピソードを扱っていたが、日時などからこれはソ連の偵察衛星コスモスの墜落だ。あたかもUFOであるかのような表現は不適切。

  • 首相が「広島サミットへの思い」などのテーマでバラエティー番組に出演。「きっといい人であろう」といった好印象を、政治的実績とは関係なく視聴者に与える可能性があり、放送法が目的とする「健全な民主主義の発達」に逆行する。

  • 大喜利の「お題」が「『おでんツンツン』『醤油ペロペロ』の彼らをも忘れさせるほどの悪行」。彼らの行為は犯罪だ。それをお題にすることで「笑ってもらえることなんだ、悪いことではないんだ」と思う人が出てくるのではないのか。

  • 逃げたペットを捜す話題で、鳥の場合の情報募集ポスターを例示し、出演者が(個体の識別が難しく発見は)「無理じゃん」などと話してスタッフとともに笑う場面があった。飼い主が必死に捜すことは笑われることなのか。非常に不快だ。

【ドラマ・アニメ】

  • アニメで、恋愛リアリティーショーに出演した女性キャラクターが誹謗中傷を受けて自殺を図るというエピソードがあった。実際にあった出来事を想起させるもので、その出来事で自殺した女性の遺族がネット上で不快感を示したところ、一部の番組ファンから激しい誹謗中傷を受けている。制作会社や放送局は一個人が攻撃される要因を作ってしまっているのだから、何らかのアナウンスを行う必要があるのではないだろうか。

【その他】

  • マイナンバーカード関連の特典の申込期間が9月末までに延長されたが、番組が「明日まで」と古い情報を伝えていたので、混乱を招くと思い、当該局に電話で知らせた。視聴者対応窓口の開始前だったので代表電話に「番組に伝えてほしい」と要請したところ、対応者は「ここからは現場に伝えることはできない」と頑として譲らなかった。結局、番組の最後で正しい情報を伝えていたが、何と融通の利かない対応なのかと呆れてしまった。

青少年に関する意見

【「要望・提言」】

  • 芸能事務所創業者による未成年の所属タレントに対する性加害問題をテレビ業界は直視し、伝えるべきだ。

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組のリポーターが、エジプトのピラミッドのシーンで騒ぎ立てていた。お墓であり、神聖な場所であることを軽んじて騒ぎ立てる演出はいけないと思う。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 報道番組で中学校教師が殺人容疑で逮捕された事件の続報として、殺害されたときの被害者とみられるうめき声が放送された。あまりにむごい。大人のわたしでも胸が痛くなり、体調が悪くなった。子どもたちが聞いたらと思うと、放送を控えるべきだった。

【「いじめ・虐待」に関する意見】

  • バラエティー番組で「運動神経悪い芸人」というコーナーがあり、苦手な芸人に実際にスポーツをやらせてうまくできないのを笑いにする。学校の体育の時間に運動がうまくできない子どもを嘲笑したり、いじめたりすることにつながるのではないだろうか。

【「言葉」に関する意見】

  • 子ども向け特撮ドラマで「うんこ」という言葉を意味もなく連呼していて非常に不快だ。このほか、登場人物のせりふが汚くて、子どもを持つ親の立場としてたいへん困惑する。

第257回 放送と青少年に関する委員会

第257回-2023年5月

「幼稚園児のかくれんぼのドッキリ企画」についての「討論」など

2023年5 月23日、第257回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ7人の委員が出席しました。
委員会では、先月議論された「幼稚園児のかくれんぼのドッキリ企画」についての「討論」が行われました。
4月後半から5月前半までの約1か月の間に寄せられた視聴者意見の中では、バラエティー番組で挿入された、性的虐待と見られかねない映像について議論しました。
5月の中高生モニターリポートのテーマは、「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。
最後に今後の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年5月23日(火) 午後4時00分~午後6時00分
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
「幼稚園児のかくれんぼのドッキリ企画」についての「討論」
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

「幼稚園児のかくれんぼのドッキリ企画」についての「討論」

委員会では、先月議論された「バラエティー番組の中で、実在の幼稚園でかくれんぼをした際、隠れた園児が見ず知らずの子どもに入れ替わって、鬼役の子どもを困惑させたドッキリ企画」に関して、放送局側が番組制作のプロセスや放送後と今後の対応について説明した文書をもとに「討論」が行われました。
委員から、「委員会の質問に対して非常に詳細に答えてあり、誠実に対応してもらった」と評価する意見や、「子どもの心理問題に関わる者にとって、子どもに対して心理実験的なことはできないというのが常識である、むしろ番組制作に積極的に協力した幼稚園側の対応に驚きを感じた」との指摘がありました。別の委員は「番組制作の過程で、誰からも『この企画は大丈夫か』という疑問が呈されなかったことが不思議に思えるし、今後の課題だろう」とした上で、「『(子どもの発達段階の)専門家のもとで学ぶ機会を設ける』という局側の説明が今後のポイントになる」と述べるなど意見が出尽くしたところで、「討論」は今回で終了となりました。

視聴者からの意見について

4月後半から5月前半までの約1か月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
バラエティー番組の企画の中で、家族がスマートフォンで撮影したパジャマ姿の父親が娘にまとわりつく映像を放送したところ、視聴者から「性的虐待としか言えない映像だ」「気持ち悪い、見なければよかったと感じた」などの意見が寄せられました。
担当委員は「親子だから許されるという受け止め方をされるのは、どうかと思う」と述べ、別の委員は「娘といっても今回は19歳(の成人)だが、日本では子どもに対する性的な関わりが大目に見てこられた背景がある」と指摘し、「そろそろユニバーサル・スタンダード(世界標準)で考える必要があり、その観点からは課題のある映像だろう」という見方を示しました。
しかし、約1か月遅れの東京地区での放送では、放送局側が当該映像部分を削除したことを踏まえて、「削除の経緯は不明であるが、局側が適切に対応したのだろうと理解する」という声も出されました。
これらを受けて、「性的虐待と見られかねない映像には、もう少し鋭敏な意識をもって番組制作にあたるべきだ」ということを総括として議論は打ち切られ、「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

5月のテーマは「最近見たニュース・報道・情報番組について」でした。いくつかの番組を比較したモニターも多く、「マイナンバーをめぐるトラブルのニュースはもっと詳しく説明するべきだ」、「地震直後の報道について考える必要があると思う」などの意見が寄せられました。
「自由記述」では「テレビとラジオがタッグを組んでそれぞれの魅力を発信したらいいのではないか」、「街頭でのインタビューは幅広い年齢層に聞いてほしい」といった声が届いています。
「青少年へのおすすめ番組」では『君の声が聴きたい-“考える”を始める-』(NHK総合)、『THE DANCE DAY』(日本テレビ)、『沼にハマって聞いてみた』(NHK Eテレ)などに複数のモニターから感想が寄せられました。

◆モニター報告より◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • 『朝メシまで。ゴールデンSP』(テレビ朝日)

    新幹線のレール作業員の取材ではふだん見られない場所に密着していて興味をひかれる内容だった。効果音も効いていてドラマのような感覚で見ることができた。緊迫感も映像で表現されていて良いと思った。(中学2年・男子・埼玉)

  • 『放送ワイド 記者の力』(テレビ西日本)

    毎回キャスターの川崎健太さんが現場へ出向いて生の声を取材するコーナーがある。非常に新鮮で、具体的で身近な現象としてダイレクトに伝わる。(中学1年・女子・福岡)

  • 『THE TIME』(TBSテレビ)

    野球では試合の珍プレーや話題の人などいろいろな情報を伝えていて、スポーツの取り上げ方がいいと思いました。関心度別にニュースを紹介するコーナーで視聴者の意見があるのはいいのですが、意見の年代が偏っていたり専門家の意見がなかったりするのは気になりました。(中学2年・女子・栃木)

  • 『ラヴィット!』(TBSテレビ)

    とても面白く、一日が楽しくなりそうでがんばれそうだった。番組を面白くしよう、自分が楽しもうと全力で取り組んでいる姿勢がとてもいいと思った。それぞれが自分の役割を認識していて構成も良かった。(中学2年・女子・福井)

  • 『news zero』(日本テレビ)
    • マイナンバーをめぐるトラブルのニュースは報道時間も短く簡単にまとめられていましたが、このニュースこそ国民への影響が大きいため時間を掛けて詳しく説明するべきだと思います。自分のマイナンバーカードの情報を「マイナポータル」で確認できますと軽く流されているように感じました。(高校3年・女子・京都)

    • 連続放火事件について上空からの映像を使っていて分かりやすかった。(芸能事務所の創設者による)性加害について情報を隠すことなく丁寧に説明をしていいと思った。(高校3年・男子・千葉)

  • 『news zero』(日本テレビ)、『news23』(TBSテレビ)

    本人が亡くなり本当はどうだったのか詳しく分からないなかでの性加害の報道は世の中の人を混乱させてしまうのではないかと思う。でも性加害はあってはならないことなので、これから被害者を減らしていくためにも対策を立てる必要があると考える。未成年者が打ち明けにくい理由を専門の人が解説したり街頭インタビューで一般の人の意見も取り入れたりして自分と違う意見を聞くことができて良かった。それぞれ同じことを報道していても少しずつ報道の仕方が違ったり見出しが違ったりしたのが印象的だった。(中学2年・女子・東京)

  • 『よんチャンTV』(毎日放送)

    とくに好きなのはJR大阪駅から道に迷っている人を目的地まで案内するコーナーです。毎回、個性あふれる人が案内されるのがおもしろいです。(高校1年・女子・京都)

  • 『イチモニ!』(北海道テレビ)

    カヌレ専門店について食リポをする際、何人かの女性アナウンサーが一緒に試食することになった。それぞれ違う種類のカヌレの味を伝えていたため1人がリポートするより視聴者は飽きずに見られ、偏りなく感想を伝えるメリットがあったのではないかと思う。(高校1年・女子・北海道)

  • 『どさんこワイド』(札幌テレビ)、『イチオシ』(北海道テレビ)、『報道ステーション』(テレビ朝日)

    今回の熊の事故も、人が襲われるという事例が出てから全国ニュースでも対策が報じられた。私は事故や事件が起きる前に対策を知ってもらうべきではないかと考える。日々さまざまな観点から、起きそうな事故や事件を例に挙げて対策を考えていくコーナーを作ってはどうかと思う。視聴者からリアルタイムで意見を募集して全国で共有しあってもいいと思う。(高校1年・女子・北海道)

  • ≪地震発生時の各局の報道対応について≫ (7番組を視聴)

    災害発生直後の報道について各局考える必要があると思う。番組中、新着情報がなく同じ情報を繰り返している。被災地にいる人への電話取材は、見ていて不快になるものがあった。大変な中で取材を受けてくれている方に対して誠意を感じられないアナウンサーやキャスターもいた。決まっていることを一方的に聞くだけや何度も同じことを聞くのはどうなのかと思う。(高校3年・女子・北海道)

【自由記述】

  • 友達はラジオどころかテレビすらほとんど見ないと言っていて、とても驚きショックだった。このままではどんなに良い番組を作っても聴いてくれる人や見てくれる人がいなくなるのではないかと不安になった。だからこそラジオとテレビでタッグを組んでそれぞれの魅力を発信したらいいと思う。(中学3年・男子・広島)

  • 週に1回くらい、いろいろなテレビ局が合体してニュースをやると面白いと思いました。(中学1年・女子・千葉)

  • 街の人へのインタビューなどで特定の年齢へのインタビューが集中しているように思うので、幅広い年齢層にインタビューをしてほしい。(中学3年・女子・広島)

  • 今年度から放送しているNHKラジオの夕方の時間帯の朗読番組が、夕方の落ち着きたくなる気分に合っていてとても良いのでぜひ続けてほしい。(中学2年・男子・東京)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『沼にハマってきいてみた』(NHK総合)
    • 物理部と原宿通いに密着していた。デコラファッションの存在は知ってはいたが、そのファッションによって人とのつながりが生まれていることに驚いた。沼にハマるほどハマったり好きになったりするものがあまりないので、1つのことを極められる人を改めてすごいと思った。(中学2年・女子・東京)
    • 好きなことを探究してたくさんの人とコミュニケーションを取り、知らなかったことを知って自分の可能性を広げているようで素敵だと思いました。(中学3年・女子・福岡)
    • ことばはなくても共感することでつながれる、好きなものが同じというだけで仲良くなれることを知った。(中学1年・女子・福岡)
  • 『君の声が聴きたい-“考える”を始める-』(NHK総合)
    • 「若者は政治に関心がない」と言われがちだが、そうではなく政治に参加しても声を聴いてくれないから意味がないと思っている若者が多いということだ。私はここにすごく共感した。この番組によって若者の心が少しでもポジティブになったと思う。(高校1年・女子・北海道)

    • 学校や家などいろいろな場面で子どもや若者の幸せを考えてくれていて、とてもうれしい気持ちになりました。子どもや若者の悩みや声には共感できるものが多くありました。そうした悩みを解決するため「違う道もあるよ」という選択肢を広げてくれたので、とても気が楽になったし、世界が広がりました。(中学2年・女子・栃木)

  • 『THE DANCE DAY』(日本テレビ)
    • 出場チームの皆さんの息の合ったダンスには目が離せなくなるほど引き込まれました。自分もできるなら会場に行ってみてみたいなと思いました。(高校3年・男子・神奈川)

    • この大会の面白いところはダンスのジャンルにまったく制限がないところだった。練習風景の映像が流れてきたときには、ゼロから100%までひたすら練習して素晴らしい演技を作りあげていったのだと実感し、すごく心を打たれた。同年代の高校生がとても輝いていたのを見て私ももっと部活頑張ろう!と思わせられた。(高校2年・女子・愛知)

    • ストーリー性のあるダンスが多く、ただステップするのがダンスではないということに気づかされました。そうしたダンスの構成は運動会でも参考にできる部分が多いと思いました。(高校2年・男子・山形)

  • 『かごんま未来ノート』(鹿児島テレビ)

    身近な課題を分かりやすく短くまとめていて良かった。地域の人たちが交流しあうだけでなく町の未来を考える様子は、今までになく新しい取り組みに感じた。番組の主題がはっきりしているところもよかった。(中学2年・男子・東京)

  • 『マジックアワー 天空が魔法にかかるとき』(NHK BS4K)

    日頃じっくり見ることがない空の現象について紹介するのは、空の素晴らしさを改めて知る機会としてよいと思いました。夕焼けはなぜ赤いのかや地球の影についてなど、さまざまな空の現象が起こる理由を説明していたので大変ためになりました。(中学2年・女子・愛知)

◆委員のコメント◆

【最近見たニュース・報道・情報番組について】

  • ニュースを紹介するコーナーの視聴者意見について「年代が偏っていることが気になる」という意見があった。放送で視聴者の意見を盛んに伝える一方で、若い人の中には「自分たちの見方を代表していない」ととらえてほかのメディアへ移ってしまう可能性もあると思った。

  • 地震直後の報道について批判的な視点からの意見が寄せられ、テロップの表示の仕方など具体的な提案もあった。余震のおそれがある発災直後の電話インタビューなどへの指摘は、確かにそうだなと思うところがあった。

  • 若い世代はニュースを主にネットなどで入手しているのかもしれないが、放送番組を比較して見た人たちは、それぞれの番組の視点の違いに素早く気づいたようだ。そうした視点の違いは報道の自由度につながるもので大事なことだと思う。

【自由記述について】

  • 「テレビとラジオでタッグを組んでそれぞれの魅力を発信してはどうか」という提案は、若い世代があまりテレビを見ない、ラジオを聴かないという現状と、一方でそれを危惧する若者がいることをくっきりと見せていて印象的だった。

【青少年へのおすすめ番組について】

  • 『マジックアワー 天空が魔法にかかるとき』を見て感動したという感想があった。日の出や日の入りを実際に見たことがない子どもがかなりいるとも聞くが、テレビ番組が「天空を見上げる動機を与える」役割を果たしうるということを感慨深く思った。

今後の予定について

次回は6月23日(金)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開く予定です。

以上

2023年2月9日

青少年委員会 岡山・高松地区放送局との意見交換会 概要

青少年委員会は全国各地で様々な形の意見交換会を開催しています。今回は岡山・高松地区の放送局とBPOとの相互理解を深め、番組向上に役立てることを目的に本年(2023年)2月9日午後2時から5時まで、岡山市で初めて意見交換しました。
BPOからは青少年委員会の榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員の8人の委員全員が参加しました。放送局からはNHK(岡山放送局、高松放送局)、RSK山陽放送、岡山放送、テレビせとうち、西日本放送、瀬戸内海放送、岡山エフエム放送、エフエム香川の各BPO連絡責任者、編成、制作、報道番組担当者など計24人が参加しました。

《【テーマ1】「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について》

まず、「テーマ1」として青少年委員会が昨年(2022年)4月15日に公表した「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について、榊原委員長らが説明し、その後、意見交換しました。

〇榊原委員長
青少年委員会がこの「見解」を出すに至った経緯を説明します。
英語ではエンパシー(empathy)といいますが、共感や共感性というのは、私たちが他人との間で同じ考えを持って、他人が苦しんでいるときにはこちらも苦しみ、他人が喜んでいるときはこちらも喜ぶ、そういう人間の持っている大きな精神的なあるいは心理的な力です。どういうものに共感を得るのか得ないのかは個人差がありますが、これはどんな人にもある感情です。
ではどのようなプロセスを経て、子どもが共感性を身につけていくのか。これは乳幼児の心理学あるいは脳科学の大きな課題でした。自然にそういう共感性が芽生えるのかというと、どうもそうではない。人間の脳の中に経験を重ねることによって共感が生じるような脳の仕組みがあるのだ、心理の仕組みがあるのだということが徐々にわかり、そのトピックスとして挙がってきたのが「ミラーニューロン」です。人間の大脳のうち前頭葉の一部にある、この「ミラーニューロン」と呼ばれる神経の働きだろうと分かってきました。
ミラーニューロンによる共感性の獲得の道筋には、一つのシナリオがあります。私たちが他人の苦痛、表情を見る。そうすると自分のミラーニューロン系が、自分が苦痛を受けたときと同じように活動します。そのときに、その苦痛を受けている人を誰かが助けたり、慰めてあげたりするのを見ると、慰められた人の苦痛が減るだけでなく、それを見ているほうも苦痛の表情が和らぎます。このミラーニューロンを通じて、そういう感情といいますか、それが伝播するような仕組みがあります。このようなことを何度も見ていると、子どもは何か痛い思いや苦しい思いをしている人を助けるという行動によって、自分もそれから解放される経験を得て、自分もそういうのを見たら助けてあげようという気持ちを後押しする、そういう働きをするのだろうと言われています。これが向社会的行動の強化と共感性の発達です。
痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティーについては、若手の芸人が何らかのことで罰ゲームさせられる場合が多いのですが、何かすごく痛くなると。それは痛いわけで、見ているほうも痛そうだと感じます。問題はそこがダブル構造になっていて、スタジオにいる先輩の芸人たちが、若手が痛がっているのを見て皆で笑うわけです。それを私たち視聴者は見ている。特に小さい子どもが見ると、ミラーニューロンが働いて痛いはずなのに、それを笑って見ている大人が一緒に見える、こういう構造になるわけです。
それでなにが起きるかというと、ひとつは、苦痛を感じている人を誰かが嘲笑している、笑っているのを見ると、共感性の獲得の道筋がブロックされてしまい、自分の苦痛の元であるミラーニューロンの活動性が低下しません。さらには向社会的な行動を強化するとか、共感性の発達につながるルートに、必ずしもよくない情報が入ってくることになります。
もうひとつは、大人がそういう痛みを伴うものを見て笑っているのですから、小さい子どもの中には、こういうことは世の中で笑ってもよいのだという気持ちが育まれて、いじめなどにつながる可能性があります。
もちろん1回の番組だけでそうなるわけではないし、多くの経験を経てなるわけですが、テレビはいつでも、みんなよく見ています。回数を重ねることによって、そのような問題が起きるのではないかという懸念があり、それが「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解を発表した経緯なのです。

〇緑川副委員長
「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解は長文ですが、全部を読んでいただければ、必ずしも「痛みを伴う罰ゲーム、イコールNG」ということではないと、ご理解いただけると思います。
テレビ局は公共の電波の使用をすることができる位置にいて、公共のための放送をする責任や使命を負っています。子どもたちに対して、教養の形成であるとか、いわゆる公共善の実現に向けて考え続けるという観点も大切だと思います。表現や演出については、面白さを追求することの重要さ、そして、そのために限界的な表現に挑戦していくことの重要性を意識して、常にブラッシュアップをしていかなければならないだろうと思います。そして、その時々の社会の状況であるとか社会通念の変化、それから、最新の脳科学などによる知見、例えば子どもの発達心理学的な研究成果などについても謙虚にそのような情報、知見を取り入れて、さらによい番組にしていくという態度が重要なのではないでしょうか。
そういう考え方で、最新の脳科学の見地から、「ミラーニューロン」という知見を番組制作している皆さんと共有することによって、よりよい番組を作っていくことに役立ててほしいという理由で、今回の見解を出したことをご理解いただきたいと思います。

<意見交換>

〇参加者
ローカル局でいうと、このような「痛みを伴う」というのは制作の現場では、それほど機会はありません。ただ、BPOの見解が出て以降は何かしら罰ゲームというのはNGみたいな雰囲気があるように思います。ある場面の痛がるようなところだけを切り取られて延々と流すということになると、これも駄目なのかという感じを持ちます。
またテレビだけではなくて、ネットである部分だけ切り取られてとかSNSで流されるとか、どこまで気をつければいいのかなというのも気になります。

〇佐々木委員
ネットだと、場面を部分的に切り取ってしまうことだと理解したのですが、そうするとテレビの場合は、これこれこういう文脈でこれぐらいのものだったら、最後にみんな仲良くなっているから許容されるし、それほど大きな悪影響はないと思います。ネットの場合は文脈が分からないので、暴力シーンなどの一部分だけを見ていると、やはり結果がどうなったかが分かりません。そうすると、過去の研究で暴力シーンの結果が分からない場合は、まねされることが結構あるという結果が出ています。その暴力行為が最後に罰せられるなどの結果が示されない場合は、ネット上の切り取った画像はちょっと問題だと思います。

〇飯田委員
いわゆる「切り抜き動画」と言われるものかと思います。ネットで流通しているものは、動画を制作したユーチューバー自身が短く切り抜いて拡散しているものもあれば、テレビ番組を録画して、それを第三者が切り抜いてネットで拡散させているものもあります。中にはバラエティー番組の制作者自身が、ネットでバズらせることを意識して作っている動画もあるでしょうし、千差万別です。単に切り抜いただけでなく、第三者によって合成が入ったりコラージュが入ったり、何らかの加工があって拡散するところまでいくと、それはもう制作者がコントロールできない範疇の話です。制作者自身がネットでバズらせることを意識したのであれば、それがもたらす結果に一定の責任を持つのが制作者の倫理だと思います。しかし、意図しないかたちで拡散された切り抜き動画に関しては、これは倫理の問題というよりも、技術の変化に対して放送局と制作者の双方がその状況をどう受け止めていくのかという、ちょっとレイヤー(階層)の異なる課題かなと思います。

〇参加者
さきほどネットと言ったのは、特に我々の場合、ニュースはまず放送ですが、ネットに上げることも当たり前になっている。番組もユーチューブに上げるのが当たり前になっています。ネットのことを考えないとやっていけませんし、やらないといけないのだという認識です。その中で一部切り取られた部分が流れるという心配があると思いました。
笑いに関して僕は、痛みを伴うというよりも非常に良質な笑いというか、考えさせられる笑いというか、落語などのきちんと順序立てて笑うというものが良質な本来の笑いだと思っています。ただ、今のテレビでは一瞬、一瞬で本当に10秒に一回笑わせることを迫られている中で、じっくり10分間聞いて「アハハ」と笑えるようなものはできないと思います。

〇参加者
2021年度に中高生モニターから意見を聞いたときのやり取りには、どのようなものがあったのか、気になりました。

〇榊原委員長
BPOには中高生モニター制度があって、30人ぐらい中高生に異なる形式で2回ほど、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に対してどう思うか聞きました。意見は分かれましたね。「面白い」という生徒がいる反面、「見ていてあまりいい感じがしない」という意見があって、どちらかというと、批判的な意見がやや多かった気がします。
あの見解が出たので、「私たち、僕たちにとって、とても面白いんだ」という答えだけが来るかと思ったら、そうではなかった。中学生でもかなり分析的な視点でいろいろ書いてくる生徒がいます。逆に「とても面白いバラエティーが、もしかすると減るのでさびしい」という意見もありました。両方あったということです。

〇髙橋委員
BPOに寄せられる意見は「これはいかがなものか」のようなものが多いため、ネガティブなフィードバックのほうが多いのは仕方がありません。「よかった、よかった」という感想は寄せられなくて、「BPOに通報」という感覚の視聴者意見が多いのではないかと思います。これが本当に大多数の意見なのか、あるいはノイジー・マイノリティー(声高の少数者)なのかは見極めなければならないと感じます。
今の子どもたちはテレビを直接見るのではなく、様々なアプリで見ることがあります。その一方で、私たち(委員会)はテレビとラジオの放送しか対象にしていないため、それはこれからの課題かなと思います。

〇参加者
ひとつすごく厄介な暴力的な問題があって、それは言葉の問題です。人の劣っているところを突っ込んで嘲り笑うような笑いがあって、身体的痛みは伴いませんが、心はすごく傷つきます。笑いの中の毒舌的なものは皆がまねします。人を傷つける言葉の暴力は、どこかでしっかりブレーキをかけさせないといけないと、かなり前から思っています。

〇緑川副委員長
言葉による暴力というのは、おっしゃる通りです。今回の見解は暴力的な肉体的な痛みの演出がきっかけになっていますが、このミラーニューロンの共感性の発達の阻害という視点からは、決して肉体的な痛みだけを対象とするものではないと理解していただければと思います。暴力というのは、肉体的なことだけでなく言葉による暴力、それを嘲笑するのがあまりいい影響を与えないのではないかということを含めて今回の見解を出しました。
私たちは、テレビ局の制作者の表現の自由を制約するという機関ではなく、逆に表現の自由を内側からさらに深めていく、深化させるために、テレビ局の皆さんが「自主自律のために」作った委員会で委員をさせてもらっていると思っています。私たちは第三者ではありますが、自主的に設立運営している機関であるからこそ、このような意見を出すことで、表現の自由の外部からの制約ではなく、中からブラッシュアップしていくためのきっかけを提供できているとすれば、たいへんありがたいと思います。

〇吉永委員
BPOに来る意見で、「問題だ」と指摘される番組は高視聴率なのです。見ていて「これはな」と思うものでも視聴率が高いと、なかなかそこに手を入れるのは難しい。今の民間放送の置かれている現状を考えると、「すごくいい番組をつくりました。けれども視聴率が取れませんでした」とすると、その作り手は結局、何の評価もされずにいい番組を作ったという自己満足だけで終わってしまう。いい番組を作っていこうという気持ちの継続に繋がっていかない気がします。だから、「うけなかったがすばらしかったね」ということを評価する軸を新たに入れることで、流れを変えていくことを考えてなければいけないと思います。

《【テーマ2】「事件や事故などが発生した際の目撃者である青少年、子どもに対する取材、インタビューの可否や妥当な方法」について》

「テーマ2」と「テーマ3」はそれぞれ、地元局の代表社による具体的な問題提起を受けて意見交換しました。

〇代表社の問題提起
これから2つ映像を見てもらいます。最初は36年前の1987年に起こった事件で弊社が放送したものをそのまま流しますが、今ではたぶん放送できません。人通りの多い商店街を自転車に乗ったまま通る人たちが多いことが問題になって、警察が取り締まりをします。その中で、道交法違反で15歳の少年が逮捕されます。<映像上映①>
これは当時そのまま放送されたと聞いています。ぼかしを入れずに少年の顔が出ているのは、おそらくこのぐらいなら(よいだろう)という判断が当時はあって、撮影するカメラが、多少顔が隠れるような形で撮ったもののままでしょう。そういう判断で放送したと聞いています。少年の顔だけでなく、おそらく今では放送できないものがいくつもあります。まず自転車に乗ってはいけないところで乗っている人を普通に撮影しているとか、それから警察が違反切符を切っているところを撮って、住所を書いているところも撮影しているなどです。さらに、手錠を15歳の少年にかけていること、後ろ姿にしていますが連行される状況を、そのままの形で撮影しているところもです。
ただ一方で、見たときに映像の持つ力の大きさというか、逆にそういうものも感じます。これで全部分かってしまうという感じです。翌日に、(視聴者から)電話が殺到したそうです。これを放送したこと自体についての意見ではなく、少年に対して「警察が注意をしたにもかかわらず逃げたのはいかん」という意見だったり、警察が逮捕するのは「やり過ぎである」という意見が出たりということでした。
次に紹介するのは2018年に、児童の列に車が突っ込んでいくという事故がありました。その翌日の放送です。<映像上映②>
このときは、被害に遭った児童の友人や、ご家族とか、そういったところへの取材を控えるという形でした。その結果、亡くなったお子さんのことは市教委が記者会見を開いて、こういう子だったという発表があっただけです。
三十数年前と、5年ほど前の事例ですが、状況がずいぶん変わったなという印象です。どちらが、当時の記録やニュースとして伝えられるものが多くあるのかといえば、もちろん最初のほう(映像①)があるとは思います。ある程度制限をしていくことによって撮影できないというか、できるところがどんどん減っていくのを感じます。情報源が限られる中で、一次情報である家族や子どもたちに取材する、しないというのは本当に悩ましいところだなと思いました。その2つの時代の映像を比べてご意見をうかがいたいと思います。

*****
青少年委員会は2021年10月6日に、映像②と類似の事件である、千葉県八街市で起きた飲酒運転による児童5人死傷事故で被害者の同級生へのインタビューを放送した番組について「通学中に起きた児童の死傷事故についての未成年者への取材のあり方に関する《委員長コメント》」を出しました。「テーマ2」の意見交換の参考になるこの委員長コメントについて、緑川副委員長から説明がありました。
*****

〇緑川副委員長
2021年10月6日に青少年委員会から、通学中に起きた児童の死傷事故についての未成年者への取材の在り方に関する委員長コメントを出しました。事故の状況については、さきほど紹介された2番目の事故(映像②)に酷似しているかなと思います。(八街市内で)通学途中の小学生の列に飲酒運転をしている車が突っ込んで5人が死傷するという痛ましい事故でした。当時のニュース番組で亡くなった子どもの友達、同級生にインタビューをした映像が流されました。これは顔が出ていて、どのように感じたかという亡くなった友達に対する気持ちを聞いているというインタビューでした。
これに視聴者から、「事故によるトラウマを想起させ二次被害につながるのではないか」「こういう場合は専門家であっても慎重な対応が必要とされる場面である」と、それから「この被害者が通っていた学校では事故の翌日には子どもたちの心のケアのために休校にしている。そういう状況だったのに、ほかの子どもや保護者の心は考えなかったのか」などの意見が多く寄せられました。同級生に対するインタビューをニュースで報道したテレビ局に、そのときの状況等について質問をし、回答をもらいました。
そのなかでテレビ局側は、その子どもの保護者から承諾を得た上でインタビューしたということです。一部で亡くなった子どもに対する気持ちを尋ねる中で、誘導とも取られかねない質問をし、それに子どもが「そうです」と答えるシーンがあり、その質問手法について「討論」のときの検討対象になりました。これについて、(局側の説明では)放送ではその場面が放送されたが、その前段階の取材の中で、そういう気持ちが話されていたものの、テレビカメラを回す段階では、子どもなのでうまく言葉が出てこなかったということです。その結果、はっきりと意図が分かる部分を放送する対応になったということでした。
しかし、事故直後に亡くなった子どもについてインタビューをすることは、その報道の必要性、つまり事故の悲惨さを伝えて社会全体で共有して同じことが起こらないように皆で考えるための報道の必要性はもちろん肯定できると考えるものの、そのための手段として事故直後に直接子どもにマイクを向けることには、やはり更なる配慮が大切ではないか。そういう問題意識のもとで、この委員長コメントを出しました。
さきほどの2番目の映像は、そのあたりが配慮された内容になっていたと拝見しながら思いました。亡くなった子どもがどういうお子さんだったのかということを校長先生と、お花を供えにいらした人でしょうか、大人に対するインタビューによって、亡くなったお子さんがどういう状況であったのかということが報道されたので、報道の必要性、報道するという趣旨に沿った報道ができていたのではないかなと感じました。

〇榊原委員長
亡くなった子について「(質問される子の)お友達でなくてよかったね」と、すこし誘導して、本人が「うん」とうなずくような(答えでした)。お友達でなくてよかったね、というのは、これは本人が言い出したことではありません。そう言われれば、直接よく知っているお友達ではなくてよかったと(答えた)。これがなぜ問題かというと、それで事故のことを思い出すということ以外に、その画像が保存されて、この子が大きくなってから、あるいはその後で周りの人が見て、この子は「自分のお友達でなくてよかった」と言った。そこだけ切り取ると「何て子だろう」と思われる。そういうことが二次的に、このインタビューを受けた子どものトラウマになっていくのではないかと思います。

〇髙橋委員
まず、友達の声が、果たして国民にとって本当に必要な情報なのか。本当に必要な情報というのは、おそらく、(事故を)再発させないために有用な情報であって、さまざまな人たちへのインタビューが必要な情報なのかなということを、もう一度考えねばならないと思います。また、インタビューに答える子どもが緊張していると笑ってしまうことがあります。そうなると、「あの子は大変なときに笑っていた」などと、ネットやSNSでバッシングが始まったり、二次的な被害がネット上で起こったりするのが、今の世の中です。
では保護者の許可があればインタビューしてよいのかという話ですが、事故直後にインタビューすることが子どもの心を傷つけるという認識が保護者になかった場合、(保護者が子どもを)守ってやれません。やはりこれは報道のプロである皆さんの常識として、直後にインタビューするのは子どもにとって心理的な影響があることを意識しながら、報道してもらえればありがたいと思います。

<意見交換>

〇参加者
事故直後の現場に子どもがいた場合、時に取材活動の一環として状況を聞かなければいけないのではないかと、取材者がそう思うのもあり得ると思います。そこのバランス、要するに子どもに声をかけること自体が子どもの心を痛めてしまうのか、話の内容によっては聞いてみるという判断があるのかどうか、取材している現場の記者はけっこう悩むポイントになると感じました。

〇榊原委員長
八街の場合は、その報道がいわゆるニュース、報道プロパーではない人がインタビューしています。つまり、それが本当に報道として伝える必要があるのかという問題と、総合的に見て報道番組とは必ずしも言い難いワイドショーや情報バラエティー番組が、話を聞きに行くことがあります。その辺の線引きが難しくなったという意見も私たちの中で出ました。純粋な報道としては髙橋委員の言う通り、それはどこまで伝える必要があるのかを判断すべきです。しかし、話題性になりますと、ちょっと視点が違います。その辺をどう分けるのか、かなり悩ましい課題がありました。

〇参加者
とにかく(取材現場では)何が起こったかを知るのが一番です。それ(取材相手)が子どもしかいないときは、これはもう聞かざるを得ないのかなと思います。ただ、テレビの取材活動として聞くものと、カメラを向けてそれを証言として繰り返し流すことによる子どもへの影響は考えないといけない。それには放送しないという判断もあるかもしれません。しかし、取材活動としては、何が起こったのか、それを誰も知らない場合に、もし友達である子どもしか知らないのなら、聞かざるを得ないという判断になると思います。
映像②の場合は、お子さんはこういう子どもだったと、市の教育委員会が発表しました。そういう取りまとめをどこかの機関が発表するのがいいかどうかも難しいところです。どこも出さないとおそらく、どんな子どもだったかを近辺で聞いて回ることになりますが、「それはやめてほしい。学校がきちんと対応する」と周知すれば、(取材者側は)いったん落ち着くでしょう。ただ、果たして学校側の「こういう子どもだった」というのが本当にそうなのかは、実際の友達に聞かないとわからないところがあります。言い方は悪いのですが、学校は「こういう子どもなんだよ」とある程度統一して発表するでしょうから、一次情報としては近所の人や友達などの声をどうしても聞きたいという気持ちになります。一方で、「子どもに影響があるんです」と、さきほど(委員が)言われました。保護者の同意があったとしても子どもへの影響を理解していない保護者がいるのだから、取材する側がきちんと理解してやらなければならないのだというご意見でした。それも全くそうだなと思いますから、ケース・バイ・ケースで、やはりそれぞれ悩ましいなと受け止めました。

〇参加者
さきほどの岡山県赤磐市で5人の小学生の列に車が突っ込んだ事故(映像②)では、仮に私がその現場に取材記者として行っていて、あの5人の中に1人でも無傷の小学生がいたら、その子のインタビューをトライすると思います。なぜかと言えば、あの事故は突っ込んだ車の女性ドライバーが居眠り運転か何かで、(ブレーキとアクセルの)踏み間違いが原因だったと思いますが、それは結果としてのちに分かったことで、事故の時点ではまだ分かっていません。もしかしたら、無傷の子どもに聞けば、事故が起きたときの状況がくわしく分かるかもしれないと考えます。事故の全容をつかむために、現場にいる子どもにインタビューをトライするのは、記者として当然のことだと思います。後輩からどうするべきかと聞かれたら、「取材しろ」と言うと思います。
ただ、無神経にテレビカメラを回してインタビューを撮るというやり方を選ぶのか、保護者に取材して、それからお子さんの了解を得た上で(カメラを回さず)話だけ聞いて、それを記事として書くのかは、また別問題です。「子どもに取材することはちょっと遠慮してください」という風潮が広がると、全くそういう取材をしなくなることをすごく危惧していて、取材するということを我々がどんどん怠ってしまうのではないかと、思いました。

〇髙橋委員
事故を目撃した子どもに直接取材することは、とても大事だと思いますが、複数の新聞社やテレビ局が同じ子どもに何回も何回も聞くことになると、その子は何回も何回も答えなければなりません。もう一点は、各メディアが同時に聞くと、大人がずらりと並んだ中で答えねばならない恐怖感があります。警察がある程度聴き取りをするはずですから、警察から聞くという方法があるかもしれません。(子どもに)何回も何回も聞くということの害があるかなと思います。私は東日本大震災(2011年3月)のときに宮城県に住んでいましたが、震災遺児に関しても、「あの子は答えてくれるよ」となると、各社がその子にインタビューしに行ってしまうということがありました。子どもが何度も話をしなければならないことを懸念しています。

〇参加者
例えば地元のメディアが代表者1人を決めて、その人間だけで取材をするという方法を取ったらいかがでしょうか。

〇髙橋委員
そういう配慮があればいいとは思いますが、現場に駆けつけた警察や消防の方々は第一発見者である子どもに対しては、かなり配慮をしながら事情を聞いているので、たとえば警察や消防などのノウハウも少し分けてもらいながら聞くというのが大事かなと思います。絶対聞くなという話ではありません。聞き方(の問題)だと思います。

《【テーマ3】「大規模災害時等における避難所での被災家族、特に青少年、子どもへの取材、インタビューの可否や妥当な方法」について》

〇代表社の問題提起
「テーマ2」と似ている話で、大規模災害時にどのように被災者に接するかは現場の課題です。(取材相手の)年齢制限についての考え方や、インタビューしないで表情だけを撮るという行為はどうなのか、その辺のことも現場のスタッフが来ていますので体験を聞きながら進めさせてもらいます。広い意味で、大規模災害時の現場でどういうことに気をつけねばならないのか、そういうところの意見交換、共有ができればいいと思います。まず、いま現場で活躍している我々のスタッフに話を聞いて、現場で気をつけているのはどういうところなのかを話してもらいます。

〇代表社の参加者①
もう30年近くずっとニュースのカメラマンをやっています。若いころは災害の現場に行くと、とにかく安全に気をつけながら映像を撮って早く放送へ結びつけることが使命でした。インターネットが普及し出すと、現場での我々取材陣の立ち居振る舞いが非常に見られていて、その立ち居振る舞いが被災されている人たちを傷つけたり悲しませたりすることになって、そこは「非常に気をつけるように」と言われています。スタッフ同士での話す内容に気を付け、冗談も言わないし、被災された人たちのことを考えて、自分たちの食事をどこでとって取材を続けるかをよく考えます。
大事件とか大災害があった後に、ネット上で「マスゴミ」という言葉が出るのが非常にショックで、たとえ直接自分が言われなくても同業者が「マスゴミ」と言われるのはやはり何か悲しいなと思います。我々は何のためにそこに行って、社会のためにやっているのかと。皆の役に立てばと思ってやっているのがごみと言われるのは、非常に残念です。どうしたらそのようにマスコミ全体が言われなくなるのか、何かいい方法がないかなと思います。

〇代表社の参加者②
私は火事の現場などに取材に行ったりすると、マスコミの姿勢というのも同時に見られているなというのをインターネットやツイッターなどのコメントを見て感じるので、なるべくそのように思われないような取材をしていきたいと思います。

〇代表社の参加者③
まず避難所ということだと、皆さんも避難所を管理している人たちの承諾を得た上で中に入って取材すると思います。その上で、青少年、子どもへのインタビューはどのようにするかということです。大規模災害になると、余計に保護者の了承なりあるいは横にいてもらうことを、十分留意しながらインタビューしているのではないでしょうか。
私が現場で記者をやっていた何年も前と比べると、いま話にも出たようにSNSなどですぐ発信をされ、特にメディアに対する批判的な見方がだいぶ強まっていることはあるでしょう。相当慎重にそのあたりの立ち居振る舞い、態度に気をつけなければならないだろうと思います。それに、一度放送に出した後、当初は本人も保護者にも理解が得られていたけれども、何度も放送で使っているうちに、「もうやめてください」となることもよくあります。そういうことも想定しながら、現場で工夫されていると想像します。

<意見交換>

〇参加者
弊社も、岡山県が放送エリアに入っていて、西日本豪雨(2018年7月)の取材経験があります。避難所取材では、当時実際に取材に当たった記者からのヒアリングしたところ、避難所開設から1週間ぐらい経って取材したケースですが、当初は被災者のプライバシーが守れないという理由で、基本的に取材が全面NGになりました。その記者ら取材班が、当時管理運営していた倉敷市と交渉して、条件付きで取材を許可してもらいました。
管理事務所を訪れて取材内容などを説明した上で、カメラでインタビューする場合は当然、本人の了解を得てから行うとか、居住スペースに配慮をする、プライバシーに配慮するなど当たり前のことばかりでした。阪神・淡路大震災(1995年1月)のときに僕も被災地に入りましたが、どうしても前のめりになってしまう自分がいたのを思い出します。そういうところはカメラクルーなり取材班として、お互い気をつけ合いながら取材しないといけないと思います。
青少年に対してだと、さきほど委員が話されたように、子どものインタビューは、そのときは答えてくれても後で違うなど、いろいろあるのだろうと思います。やはり、保護者の同意は最低限得ないといけないと思いますし、実際あった例では、オンエア後に「使ってほしくない」といわれるケースが最近増えています。ネット時代で速報性がとくに言われるようになって、カメラで撮れたからそのまま、すぐ(放送に)出そうというところがあります。だからこそ、特に事件・事故現場、災害現場などではより慎重にしないといけないと最近感じています。

〇榊原委員長
私たちは経験がありませんが、記者が取材しているときにいろいろお考えになり悩まれると、その視点はとても重要だと思います。特に子どもの場合は難しいのですが、その子どもの個人情報の問題だったり、その子が将来、心理的あるいは周りからいろいろ言われて、トラウマになったりすることがあります。どこまで報道するかという難しさは、私が共感の話をしましたが、例えばあるニュース報道の中で子どもがとてもひもじい思いをしている表情を見ると、共感で「みんなで助けよう」となります。その情報が何なのかというと、大地震の数値や被災者の数などの単なるデジタルなものではないのですから、皆さんが悩んで、どうしたらいいのかと常に反すうしながらやるなかにしかないと思います。さきほど紹介された(1987年の報道事例である)15歳少年の自転車のこと(映像①)については、「今ではこんなのはもう出せません」と言われた。それは、今までの経験の中で培われてきたことだと思います。
直近の例では、(2月6日に起きた)トルコとシリアの地震報道を見ていると、小さな子どもががれきの間に挟まって、妹を36時間ずっと守っていた話がありました。その子の顔が映されてすごくつらそうに頑張っているのを見ると、それは共感を呼び起こして、では助けるために募金ができないかと感じます。たぶん記者のみなさんは単純なデジタルな事実だけでなく、こういうことを伝えたいのでしょう。そこをどう切り取るかという線引きが難しいだろうと思って聞いていました。私も記者だったらきっと悩んだだろうと思います。

〇沢井委員
北海道で臨床心理士をしている友人(女性)から聞いた話ですが、避難所の子どもたちがどういう状態であるかをきちんと調査したのは、奥尻島の大津波災害(北海道南西沖地震。1993年7月)のときでした。あのとき奥尻島から逃げた家族が北海道内の避難所にいました。
子どもたちが避難所内の遊び場で友達と「きゃっきゃっ」と遊んでいます。それをアナウンサー、取材者が「(被災者の)大人は大変だけれども、子どもたちはこんなに生き生きと元気に過ごしております」と感動をもって伝えました。臨床心理士としてそこで子どものケアをした友人に聞くと、まず子どもについて注意しなければならないのは元気過ぎるときで、これは非常に不安の表れであって、それを「すごい、すごい、子どもは元気でたくましいですね」というコメントでよいのだろうかといいます。国民全体に誤解を与えることになるという。表面的なところを見て、記者は事実だと思ったかもしれませんが、災害の後に子どもを含めて被災者がどのように心理状態が変わっていくかということを知らなくてはいけないでしょう。
臨床心理士の彼女は、阪神・淡路大震災のときに奥尻島の知見を基に、「こういうことに気をつけてください。元気そうということで安心してはいけません」と、テレビの報道番組にも出て注意喚起しました。私も「阪神」のときには、心理学スタッフとして加わっていたテレビ局の関係者がアメリカFEMA(連邦緊急事態管理庁)のマニュアルを取り寄せてくれたので、そのマニュアルを読んで、被災した子どもにどういうケアが必要かをきちんと調べました。
それによると、災害の直後は全ての人が、隣近所も一緒に同じような災害を受けているから、非常に連帯感を持って英雄的でとても人格者に見える行動を取るし、そういう発言を皆がします。皆が謙虚で、大変だったよねということで、ある意味高揚感に満ちている。その次のステージは(それぞれの環境に)だんだん格差が出てきて、さまざまないざこざが起きることなどが、研究されています。現在では(マニュアルが)さらに進化していると思いますが、そういうことはもっとマスコミが報道する、あるいは取材をする人たちに共有されていいのではないかと思います。日本はどう防災するかという面が多いのですが、被災者の人たちがどのように心理的な心の変遷をしていくものなのか、一般的にはどうか、もちろん個別にはいろいろ異なる反応もあると思いますが、皆に共通する点は学んでおいたほうがいいと思います。無知ゆえに過剰に解釈したり、過剰に一般化したりという報道があると、歴史的にもいろいろと傷をつけることになるし、誤解を広げることになるでしょう。
フェイクニュースではないけれども、人間観察の浅さによって、それが事実であるかのように報道されてしまうことがあります。これは子どもに対する場合に限らずあると思うので、FEMAのマニュアルなどをチェックしてください。また集団心理あるいは子どもの心理について、子どもの発達段階ごとにその認知がどう変わってきて、目撃者としてどれだけ信頼性があるかということも、子どもの目撃者の研究をしている研究者がいるので、そういうことの知見をぜひ参照していただきたいと思います。

〇吉永委員
大規模災害の現場を取材するというのは本当に怖いものです。言葉が出なくなってしまう。取材する側の人間力というのがもろに試される現場だろうと思います。私は阪神・淡路大震災のときには、声を出すことすらできなくなりました。ところが、私が親しくしていたベテラン・ジャーナリストがいて、あの人は普通そこら辺で私たちと一緒に飲んでいるときと同じような感じでススッと近づいていっては「話し聞かせてんか」と言う。その相手の人も、私だったらとても受け付けないような雰囲気の人が話してくれるのです。巨大な悲しみとか、巨大な怒りが渦巻いている現場に入っていく恐ろしさというのが、私には無理だと当時思った経験があります。
だから、その中で何かを撮ってこなければならなくて行くのがどれだけ厳しいことか、と思います。そこに行くに当たって予備知識なり勉強なりしていく、あるいはそこに体力的にぎりぎりの経験をしている人が聞くほうが本当の答えが出てくると思います。体力の問題とか現場の厳しさとか、体力的に危険なところであるとなると若い人になるのでしょうが、そういうものであることをおそらく感じて帰ってきたでしょう。それを次に生かすために自分の経験を後輩なり皆に共有する場を作っていくこと、それが人間の力をつけることだと思います。
沢井委員が話したように、私も北海道の地震のときに、家族が皆生き埋めになった状況でひとりだけ元気、その子だけ助かった男の子のインタビューがあって、その子がものすごく明るかったのです。テレビの取材と私の活字の取材とは全然違って、活字は映像がないので、この子がいくら目の前で笑っていても、その中の何かを感じ取ったら、それを言葉に変えられます。しかし、映像の持っている力が言葉を超えてしまうと、「この子は何か全然、平気なんだね」というメッセージになってしまって、この子の一生にどれだけつらい思いを残してしまうのかと考えると、もうつくづく大災害の報道というのは難しいと思います。
避難所に入っていくことひとつですら、私たちは公共の建物に入っていくような気持ちですが、あそこは(被災者の)生活の場なのです。(取材者が)そこに入っていくという意識を本当に持てるのか持てないのか、何かそういうことによって中身が変わってきたり、ひとつの映像から、ひとつの言葉から受ける印象が見る側に与える影響も違ってきたりすると思います。

〇山縣委員
「テーマ3」では、私の印象でもあまり子どものインタビューは出てきません。学校が被害に遭った場合には、子どもに聞いていることもありますが、基本的には大人が語れる場合には大人で語らせるという判断になっているのではないかと思います。一方で、子どもが一番の当事者であるとか、真実を語ることができる状況になったときには、おそらくすごく苦しまれているのではないかと思っていて、その部分はきっと正解がない状況で考え続けるしかないのだろうというのが、私の印象です。

〇髙橋委員
東日本大震災のときに私は仙台にいました。テレビや新聞の記者たちがその現場を見て衝撃を受けて、PTSDになる案件が重なりました。その後の研究でも、取材をした記者たちが後々、PTSDのような症状が現れることが分かっています。さきほど「マスゴミと言われて傷つく」ということを話していましたが、これは自衛隊員の調査でも「早くやれ」「もっとやれ」「何やっているんだ」「寝ずにやれ」などと怒られた自衛官に鬱(うつ)の発症率は高くなっています。だから取材する皆さん自身も、現場を見て傷ついていることを認識しておくのはとても大事だと思います。

《【テーマ4】 フリートーク》

「テーマ4」では議題を特定せず、参加者に自由に質問してもらいました。

〇参加者
1月15日に京都で行われた全国都道府県対抗女子駅伝で、岡山県津山市の中学3年の女子選手が17人抜きしたことが全国ニュースで報じられ、話題になりました。2週間後に岡山県内で市町村対抗の駅伝大会がありましたが、多くのカメラ取材が予想され、本人が非常にナーバスになっているという情報があったため、地元の民放テレビ5社とNHKについては当日、共同取材という形式で取材しました。
その5日後、2月3日に地元の記者クラブの加盟社に、女子選手の代理人弁護士から、「環境の変化で練習が以前のように自由にできなくなった」とファクスがありました。「過度な報道で精神的にも疲れることが多かった」、そして「可能な限り普通の生活をしながら陸上競技を続けていくことを希望します」というコメントがありました。
 この話題は新聞やテレビでも報道されましたので、委員が感じたことをお聞きしたいと思います。

〇緑川副委員長
私は弁護士をしていまして、以前から報道問題に関わってきました。数十年前のことですが、 (事件の)被害者だったり加害者の近隣住民だったりして、メディアスクラムの被害を受けたという人たちにヒアリングをしたことがあります。被害者救済活動をする弁護士がまだあまりいなかった時代です。そのころ、メディアスクラムの被害に遭った人たちから、「誰に相談していいか分からない、どこに行っていいか分からない」、また「メディアの人たちは親切な人もいるけれども、だまされたような感じで出ていったら写真を撮られてしまった」という話を聞いたことがありました。
今回、中学生でしたが、(選手としての)自分の生活を守りつつメディアにも対応していきたいと考えたときに、代理人の方から連絡が来たという話を聞いて、30年経ってそういう経路ができてきたのかなという感想を持ちました。取材者と被取材者の関係ですから、時代が流れていくことによって必ず動いていくのだと思います。その都度、お互いが工夫しながら、考えながら、よりよい取材ができることを期待しています。

〇榊原委員長
この女子選手は中学生で未成年ですが、未成年の人の意見をどのように取り上げるかは社会全体の問題だと思います。今まで子どもの声を聞くときには親(保護者)が代弁者だというのが前提でしたが、必ずしもそうでない。さきほどの議論で、子どもが(事故直後の)インタビューを受けることのトラウマなどについて親(保護者)が、よく考えない場合には、取材者側が考えてやらなければならないと、ありました。一番の問題になるのは、児童虐待やネグレクトの場合で、このときは親子が対立するわけです。
この中学生の場合、弁護士を通じて(取材者側に)申し入れてもらうというアクションをおこし、この30年の間にそうしたことが取れるようになったという意味で、大したことになったなと思いました。

〇参加者
3年目の記者です。LGBTQをテーマに取材をしたり番組を作ったりしてきました。その中ですごく思うのは、LGBTQという枠があるからこそ救われたという人がいれば、自分はそうした枠にとらわれたくないからそのように描かないでほしいという考えの人もいるので、放送で描くときに表現の仕方に気をつけないといけないということです。
半年間、高校生の当事者の取材をしました。その子は、体が男性で心は男性でも女性でもどちらでもないという子でしたが、学校の男女別の頭髪基準をなくすための活動をすごく頑張っていました。でもその放送に向けて、どういう描き方をされたくないかと聞いたところ、その子は「枠にとらわれたくない」ということでしたから、視聴者に分かりやすくその子の性別を説明するのに、その枠を言わずにいかに理解してもらうかを考えました。また、学校と親(保護者)と三者合わせて話し合う機会を何度か設けて、表現をどうしていくかという話をしたのですが、「こんなに心配されるのは、自分はやっぱり普通じゃないからかな」と、その子自身が思ってきたりして、すごく難しいなと感じた取材の一つでした。当事者の取材だったり、特に未成年だったりする場合に、気をつけることや、描き方がありましたら教えていただきたいです。

〇飯田委員
これまで中高生モニターのリポートの中で、男女二分法を前提にしてつくられている番組に対する違和感のような意見が、たくさん寄せられています。例えば、テロップは男性が青で女性が赤、みたいな区別を無自覚にやっている。そういうものに対して、「今はそういう時代ではないんだ」と、学校でも(ジェンダーの多様性について)学んでいる世代ですから、(学んだことと)テレビの表現のギャップを感じる若者が増えてきていると思います。
それから、最初に話されたLGBTQという概念がなぜ当事者たちにとって必要だったかと考えると、ある種の運動や連帯のための用語だったことがあります。それに対して、レズビアンとバイセクシャルはまったく違うのに「一緒にされたくない」と、性的マイノリティー同士での差別を経験することもあるようです。LGBTQという言葉の持つ功罪といいますか、ある意味では必要だった言葉ですが、それで全てが解決しているわけではないという状況があります。若い当事者の人たちは、このような歴史的な経緯を知らないわけですから、取材をして本人が何を思っているのかを拾っていくことは大事ですが、逆に一緒に勉強して教えてあげることによって解決できる部分も多くあるのかなと思います。そういう意味では少し時間をかけてお互いに理解していくことが大事でしょう。
あと、カミングアウトしている人としていない人がいるわけで、統計的に見ても実は性的マイノリティーはそんなに少ないわけではなくて、一説には8%、数え方によりますけれども、3%から10%ぐらいが何らかの形で性的少数者と言われています。(取材対象者がこうしたことを知ることで)自分が置かれている状況を必ずしもネガティブにばかりとらえなくなっていくことは必ずあると思います。
それからもう一つ。LGBT(Q)という言葉は2000年代後半にNHKの番組で精力的に使われていて、そういうところをきっかけに広まった言葉と思いますが、最近はダイバーシティ(diversity : 多様性)という言葉がよく使われます。LGBTQがダイバーシティに置き換わったことで、人それぞれ、いろいろという理解がより一層広がった面があるかなと思いますので、こういうことは当事者にとっては非常に追い風であり、よい傾向かなと感じています。

〇榊原委員長
ラジオ(エフエム)局の参加者にも、全体の議論を聞いてみてご意見があればお聞きしたいと思います。

〇参加者
ラジオは、1対1というメディアで、車の中で1人で聴いていたり、部屋で1人で聴いていたりという、あくまでも1対1のメディアということを心掛けています。そういう意味ではやはり身近な存在で、あなたのためだけに放送しています、と考えてやっています。ラジオはなかなかテレビと違って、つける習慣がないと聴かないものですが、いったんつけ始めるとそれは温かいものであり、目には見えませんが、心に響くすごく素敵なメディアだと思っています。

〇参加者
きょうはテーマがすごく大きくて、うちも考えねばいけないなと思いました。例えば、僕らも街角で子どもにインタビューすることがありますが、おいそれとしてはいけないのかなと少し怖くもなりました。ただ、どちらかというと僕らは、生活に根差した共感というところを大事にしながら放送しているので、そういう意味では「遊園地って楽しいかい?」などと聞くようなインタビューなわけで、さほど深刻になる部分はないかもしれません。
しかし、常日ごろから、ひとつひとつ気を配って考えていかないと、ふとしたときに何か全然意図しないことを言ってしまうことがあるのかなと、きょうの話を聞いていて思いました。
特に声だけしかないメディアですので、その声の調子であるとか、よく最近は「言い方、言い方」と言われますが、それ一つで随分と印象が変わってしまうこともよくあるので、ラジオだからこそ気をつけなければいけないこともたくさんあるのだなと思ったしだいです。

〇榊原委員長
みなさま、本日はどうもありがとうございました。

事後アンケート 概要

意見交換会の終了後、参加者全員にアンケートの協力を依頼し、約7割に当たる17人から回答を得ました。その概要を紹介します。

  • ▼ (テーマ1)「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」に関する見解について
    • ローカル局ではあまり、差し迫った事例はないが、制作者としては、頭にとどめておくべき問題だと改めて感じた。また、委員の皆さんが、決して、罰ゲームがダメだとは考えていない、ということが確認できたのはよかった。いじめにつながるだとか、度をこえたものだとかではなく、しっかりとバランスを見ながら番組制作していきたい。
    • バラエティー番組において他人の痛みを伴う事を笑いの対象とするものはかなり以前から多くみられる。また、人気芸人などのタレントのみならず、素人相手にそのような手法を用いてバラエティー番組を制作するケースすら見られる。規制すべきか否かの境界線が不明瞭なこのような手法を制作者が用いる時、その判断基準をどこに設定するべきかという困難なテーマは常に付きまとう。ただ、テレビメディアに携わるスタッフはその影響力の大きさを常に自覚しておく必要はある。その思いを一層強くした。
    • ニュース制作に携わる中で、あまり意識をしたことがない分野であったが、視聴者への影響を考える上で重要な議題と感じた。医学的知見から放送を考えるということは、これまで行ってこなかったので、今後のニュース制作でも、事実を伝える上で必要な一方、内容に衝撃をうける可能性がある映像を扱う場面など、必要に応じてさまざまな視点を取り入れて考えられるよう努めたい。
  • ▼ (テーマ2) 「事件や事故などが発生した際の目撃者である青少年、子どもに対する取材、インタビューの可否や妥当な方法」について
    • 子どもの気持ちを思いやり、コンタクトや取材の方法、タイミング(時期)を熟慮する必要がある。常に取材を控えるということではなく、事実を伝えるためには、保護者の理解を得るなどした上で必要な取材はするという姿勢が大切だと思う。また各社で話し合い、代表取材なども取り入れ、メディアスクラムは避ける必要がある。
    • テレビだけでなく配信もされるようになり、子どもの発言・映像も半永久的に残ってしまうかもしれない現在では、放送後のことも考えて取材をすることが肝要だと感じました。だからと言って「取材しない」という選択肢はないと思うので、ケース・バイ・ケースでの対応をマスコミ全体が考えていかなくてはいけないと思いました。
    • 子どもを守る観点からと、知る権利に奉仕するという点から、いつも悩むこと。BPOが、どのようなスタンスで意見をおっしゃっているかがわかった。親(保護者)に承諾を得ていても、子どもへの影響について理解していない親がいるので取材は慎重になってほしい、という話があったが、難しい課題だと感じた。
  • ▼ (テーマ3) 「大規模災害時等における避難所での被災家族、特に青少年、子どもへの取材、インタビューの可否や妥当な方法」について
    • 避難所での取材も本人や子どもの場合は保護者の了解を得て行っているが、子どもの場合は、元気過ぎるのは不安の裏返しということもあるので、取材者も子どもの心理などについて学ぶ必要がある。記者は日々の取材に追われがちなので会社でそういう場を設けることも考えないといけないと感じた。
    • 大きな衝撃や喪失を感じる被災者への取材方法については、答えが出ているものではないが、避難所取材でも、生活の一部を見せていただくという意識を持った上で、代表撮影や場所を指定した取材の交渉など必要な情報の発信と被災者へ過度な負担をかけない報道を両立できるようにしたい。
  • ▼ フリートークやそのほかの意見、BPOや青少年委員会への要望など
    • ジェンダー問題や障害者に対する意識は急速に変わってきている気がする。先日も街頭インタビューで「障害者手帳を持っている」というコメントに一瞬ひるんでしまった。最新の意識調査の結果や世の中の潮流には常に気を配っていなくてはならないと感じていたので、非常に参考になった。
    • 放送だけでなく、今やデジタル展開は、放送業界では当たり前になっている。BPOも放送だけでなく、放送のネット展開も、考慮に入れないといけない時代になっていると感じた。委員の負担は大きくなるでしょうが。

以上

第183回

第183回–2023年5月

民放ラジオのコメンテーター発言について議論

第183回放送倫理検証委員会は5月12日に開催され、前回の委員会で議論した番組の関連資料や、4月にBPOに寄せられた視聴者・聴取者意見などが報告され議論した。

議事の詳細

日時
2023年5月12日(金)午後5時~午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 民放ラジオのコメンテーター発言について議論

民放ラジオ局でコメンテーターが発言した内容とそこに至る経緯について、当該放送局から届けられた報告書等を基に議論が行われた。当該放送局の番組審議会でも活発な議論が行われていることにも注目し、その推移を見守りながら継続して議論することになった。

2. 4月に寄せられた視聴者・聴取者意見を議論

4月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、岸田首相襲撃事件の報道で、爆弾の作り方や殺傷能力の高め方が分かるような内容があったこと、芸能事務所創業者による性加害疑惑がほとんど報じられていないことなどに意見が寄せられたことが事務局から報告され、議論が行われた。

以上

第316回

第316回 – 2023年5月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2023年5月16日(火)  午後4時 ~ 午後8時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、野村委員、
丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、修正された決定文草案について各委員が意見を述べ、概ね意見の一致をみた。次回委員会で最終的に文案を確認することになった。

2.最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

3.その他

7月に予定されている「BPO設立20周年セッション」の概要について、事務局から説明した。

以上

2023年4月に視聴者から寄せられた意見

2023年4月に視聴者から寄せられた意見

首相襲撃事件の報道で爆弾の作り方や殺傷能力の高め方が分かるような内容があったこと、芸能事務所の創業者による性加害問題が国内でほとんど報じられていないことなどに意見が寄せられました。

2023年4月にBPOに寄せられた意見は 1,565件で、先月から 163 件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 82% 電話 17% 郵便・FAX 計1%
男女別(任意回答)は、男性42% 女性17% で、世代別では 30歳代 25% 40歳代 23% 50歳代 22%
60歳以上 15% 20歳代 11% 10歳代 1%

視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、4月の送付件数は676件、45事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から12件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

岸田首相襲撃事件の報道で、爆弾の作り方や殺傷能力の高め方が分かるような内容があったこと、芸能事務所創業者による性加害問題が国内ではほとんど報じられていないことなどに意見が寄せられました。ラジオに関する意見は24件、CMについては12件でした。

青少年に関する意見

4月中に青少年委員会に寄せられた意見は136件で、前月から8件減少しました。
今月は「表現・演出」が50件、「報道・情報」が28件、「要望・提言」が15件、それに「性的表現」が14件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 岸田首相襲撃事件に関して、容疑者が選挙制度への不満を発信したとみられるSNS投稿の内容が繰り返し報じられているが、ニュースが犯人の主張を広める役割を果たしてしまうことで、過激な思想を持つ人間が「テロを起こせば自分の主張を伝えることができる」と考える可能性がある。かつてニュージーランド首相が「犯人の名前を口にしないことで『悪名をとどろかせる』という犯人の目的を達成させない」と表明した。テロリストに対してはこれくらい厳しい姿勢で臨んだ方がいいのではないだろうか。

  • 番組内で爆発物の構造、製造方法の解説があった。材料の入手、製造とも比較的容易なので模倣犯が出るおそれがある。

  • 芸能事務所創業者による性加害について。被害者自身の勇気ある告発を日本中のテレビ局が無視するということがあっていいのか。

  • 20年ほど前の裁判で芸能事務所創業者による性加害が認定された際に報道していたら、被害者は減っていたのではないのか。放送界の不誠実な報道姿勢にも責任があると思う。

  • 「女性障害者が男性から入浴や排泄介助を受けることは性犯罪被害に遭っているのと感覚は変わらない」という意見を、番組の宣伝として番組Twitterで発信している。男性介護士への不当で差別的な発信。

  • 宿泊施設で「手の常在菌を使って夏みかんを発酵させた」という飲み物が提供されている様子を「健康づくり」という文脈の中で紹介していた。黄色ブドウ球菌による食中毒などが起こりうる。危険。

  • 政見放送で、芸能事務所創業者による性加害の「被害者」として3人の現役タレントの実名が挙げられていた。3人が被害者であってもなくてもやってはいけない行為だ。放送には候補者が一切現れず、政見も語られず政見放送とも呼べない。その内容がいま動画サイトなどで拡散されている。

【バラエティー・教養】

  • 「高血圧を防ぐために減塩するのはムダ」という評論家の見解を紹介していた。厚生労働省、日本高血圧学会、WHOが減塩を呼び掛けている中でこうした情報を放送することで、視聴者の健康が損なわれる可能性はないのか。

  • 番組の街頭インタビューで、数人の有名人の顔写真を見せられて、いずれも何をする人なのかは分かるが名前は思い出せないという人が登場し、障害があるのではないかと感じた。司会の有名タレントの名前も「分からない」という回答に、その司会者が「なんやこいつ」などと発言していて不快だった。

  • 視聴者参加の番組に、一定の状況下でうまく話せなくなる人が出演していた。障がいがある可能性が高いと思われるが、司会者らがその症状を笑いの対象にし、さらには負担になるようなトークをしていた。配慮に欠ける。

  • 番組で「何もないはずの海面に異様な光」「UFOの基地ではないか」と衛星写真を紹介していたが、明らかに海ではなく、よく知られている場所だ。

  • いわゆるドッキリで、「何者かに拉致され、山奥で危害を加えられようとしている」と思い込まされたタレントが、嘔吐するなどパニック障害の発作を起こしているように見えた。視聴者が求めるから番組が応えていると考える人もいるが、これは度が過ぎている。いつも面白く笑わせてもらっている番組なだけに残念だ。

【ドラマ・アニメ】

  • 特撮ヒーローもので胴上げを急にやめて人を地面に落とす描写があった。骨折などにつながる危険な行為だ。子どもたちが見ている番組で放送していいのか。

【ラジオ】

  • 統一地方選の告示1週間前の放送で、パーソナリティーが唐突に数分間、現職市長を称賛する話をした。特定の政党・候補者を支持するようリスナーに働きかける意図があったのではないのか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、「探偵」にふんした男性芸人が一般人の男性の足の裏や乳首をなめる映像が流されたが、気持ち悪くなった。子どもの教育上も問題があるのではないか。

  • 特撮ドラマで幼い娘が誘拐され殺されるという設定の事件が生々しく描かれた。日曜の朝からぞっとさせられ、嫌悪感を抱いた。子ども向け番組で、そんな題材を取り上げるのは不適切だ。

  • 朝のバラエティー番組で、芸人コンビの片方が鳴っている防犯ブザーを口に含み、頭からポリ袋や段ボール箱をかぶせてその音を消すというネタを披露。子どもがまねしたり、模倣する犯罪が起きたりすることは否めないのではないか。

【「報道・情報」に関する意見】

  • 朝の情報番組に「バズった」ワードのランキング・コーナーがあり、著名な音楽家の死去が「1位になった」と紹介された。人の死をこのような形で順位付けするのは、倫理観の欠如であり、違和感と嫌悪感しか覚えない。

  • 朝の情報番組の首相襲撃事件報道の中で、容疑者が使用したパイプ爆弾の作り方を紹介した。今後、模倣する犯罪者が作ったり、子どもがいたずらで作ったりしたらどうするつもりなのか。

【「要望・提言」】

  • 東大生をフィーチャーしたバラエティー番組。わざわざ東大の良さをテレビで取り扱う必要はないだろう。学歴差別を肯定するような内容に、あきれた。東大正門前で少年の事件も起きている。子どもたちへの悪影響があることがわかっていて、こういう番組を放送するのはどうかと思う。

【「性的表現」に関する意見】

  • 子どもたちと朝食をとりながらテレビを見ていたら、ドラマの番組宣伝スポットが流れた。濃厚なキスシーンで困惑した。朝からあのような場面は放送しないでほしい。

  • バラエティー番組の「19歳の娘にたいする愛情が深すぎる父に、彼氏を会わせる」企画で、父親が家庭内で娘の太ももを触る、尻をなでるなど性的虐待と見える映像を、愛情表現として放送。この放送内容は、現在、父親から性被害を受けている子どもが被害を認識できず、愛情だととらえてしまう危険性をはらむと思う。

第256回 放送と青少年に関する委員会

第256回-2023年4月

視聴者からの意見について… など

2023年4 月25日、第256回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
まず、3月後半から4月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見では、朝の情報番組の中継企画と、バラエティー番組の幼稚園児を対象にしたドッキリ企画について議論されました。その結果、後者は引き続き次回の委員会で「討論」を進めていくことになりました。
4月の中高生モニターリポートのテーマは、「最近見たバラエティー番組について」でした。
最後に今後の予定について話し合いました。

議事の詳細

日時
2023年4月25日(火) 午後4時00分~午後7時00分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
視聴者からの意見について
中高生モニターについて
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

3月後半から4月前半までの約1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
朝の情報番組の動物園からの中継企画で、男性芸人がフンボルトペンギンに餌をやる際、ペンギンのいる池にわざと複数回落ちたことに対して、視聴者から「番組の司会者は芸人をあおり、スタジオの出演者は笑っていた。ペンギンがけがをしたらどうするつもりなのか」などの意見が寄せられました。担当委員から「番組スタッフと動物園側相互の打合せ不足があったようだ。園側の抗議を受けて番組内で謝罪したし、テレビ局の社長も会見で謝罪した」として、局側が適切に事後対応したという見方が示され、「討論」には至りませんでした。
また、バラエティー番組で、実在の幼稚園で6歳女児と5歳男児をそれぞれ鬼役にしたかくれんぼをした際、隠れた園児が見ず知らずの子ども(子役)に入れ替わり、鬼役の子どもを困惑させるというドッキリ企画に対して、多くの視聴者から「仕掛けられた子どもの表情はとても見ていられなかった。心に傷をつけてしまったかもしれない」などの意見が寄せられました。ある委員は「(鬼役の)子どもは当惑しているようだったし、(その場から離れるために)『お茶を飲んでくる』と言ったのは不安を覚えたからであろう。幼稚園が自分たちの園児が心理的に不安になる経験をさせるようなことを許可したのだろうか」と述べ、別の委員は「鬼役以外の友達の園児も、先生の指示で子役に交代したのだから、演出上とはいえ(鬼役の子を)だますことを強制されたわけだ。この子たちも非常に痛々しく思う」と指摘しました。議論の結果、番組制作者が園児の保護者や幼稚園から番組協力の許諾を得た経緯などについて、引き続き「討論」を進めることになりました。

中高生モニター報告について

今年度の新しい中高生モニターは30人(中学生16人・高校生14人)です。
4月最初のテーマは「最近見たバラエティー番組について①」で、全員から合計26番組への報告が寄せられました。複数のモニターが取り上げたのは『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)、『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBSテレビ)、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)です。
視聴方法はリアルタイムと録画がそれぞれ11人で、そのほかは見逃し配信などを利用していました。
モニターには毎月のテーマのほか、放送に関する「自由記述」と「青少年へのおすすめ番組」の感想をお願いしています。「自由記述」では「YouTubeよりテレビ派なのでテレビにしかない良さを発信してほしい」、「ラジオの聴き方や面白さをもっとメディア側が発信してほしい」などの声が寄せられています。「青少年へのおすすめ番組」では『解体キングダム』(NHK総合)、『ヴィランの言い分』(NHK Eテレ)、『推しといつまでも』(毎日放送)、『ポケットモンスター』(テレビ東京)、『私小説-発達障がいのボクが純愛小説家になれた理由-』(テレビ朝日)に複数のモニターが感想を寄せています。

◆モニター報告より◆

【最近見たバラエティー番組について】

  • 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)
    • 毎週、日朗曜日のこの時間が一番楽しいです。出演者が体当たりで本気で笑いを起こすのはイッテQ!しかできないので、いつも元気をもらいます。(アメリカでの)出川哲朗のはじめてのおつかいは、英語でコミュニケーションする楽しさや必死に伝えようとする姿から、正しい文法でなくても相手に伝わるという勇気を与えてくれるすばらしい企画です。(高校2年・男子・山形)
    • 英語の正確性よりもコミュニケーションをしたい!という気持ちが重要だと分かったし、知らない建物や土地、単語が分かって面白いだけでなく勉強や新たな知識になった。2週に分けてもっとたくさんのスポットを紹介したり、実際に現地のお店で買い物やホテルのチェックインなどにチャレンジしたりするところを放送したら、もっと見たい知りたいと思います。(高校3年・女子・北海道)
  • 『水曜日のダウンタウン』(TBSテレビ)

    非常に面白い企画だったが、食べきれなかった物は最終的に捨てられている可能性もあり少し配慮に欠けているのではないかと思った。また、面白い反面で、芸人さんがつらそうでかわいそうだった。(中学3年・男子・神奈川)

  • 『週刊さんまとマツコ』(TBSテレビ)

    毎日のようにテレビで見かけるこの2人のコラボが面白くないはずがなく、常に笑いの絶えない素晴らしい番組だと思いました。ただ個人的には、相手に「お前どうせ〇〇やろ!笑」という決めつけのツッコミをしているのを見ると、この2人に言われたら間違っていても否定できないよね、と思ってしまいます。これからも見続けたいと思います。(高校3年・男子・神奈川)

  • 『キョコロヒー』(テレビ朝日)

    2人がマイペースでトークをしているのがいい意味で話したいことを話している感じがして、台本通りに進むバラエティー番組とは違ってとても面白いと思った。(高校1年・男子・群馬)

  • 『ミセススクールクエスト』(テレビ朝日)

    有名人が学校に行くのはとても良いことだと思います。企画からしてターゲットは若者のように思えたので、夜中に放送せずに若者が起きている時間に放送すればいいのになと思います。(中学3年・男子・広島)

  • 『グッと!地球便』(読売テレビ)

    この番組に対する第一印象は共感と驚きだ。僕にとって(新しいビジネスに挑戦する)女性が話すことは現実味があり、まるで自分の進むべき道を示されているように感じた。これは決断や選択など物事の岐路に立つたくさんの人々も同じように感じられると思う。(中学1年・男子・東京)

  • 『有吉の壁』(日本テレビ)

    コントの間の時間がないため笑いが途切れることなく楽しむことができました。Twitterなどで話題となっている人を呼んだりするコーナーを作ったら若者の視聴率は上がると思います。北海道などあまりロケを行ったことがない場所でもロケをした方が盛り上がると思います。その地域の一般人も参加してお笑い芸人とコンビを組む新しいコーナーを作ってもいいと思います。生放送でやる回を設け、有吉さんがやっている判定を視聴者がdボタンで投票できる企画を行ったりするのもいいと思います。(高校1年・女子・北海道)

  • 『ジョブチューン』(TBSテレビ)

    この番組のいい点はお店の宣伝効果があることで、一つ一つの商品に対する努力や工夫していることを説明していて私もとてもお寿司が食べたくなった。また大人の努力を見ることができる。大人が一生懸命に考え、仕入れ、商品化して提供していることを知ることができ、その努力がすごく伝わってきた。一方、好んでその商品を食べていた人もいるかもしれないので不合格を出されるのはあまりいい気持ちがしないのではないかと思った。(中学2年・女子・東京)

  • 『池上彰のニュースそうだったのか!!』(テレビ朝日)

    さまざまなトピックについて詳しく説明してくれるので、知っているつもりになっていたことや今まであまり気にしていなかった問題について考えさせられます。また池上さんとのやり取りを見ている中で、私自身も自分なりの解釈や考えを持つことが出来ました。(高校2年・女子・東京)

  • 『証言者バラエティ アンタウォッチマン!』(テレビ朝日)

    芸人は一見ただ笑わせているように見えるが、さまざまなことを裏でしっかりと考えているのだと感じられる。芸人だけでなく、事務所や番組などお笑いに関すること全般を取り上げるのが良いと思う。あまり取り上げられることのない人やテレビの裏方で活躍する人を取り上げるなど、広くバランスよく取材することも意識する必要があると思う。(高校1年・女子・北海道)

  • 『アイ・アム・冒険少年』(TBSテレビ)

    スタッフさんのツッコミが視聴者の気持ちを代弁していていつも面白いです。ただスタッフさんが手伝っていることには少し疑問があり、それだと1対1でもないような気がするので、2~3人で参加してその人たちだけでやったほうが実力のサバイバル感が出ると思います。(中学3年・女子・福岡)

  • 『巷のアカンをやっつけろ! かまいたちのやりおる学』(NHK総合)

    行動経済学に基づいて人の行動を変える方法を分かりやすく伝えていていいと思った。また普段の生活にも活用できる方法だったので、とてもためになった。難しい言葉にもイラストと短く簡単な説明があったのでテンポよく番組を視聴することができた。(中学3年・女子・広島)

  • 『バナナサンド』(TBSテレビ)

    「あたまおしりゲーム」はお題として最初の文字と終わりの文字が指定され、これに合う言葉の文字数が得点となるルールです。答えは一つではなく、家族で見ていても父母を交えて参加できるので家族で競争しています。このゲームは高校などにロケに出て学生を交えてプレイすると、より盛り上がるのではないかと思いました。(高校3年・女子・京都)

  • 『king&Princeる。』(日本テレビ)

    King&Princeのみなさんの個性を生かした企画が面白く、毎週違うジャンルの企画をしていて勉強にもなります。若い世代だけでなくいろんな世代の方に面白いと思ってもらえる工夫があるという点で、とても素敵な番組だと思います。(中学2年・女子・愛知)

  • 『川島明の芸能界㊙通信簿』(フジテレビ)

    いろいろな芸能人に通信簿をつけるというあまりない番組だったので、とても新鮮で楽しかったです。視聴者や周りの芸能人の視点を取り入れたものも見てみたいなと思いました。(中学2年・女子・栃木)

  • 『オオカミ少年』(TBSテレビ)

    昭和や平成など過去のテレビの映像を見られる機会はほとんどないので、ほかにはあまりない面白い番組でした。最近の番組では、体張る系のロケでは芸能人の安全がしっかり確保され罰ゲームも危険なものが少なくなっていて、昔に比べて誰もが安心して見られる番組へ変化しているのだなと思いました。(高校1年・女子・茨城)

  • 『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBSテレビ)
    • 学校に潜入してサプライズドッキリを仕掛けるという内容だった。特に心に残っているのはターゲットの生徒と目黒蓮のトークの場面だ。その生徒はアルバイト先で耳の不自由なお客さんに出会ったそうだ。そのとき目黒さんが出演していたドラマ「silent」をきっかけに手話を習いたいと思ったそうだ。ドラマやテレビのチカラは偉大だなと思った。(中学3年・女子・山梨)
    • 目黒蓮さんが女子生徒と手話をしているシーンがとてもいいなと思った。誰もが手話をできるような世の中になればいいという話をしていて、そうなると本当にいいなと思った。(高校2年・女子・東京)
  • 『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)
    • 家族みんなで笑いながら見ることができた。少し行き過ぎたドッキリもあったが、大体はとても面白かった。ジップラインから落下するドッキリはちょっと危ないし大丈夫?かわいそうと思った。(中学2年・女子・福井)
    • 全体的に面白く、週末にこの番組を見ると疲れが飛びます。スタジオにいる芸能人をもう少し映してもいいと思う。一般人の家庭を参加させても良いと思う。今流行っている東京リベンジャーズとのコラボで視聴者が増えると思う。(高校3年・男子・千葉)
  • 『冒険少年 超脱出島SP』(TBSテレビ)

    この番組を家族全員で見ているのですが、母が「今度キャンプでも行ってみたいね~」と言っており、家族で楽しくコミュニケーションがとれる良い番組だと思います。(高校2年・男子・山形)

  • 『オールスター感謝祭』(TBSテレビ)

    この番組の面白いところは出題されるクイズが幅広く、スピーディーに進行されるため、見ていて飽きないところだ。頭の良さを試す知識問題ではなく、答えを聞いて驚くようなひっかけ問題や、問題を見るだけで笑えるような芸人さんの面白い個性をうまく使った問題など、ほかのクイズ番組にはないエンターテインメント性にあふれている。家族でこんなに会話が生まれて盛り上がる番組はほかにはあまりないので、次の放送は半年後だがとても楽しみにしている。(高校2年・女子・愛知)

  • 『天才てれびくん』(NHK Eテレ)

    新型コロナウイルス流行期間から作風が変わってしまい、面白くない作りになってきてしまいました。感染防止対策が緩和されてきた今、「天才てれびくん」の面白さも取り戻していってほしいと願うばかりです。(中学2年・男子・埼玉)

  • 『プレバト』(毎日放送)

    笑いを交えて子どもにも分かるように俳句の楽しさや技法を伝えています。とくに講師の夏井いつき先生のコメントが秀逸で、評価の分かれ目など私にも理解できる的確な表現なので、俳句の奥深さについていつも気づかされます。(中学1年・女子・福岡)

  • 『太田上田』(中京テレビ)

    意外な2人のコンビですが、いつものバラエティー番組とは違う一面を見ることができ、5~10分程度の長さなので一本の漫才を見ているように感じ、YouTubeにも多くの動画があるため続けて見ていられる。土日のお昼などに総集編のような放送があるともっと見る人が多くなるのではないかと思います。(中学3年・男子・神奈川)

【自由記述】

  • 朝ドラで少し歴史的な場面も入れてほしいです。子役が上手なので、もう1週間くらい出る場面を増やしてほしいです。アニメ番組をもう少し早い時間にやってほしいです。(中学1年・女子・千葉)

  • 友だちとの会話でテレビやラジオの話題が出ることが少ない。YouTubeなど好きなものを調べればいつでも見られるツールが増えたことも理由の一つだと思う。でもそれだと新しいものに出会えない。改めて考えるとテレビやラジオの面白さを感じた。(中学3年・女子・滋賀)

  • ラジオの聴き方や面白さをもっとメディア側が発信してほしい。興味をひくことができれば一気に若者のラジオ人口を増やせると思うので、もっと宣伝の工夫をしてほしいと思う。(高校2年・女子・愛知)

  • 普段、テレビよりもラジオをよく聴く。友達のほとんどはラジオをつまらないメディアだと思っているようだ。聴取者と番組の結びつき、曲との出会いなど、ラジオの魅力を皆に知ってほしい。(中学2年・男子・東京)

  • 春休みにお仕事体験ができる施設に行きました。ラジオ局やテレビ局にも挑戦しました。ラジオとテレビは伝える手段は違うけれど、どちらもたくさんの役割の人で成り立っていて、見ている人・聴いている人に笑顔を伝えたいという想いは同じだと思いました。どちらも必要不可欠だなと思いました。(中学3年・女子・山梨)

  • 北朝鮮がミサイルを発射し、テレビでJアラートが流れたときに日本語でしか内容が書かれていないし、音声も日本語しかなかったので、英語でも書かれていた方がいいと思いました。(高校1年・女子・北海道)

  • 私はYouTubeよりテレビ派なので、テレビにしかない良さをこれからも発信してほしいです。実際にテレビ番組を撮影している現場を見学してみたいです。(高校1年・女子・京都)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『解体キングダム』(NHK総合)
    • 取りこわされる建物にはすべて物語があるのかなと思いました。ふだん見られないところや建物の取りこわしを身近にみられてよかったと思います。(中学1年・女子・島根)
    • 解体する作業をしているのは年配の方が多く、意外でした。高いところの狭い足場で作業していて尊敬します。私たちの知らないところで電気を流してくれている人がいると知って、大切に使いたいと思いました。(中学2年・女子・東京)
  • 「ヴィランの言い分」(NHK Eテレ)

    人が不快に感じている部分が「ヴィラン側」から見ると実はいいこともあったり自然のためになっていたりして、人間と同じようなことをしている一面が分かり終始驚きを隠せなかった。人と接していくうえで大切な、双方の意見をきちんと聞く、見た目で判断しないなどのことも改めて大切だと学んだ。(高校2年・女子・東京)

  • 『私小説-発達障がいのボクが純愛小説家になれた理由-』(テレビ朝日)

    伊佐山ジンは発達障がいを抱え生きづらさを感じている。そんな中でも寄り添い続ける妻の優美がいて、その日常の中で恋愛小説家として小説を書く姿がとても温かくて幸せな気持ちになった。「ありがとう」「どういたしまして」というやりとりがとても印象的で、素敵な夫婦だなと思った。(中学3年・女子・山梨)

◆委員のコメント◆

【最近見たバラエティー番組について】

  • 「キョコロヒー」のマイペースなトークが、台本どおりのバラエティー番組と違って面白いという感想があった。深夜の時間帯は、どの番組もラジオっぽい作りになっているが、このモニターがラジオも好きだと書いていたので納得した。

  • 芸人のネタそのものでなく、どのように今のスタイルになったかを分析する番組を評価する感想があった。テレビに愛着がある若い人は、そうした舞台裏に関心のある人がとても多い印象があり、最近は舞台裏を見せる番組も多く制作されている。あまり取り上げられない人も取材してほしいという意見も書かれていて、作り込まれた舞台裏では飽き足らず、さらに裏が知りたいという強い関心が読み取れる。

【自由記述について】

  • Jアラートが出されたときのテレビ放送について「日本語と日本語表記しかなかった」という指摘があった。日本にもさまざまな外国人がいるので、テレビに外国語の字幕をつけるのは難しいかもしれない。(外国人向けの専用アプリはあるようだが)、ほかに何らかの形で素早く伝える方法はないのだろうかと思った。

今後の予定について

次回は5月23日(火)に千代田放送会館BPO第一会議室で定例委員会を開催します

以上

第315回

第315回 – 2023年4月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2023年4月18日(火)  午後4時 ~ 午後7時
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
曽我部委員長、鈴木委員長代行、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、
野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、起草委員作成の決定文草案について活発に議論が行われた。次回委員会でさらに文案を検討していくこととなった

2.「判断ガイド2023」進捗状況報告

事務局から今年中の完成を目指す「判断ガイド2023」について作業の進捗状況を報告した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

以上

第182回

第182回–2023年4月

東海地区ラジオ局との意見交換会の報告

第182回放送倫理検証委員会は、新しく毛利透委員が加わり10人の委員が出席して4月14日に開催され、3月に名古屋市で行われた東海地区ラジオ局との意見交換会の模様や、3月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2023年4月14日(金)午後5時~午後6時50分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、毛利委員、米倉委員

1. 東海地区ラジオ局との意見交換会の報告

3月17日に名古屋市で、愛知・岐阜・三重の3県のラジオ局8局から約20人が参加して、委員との意見交換会が行われた。ラジオ局だけを対象にした意見交換会を開くのは、2007年の委員会発足以来、初めてのことである。
参加した委員からは「私たちはこれまでラジオにあまり目配りをしてこなかった。今回を初めの一歩として今後も続けていきたい」「議論の主たるテーマの1つだった『政治的公平性』について、放送局によって意識のばらつきがあることが分かった」「ラジオとテレビでは、同じ放送事業者とはいえ番組制作の事情がかなり異なることが分かった」といった感想や報告があった。
意見交換会の詳細はこちら

2. 3月に寄せられた視聴者・聴取者意見を議論

3月に寄せられた視聴者・聴取者意見のうち、ニュース番組でメジャーリーグの大谷翔平選手を乗せた飛行機を撮影しようと、取材ヘリコプターが夜遅くに羽田空港付近で長時間旋回し、騒音被害を受けたという苦情が多数寄せられたことや、ゲストが差別的な発言と受け取れるコメントをした番組があったことや、情報番組で動物園から生中継をした際に、出演者がペンギンのいる池にわざと何回も落ちたことについて「ペンギンを虐待している」という意見が殺到したことなどが事務局から報告され、議論が行われた。

以上

2023年3月17日

東海地区3県のラジオ局と意見交換会を開催

愛知、岐阜、三重の3県のラジオ局と放送倫理検証委員会との意見交換会が、2023年3月17日、名古屋市で開催された。ラジオ局側の参加者はAM、FMあわせて8局20人、委員会からは小町谷育子委員長、岸本葉子委員長代行、大石裕委員、大村恵実委員、長嶋甲兵委員の5人が出席した。放送倫理検証委員会がラジオ局だけを対象にした意見交換会を開くのは、2007年の委員会発足以来、初めてのことである。

冒頭、小町谷委員長が「昨年、数は少ないものの、ラジオ局の番組について聴取者から意見が届いた。それをきっかけにラジオ局について考えはじめたところ、私たちがラジオ局の実情をあまり知らないということに気づいた。というのも委員会は過去、ラジオ局の事案を議論したことがなかったからだ。そこでまずは、ラジオ局のみなさんと意見交換をさせていただこうということになった」と述べ、開催の趣旨を説明した。
これに続いて主に、次の3つのテーマについて意見が交換された。
「パーソナリティーについて」「政治的公平性について」「番組と広告について」である。

パーソナリティーについて

司会をつとめる放送倫理検証委員会の調査役から、関西のラジオ局で起きたひとつの事案が紹介された。朝のラジオ番組で、俳優が亡くなったことを報じる新聞記事を取り上げた際、違法薬物の影響を疑うような発言をし、結果、謝罪に至ったというもの。
これについて、生放送を多く担当するラジオ局の参加者から、「パーソナリティーには年齢を重ねられた人生の大先輩が多く、若手の制作者が何かを指摘しても受け入れてもらえないことがある」という趣旨の発言があった。
「同じ放送といっても、ラジオの場合はテレビと異なり、1人のディレクターが長時間の生放送を担当するケースが多く、流れの中でパーソナリティーにおまかせ、という状態になることもある」、「パーソナリティーとはよく言ったもので、個性を打ち出すことによってリスナーを引きつけるという現実がある」、「ヒヤリ、ハットのおそれは社内で絶えず共有している。ただ、今のラジオが生放送を中心にやっている以上、このリスクを減らすのは難しい」などの意見も出された。
その一方、「放送内容で分からないことがあったら必ず確認する。まるまるパーソナリティーにおまかせして、その人の発言が、間違いを含めて出ることがないよう心がけている」という趣旨の発言もあり、局や番組によって制作環境に違いのあることが明らかになった。
これらに対し、在京ラジオ局の番組審議会委員長をつとめた経験のある大石委員からは「ラジオがもっと多くのリスナーを獲得していこうと考えるなら、保守的な感性に陥ることなく、『あっ、こういう面白い人がいる』と、冒険をすることも必要だ。可能性を信じて頑張っていただきたい」という発言があった。
放送番組の制作にたずさわる長嶋委員は「(ラジオというメディアが)personalであり、intimate(親密)であるからこそ、テレビとは違う、面白い個性が発掘される可能性は、まだまだある」と指摘した。
現役のラジオ番組出演者でもある岸本委員長代行は、コスト・コントロールとリスク管理の両立、さらにはマンパワーの問題が、ラジオ局共通の問題であることを指摘した上で、自分の体験をもとに、定年後のスタッフの活用方法が、今後の番組作りの鍵になる可能性があることを示唆した。

政治的公平性について

去年1月に放送された関西のテレビ局の番組で、ひとつの政党の関係者ばかりが出演するものがあり、これについて委員長談話(2022年6月)が出されたことが意見交換の導入になった。小町谷委員長は「ひとつの政党に関係する人だけが出演したことによって、質的公平が損なわれてはいないかという話をした」と、当時の議論を振り返った。
続いて司会者が、最近BPOに寄せられたラジオ番組のリスナーの意見から、以下の2つを紹介した。
「去年、参議院選挙の立候補予定者がディスクジョッキーをつとめる番組が放送されたのを聞いたが、実質的に候補の宣伝になってはいないか」、「国会議員が出演している番組があり、所属政党の公約や議員活動についての宣伝と、とれる話ばかりをしていた。放送倫理上の問題があるのではないか」。

ラジオ局の参加者からは、「番組のスポンサーが、自分が支持する特定政党の関係者をゲストに連れてきたりすると、なかなかNOと言いづらいことがある。しかし選挙に関して言えば、社内規則を設けており、選挙の一定期間内の出演には規制がかけられている」など、実例に即した説明があった。
別の参加者は、仮に地方議会議員が出ている番組があったとしても、例えば「介護」であるとか、その議員の専門分野に限って話をしてもらい、政党に関することは話をしないようにしてもらうよう、事前に打ち合わせをするようにしている、といった事情を紹介した。
「政治家候補と言われる人について、出演の要請があったことはある」と述べる参加者がいたが、そういう場合でも政治的な話はしないようにした、という補足をつけた。

これらに対し大石委員は、政治的に公平な番組を作っていくときに、公平さは考慮すべきものであるが、それはメディアが国家などから規制されることに対し、取材や表現の自由を確保するために持っているものだという趣旨の意見が表明された。さらに「ラジオ局がその地域に根ざし、どう貢献するかということ。問題提起型の、ジャーナリズム機能としての役割をどの程度、担っているのかについて注視している」という趣旨の発言をした。
大村委員はスイスでの居住経験をもとに、「地域のマイノリティー」としての感覚を語ったのに続けて、「ラジオにおいて、地域の特性や課題が放送されることは、そこに住む者にとっては、『あ、この社会に生きている』という実感を持つことにつながる」、「放送が民主的過程に貢献する価値をふまえ、放送に政治家が出演することや、政策を取り上げること自体については、(局側が)萎縮することがないようにと強く思っている」と述べた。
岸本委員長代行は、自分が地方取材でバスに乗った際、車内でラジオがかかり続けていた経験をもとに、「政治的な話はしなくても、バスを利用する人が、この時間はいつも同じ党の人が自己アピールみたいな話をしていると感じたら、番組についてどう思うか。一般のリスナーに番組がどう聞こえるかを想像してほしい。それがリスナーからの信頼につながると思う」と述べた。
長嶋委員は「視聴者の方が、これって(政治的に)極端な番組じゃないか?と疑問を感じ、いろんな意見を寄せるケースが増えている」と述べ、政治的公平性に関して、視聴者・リスナー側の意識が高まっていることを指摘し、よけいな政治介入を排除するためにも放送局の自主・自律が重要として、このテーマについての議論を締めくくった。

番組と広告について

委員会決定第30号、第36号、および2020年の委員長談話について、司会者から説明があったのち、「音声のみの放送」であるために、番組部分と広告部分の区別がつきにくいというメディアの特性について、ラジオ局側の参加者から発言があった。

日々の番組制作についての苦心がいくつも語られた。
「出演型の生CMなのか、それとも番組なのか。境界線が曖昧なものっていうのが、相談案件として非常に増えているという印象がある」、「この商品をというのではなくて、できる限り番組としての形を作って、リスナーへのサービス提供になるよう努力をしている」などが代表的なものである。
企業法務の経験がある大村委員は、「いろんな企業の仕事にたずさわる中で、広告ではなく、番組で取り上げてもらうために、企業がコンサルタントに対価を支払うケースがあると聞いている」と述べた上で、ラジオ局側に実情をたずねた。
ある参加者は、「(スポンサーサイドから)なるべく溶け込ませてください、広告と分からないよう告知してください、と言われることがあり、線引きが難しいことがあった」と自分の体験を明かした。
別の参加者は、「なくはないでしょう。しかし、局側としては番組を模索するスタンスを伝えるしかない」との趣旨、発言した。
長嶋委員は、「こういう問題がBPOで取り上げられることを、むしろクライアントの介入に対する盾にして、自分たちが制作したいものを作って欲しいと思います」と述べた。

以上の3つについて活発な意見交換がなされた後、「差別語・不快語・楽曲について」と題して、短時間の情報交換があった。民放連に放送音楽の取り扱いに関する内規(放送基準・61)が存在することが、司会者からラジオ局側参加者にあらためて情報共有された。

最後に参加局を代表して東海ラジオの岸田実也・制作局編成制作部専任部長が「有意義な時間を過ごさせていただいた。テーマごとに勉強になった。根底にあるのはリスナーのことを考えて、ということだと思うので、持ち帰って番組作りに役立てていきたい」と挨拶した。

以上

2022年度 中高生モニター会議

2022年度「中高生モニター会議」

◆テレビ朝日オンライン館内見学会概要◆

2023年3月28日、BPO中高生モニター15人がテレビ朝日オンライン館内見学会に参加して、スタジオのセットやテレビ局の仕事について学びました。冒頭、『大下容子ワイド!スクランブル』の出演者、大下容子、佐々木亮太両アナウンサーからBPO中高生モニターのこの1年間のモニター活動へのねぎらいのメッセ―ジが届くというサプライズがありました。

3人の案内係にガイドされて、まずテレビ朝日第3スタジオを見学しました。このスタジオから3つの生放送番組が同日朝昼夜それぞれの時間帯に放送されているため、短時間にセットチェンジができるよう効率的にセットが組まれている話や、スタジオ数には限りがあるため、週1回放送の収録番組は収録後にその都度セットを撤収していることなどについて説明を受けました。また、『報道ステーション』のセットの詳細を特別に見せていただきました。さらに報道ステーションの映像モニターに生中継スタイルで中高生モニターたちの顔を映してくれました。

次にテレビ局のスタジオで使用されているカメラについての説明が技術スタッフからありました。また、放送が各家庭に届くまでの放送の仕組みについての説明VTRを見た後、スタジオの隣にある副調整室(サブ)を見学し、技術スタッフからサブではどのようなことが行われているのかと、生放送の映像と音声の切り替えについての詳しい説明を受けました。そして、特別に制作した「歓迎!BPO中高生モニターの皆さん」というテロップを映像モニターに表示してくれました。つづいて照明の仕事について照明スタッフから、『報道ステーション』のセットの照明ライトのほとんどがLEDで従来のライトの1/10の電力で節電になっていることなどの説明や、音声スタッフからは、「音声の仕事は各マイクで拾った音声をテレビのスピーカーで聴きやすい音に音声卓で調整することです」との話がありました。

最後に質疑応答の時間が設けられ、モニターから「海外からの中継で生じる音のタイムラグへはどのように対応していますか」との質問があり、テレビ朝日の技術スタッフは「回線センターやスタジオのサブで映像と音声のズレを合わせるなどの努力をしています」との回答が、「『報道ステーション』の大きな鉄骨のセットはどうやって作るのですか」との質問には「トラックでパーツ毎に運んだ後、運搬用の大道具エレベーターでスタジオに入れ、中で溶接している。その際にはスタジオを空けて何日も掛けて作っています」との解説が、「将来、エンタメ業界で働きたいと思っているが、どこで専門知識を勉強したのですか」との問いに対しては「テレビ局で働くにはいろいろなルートがあるが、テレビ局に入って何かやりたいという強い意志があれば専門で学んでいなくても大丈夫です」、そして「電力危機に対してスタジオ照明はどのくらい節電しているのか」に対しては「通常の半分くらいに落としています」と丁寧な回答がありました。

参加した中高生モニターはテレビ局のプロの仕事に触れる機会を得ながら、まるで自分たちが実際にテレビ朝日のスタジオにいるかのようなリアリティ感に包まれる中、あっという間に1時間の見学会は終了しました。この見学会は1年間のモニター活動の最後を飾る素敵な思い出になったと思います。

◆中高生モニター会議(意見交換会)概要◆

同日にオンラインで中高生モニター会議を開催しました。中高生モニターと委員が交流を深め、この1年間のモニター活動を振り返る意義のある会となりました。会議には全国の中高生モニター13人と、元モニター3人、そして青少年委員会からは榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員の8人全員が出席しました。

高橋委員が進行役となり、中高生モニターと委員の自己紹介のあと、「モニター活動で感じたこと」「最近の放送に思うこと」などについて意見交換をしました。

中高生モニターからの「BPOはどういう活動をしているのですか」との質問に対して、事務局からBPO3委員会のそれぞれの役割について説明があり、また「BPOの意見はどのように放送局に伝わっていますか。これまでどのような意見が反映されていますか」との質問には委員長が、ウェブサイトに載る委員会議事概要のこと、「審議」して「見解」などを公表すること、放送局との意見交換会を開催していることなど複数の方法で伝わることを説明しました。

また、モニターからモニターへ「ネットフリックス、アマゾンプライムなどのサブスクリプションを利用しているか」という質問に対して、多数が利用していると回答しましたが、中には全く利用していないと答えたモニターもいました。

つづいて緑川副委員長から、「YouTubeやTikTokなどのメディアを観ていますか。テレビとはどう違って、どう区別して利用していますか」との問いには、「YouTubeはマニアックでテレビでは見られない内容が見られます」「YouTubeでは自分が好きなジャンルだけを見られるが、それでは自分の意見が偏ってしまうので、新しい考え方に出会うという面でもテレビを全く違うものとして区別して使っている」との意見がありました。同様の意見が複数のモニターからありました。

さらに緑川副委員長から、「テレビ離れということが言われていますが、テレビはこうなってほしい、こうすればよいのにと思っていることがあれば教えてください」との問いには、「SNSやYouTubeは面白いコンテンツを作らないと見られなくなっていくが、それに比べてテレビは新規参入もなく変化に乏しい。放送局はもっと新しいメディアになっていかないと難しいと思います」との意見がありました。そのほか、「テレビはSNSとの競争ではなく、テレビの発信力を生かした番組を作るべきです。SNSからの逆輸入はテレビのSNS化を招くので止めるべきです」「不登校の人たちを元気にできる昼間のバラエティー番組が増えればよいと思います」「テレビは他の媒体で見づらいのが欠点だと思います」などの意見がありました。

再びモニターからの「青少年は何か大人と異なると考えていますか。どのような面で配慮が必要であると考えていますか」という質問に対して、沢井委員からは、「例えばテレビで見たことを模倣することについて、科学的なエビデンスを見ながら検討することが大事だと思います」、佐々木委員からは、「模倣に関して子どもたちはブレーキが効きにくいです。仲間と一緒に楽しくやること優先で、たまに事件になることもあります」との意見がありました。

元モニターの3人からは、「モニターの時に感じたモヤモヤ、違和感、感動をこれからも大切にしてほしいです」「常識を知るためにテレビを活用すべきです。たまたま見た時にもいい情報を見られるのがテレビです」「今の若い人たちはSNSなどのことも踏まえて、テレビの意見ができることに感心しました。今のモニターの人たちにもこれからも様々な番組を見て知識を付けて生活に役立てていってもらいたいと思います」との感想がありました。

≪その他、中高生モニターからの感想≫

  • 「テレビを見なくなってきていたが、この一年モニターをやったことでテレビを見る機会が増えました。」
  • 「CMに字幕が付いていないものがあるがなぜか。耳の不自由な方のためにすべての番組・CMにつけるべきだと思います」
  • 「テレビは公平性があり、様々な人、年代が見ることを前提に作られていて、自分の考えや好みに偏ることなく、色々な刺激を受けながら見ることができるので、これからも見続けていきたいと思います」

会議の締めくくりとして、榊原委員長と緑川副委員長から以下の一言がありました。

≪榊原委員長≫

中高生モニターの皆さんの意見が聞けてよかったです。青少年委員会は若い人から直接、話を聞けるとても大事な立場であることがあらためてわかりました。私よりずっと深く考えている人の意見もあってとても参考になりました。ありがとうございました。

≪緑川副委員長≫

春休みで忙しい時期にもかかわらず、参加していただき、ありがとうございました。皆さんから貴重な意見を聞くことができて、このような機会を持ててよかったと思います。また、急なお願いにもかかわらず、元モニターの3人の方に参加していただいたこともありがとうございました。モニターがとても印象深い経験だったと伺えたので、よかったと思っています。本日はありがとうございました。

以上

2023年3月に視聴者から寄せられた意見

2023年3月に視聴者から寄せられた意見

恐怖を感じるか幼稚園児で試した企画、ペンギンの池に出演者が「落ちた」中継などに意見が寄せられました。

2023年3月にBPOに寄せられた意見は 1,728 件で、先月から 121 件増加しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 81% 電話 18% 郵便・FAX 計1% 
男女別(任意回答)は、男性41%、女性20%で、世代別では、40歳代27%、30歳代24%、50歳代18%、60歳以上17%、20歳代10%、10歳代3%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、3月の送付件数は804件、47事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から15件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

ある状況に恐怖を感じるのか幼稚園児で試した企画、ペンギンの池に出演者が「落ちた」中継などに意見が寄せられました。ラジオに関する意見は46件、CMについては21件でした。

青少年に関する意見

3月中に青少年委員会に寄せられた意見は144件で、前月から71件増加しました。
今月は「表現・演出」が64件、「要望・提言」が16件、それに「動物」が12件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 自動販売機のニュースで利用客としてインタビューに答えていたのは現職の市議だった。市議選の立候補予定者であり、告示まで1か月を切っている。選挙の公平性の観点からいかがなものか。

  • 市議選の立候補予定者が報道番組の密着取材を受けた様子を、自身のSNSで番組名を明らかにして公開。放送は選挙後だそうだが、立候補予定者にたいへん有利に働くだろう。告示前ではあるが、選挙の公正さを著しく損なう行為だ。当該の局は候補者が取材を選挙に利用していることを知っておくべきだし、それを止めるべきだ。

  • 政治的公平性を「1つの番組でも判断する」のかどうかが問題になっているので情報番組でも少しは扱うかと期待していたが、連日、全編WBCの話題ばかりでがっかりしている。放送への介入にかかわる問題。バランスのある放送を望む。

  • ヘリコプターが22時前後に1時間にわたって羽田空港周辺の上空を低空飛行し、ひどい騒音だった。ニュースで大谷選手の帰国を伝えるためらしい。重大な事件や事故、災害等であれば理解できるが、これは公共性の高い内容とはとても思えず、ただただ迷惑。

  • 芸能事務所での未成年者への性加害疑惑について一切報じないのはなぜなのか。

  • 情報番組が朝からずっと自局の女性アナウンサーの結婚について伝えている。プライベートまでわざわざ伝える必要はない。

【バラエティー・教養】

  • バラエティー番組で幼稚園児を対象に、かくれんぼで隠れた友だち全員が知らない子に替わっていたら恐怖を感じるか、という実験をしていたが、幼児虐待ではないのか。精神科医の意見を聞きたい。

  • 出演者たちが斜面で雪玉を大きくしながら転がしていく企画で、推定1トン近い雪玉が制御できなくなり暴走するシーンがあった。安全を軽視していないか。

  • できるだけ少ない歩数でソウルまで旅行するという企画で、出演者が勢いをつけたスーツケースに体を預けて歩数を減らしていた。メーカーは「杖や歩行補助具代わりでの使用は大変危険」と注意を呼び掛けているし、周囲にも迷惑。やめてほしい。

  • トーク番組の出演者が「加齢で錠剤が飲み込めなくなり、砕いて飲んでいる。砕かないと胃に負担がかかる」などと話していたが、錠剤には砕いて服用してよいものとそうでないものとがある。このような発言を注意喚起などなしに放送するのはよくない。

  • 出演者が口にフォークをくわえて一輪車に乗り、投げられたりんごを受ける芸に挑戦していた。長い物をくわえて行動することは大変危険だ。この放送を見た子どもがまねをして事故を引き起こしかねない。

  • 動物園のペンギンのいる池から生中継していた出演者が、スタジオから「落ちるなよ」と繰り返し呼びかけられた後に池に落ち、スタジオ出演者たちが笑ったり拍手したりしていた。高病原性のウイルスを持ち込んだり、人間に対する恐怖から給餌ができなくなったりするなど命に関わるリスクがある。取材の際はルールを守るべきだ。

  • お笑い芸人の自室に突然“砂かけババア”が現れ、「やめて」と懇願してもて砂をまき続ける企画。これを面白いと感じる神経は、迷惑動画を見せれば人が面白がると考えるのと同じ。これを「ウケる」と笑うことは学校でのイジメにもつながる。

  • ロケ地の宿泊施設で就寝中の出演者の頭上で水を入れた風船を割り、驚かせるという企画。ベッドはびしょぬれのはずで宿泊施設にとっては迷惑行為。番組の視聴者には青少年も多いと思われ、「悪ふざけの迷惑行為」を助長しないか心配だ。

【その他】

  • 病気などで自分や身内の死を考えるような恐怖があるときにテレビで葬儀業者のCMが頻繁に流れるのは非常に精神にこたえる。もう少し配慮してほしい。

【ラジオ】

  • 「セルフ給油がオートでストップした後、あふれるギリギリまで注ぎ足した」というリスナーからのメールを紹介していた。静電気で引火する危険性があり、消防庁も禁止している行為だ。このメールは読むべきではなかったし、読むのであれば「これはダメです」と注意喚起するべき。

  • パーソナリティーが「スイカは腎臓にいいので腎臓の悪い人に食べさせようと季節外れに入手して持っていった」というエピソードを披露していたが、「腎機能が低下している人にはスイカはむしろよくない」という説明をしている医療機関もある。危険ではないのか。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • バラエティー番組で、一人暮らしの男性芸人の部屋に妖怪に扮した女性が潜んでいて、部屋内に砂をまき散らすドッキリがあった。日常生活を送る自宅を砂だらけにされて、あまりにひどくて見ていられない。これは立派ないじめだ。これで笑いを取ろうとするのはひどすぎる。

  • 砂まきのドッキリは、専門の業者でも全てを吸い取り回収するのは困難だ。一歩間違えれば、家電などは壊れるし、犯罪行為に等しい。面白いといって笑っているスタジオ司会者にもドン引きした。

  • 男性アイドルグループのメンバーを対象にしたドッキリ企画で、進行役の芸人による、メンバーごとに持ち上げたり見下したりの差別感押し付けがひどかった。行きすぎた悪口もあり、ばかにされたメンバーのファンや一般の視聴者も気分を害した人が多かったようだ。

  • バラエティー番組で、幼稚園のかくれんぼの際、隠れているのが見ず知らずの子どもたちに入れ替わり、鬼役の園児を困惑させるドッキリがあったが、この園児の表情を見てひどく悲しくなった。子どもにトラウマを植え付けるかもしれないこんな企画を通したテレビ局などに失望した。

【「要望・提言」に関する意見】

  • 政治についての討論番組がもっとあればよいと思う。若者の選挙離れをいいことに、やりたい放題の高齢政治家。若者が政治について知ることができる番組がもっとほしい。

  • 飲食店内で特撮ドラマの蹴りをまねた動画がSNSで拡散している。テレビ局はそろそろ対応を考えるべきだろう。子どもたちに悪影響が出ているのだから。

【「動物」に関する意見】

  • ワイドショーの中継企画で、動物園内のペンギンの池に男性芸人が何度も落ちたが、スタジオの司会者が落ちるようあおっていたし、大笑いしているのがたいへん不快だった。春休みで子どもたちも見ていたと思う。笑いのためなら動物虐待をしてもよいのだろうか。

第255回 放送と青少年に関する委員会

第255回-2023年3月

中高生モニター会議の開催… など

2023年3月28日、第255回青少年委員会を千代田放送会館BPO第一会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。当日は中高生モニターによるテレビ朝日オンライン館内見学会と中高生モニター会議に引き続いて通常の委員会が開催されました。
委員会では、2月後半から3月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見については、バラエティー番組に関して報告されました。3月の中高生モニターリポートのテーマは「1年間で最も印象に残った番組について」でした。委員会ではこれらの視聴者意見やモニターリポートについて議論しました。最後に来年度の予定について確認しました。

議事の詳細

日時
2023年3月28日(火) 午後4時00分~午後6時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
中高生モニター会議 詳細はこちら
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

2月後半から3月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
バラエティー番組で、一人暮らしの男性芸人の部屋に妖怪に扮した女性が潜んでいて、芸人が帰宅すると手にした壺から砂をまくドッキリを放送したところ、「部屋に砂をまくのはやりすぎ。企画というより弱い者いじめだ」などの意見が寄せられました。担当委員は「少しも面白くないし、やりすぎだと思うが、委員全員で視聴して議論するものでもない」と述べ、議論の結果、「討論」に進むことはありませんでした。
別のバラエティー番組で、男性芸人を四つんばいにさせてズボンを下ろし、臀部を露出させたことについて視聴者から、「『無理やりズボンを脱がす』のは、警察に相談または通報すべき19のいじめ事例として文科省より2月に通達されている」と指摘されました。担当委員は「委員会としても今後は19のいじめ事例を念頭に置きながら判断していかなければならないだろう」という意見を示したほかは大きな議論はなく「討論」に進むことはありませんでした。

中高生モニター報告について

現モニター最後となる3月のテーマは「1年間で最も印象に残った番組について」で、20人から合わせて17(テレビ15、ラジオ2)番組への報告がありました。
複数のモニターが挙げたのは3番組で、『M-1グランプリ2022』(朝日放送テレビ)には「一生懸命ものごとに立ち向かっている姿は見る人に勇気を与える」などの感想が寄せられました。また『バリューの真実』(NHK Eテレ)に「高校生の疑問にまっすぐ向き合っているところに好感がもてる」、『silent』(フジテレビ)には「見るたびに感情が揺さぶられる番組だった」といった声が届きました。
「自由記述」では、「テレビの強みは同じ空間を共有して感想を言い合えるところで、人と自分の価値観の違いに気づくきっかけにもなる」など、1年間のモニター活動で感じたことの記述が目立ちました。

◆モニター報告より◆

【1年間で最も印象に残った番組について】

  • 『バリューの真実』(NHK Eテレ)
    • この番組の面白いところは、さまざまな角度から徹底的に現役高校生たちの悩みを解決するところです。1回の放送の内容がとても濃く、高校生の疑問にまっすぐ向き合っているところに好感がもてます。大人からすると些細なことに感じられても高校生にとってはとても切実な悩みであることもあります。そんな悩みに真摯に向き合ってくれる温かさと、「自分たち高校生と同じ目線で考えて悩んでくれている」という安心感や優しさがあるように思います。(高校2年・女子・東京)
    • ドラマ(「たいせつを探して」)を見て、改めて「人生は一度で儚いもの」なんだなと思いました。そして1分1秒を大切にして、これからも家族を大切に過ごしていきたいと思いました。(高校3年・女子・神奈川)
  • 新美の巨人たち 『「不思議の国のアリス」×篠原ともえ』(テレビ東京)

    私は英語で原作を読んで古い英語の美しさを感じていたが、この番組はアートという視点からだったので、新たな角度で興味深かった。実際に日本を代表する木版作家の方がアリスの挿し絵を再現していた。このような紹介のしかたは、やはりテレビしかできないような気がする。(中学1年・女子・千葉)

  • 『世界ふれあい街歩き』(NHK総合)

    2019年の再放送としてキーウ(キエフ)の街並みを紹介していた。ロシアによる軍事侵攻が起こる前の平和な街を見ていて胸が苦しくなった。とくに博物館の前で「過去を学ばない者に未来はない」と語る男性がいた。過去を見つめてこれからの未来に生かそうとする姿に感動した。また教会で平和を祈る女性が「世界中の人々が仲良くできますように」と語っていた。番組の最後に現在のウクライナの姿、人々を紹介していた。私たち視聴者がこれを見て、自然とウクライナのことを考えて祈らずにはいられない、考えさせられる放送だった。(中学2年・女子・鹿児島)

  • 『musicる TV』(テレビ朝日)

    有名な人ではなく駆け出しの人や、これから伸びそうな人を紹介してくれるため、毎回新しい音楽と出会えてとても好きな番組になりました。もっとも良いと思うのは、“一般人で音楽の紹介をしている人を招いて意見やおすすめの曲を教えてもらえること”です。あくまでファンという位置づけの人が紹介してくれる曲から「エモい」や「良い」といった印象を受けやすいです。(中学2年・女子・東京)

  • 『マイケル・サンデルの白熱教室2023』(NHK Eテレ)

    「同性婚を認めるか」という問題を国の垣根を超えて話し合う内容で、とても斬新さを感じました。各国のトップの意見ではなく大学生の意見であることにとても興味が湧きました。印象に残ったのが、アメリカの学生の「そもそも結婚を法制度化するのはどうなのか」という意見です。もちろん人や国によって価値観や考え方は違うのですが、国に関係なく打ち解けて話し合っていて、国どうしの関係の良し悪しなどは別の問題なのだと強く思いました。とても深く考えさせられる議論でした。(中学1年・男子・山形)

  • 『エルピス -希望、あるいは災い-』(関西テレビ)

    このドラマが社会に訴えたいであろうと思われる主張を、現実社会とリンクさせる中で強く感じた。社会批判の要素があるドラマを制作したテレビ局と制作陣の勇敢さに感心したとともに、一歩やり方を間違えれば厳しい結果もあったであろうところをうまくバランスを取ったのだろうなと思った。(高校1年・男子・愛知)

  • 『it!!』(ベイエフエム)

    一番の魅力は「ほっと一息」つけることだと思う。常にメッセージテーマがフリーなのも相まって、リスナーからのメールで番組が進んでいく。「明日、卒業式です」といったメールにDJが優しく言葉を返すのが、聴いていて心地が良い。「3時になったらラジオでお茶会」という企画もあり、肩の力を抜いて楽しめる。(高校1年・男子・東京)

  • 『silent』(フジテレビ)
    • 毎週見るたびに切なくなったり感動したり、本当に感情が揺さぶられる番組だったと思います。手話にあまり興味を持ったことがなかったのですが、番組を見て興味が湧きました。自分も障がい者の方と線をひいていた感じがします。(中学2年・女子・山口)
    • 学校で感想を言い合うだけでなく、先生も授業の冒頭に感想を言っていてとても楽しかったことを覚えています。耳が聞こえない人の生活の中での工夫や苦悩を知ることができ、人としてもひとつ成長できたように思いました。(高校2年・男子・福岡)
  • 『ラジオ・チャリティー・ミュージックソン』(ニッポン放送)

    こうした活動を知ることで障がいのある人たちに自分は何ができるかを考え、積極的に行動するという自信も生まれた。番組を通して視覚障がい者の感覚の違いに気づき、ラジオを聴かなければ知ることができないことがたくさんあった。ラジオの音声でしか伝えられない特徴を生かしていると思った。(中学2年・女子・東京)

  • 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)

    大河ドラマは難しい印象が強かったのですが、序盤のほうはコミカルなシーンも多く、現代語のようなしゃべりかたで進んでいたので見やすいなと思いました。ずっとシリアスなわけではなく、何百年も前に生きていた人ではあるけれど、どこか現代の人間にも通じるような部分があってすごく面白かったです。(中学3年・女子・群馬)

  • 『第73回紅白歌合戦』(NHK総合)

    これを見ないと私の1年は終わらない、それくらいアツい気持ちで見ている番組です。さまざまな要素で構成されているのがとても魅力的で、そんな世界観を堪能できるのは紅白ならではだと思います。欲を言えば番組全体のテンポが早い気がするのと、演奏する曲がかなり短くカットされているので、もう少し番組や1曲の時間が長くても良いのではないかなと思います。(高校1年・男子・兵庫)

  • 『M-1グランプリ2022』(朝日放送テレビ)
    • 去年の王者やM-1の物語があり、漫才師たちがどれだけ努力してきたか、すごく思いが伝わってきました。今年の出場者は本当に面白い方たちばかりで、ずっと笑っていられました。ネタのことばの使い方だったりリズムの使い方だったりと、去年にはない新たな漫才を見ることができました。(中学2年・女子・山口)
    • 1年間で一番、テレビがあって良かったと思いました。一生懸命にものごとに立ち向かっている姿は見る人に勇気を与えます。審査員の方の点数は後からついてくるものだと思うので、全組に優勝をあげたい気持ちです。(高校2年・女子・千葉)
    • それぞれの漫才師さんたちが1年間磨いた漫才をぶつけ合う様子は涙なしでは見られませんでした。審査員の方の席順やメンバーも変わったため、とても新鮮でした。ほかの賞レースよりもSNSの活用がうまく、それも視聴率につながっているのではないかと思いました。(中学3年・女子・千葉)
  • 『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ)

    現実にもいるような普通の女性が主人公で、存在感のあるキャラクターで印象に残っています。最終回にかけて伏線が回収されていくところが見ていてスッキリしました。最新話の考察をしたりドラマで出てくる平成の流行り物について家族で話したりする時間が楽しかったです。(高校2年・女子・岩手)

  • 『クレイジージャーニー』(TBSテレビ)

    放送が深夜から早い時間に移動して、以前のように過激な内容の放送をすることはなくなるのかな、と思っていたのですが、初回からコカインやギャングなど、攻めた内容の旅が変わらず放送されていて嬉しかったです。(高校2年・女子・広島)

【自由記述】

  • 1年間リポートを書いて改めてテレビ番組の重要性や与える影響の大きさについて感じる部分がありました。SNSが主流になってテレビ番組を見る機会が少なくなっていましたが、テレビ番組は家族や友達と感動や悲しみなど感情を共有できる大切な時間だと気づきました。同時にSNSよりも様々な年代のたくさんの人が見ていて、放送された一言によって物事の印象が変わり、多くの人に大きな影響を与えることも色々な番組を見て強く思いました。(高校2年・女子・岩手)

  • 1年間リポーターをやって家族とテレビを見てコミュニケーションをとる機会が増えたように感じます。今は動画サイトや見逃し配信アプリが発達し、テレビではなくスマートフォン1台で、一人で十分動画が楽しめる時代になりましたが、家族皆でテレビを観る時間をこれからも大切にしていこうと思います。(高校2年・女子・広島)

  • テレビの在り方や番組について、何度も深く考えた貴重な時間でした。最近はテレビ番組もネットの配信で見ることができ、大抵のことがスマホ1台で完結してしまいます。テレビにはスマホのような万能さはありません。しかしテレビの強みは、その場にいる人全員で同じものを見て、同じ空間を共有して感想を言い合えるところだと思います。それが「同じものを見ても、こんなに感想が違う」「人それぞれ、こんなに捉え方が違う」と、人と自分の価値観の違いに気づくきっかけにもなるのではないでしょうか。(高校2年・女子・東京)

  • ネット動画やネットテレビが発達してテレビの在り方が議論されていますが、各メディアの特性を生かしたコンテンツが求められるのではないかと思います。ラジオは、速報性やメッセージによる双方向性を生かした番組、音楽に特化した番組が作られています。テレビも、コンプライアンスを守ることや情報の信ぴょう性など、自分で選んで見るネットとは違い、多様な考え方に触れることができるところなどを生かした番組を作ることが求められていると思います。(中学1年・男子・山形)

  • 最近のテレビは探求型だなと思います。視聴者に疑問を与え、考えさせて答えを教えるという流れの番組が多いです。視聴者も探求しながら番組を見ることで、人間の思考力は高く、よりよいものになるのではないかと思いました。(中学2年・男子・山形)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『ニンチド調査ショー』(テレビ朝日)
    • 今では信じられない昔の常識に驚くことが多かった。TVerを使って見たが、VTRのほとんどが「権利の都合上・・」だったので、今度はリアルタイムでも見られたらいいと思う。(中学1年・千葉・女子)
    • ジェネレーションギャップを分かりあえないという解釈で終わらせるのではなく、クイズ形式でお互いの世代を知っていこうと歩み寄る雰囲気で、楽しく見ることができました。お互いを受け入れ尊重するという姿勢が感じられ、良いなと思いました。(高校2年・女子・岩手)
  • 『超無敵クラス』(日本テレビ)

    高校生目線で面白く、視聴しやすい番組でした。自分と同じくらいの年齢の人が頑張っているのを見るのはとてもいい刺激になるので、ほかの番組でもいろんな活動をしている学生を紹介してほしいと思います。「若者が抱いた疑問を自ら解決する」という感じが出ると、より魅力が生まれるかもしれません。(高校1年・男子・滋賀)

  • 『NHKスペシャル テレビとはあついものなり-TV創世記-』(NHK総合)

    今や当たり前のようにあるテレビが、始まった当時は番組を一つ作るにもトラブルがたくさんあり、本当に多くの人の努力の上に成り立っているものだったということがよく分かりました。(高校2年・女子・広島)

◆委員のコメント◆

【1年間で最も印象に残った番組について】

  • 同性婚をテーマに異なる国の学生が話し合う番組について「深く考えさせられたと」いう意見があった。今の若い人たちは多様性とか、国籍や性差を超えてということに、とてもアンテナが高いのだなと思った。

  • 戦禍前のキーウ(キエフ)の街並みを紹介した番組から戦争の悲惨さを痛感したという報告があった。戦争反対を取り上げた番組ではないが、過去の美しい街並みの映像が戦争のむごさというものを深く印象づけたのだと思う。

  • 視覚障がい者の社会参加を支援するラジオチャリティー番組を聴いて、障がいのある人に接するときに「積極的に行動する自信が生まれた」という感想があった。ラジオ放送を聴いて自分に何ができるかを考えたということで、番組が若い人たちに与えた影響は大きかったのだろうと思う。

  • M-1グランプリを挙げたモニターが複数いた。それぞれリアルタイムで見ていて、若者にとってはワールドカップやWBC以上に生中継で見ないわけにはいかない番組の一つなのだろうと思った。

【自由記述について】

  • 「テレビの強みは感動を共有できるところだ」とか「ネットと違い多様な考え方に触れることができる」といった声が多く寄せられた。モニターは‟テレビ離れ”と言われる世代だが、それぞれ自分のなかでテレビの意味をしっかりつかんでいる。単に視聴時間が短いことをもって‟テレビ離れ”と言っていいのか、考える必要があるように思う。

  • 若い人たちは動画配信やSNSと放送番組をちゃんと使い分けているようだ。視聴率では高齢者がよく見ている結果だとしても、『紅白歌合戦』を熱く語る若者もいる。制作者はこうした意見もしっかり受け止めて分析する必要があるのではないだろうか。

今後の予定について

次回は、4月25日(火)に定例委員会を開催します。

以上

第181回 放送倫理検証委員会

第181回–2023年3月

ラジオ局との意見交換会の議事進行などを議論

第181回放送倫理検証委員会は3月10日に千代田放送会館会議室で開催され、ラジオ局との意見交換会開催の準備状況や、2月にBPOに寄せられた視聴者意見などが報告され議論を行った。

議事の詳細

日時
2023年3月10日(金)午後5時~午後6時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者

小町谷委員長、岸本委員長代行、高田委員長代行、井桁委員、
大石委員、大村委員、長嶋委員、西土委員、米倉委員

1. ラジオ局との意見交換会の議事進行などを議論

委員会の活動とラジオの番組制作に関する特性や実務について相互に情報を共有するために初めて開かれるラジオ局との意見交換会について、先月に続き主要な議題や議事の進行などについて議論を行った。

2. 2月に寄せられた視聴者意見を議論

2月に寄せられた視聴者意見のうち、「平成を彩った美女たちの今に迫る」という企画や「タレント、飲食業店員の容姿に対する出演者の査定発言」などに、「ルッキズムではないか」という批判的な指摘があったことが報告された。また生放送のバラエティー番組で、一連の広域強盗事件を指示した疑いのある「ルフィ」と名乗る容疑者が日本に送還される機上で逮捕されたことについて、番組独自のテロップで「速報“ルフィ”逮捕」と表示し、そのことを司会がシリアスな口調で繰り返してスタジオ観覧者の笑いを誘ったことに対し、「被害者がいるのに不謹慎だ」などの意見が複数寄せられたことなどが事務局から報告され、議論が行われた。

以上

第314回放送と人権等権利に関する委員会

第314回 – 2023年3月

「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理…など

議事の詳細

日時
2023年3月14日(火)  午後4時 ~ 午後7時30分
場所
千代田放送会館会議室
議題
出席者
曽我部委員長、二関委員長代行、國森委員、斉藤委員、野村委員、丹羽委員、廣田委員、松田委員、水野委員

1.「ローカル深夜番組女性出演者からの申立て」審理

申立ての対象となったのは、あいテレビ(愛媛県)が2022年3月まで放送していた深夜のローカルバラエティー番組『鶴ツル』。この番組は男性タレント、愛媛県在住の住職とフリーアナウンサーである申立人の3人を出演者として、2016年4月に放送が開始された。3人が飲酒しながらトークを行う番組だが、申立人が、番組中での他の出演者からの度重なるセクハラ発言などによって精神的な苦痛を受けたとして申し立てた。
申立書によると、番組開始当初から苦痛、改善を訴えていたにもかかわらず、放送された他の出演者のトークが、申立人自身に対するものも含めてしばしば性的な内容に関することに及んで申立人に羞恥心を抱かせることで、また、そのような内容の番組の放送によって申立人のイメージが損なわれたことで、人権侵害を受け、放送倫理上の問題が生じたと主張している。
被申立人のあいテレビは、申立人は番組の趣旨を十分に理解した上で出演しており、申立人からの苦情も2021年11月が初めてで、また、番組の内容も社会通念上相当な範囲を逸脱しておらず、人権侵害や放送倫理上の問題はない、と主張している。
今回の委員会では、前回委員会での申立人・被申立人双方へのヒアリングを踏まえ、今後の方針などについて幅広く議論した。

2. 2022年度申立て報告

年度末にあたり、2022年度の申立て状況全般について、事務局から報告した。

3. 最新申立て状況

事務局から最新の申立て状況を報告した。

4. その他

2023年度委員会日程などを確認した。

以上

第254回 放送と青少年に関する委員会

第254回-2023年2月

視聴者からの意見について…など

2023年2月28日、第254回青少年委員会を千代田放送会館会議室で開催し、榊原洋一委員長をはじめ8人の委員全員が出席しました。
まず、1月後半から2月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見については、クイズ・バラエティー番組や、子ども向け特撮ドラマに関して報告されました。
2月の中高生モニターリポートのテーマは「指定するドキュメンタリー番組を見た感想」でした。
最後に次回3月28日(火)の定例委員会冒頭で開くオンラインによる「中高生モニター会議」など今後の予定について話し合いました。

議事の詳細

日時
2023年2月28日(火) 午後4時30分~午後7時00分
場所
千代田放送会館会議室
議題
視聴者からの意見について
中高生モニター報告について
2023年度の委員会開催日程などについて
中高生モニター会議の開催を含む今後の予定について
出席者
榊原洋一委員長、緑川由香副委員長、飯田豊委員、佐々木輝美委員、
沢井佳子委員、髙橋聡美委員、山縣文治委員、吉永みち子委員

視聴者からの意見について

1月後半から2月前半までの1カ月の間に寄せられた視聴者意見について担当委員から報告がありました。
クイズ・バラエティー番組で、急降下させた小型機の機内でインコが飛べるかどうかの実験をしたところ、「命を軽く見ているし、小動物には何をしてもよいと子どもに思わせてしまう」などの視聴者意見がありました。委員からは「『動物を扱うときには注意しよう』と確認する必要はあるが、このシーンが即虐待に当たるというのは難しいのではないか」等の意見が出されました。議論の結果、「討論」に進むことはありませんでした。
子ども向け特撮ドラマで悪役が、歩道橋の上で母親から乳母車を奪い、階段上から投げ落とすシーンがあり、その乳母車が異空間に吸い込まれ、その後の安否がわからないまま、放送が終了したことに対し、「不安を覚えた子どもの感情を救わないまま終わったのは問題だ」などの意見が寄せられました。担当委員は「一般的には、悪い行為があれば正義の味方が最後は解決してくれるという展開が期待されるが、この回はそれがない。解決されないということで、子どもが不安に思うのは当然あるだろう」と指摘しました。別の委員は「このシリーズでは、悪役もめったに死なない。問題のシーンで赤ちゃんが死ぬかもとハラハラする視聴者は、子どもを含めていないはずだという前提で制作されているのだろう」と述べ、また、「時代の変化の中で、アニメなど子ども向けの番組の演出や背景が変化してきていることをどう考えるか一般的に議論することは大切だと思うが、今回のこの番組を個別に取り上げる必要はないだろう」という見方も示され、「討論」には至りませんでした。

中高生モニター報告について

2月のテーマは「指定するドキュメンタリー番組を見た感想(民放連賞特別表彰部門最優秀番組など)」で、24人のモニターから報告がありました。課題とした番組は、2022年民間放送連盟賞[テレビエンターテインメント]最優秀『やったぜ!じいちゃん』(CBCテレビ)です。
生まれつきの脳性マヒで身体が不自由な愛知県の舟橋一男さん(74歳)を取り上げた番組です。印刷業を営みながら生き生きと暮らす舟橋さんの思いや家族とのかかわりを、CBCテレビが50年前に撮影した映像を交えて伝えています。
モニターからは「50年前も今も変わらずに明るく生きる姿にパワーをもらった」、「家族や周りの人が支えてくれるからこそ自分が生きていられることに改めて感謝した」「無意識のうちに偏見を持っていないか、ちゃんと自分を見つめ直さないといけない」などの感想が寄せられました。
「自由記述」では、「久しぶりにドキュメンタリーを見たが、人の温かさに触れられるいいものだと実感した」、「テレビ番組には間やゆったりとしたテンポがあってこその良さもあるので何でも倍速にして見てはもったいない」などの感想や意見が届いています。
「青少年へのおすすめ番組」では、『TV70年!蔵出し映像まつり』(NHK総合)に4人から、『東大王2Hスペシャル』(TBSテレビ)に3人から、感想が寄せられました。

◆モニター報告より◆

【指定するドキュメンタリー番組を見た感想】

  • 一男さんはたとえできることが周りの人と違っても、(妻の)瑞枝さんへの信頼のもと自分なりの生き方で胸を張って日々を過ごしているのが伝わってきました。一男さんと支えている周囲の方との間には上下関係というものはなく、お互いに一緒の幸せを共有しているのは素敵だなと思いました。瑞枝さんが一男さんの言葉を聞き取っている様子を最初から最後までカットせず見せていて、私も徐々に一男さんの表情、口の動き、手の動き、目の力の入り方などをじっと見るようになりました。人とコミュニケーションをするということは、こういうことなのだと実感しました。今は昔に比べて障がいのある方に対する理解が進みつつあるとはいえ、表に出ない形で偏見や差別の目があるというのは私も感じます。障がいのある方からそうしたことへの意見を聞くことはあまりないため、テレビを通してでも知ることができたのは良かったと思います。(高校1年・男子・兵庫)

  • 障がいがあっても大丈夫な世の中、何でもできる世の中にしようとしていることに心を打たれた。(50年前の)旅行の様子を見ていると、周りの人たちが必ずしも優しく受け入れてくれるわけではないんだな、と考えさせられた。当時の映像はモザイク処理がされていないので、周りの人たちがどう思っているのかがよくわかった。(中学2年・女子・山形)

  • 心に刺さるシーンは多々あったが、その中でも「人間は年をとったら必ず不自由になる」と一男さんが言っていたのが印象に残った。このドキュメンタリーは、不思議と「かわいそう」と思わない番組だった。それは、パソコンを通して自らの思いを綴ったり、車いすではあっても積極的に外出したりする一男さんのパワフルな姿が映し出されていたからだと思う。不自由ななかでもいきいきと過ごしている一男さん、末永く人生を楽しんでほしいと心から願える番組だった。
    (高校1年・男子・東京)

  • 50年前に放送された番組では、障がい者の方々の旅行に対する周りの人の目線が今ではありえないくらい生々しく、ありのままに放送されていることに驚いた。昨今の出来事として神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」事件で被害者の多くの方の実名が公表されないということも取り上げていた。それは今もなお残る偏見、差別、また私たちがふだん実感しない社会の中に埋め込まれている不都合による面もあると思う。私たちと同じように考え、働き、そして人生を楽しむ尊厳ある人間の一人であるということを決して忘れてはならないと感じた。(高校1年・男子・愛知)

  • 私たちは障がい者とひとくくりにして見てしまうけれど、家族からすれば障がいがあることも普通のことで、娘や孫たちも自然に受け入れ、家族にとって笑顔の可愛らしいただのおじいちゃんなんだなと、自分が先入観を持って見ていたことを反省しました。50年前の景色は障がい者の人にとってもっと生活することが大変そうだと映像を見て感じました。その中で強い意志を持って生きているおじいちゃんの「不自由になっても楽しく生きられる社会にしていきたいと思っています」という言葉が心に残りました。(高校2年・女子・岩手)

  • (舟橋さんが)50年前の映像を見るシーンではとても笑顔が多く、悲しみで感動するのではなく笑いで感動することができたシーンだと思いました。今までこのようなドキュメンタリー番組はあまり見たことがなかったので新鮮でしたが、とても見やすく、障がい者の方に対するイメージもかなり変わった番組でした。(中学2年・女子・山形)

  • この番組からは「障がいを描く」という枠組みにとらわれないおおらかさと温かさも感じました。特に印象的だったのは、一男さんが瑞枝さんと桜が咲く公園に散歩に行く場面です。瑞枝さんが「昔は障がい者用のトイレがなかった」と言っていて思わずはっとしました。この番組は、あくまで舟橋一男さんという方にフォーカスし、「脳性マヒのある障がい者」とくくらないところに好感がもてます。様々な形の番組を通して障がいに対する正しい見方と理解が広まっていくといいと思います。(高校2年・女子・東京)

  • (重い障がいのある人は)常に介護を必要として施設に入っていたりずっと家にいたりしていると思っていました。その認識は間違っていて改めるべきだと感じました。障がいのある人への世の中の考え方を変えるには、学校の授業で用いたりテレビなどのメディアで話題にしたりして、どのような病気なのか、その人はどのようなことがつらいのか、嬉しいのかなどの知識を持つべきだと思います。今回はじめて民放連賞の存在を知りました。もっと宣伝したり再放送をしたりして、いいテレビ番組を多くの人に知ってほしいと思いました。(高校2年・男子・福岡)

  • 家族や身の周りの人々が支えてくれているからこそ、自分が生きていられることに改めて感謝した。「人の温かさ」「人の支え」の大切さがよく伝わった。私は今、何不自由なく暮らしているが、実は多くの人に支えられ、いつも守られながら生きていることに気づいた。一男さんのように、周りの人たちへの感謝を忘れずに毎日を過ごしたいと思った。瑞枝さんたちのように、大切な人を支え、誰でも対等に、同じように接することができる温かい人になりたいと心から思った。(中学2年・女子・鹿児島)

  • 50年前に放送された番組を見た一男さんは「優しい目線、厳しく残忍な目線、立ち去る人の姿を風景の一部として捉えていることに今回、はじめて気づきました。今はぼかしをかけるため他者の目を見ることができず残念です」と個人史に書かれていました。その話を聞いたときに、その方のすべての気持ちや苦しさは理解できなくとも、「知る」という行為が一番大切だということに気づきました。番組を視聴した後に『ワンダー 君は太陽』という映画を観ました。そこで重なったのは瑞枝さんでした。お互いにとってなくてはならない存在であるのが画面上から伝わって来ました。守り、理解してくれる人がいるからこそ私たちは生きていけるのだと実感しました。 今回、ドキュメンタリー番組と映画を通して本当のメディアの使い方はこれなのでないかと思いました。“自分が普通”という考え方ではなく世の中には様々な人が生きていることを発信して伝えていくことが、テレビやエンタメが力を入れなければならないことなのです。(高校2年・女子・千葉)

  • 「津久井やまゆり園」事件のことや優生思想の話は聞いていてとてもつらく、なぜそういった考え方が残っているのか疑問に思ったと同時に、無意識のうちに偏見を持っていないかちゃんと自分を見つめなおさないといけないなと気が引き締まりました。50年前の番組映像を見て「障がい者を見る目」に着目されたことが驚きでもありましたが、今よりも厳しい目線が多かった時代に楽しく過ごす姿や、それを見ている家族もすごく楽しそうで、障がいの有無に関係なく楽しい時間を過ごすことはできるし、それを誰かが隔てることはないのだと感じました。私も一瞬一瞬を楽しんで家族、とくに祖父母との時間をもっと大切にしたいなと思いました。(中学3年・女子・群馬)

  • 障がいというものを知らずに生きる私たちの視線は障がいのある方々にとってはつらいことであって、他人が決めた普通というしばりにしばられないで生きることのできる社会に少しでも近づくことを願っています。この番組を見て、私も含めたくさんの人のこれからの自分の人生を生きる活力になったと思うし、前向きに考えることができました。人間には、一人ひとり自由があり、人権があり、くくりなどなく、みんなが自分の生き方をすること、戦争などはなんの意味もなく誰かが悲しむ。一男さんの生き方がそんなことを訴えているのかと思いました。想像以上に考えさせられることが多く、自分自身の生きる活力にもなりました。(中学3年・男子・北海道)

  • メインテーマでもある(50年前に制作された)当時のドキュメンタリーを(舟橋さんと)見るというイベントが、テレビ取材だからこそ実現したことなのかなと思いました。50年前の(舟橋さんに注がれる)つめたい視線と、逆に今の温かく支えている家族の様子が対照的で学びにもなりました。(中学3年・女子・千葉)

  • 本人からでる言葉を中心に展開されていて生々しさというか、カメラを感じずに見ることができるドキュメンタリーの良さを感じました。全体として自然だったからこそ、孫への質問に制作の介入を感じてしまって残念でした。50年というところで取材の理由はわかるのですが、加賀の旅行は非常に短く、最後の野球観戦が最もタイトルに沿ってはいるものの、文脈が不自然だしあまりにも短かすぎるかなと。(高校1年・男子・埼玉)

  • 50年前の映像も出てきて、(障がい者に対する)扱いや周りの健常者の視線を(今と)比較することができました。番組のなかで舟橋さんが「今では周りの人々の顔がプライバシー保護の観点からぼかされているが、見えていた頃は良い資料だった」と言っていて、いろいろな視点から物事を見ることの大切さを感じました。もう少し孫とのかかわりの映像があったら、もっとタイトルを表現している感じで良くなっていたと思います。(中学1年・女子・千葉)

  • 50年前の番組(の映像)に衝撃を受けた。今では想像できないほど赤裸々に障がい者をとりまく社会を撮影していて、50年後である今、あの映像とどれだけ変わったものがあるだろうと、少し苦しくなった。50年前も今も変わらずに明るく生きる舟橋さんの姿にはパワーをもらった。舟橋さんのように常に問いかける姿勢を忘れずに自身も問い続けていきたいなと感じた。(高校2年・女子・埼玉)

  • 一男さんがいつも笑って生活しているのは、これまで社会を変えようとしっかりと自分の意見を持ち、逃げずに行動してきたからだと感じました。しかし、自分には(50年前の映像にあった)一男さんたちのもとから立ち去る人々のような気持ちがどこかにあったような気がして、このように全力で生き抜いている人がいることを知り、とても情けない気持ちになりました。これからは、障がい者の方に敬意を持ち、優生思想などの問題に自分ができることがないか考えてみようと思います。(中学1年・男子・山形)

  • 一男さんの行動力や努力はすさまじいものだと実感しました。また、私の偏見である障がい者だからできないという考えを、障がい者だからこそできることがあるという考え方に変わりました。昔の番組の映像を見て(一男さんが)言っていた「周りの目が厳しいときもあれば優しいときもある」という趣旨のことは確かにそうだと思います。そこは今も昔も変わっていないように思いました。すぐには難しいとは思いますが、そうした人たちをより尊重できる人が増えていけばよいと思いました。(中学2年・女子・東京)

  • (障がい者に対する)自分の今までの考えは本当にただの偏見であったと思い知らされました。また、このご夫妻の強さに感動しました。一男さんの苦労は計り知れないですが、妻の瑞枝さんの苦労も大変なものだったと思います。二人で散歩をするシーンで、世の中はまだまだ障がい者の人に厳しいところがあるのだと気づかされました。(高校2年・女子・広島)

【自由記述】

  • 久しぶりにドキュメンタリーを見ましたが、人の温かさに触れられるいいものだと実感しました。(高校2年・女子・広島)

  • 私のクラスではニッポン放送のオールナイトニッポン55周年企画の話題で盛り上がっている。ラジオはテレビより影響力が小さいかもしれないが、個々の熱量は大きいメディアだと感じる。(高校1年・男子・愛知)

  • 若者は本当にテレビ離れなのか、という新聞記事を読んだ。確かに同年代の友だちもリアルタイムで見ている子は少ないが、TVerなどのアプリやサブスクなどを使っていたりする。テレビ離れというのは物理的なものではないかと感じる。(中学1年・女子・千葉)

  • 最近のテレビやラジオ番組は、「これだけで○○」とか「たったこの○○」など端的にまとめようとする。このまま端的にまとまった世界になれば、人間は思考というものをやめてしまうのではないかと思います。(中学2年・男子・山形)

  • テレビの放送に関することではないが、最近テレビ番組を1.5倍速や2倍速で見る人が増えていると聞いた。テレビ番組には、間やゆったりとしたテンポがあってこその良さもあるため、何でも倍速にしてはもったいない気がする。(中学2年・女子・鹿児島)

  • バラエティー番組の討論中に誰かが話そうとすると仕掛け人がそれをさえぎって話し始めるというドッキリのようなものを見かけた。正直、体を張ったりするものよりも嫌な気分になった。誰かが本気で嫌に思うドッキリはやめたほうがいいと思う。(中学2年・女子・山形)

  • 最近は「人を傷つけない」番組が多いと思います。例えばドッキリなどではなくチャレンジゲームだったり、ゲームで負けても罰ゲームなどがなくなっているように思います。一方トーク番組などで司会者の方が、特定の人が言ったことを全否定するような場面があり、少し不快に感じました。(中学1年・男子・山形)

  • BPOホームページの「青少年へのおすすめ番組」には、かなり似たラインナップの番組が紹介されているようにも感じました。番組内容にプラスして「どのような点が青少年におすすめなのか」も紹介されていると、より興味をもってもらいやすいのではないかと思います。(高校2年・女子・東京)

  • 「青少年へのおすすめ番組」の欄にも関係するのですが、地方(局制作)番組を関東地方で放送することや配信することはできないのでしょうか。テーマや取り上げる内容が気になるものがあるのに見られないのは悔しい限りです。(高校2年・女子・千葉)

【青少年へのおすすめ番組】

  • 『TV70年!蔵出し映像まつり』(NHK総合)
    • 歴史の教科書で見る志賀直哉や松本清張といった偉人が出演していて驚きました。テレビは偉大なことを成し遂げた人たちのことばを話し方込みで記録できるツールとしてこれからも活躍してほしいです。(高校2年・男子・福岡)
    • 私が生まれていない頃の貴重な映像が残っていて、その時代を生きていた両親と話が盛り上がって楽しく見ることができました。こういう番組を定期的にやって欲しいと思いました。昔、花嫁、花婿探しの番組があり、募集している人の電話番号をテレビで載せていたことが今の時代では考えられずすごいなと思いました。社会の変化とともにテレビが変化していく様子を見ることができて面白かったです。(高校2年・女子・岩手)

  • 『東大王2Hスペシャル』(TBSテレビ)
    クイズのほかにもちょっとした観光地紹介があり面白かったです。一対一の早押しバトルが再開されて東大王のすごさがまたわかりました。(中学2年・女子・東京)

◆委員のコメント◆

【指定するドキュメンタリー番組を見た感想について】

  • 全体的にダイバーシティやインクルージョン(多様性や個々人の尊重など)といった教育をしっかり受けている世代だという印象を持った。障がい者に対する知識としてはきちんと持っているところに、改めて映像で見せつけられた感想なのだろうと思う。

  • 障がい者の視点に立ってみると自分が気づいていない差別があるのではないか、「普通」とは何かと自身に問いかけている感想があった。無意識のうちに偏見をもっていないかという深い洞察をしたことが伝わってきた。

  • 舟橋さんと周りの人たちとの関係について「上下関係はなく一緒の幸せを共有していて素敵だ」と書いたくれたモニターがいた。番組のメッセージが伝わっているのだろうと思った。

  • 障がい者に対する周囲の目というのは昔も今も変わっていないのではないかという感想があった。制作者のメッセージをおさえた感想だと思った。

  • かつては、障がい者に対する周りの視線がそのまま放送されていたが、いまは、その部分は直接は表現されていない。昔は差別的なことがあったが、いまはそれがないと思いこまないことも大事だと思う。

  • この番組を見て、「すばらしい」「素敵だ」と思う裏には、教育によって、偏見を持たないようにすることを学んできたこともあるのではないだろうかと思う。
    表に出せば非難されるから表には出さないが、いまも偏見はある。そのことに気づかないままにされているような気もして、自分自身とても考えさせられる番組だった。

  • 障がい者を取り上げた番組などへの感想は、とかく昔は大変だったが今は良くなったというものになりがちだ。今から10年後に同じような放送をしたら、10年前は大変だったと言われるように社会が大きく(よりよく)変わってほしい。

【自由記述について】

  • 複数のモニターが、トーク番組などの中で他人の意見を否定したり話をさえぎったりする場面を見たとして、目に見えないいじめのようで不快だという指摘をしていて気になった。

2023年度の委員会開催日程などについて

2023年度の委員会開催日程や中高生モニターの月別テーマなどを確認しました。

中高生モニター会議を含む今後の予定について

次回は、3月28日(火)に定例委員会を開催します。
当日は、中高生モニターを対象とする在京テレビ局の「オンライン館内見学会」と「中高生モニター会議」を開催する予定です。

以上

2023年2月に視聴者から寄せられた意見

2023年2月に視聴者から寄せられた意見

生放送中のバラエティー番組でのニュース速報の扱い方、トルコ地震の救助現場からの中継リポートなどに意見が寄せられました。

2023年2月にBPOに寄せられた意見は 1,369 件で、先月から 238 件減少しました。
意見のアクセス方法の割合は、メール 80% 電話 19% 郵便・FAX 計1% 
男女別は男性45%、女性17%で、世代別では40歳代25%、30歳代22%、50歳代20%、60歳以上17%、20歳代10%、10歳代2%。
視聴者の意見や苦情のうち、特定の番組や放送事業者に対するものは各事業者に送付、2月の送付件数は454件、43事業者でした。
また、それ以外の放送全般への意見の中から19件を選び、その抜粋をNHKと日本民間放送連盟の全ての会員社に送りました。

意見概要

番組全般にわたる意見

生放送中のバラエティー番組でのニュース速報の扱い方、トルコ地震の救助現場からの中継リポートなどに意見が寄せられました。ラジオに関する意見は28件、CMについては13件でした。

青少年に関する意見

2月中に青少年委員会に寄せられた意見は73件で、前月から42件減少しました。
今月は「表現・演出」が30件、「性的表現」が16件、それに「要望・提言」が11件、
「暴力・殺人・残虐シーン」が4件と続きました。

意見抜粋

番組全般

【報道・情報】

  • 高速道路上にスピード抑制のために設けられた段差をめぐる問題を扱っていた。元々はルーレット族の暴走行為を抑止するためのものだが、逆にジャンプの高さを競う遊び場と化しているという。遊ぶ人たちが使う“ジャンプ台”という呼び名を用い、暴走ぶりを見せるなど、番組自体が野次馬化していた。好奇心をあおられ、まねをする者が必ず出ると思う。

  • 福岡県の老舗温泉旅館で基準値の3,700倍ものレジオネラ菌が検出された問題について、なぜか静岡県熱海市で街頭インタビュー取材をしていた。全く関係のない熱海市に風評被害を与えかねないと感じた。

  • ゲノム編集の安全性について説明した「専門家」が、ゲノム編集をビジネスに生かしている企業の関係者であることが示されなかった。公平な第三者的な見解であるかのような印象を視聴者に与えてしまわないか。

  • ひき逃げ事件の容疑者の足取りを解説する際、容疑者宅周辺を上空からの写真で指し示したことは行き過ぎだと感じた。画像から場所を特定される可能性がある。テレビはこうした画像をもっと慎重に扱うべきだ。

  • トルコ地震の救助現場からの生中継で、記者のリポートが救助活動の妨げになっているように見えた。リポート中に「あ、今も『静かにしてください』という声がありました」と状況を伝えながら、声を潜めて報告を続け、スタジオも「もう一言だけ」と質問していた。もし自分や家族が被災した場合、報道のために救助活動が妨害されるかもしれないと心配になった。

  • エネルギー価格高騰の特集で、その番組を放送している局自身の子会社が出資する再生エネルギー中心の電力小売り事業者を取り上げ、「資源価格が上がっている今こそ再生エネルギーに舵を切るチャンス」という発言を紹介していた。問題はないのか。

  • 情報番組などで特定の家電量販店や商品を大きく、詳しく取り上げ、「最新型」「破格の安さ」などと褒めちぎる企画がある。メーカーや店にとってはありがたいことだろうが、こうした放送が公正な競争を阻むこともあり得る。紹介される店は大型店が多く街の小さな店は太刀打ちできない。CM効果の大きい企画を番組として放送することに問題はないのか。

  • 朝の情報番組のニュース部分で、BGM、効果音を使ってより怖い印象を与えようとしている意図を感じる。ニュースをフラットに伝えていないと思う。

【バラエティー・教養】

  • 昼の生放送のバラエティー番組で容疑者逮捕のニュース速報テロップが出た際、出演タレントが「皆さん、ルフィが逮捕されました」とふざけた調子でくり返し、笑いを取っていた。人が亡くなっている事件をこのように扱うことはモラルに反する。

  • うその芸能ゴシップで人をどれだけ喫煙所に留めておけるかという企画で、「○○が自宅で大麻を栽培していた」といった架空のうわさ話を、実際のタレント名や局名を使って語らせていた。この番組は大好きで毎週見ているが、今回の企画は当事者の名誉を毀損しかねず、やりすぎだと思った。

  • 大食いタレントが力士らと大食い競争。食品ロス削減、持続可能性が叫ばれる中、ひどすぎる。食材になる家畜の命、育てる段階での環境への負荷などに考えが及ばないのだろうか。

  • 芸能人が電動工具で陶器を削っていたが、保護めがねを使用していなかった。注意喚起もなく放送するのはいかがなものか。番組を見た人間がまねて万一ケガをするようなことになれば誰が責任を負うのだろうか。視聴者に影響を与えるメディアなのに安全を簡単に考え過ぎだと思う。

  • 「我慢対決」などタバコの企画が続いた。内容はともかく喫煙シーンが延々と流れるのは問題だ。キー局がタバコの宣伝をしているようなもの。問題なのではないか。

  • 芸能人ママの子育て風景として、赤ちゃんを胸の前に抱っこして揚げ物をしたり刃物を使ったりする様子が紹介された。子育て経験の浅い母親がまねをしてしまうと危険だ。影響力が大きいので配慮してほしい。

  • 「動物と対話できる」という人を取り上げ、「天国にいった愛犬からのメッセージが生前の映像で分かる」といったエピソードを紹介していた。明らかに非科学的。商売としてやっている人を放送で紹介することは霊感商法を助長しているように感じる。

  • 強盗殺人事件への関与が取りざたされている人物と、10年以上前とはいえ接点を持っていたタレントは、被害者遺族の気持ちを考えたら番組に出演させるべきではない。

  • バッティングセンターで時速160kmの軟球を日本刀の居合斬りで真っ二つにする人物を紹介していた。ナレーションによると「バッティングセンターでいつもボールを叩き斬っている」。日常から真剣を振り回しているのであれば銃刀法違反だし、撮影のための行動だったのであれば「やらせ」、軽く表現しても過剰演出だ。

  • 平日昼に生放送されるバラエティー番組に、2つの家族がスタジオで「豪華景品をかけて競う」というコーナーがある。学校があるはずの子どもを毎週参加させているのはおかしい。

【ラジオ】

  • パーソナリティーが、話題のニュースに関連する人物の発言について、ニュースと何ら関係のないその人物の体形に言及しながら非難していた。リスナーがその人物を特定することができる表現で、聞くに堪えなかった。

青少年に関する意見

【「表現・演出」に関する意見】

  • 子ども向け特撮ドラマで、悪役のキャラクターが、歩道橋を渡っている母親から赤ちゃんの乗った乳母車を奪って階段上から落とすシーンがあった。乳母車は落下しきる前に異空間に吸い込まれてしまい、赤ちゃんの安否が不明のままその回は終了。そのシーンを見て不安を覚えた子どもの感情がその回のうちに救われなかったのは問題だろう。

  • バラエティー番組のドッキリ企画で、女性アイドルグループがくす玉を割ったら、おもちゃの虫が無数に降ってきた。個々の虫は『G』マークで隠されていたが、隠さなければ放送できない内容を流すのは常軌を逸していて不愉快だった。

  • 同じ番組で、男性芸人が突然、プロレスのバックドロップを受けるドッキリがあった。安全を確かめて撮影しているのだろうが、一歩間違えればけがをしそうで不快。中高生がまねして事故を誘発しそうだった。

【「性的表現」に関する意見】

  • チャンネルを変えたら、男性芸人とその恋人の女性アイドルが温泉宿の湯船に入って濃厚なキスをするシーンだった。子どもも見るので、このような性的表現はテレビではやめてもらいたい。

  • 子どもたちが古い時代劇(の再放送)をなぜ見るのか気になって画面をのぞいたら、上半身裸の女性が映っていた。こうしたシーンは毎回あるようだ。いまのテレビに合っていないのではないか。少なくとも、子どもが見る夕方の時間に放送すべきではない。

【「要望・提言」】

  • 公立中学校の教員をしている。受験を控えた生徒が「学歴が全てではないのはわかっているが、クイズ番組で出身大学が表示されて『すごい!』となると、学歴が必要なんだ、学歴が有利に働くんだと感じる」という。クイズ番組がすべて悪いとは言わないが、もう少し配慮があるとよいと思う。