2011年 2月16日
フジテレビ「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」の公表にあたってフジテレビは、2010年8月8日、9月26日に放送した『Mr.サンデー』で、ある女性誌が付録に付けたファッションバッグがヒットしていることを、街頭インタビューを交えて紹介した。その中で、ヤラセといわれても仕方ない取材方法が行われたとして、検証委員会では3回にわたって討議を重ねてきた。委員会は、この事案については審議の対象としないこととしたが、その判断に当たり重要な資料となった同局の情報制作局が社内研修用に作成した報告書を、同局の了解を得て公表することにした。
以下は、放送倫理検証委員会委員長による経緯説明である。
「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と
再発防止に向けて」の公表にあたって
放送倫理検証委員会委員長 川端 和治
以下に掲げる文書は、フジテレビの番組『Mr.サンデー』で、事実に反する不適切な表現をしたことについて、フジテレビ情報制作局が「調査・再発防止に向けたプロジェクトチーム」を設置して行った調査・検証の報告書である。
元々この文書は、フジテレビの制作現場にむけた再発防止のための研修用資料であり、放送倫理検証委員会への報告のために作成されたものではない。しかし、この番組における不適切な表現について、そのような取材がなされた原因、それを放送前にチェックできなかった理由、再発防止のための指針を、関係者から詳細なヒアリングを行うなどの調査をして検証したものであることから、委員会がこの事案を討議する際の参考資料として提供していただいたのである。
この『Mr.サンデー』事案は、街頭インタビューで、あらかじめ仕込んだ出演者をその場で見つけたかのように撮影するなど、事実に反する表現が行われていた。委員会には、この1年の間に同種事案が数件報告されたことから、これを審議の対象としなければ、委員会はこの種の「やらせ演出」の手法を容認・放置することにしたという誤ったメッセージとして受け取られるのではないかという懸念があった。
そこで慎重に討議した結果、女性誌が付録のファッションバッグの人気でヒットしているという放送の核心となった社会現象自体は事実といえるが、委員会は街頭インタビューの対象者の事前仕込み、付録バッグ所有者の通行人の人数の水増しといった演出方法には問題があると判断した。しかし、その影響度、同種事案の取り扱いとの比較、問題発生後の自主的・自律的な是正に向けた当該局の対応などを総合的に勘案して、審議の対象とはしないことにした。
その際委員会が、自主的・自律的な是正策として特に注目したのがこの報告書である。問題発生後の放送局の対応として、単に詳細な事実調査を行ってその結果をまとめているというだけではなく、この報告書を作成して、制作現場に働く人に対し、自分の問題として読み、それぞれの番組で具体的に再発防止策を考え出すことを求めている。さらに、報告書作成のためのプロジェクトチームが提起した「再発防止に向けた指針」についても、番組ごとに話し合いを持って現場のスタッフに「これでいいのか」という問いかけの作業をするよう求めているのである。
上から再発防止策や監視体制の強化を押しつけるのではなく、問題を起こした現場にその原因と再発防止策を自ら考えて話し合うことを求め、そのことにより現場のスタッフの放送倫理と番組の質の向上をはかるという姿勢は、これまで委員会が問題発生の都度、その必要性を指摘し要望してきたことである。
またこの報告書では、この問題が起きた原因とそれが是正されることなく放送に至ってしまったプロセスが段階を追って分析され、問題点が具体的に指摘されている。それを踏まえてまとめられた「再発防止に向けた指針」も、事実を伝え視聴者を裏切らないという基本姿勢の強調、外部制作プロダクションとの取材・放送倫理の共有のための話し合い、撮影・編集現場からの情報が伝わるような環境作りなど、他局においても参考にされてよい内容を含んでいる。
委員会は、問題発生後の自主的・自律的な対応のあるべき実践例のひとつとして、この報告書が、当該局以外の局においても広く参照されることが望ましいし、同種事案の再発防止のための研修用資料として参考にされてもいいと考えた。そこで、この案件を審議の対象としないと決定するとともに、フジテレビの了解を得てこの報告書を公表することとした。
フジテレビには、番組制作スタッフの個人情報などを削除した公表版を作成していただくなど協力が得られた。謝意を表したい。
なお、この報告書は2011年2月15日発行の「BPO報告No.93」にも掲載されている。 ご活用いただきたい。
「『Mr.サンデー』の特集企画における不適切表現に関する問題点の検証と再発防止に向けて」
(フジテレビ、2011年2月16日)