放送人権委員会
意見交換会・シンポジウム

放送人権委員会ではBPO加盟各社との間で定期的に意見交換会を開き、委員会活動や報道・制作現場が抱える課題等について話し合いを行っています。また、2007年12月には「放送と人権」をテーマに、放送人権委員会10周年フォーラムを東京で開催しました。

2011年10月 中国・四国地区各局との意見交換会

今年度の「放送人権委員会委員との意見交換会」は、中国・四国地区のBPO加盟放送事業社を対象に10月4日広島で開かれた。広島では2005年5月以来6年ぶりの開催となり、前回の35人を大幅に上回る加盟14社・63人が出席した。委員会側は委員9人全員と事務局が出席した。また記者7人が取材に訪れ、テレビカメラ5台が入った。
当日は午後2時に開会し午後5時に終了の予定だったが、震災報道をめぐって議論が白熱したことから予定を延長して議論を続けた。このため、午後5時30分まで3時間半におよぶ長丁場の会議となった。

◆前半◆

  1. 委員長冒頭挨拶
    堀野委員長は冒頭挨拶で東日本大震災と福島第一原発の事故に触れ、66年前に広島で起きたことが別の形で繰り返されたことは大きな悲しみだと述べた。この後、「放送人権委員会が発足して間もなく15年になる。この間39の事案で決定を出してきた。上記の震災など世の中の大きな変動の中で一人一人の人権を扱うことはミクロでマイナーなことと思われるかもしれない。しかし、報道は大局を正確に把握するとともに一瞬たりとも気を緩めてはならず、どんなに小さなことでも正しく公平・公正に伝え、国民に考える素材として価値あるものを提供していくことが任務だ」と指摘した。そして「我々が厳しい決定を出すことで放送局が自粛したり萎縮するとすれば、それは本意ではない。報道は日々の取材でもプライバシーや肖像権の問題が生じるし、不正や疑惑に切り込む調査報道では対象者の社会的評価を下げ、名誉にかかわる問題が生じることもある。それらを含め局は過ちを犯すことがある。しかしそれでも自粛してはならず、問題と正面から向き合い、自らの意図を正確に発信し、国民から支持を得るよう努めてほしい」と呼びかけた。

  2. 東日本大震災報道について
    3人の委員が東日本大震災報道についてスピーチした。

    (1) 大石委員「被災地から考える〜私が見て、感じたこと」
    私が最初に広島で取材を始めたのは1984年だった。86年にチェルノブイリの事故が起き90年に現地に入った。広島の被爆者たちはチェルノブイリの被災者を自分のことのように心配していた。当時、クレムリンは情報を伝えなかったため避難しない人が多かった。これまで何度か現地を訪れているが、病気の人は本当に増えているし、若い人が指で数えられないほど亡くなったという話も聞いた。
    いま福島で感じるのは報道が本当のことを伝えてくれていないのではないかという地元の苛立ちだ。なかには不安とストレスで眠れず自殺に追い込まれる人もいる。福島の人たちは見捨てられ棄民となっているのではないか。水俣でも感じ、広島や長崎の被爆者にも感じたのと同じことを福島でも強く感じる。
    ジャーナリズムで一番大切なことはどの立場に立って報道するかということだ。私は弱者の立場に立って伝えてほしいと思う。それは福島の人たちの立場に立つということだ。東電や政府の取材においても福島の人たちがどう思うかを常に考えながら伝えてほしい。
    報道の皆さんが寝泊りするところもない中で取材を重ねてきたことは本当にすごいと思う。目の前の悲惨な現実に何をどう伝えていいのか悩まれることもあると思う。その中で一番大事なことは被災した人の立場に立ち、その思いを共有していくことではないか。私も自分自身に何ができるかを考えながらそのことを深く突き詰めていきたい。

    (2) 山田委員「放送メディアの震災報道と被災者」
    ジャーナリズムは現実から逃げずに現実を直視し伝えることであり、想像力を働かせて番組を作ることだ。それが今テレビ・ラジオに問われている。
    テレビやラジオ、新聞等の伝統的なメディアは、最初は速報や一定の安心感の醸成、支援力の形成という点で大きな力を発揮したと思う。但しその後は政府等の公的機関の情報に頼らざるを得ず、"大本営発表"という批判を受けることになった。そこに従来型の取材報道体制への懐疑や批判が含まれていることが重要だ。
    たとえばあやふやな情報や凄惨な画像を流すとパニックになるので放送しなかったといわれている。アメリカの9・11の後にもエリートパニックという話があったが、視聴者は本当にテレビの情報を鵜呑みにしてパニックを起こすのか。それは局の驕りではないのか。改めて考え直してもよいと思う。また放送法第4条にある視聴者への多角的な論点の提示はできているか。たとえば政府は安心だとPRするが、それに対して安心と安全の違いを峻別し検証し伝えることが報道機関の役割ではないか。さらに被災者に寄り添う報道とはなにか。その言葉に放送局の自己満足はないか。最も困っている人、最も弱い人、あるいは東京発の情報に対抗できる地元の見方や意見をどう発信していくかが問われている。
    いま陸前高田市に行くと瓦礫の山は片付けられ、現地はきれいな草原となっている。その中でどう息切れせず、忘却せずに伝え続けていくか。そのためには覚悟が必要だ。中には被災者にとって不愉快で不都合な情報も入ってくるだろう。それも報道し切るという覚悟を持たなければ本当の意味で被災者に寄り添う報道はできないと思う。

    (3) 武田委員「原発報道とメディアへの一視点」
    私は事故の後は現地に行っていない。事故の後にしか行かないジャーナリズムに不満がある。ジャーナリズムは事故の前に現地に行くべきだった。たとえば事故直後、再臨界という言葉が飛び交ったが、知識を踏まえてその危険を伝えるものではなく、圧倒的に事故前の蓄積が欠けていた。いわば事故という抜き打ちテストに日本の報道は合格できなかった。
    地元と原発との関係、原発推進と反原発についても考えておくべきだった。両者の不幸な向き合い方が日本の原子力のリスクをむしろ高め、原発の事故率を高めてしまった側面がある。大本営発表等の批判についての検討も必要だが、事故前に日本の原子力をめぐる構造を分析し報道することができなかった、それがあの事故を招いたという意味でジャーナリズムには責任がある。この問題を考えないと後につながらないと私は思う。
    3・11以後の原発報道もいわば「東京目線」で行われてきたのではないか。たとえば原発の敷地外からプルトニウムが発見されれば大ニュースになる。しかし地元にとっては核種の如何以上に被曝するかしないか、これから生きていけるかが大事だし、避難すること自体がリスクになる人もいる。寄り添うとすれば、そうしたリスクを総合体として伝えないと原発報道は被災者のためにならない。そのあたりは反省すべき点が多い。
    日本のジャーナリズムには速報主義、事実主義、中立公正原則がある。しかし単に早ければよいわけではなく、戦前の原爆開発計画が報道され、原発と原爆の連続性が理解されていれば、日本の原子力史は変っていたかもしれない。またプルトニウムが検出されたという事実を報道するだけでよいのかという問題もある。中立公正原則をあえて踏み越えて寄り添い型の報道が必要な場合もある。
    3・11を経てこの3点を再検証すべき時を迎えていると思う。

◆後半◆
15分間の休憩を挟み、後半は「顔なし、モザイク映像の多用と報道の信頼性」「不正や疑惑の追及とその課題」、「東日本大震災報道」をテーマに委員と放送局出席者との間で意見を交わした。
このうち「東日本大震災報道」では、遺体映像について「日本のテレビでは遺体映像は出ていないが外国のメディアでは海に浮かぶ遺体の映像が流れたと聞く。どう考えるか」との質問が出た。
委員からは、「最初の3か月、半年という範囲では遺体映像を出す必要はないと思う。遺体映像がなくても今回は悲惨な状態についての情報の共有や共感できる絵作りはできたと思う」という意見に対し、「牛や豚が死んでいる映像だけでは真実は伝わらない。次世代にまで伝えるという点では、迫真のある映像を残すことをベースに且つ人間の尊厳を守っていくという観点からまず撮影し、そのうえでボカシを入れるかどうかを議論し、出すべきものは出すという方向性で行かないとメディアとしての意義はない」とする意見が出た。
また「欧米のメディアでは遺体を含むはるかに凄惨な画像が通常放送されている。それと日本での扱いとの間にあまりの段差がある。その理由は明確にし検証していく必要があると思うが、名前が特定できるとか親族には分ってしまう等の場合は別として、遺体であるから放送しないという一般的な原則が果たして有効かどうか、いま少し議論する必要があると考える」とする意見や、「広島の原爆の時も遺体写真がほとんどなかった。いま話を聞いていると66年前と全然変わらない、何を考えて私たちはここまで来たのだろうかと愕然とした思いだ。やはり撮らなければいけない、記録しなければいけない。それを記憶させていかなければいけないというのが私たちの仕事の宿命というか使命だ。そういう映像を撮らなくて済むようになることは大事だが、やはり記録のために撮っておくことは大事だと思う」という意見も出された。
堀野委員長は「原爆の時の黒焦げになったモノクロ写真や東京大空襲の際のおびただしい遺体のモノクロ写真は残っている。もう二度と戦争はいやだという思いはそのような写真を見ることでも継承されていく。災害でも同じことだと思う。特に人災が含まれる災害での死は後世に伝えるべき極めて大きな問題だ。それこそメディアの責任ではないかと思う」と述べた。

2010年12月 北海道地区各局との意見交換会

毎年各地区で順次開かれている、放送人権委員とBPO加盟放送事業者との意見交換会が、北海道地区を対象に12月7日札幌で開かれた。
札幌では2003年10月以来7年ぶり2度目の開催で加盟9社から62人が出席、一方、委員会側からは堀野委員長をはじめ委員7人と事務局9人が出席し、「ジャーナリズムへの信頼向上のために〜現場の困難をどう乗り越えるか」を全体テーマに約3時間にわたり意見を交わした。

◆前半◆
基調スピーチで堀野委員長は、委員会の判断任務のひとつである放送倫理上の問題に触れ、「放送倫理とは一種の規範であり、視聴者の意識や放送を提供する側の意識に根づいた見えない法律だ。放送倫理上の問題をどう判断するかは難しい作業だが、誰もが思うあるべき放送の姿や報道の旨を番組が実現しているか、視聴者と正面から向き合った緊張関係を放送から見出せるかが委員会の判断の基準だ」と説明した。
そのうえで、「キバを抜かれたジャーナリズムは無力だが、優しさを欠いたジャーナリズムは凶器と化す」という清水英夫氏の言葉を引用しつつ、「放送はもっと事実を突っ込み、視点がはっきりと分るものにしてほしい。一方で、被取材者や視聴者との緊張感を欠いて優しさを失くした放送は、凶器となって人権を侵害する。その両面を自覚して仕事をしてほしい」と要望した。
三宅委員長代行は、このほど発刊された『判断ガイド2010』で、放送倫理上の問題を考えるための目安として設定された「事実の正確性」、「客観性、公平・公正」など5つの分類項目と、それらに該当する事案や判断内容について説明した。

◆後半◆
後半は、各局への事前アンケート等をもとに3つのテーマを設け、議論した。

(1)顔なしなど匿名化手法について
はじめに顔なしやモザイクなど匿名化手法の問題を取り上げた。局側から「簡単な交通事故の現場でも顔出しを断られる場合が多く、放送時間が迫ると仕方なく顔なしで撮ってしまう」、「サンマの不漁で融資相談が行われた際、水産加工会社の社長から顔だけは勘弁してくれと頼まれ、やむなくカットした」等の事例が相次いで報告された。一方で、「顔がないのはやらせではないかという視聴者の声も寄せられる」という報告もあった。
これを受け、2010年8月に通知・公表された「上田・隣人トラブル殺人事件報道」事案で、顔なし住民インタビューの問題点を指摘した委員から、「内部告発者の人権擁護やプライバシーの観点から顔を隠す必要がある場合は確かにある。しかし、成り行きで隠してしまう場合もあるのではないか。本当に顔なしの必要性や必然性があるケースなのかを真剣に議論してほしい。匿名への風潮や悪循環を断ち切る努力をしないと放送そのものが信憑性を失う。それは自業自得の道でもある」という意見が出された。
局側からさらに、「記者の若年化に伴い、"顔は個人情報でしょう"といって対象者と向き合う前に顔なしで撮って来る場合がある。土台の違う人にどう理解させるか苦労している」という声があがった。「若い記者は人権やプライバシーを当然と感じる世代で、それが取材を鈍らせている面がある」という意見も出た。
これに対し、別の委員は「それは人権への配慮というよりも単にクレームを避けたいだけではないのだろうか」と疑問を呈し、「個人情報の保護は万能ではない。事実報道の価値は間違いなくあり、すべてが匿名化したら民主主義社会は成り立たない。両方の価値があってこそバランスが取れるし、どちらが優先するかはケースバイケースだということをちゃんと考えてほしい」と力説した。

(2)報道対象者や一方当事者への取材
報道対象者や一方当事者への取材の問題では、前記「上田」事案で論点となった「犯罪被害者とその家族の名誉と生活の平穏への配慮」について、決定文の起草に当たった委員から説明した。
別の委員は「本件報道は、殺害された被害者にも非があったとする内容だったが、それを被害者側はどう受け止めただろうか、放送する側はやはり気にするべきだ。被害者側の気持ちを取材で聞いていれば、あるいは司法よりも深い真実追求が報道の場面でできたかもしれない」と述べ、報道対象者の心情を汲んだ丁寧な取材やアプローチの必要性を訴えた。

(3)謝罪・訂正のあり方
3番目のテーマ「謝罪・訂正のあり方」では、北海道で起きた轢き逃げ事件で容疑者の顔写真を取り違えて放送した局から、その経緯と謝罪対応について報告を受け、謝罪・訂正のあり方が論点となった2つの事案について委員から説明した。
「保育園イモ畑の行政代執行をめぐる訴え」事案では、訂正放送の趣旨について、(1)視聴者に放送の誤りを知らせ、正しい事実を伝える、(2)視聴者に誤報があったことをお詫びする、(3)これらを通じ、当該放送によって被害を受けた当事者にお詫びの気持ちを伝える、(4)同時に、当事者が受けた被害について社会的に回復する効果を生む、という4項目が示されている。
起草担当委員は「謝罪・訂正放送が常にこの4条件を満たさなければならないということでは必ずしもないが、放送に際しての参考にしてほしい」と述べた。
また、「拉致被害者家族からの訴え」事案に関連して、起草担当委員から「局が謝罪すると決めたのであれば、謝罪の気持ちや意図がちゃんと伝わる放送をすべきだ」という指摘があった。

このあと、この1年以内に通知・公表された主な事案を各委員が解説した後、樺山委員長代行が次の通り会議を総括した。

  • BPOは放送局を監視し、指示する機関ではない。放送現場の実情を理解した上で、局と申立人との接点を見出すべく考えている。時間がかかりすぎるという声もあるが、委員会の立場と問題自体の難しさを理解してほしい。
  • 顔なしの件はすぐには結論が出ないが、むやみに顔を隠し、誰が発言しているのか分らないような放送は本来あるべきではない。現場での努力をお願いしたい。
  • 上田の事案で出た被害者側の心情への理解やいたわりについて、そういう倫理的な観点から考える必要を特に若い局員に指導してほしい

最後にBPO飽戸理事長が「放送局が自主的な改革・改善に取り組まないと、監督や規制強化の動きは強まる。それを跳ね除けるには改革を進め、視聴者の信頼を得ることがなにより重要だ」と訴え、意見交換会を終了した。

2010年 9月 在京地区各社との意見交換会

放送人権委員会は、9月21日の委員会終了後、在京局のBPO連絡責任者との意見交換会を千代田放送会館会議室で開催した。相互理解を深め委員会活動に資する目的で、在京のテレビ、ラジオキー局とNHKから11人、委員会側から9人の委員全員と事務局メンバーが出席した。

堀野委員長は席上、放送倫理と委員会の決定について次のように述べた。
「放送人は、人の心の痛みに対する配慮が基本になければいけないと感じている。放送人に驕りがあってはいけない。放送倫理とは、つき詰めれば、うその放送で人を傷つけてはいけない、表現の仕方で傷つけてはいけないということだ。放送倫理がすべてどこかに書いてあるわけではない。例えば放送倫理基本綱領があるが、あらゆる場面に適用されるような放送倫理はない。聴く人、見る人、取材を受けた人、放送に参加した人たちの心の痛みを思いやる気持ちがあるかどうか、これが放送倫理だと思う。 委員会の決定を受けた局は現場を含めてもっとディスカッションしてほしい。決定のこの点が不満だ、もう少し突っ込んで議論したいといっていただければ、私どもも議論に応じたい」。

この後、事務局から、今後の委員会活動として、毎年開いている各地区別の意見交換会を、今年は北海道の局を対象に12月初めに札幌で開催すること、これまで出された36事案・45件の「委員会決定」を網羅した新しい『判断基準2010』の編集を進めており、11月に発行するので活用してほしいこと等を説明した。
また、本人の知らぬ間に本人の映った映像が放送で流れ、それにより権利侵害を受けた可能性があるので局に放送の視聴を求めたところ断られたとの相談が事務局に寄せられることを紹介し、こういう場合はできるだけ視聴させることが望ましいという委員会の見解が出ている(2001年2月20日)ので、系列局にも伝えてほしい旨要請した。

意見交換では、「委員会決定」を公表する記者会見の場で、当該番組の映像を公開できないかどうかについて意見を出し合った。
局出席者からは「事案を理解してもらうために見てもらった方がいい。各局の合意が必要だが、個人的にはそう思う」、「出さないのが大原則だが、客観的に判断するには見ないと分からないものもある」、「放送目的外の使用には絶対反対だ」、「人権を侵害されたという申立人は、世の中に二度と出してくれるなという気持ちだ」などの意見があった。

委員からは「テレビは見た感覚が大事だ。『委員会決定』の先例を文書で扱うだけでなく、例えば映像ライブラリーにストックして関係者が検証できるようにするなど検討すべきだ」、「年一回程度の研究会でみんなで勉強しようというときに、提供してもらえる映像素材があればいい」等の意見があった。

このほか、委員会審理の進め方や決定文の書き方、各局での決定の周知法などをめぐって意見を交わした。
在京局のBPO連絡責任者との意見交換会は2004年以来で、今回が5回目となったが、約2時間にわたって自由かつ活発な意見交換が行われた。

2009年12月 九州・沖縄地区各社との意見交換会(開催地:福岡)

12月2日 、福岡市内のホテルにおいて、「放送と人権・放送倫理」をテーマに、放送人権委員会の全委員が出席して、九州・沖縄地区の放送局との意見交換会を行った。
委員会は年に1度、地方ブロック単位で意見交換会を実施しているが、九州ブロックの開催は2002年以来7年ぶり2回目。各局からは、これまでの意見交換会参加者を大幅に上回る31 局 86人が集まった。

局とBPOは"辛口の友人"で
意見交換会では、はじめに堀野紀委員長が基調講演した。
この中で委員長は、「報道・情報番組は真実に切り込む勇気と気概を持って欲しい、また同時に正しい意味での緊張感を持って制作して欲しい。委員会にあがってくる問題を見ると、報道が病気にかかっているのではないかと思う。そうでなくても、放送局が "未病 "、健康でない状況にあると感じる。 報道が病気にかかると国家が介入しようと出てくる ことになる。表現の自由を守り、政治の介入を招かないことが大事であり、番組の正確性と人権に関しては厳しい自覚を持って制作して欲しい。
BPOは局に対し厳しい意見を言うこともあるが、これについてはどんどん局も発言して欲しい。お互いが"辛口の友人"の関係でありたいと思う」と語った。
続いてこの1年間に出された5件の「委員会決定」について事務局からその概要を説明し、「決定」を起草した委員を中心に、そのポイントや問題点などを具体的に紹介した。その中で、この1年間はとくに事案が多く寄せられ、すでに5件の委員会決定が出されたが、 「勧告」という厳しい決定が相次いでおり、放送局側が真剣な対応を迫られているとの説明があった。この後は、現在の放送の抱える問題から、「裏付け取材の必要性」「訂正放送のあり方」「匿名映像の多用」にテーマを絞って、委員と参加者の間で活発な意見交換を行った。

「裏付け取材」=複数の確認を
まず「裏付け取材の必要性」では、今年7月30日、放送倫理検証委員会が勧告を出した、日本テレビ『真相報道バンキシャ!』を例にあげた。勧告では裏付け取材に関して、「募集サイトであれ、電話やメールや手紙によるものであれ、本来視聴者からの情報は、取材調査の入り口に過ぎない。そこをきっかけに、当事者や関係者を直接取材し、裏付けを取り、可能な限り確実な事実を描いて行くことが、制作スタッフの仕事であろう」と厳しく指摘している。
これについては参加局から、「『バンキシャ!』のような取材の し かたは考えられない」「複数人の確認が基本だ」「裏付けのとれないものを報道することへの"怖さ"を大事にすべき」といった声が出された。
また、裏付け取材の不足による問題として、「隣人トラブル」などの放送について事務局から報告した。とかく被害・迷惑を受けたという人からの情報に偏り、相手の話を聞かないまま放送し、その人から「一方的な放送だ」と訴えられるケースが多く、放送人権委員会の33件の事案の内5件もが、こうしたケースだったと説明された。これに対し委員から、「ある問題についての解釈とか評価を行うと、当然のことながら、それとは異なった物の見方、あるいは解釈があり得るはずだ。そのことは局の中でオンエアする前に、 十分議論していただきたい」との注文があった。

「訂正放送」も番組の一部
続いて、『バンキシャ!』やTBS『サンジャポ!』の「保育園事案」でも大きなテーマになった「訂正放送のあり方」について話が移った。両番組とも、誤った内容を報道された当事者から求められて訂正放送を行ったが、「何を誤ったのか、正しくは何だったのか」がよく分からず、「お詫び」としても不足で、結果的に当事者を納得させられていない。
こうしたことから「保育園事案」の決定では「訂正放送の趣旨」として、以下の4条件をあげた。

(1) 視聴者一般に対し、放送の誤りを知らせ、正しい事実を伝える。
(2) 視聴者一般に対し、誤報があったことをお詫びする。

そして、その放送によって被害を受けた者がある場合には、

(3) これらを通じ、当事者に対し、お詫びの気持ちを伝える。
(4) 同時に、当事者が受けた被害(例えば名誉毀損や名誉感情の侵害等)について社会的に回復する効果を生む。

これについて、放送局側に「(3)(4)を条件とされると、当事者とのやりとりがたいへん難しくなる」と心配する声があることから、この決定を起草した委員は、「その当事者に対し、放送外も含め何らかの補償をするとか、直接会いに行ってお詫びをするとか、いろんなことをされるだろう。その中の1つとして、訂正放送を通じて、その当事者の気持ちの回復が図られればよりプラスになる。訂正放送の際には、基本の2条件にプラスして、(3)(4)により、当事者に放送を通じてお詫びの気持ちが伝わり、名誉感情が回復されるならばベストだろうと思う。このことをもう一度局内で話し合って欲しい」と語った。
また、現状の訂正放送のやり方について複数の委員から、「往々にして、番組終了直前に局アナの顔出しだけで放送されることが多い。フリップやVTRなども使って、普通の番組と同じように工夫して出してはどうか」「訂正放送の価値を積極的に捉えるような姿勢も必要」といった提案もあった。

「匿名映像」の多用にブレーキを
最後に、最近インタビューなどの際に 使われている「匿名映像」( 顔無し、モザイクなど)の問題が話し合われた。
過去の「委員会決定」では、「匿名やモザイクの使用は、重要な証人や、重大な事件現場で、被害が及ぶ危険がある時や、関係者の名誉、プライバシー等を著しく侵害する恐れがある場合などでは、必要な方法の1つである」ということを言っている。しかし、「取材不足を補う便法として、これを安易に用いることは、調査報道の本質に反し、ジャーナリズムとしての姿勢が疑問視されかねない」などとも指摘している。
この「匿名映像」が増えている現状についてある委員は、「たとえば公園で子どもがいて、かわいいから撮ろうと思っても、どこかからお母さんが飛んで来て、"撮らないでください!"と言われること をよく経験する。取材される人が顔を出すことを拒否することが多く、モザイクも首なしも、当たり前という現状になっている。これは行くところまで行って、『これじゃあ伝わらない』と皆が気づき、 はじめてやめようということになるのではないか」との認識を語った。
これに対し局側からは、「現場には、何とか説得して顔出しでインタビューをとるよう指示しているが、一般の人の意識も変わって来ていて、なかなか歯止めが効かない」
「『取材対象者との対話・説得には絶対手を抜くな』 というのを 持っておかないといけない」といった声 があった。
さらに委員からは、「放送は公益的なもの、公共的なものである。そういう放送に協力することで、ある種の社会的使命を果たすという認識を被取材者が共有すれば、状況は変わ る 。それが共有されていない現実があること を、作り手側はある程度問題意識として持たなくてはいけない 」「よほど合理的な理由がない限り、個人の名前と顔は、きちんと表に出してメッセージを発すべきものだという理解を、国民的なレベルで持つことが大事で、それを強調するのが、テレビの役目ではないだろうか」といった声が出された。
また「名誉毀損することは普通は違法だが、名誉を毀損する事実を報道しても、その報道に価値があれば許されることが、憲法的価値として認められている。せっかく認められているのに、メディアの側が安易にモザイクや首なしの映像にすることは、事実を事実として流さなくても良いと言っていることにもつながる。だから、『目撃証言では顔を出してもらわないと価値がない』と被取材者に一生懸命説得して欲しい。安易に首なしやモザイクにしたら、『 別に出さなくていいですね』と裁判所も思うことになる。そう なると 永遠に後退する から、 メディアの方にがんばっていただきたい」などと、局に対する激励の言葉が続いた。

2008年11月 中部地区各社との意見交換会(開催地:名古屋)

11月11日、放送人権委員会委員と中部地区会員各社の報道・制作責任者等との意見交換会が名古屋で開催された。
今回の意見交換会は地方開催としては8回目、東京開催を含めると12回目となる。意見交換会には、中部地区のラジオ、テレビ44社のうち26社が参加し、BPOの連絡責任者のほか報道、制作現場の責任者等これまでの意見交換会では最も多い52名が出席した。放送人権委員会からは、竹田委員長、堀野委員長代行、五代委員長代行、右崎委員、武田委員、中沢委員、三宅委員、山田委員の8名が出席し、また事務局から役員2人を含む9名が参加した。
今回は特に最近の報道、制作現場が抱える放送倫理上の問題点や課題について、具体的なテーマに沿って意見交換を行った。
冒頭、竹田委員長が「放送倫理について」と題する基調講演を行い、続いて上野統括調査役が、最近の放送人権委員会の活動報告を行った。
この後、今回のテーマのひとつである「隠し撮り」の問題に入り、局の参加者からは、「隠しカメラは原則として使用してはならないとあるが、重大事件における強制捜査の前の、被疑者の映像取材を行うことはよくあるし、また最近の『振り込め詐欺事件』など対象に接近していかないと、実態を描けないものまで原則として使用すべきでないと言うことなのか」との質問があった。これに対し、堀野委員長代行は、「一般にえげつないとされている取材方法について、その取材によっていかなる真実が明らかにされ、その真実が社会的にどの程度重要な問題であるか、公共性、公益性においてどれだけ明らかにする必要があるかなどとの相関関係で考慮していくべき」との考えを示した。
次に「匿名映像」のテーマに移り、インタビューで、首から下の映像や、顔にボカシをかけた映像が増えていることについて意見を交わした。委員からは、「人権への配慮でそうしなくてはならないケースがあることは分かるが、極力顔を出して話してもらわないと、証言の信頼性を損なう」などと改善を求める意見が出された。これに対し局側からは「匿名映像は、事故関係ではあまりないが、学校関係の不祥事などではよくある」、「顔出し映像によるその後のトラブルを避けたいという意識が進んでいるのでは」、「できるだけ顔出しでの放送をと心がけているが、取材現場では顔出しでは応じてもらえないことがあり、放送までの時間的制約もあって匿名映像となることもある」などの報告が出された。また撮影後に、「顔を出して放送しても良いですか?」と局の人間が確認するケースもあるという声もあった。

2008年10月 テレビ局の現場視察と意見交換会(訪問局:TBS)

放送人権委員会では10月14日、TBSの夕方の報道番組「イブニング5」(16:52〜18:55放送)の放送現場や報道局内を視察するとともに、番組終了後、委員と番組スタッフとの意見交換会を行った。
委員9名のうち8名が参加し、生放送中のスタジオ、報道セクション、編集ルーム等を見学・視察したあと、放送を終えたばかりの「イブニング5」キャスター三雲孝江さん、コメンテイター杉尾秀哉さん、番組制作スタッフとの間で意見交換の場を持った。
意見交換会では、放送倫理や人権に関わる問題などが活発に話し合われたが、中でも、最近インタビューなどで、いわゆる匿名映像(顔なしやぼかしなど)が多い点について局側から、「取材される側がそうした要望を出すことが多く、これに対し、取材者が粘り強く交渉しないまま妥協してしまっている面もある。何とかしなくてはいけないがジレンマを感じている」との声もあった。

2007年12月『放送人権委員会10周年フォーラム』(開催地:東京)

放送人権委員会は、1997年5月の委員会発足から丸10年を記念して「放送と人権〜放送倫理の確立を目指して」をテーマに、『放送人権委員会10周年フォーラム』を12月5日、東京・千代田区の全国都市会館で開催した。全国の民放・NHKの放送関係者を中心に約250人が集まった。
第1部は竹田稔委員長による基調講演「放送による人格権侵害と放送倫理」。
竹田委員長は、特に表現の自由と名誉権やプライバシー侵害との調整について、「その報道が公共の利害に係り、公益を図る目的でなされ、報道された事実が真実であると証明されるか、もしくは真実と信ずるについて相当の理由がある場合は故意・過失はなく、不法行為は成立しない」とした昭和41年の最高裁判決が、表現の自由と人格権侵害の調整の法理として指導的に機能してきており、その意義は大きいと述べた。そのうえで、「放送はいまや国民にとって最も身近なメディアであり、その社会的影響力は極めて大きい。放送事業者は民主主義社会の基盤である表現の自由の担い手として、自ら社会的責任を全うするため、放送のあり方を問われている」と述べ、関係者の自覚を強く促した。
第2部は、「放送は市民を傷つけていないか」「取材・編集・OAに当たっての放送倫理」というテーマでのパネルディスカッション。読売新聞編集委員で長らく放送を担当している鈴木嘉一さん、ジャーナリスト江川紹子さん、NHK及び在京民放テレビの関係者らがパネリストとして出席し、放送人権委員会の三宅弘委員をコーディネーターに活発な意見交換を行った。
討議では、隠しカメラ・隠しマイクによる隠し撮りと、モザイクや顔なしインタビューの多用が大きな話題となった。この内、隠しカメラ・隠しマイクについては、原則的には使用すべきでないとしながらも、毎日新聞の「旧石器発掘捏造報道」や、大阪MBSによる「大阪市役所のカラ残業報道」のように、隠し撮りの効用を評価する声も多かった。そして、隠し撮りが不可欠なケースもあるのだから、「一切ダメ」というのではなく、取材をした上で、それをどう出すかをしっかり考えるなどフォローが重要だとする意見もあった。
また、最近は、事件や事故現場でのインタビューでも、モザイクや顔のない映像が多用されていることが問題となった。放送人権委員会は過去の事案で、対象者が被害を受ける可能性のある場合などは必要な手法の一つだが、安易な使用は報道の真実性を疑われることになり、原則としては避けるべきであるとする判断を示してきた。これについて、パネリストの間から「取材する側もされる側も安易にこの手法を受け入れており、いわば覚えてしまった状況にある」と現状を指摘する声があった。そして、NHKの「ワーキングプア」のように、顔出しの放送に結びつける取材者の努力が改めて求められるとの結論となった。

2006年11月 関西地区各社との意見交換会(開催地:大阪)

11月28日、放送人権委員会委員と近畿地区会員各社のBPO連絡責任者等との意見交換会が大阪で開かれた。今回の意見交換会は地方開催としては7回目で、東京での開催を含めると11回目となる。
「意見交換会」には、近畿地区のテレビ、ラジオ局12局からBPOの連絡責任者、あるいは報道・制作現場の責任者等、これまでの意見交換会では最も多い40名が参加した。一方放送人権委員会側からは、竹田稔委員長、堀野紀、五代利矢子両委員長代行、右崎正博委員、中沢けい委員、三宅弘委員の6名と事務局から6名が出席し、最近の制作現場が抱える放送倫理上の問題点や課題等について意見を交わした。
冒頭、竹田委員長から、10年間近くにわたってこれまで果たしてきた放送人権委員会の役割と今後の課題について基調報告があった。この中で竹田委員長は、「見解」、「勧告」を受けた後の当該局の対応について「これまでの対応は、満足出来るものであったが、一方で何度も審理対象になっている局があることも事実である。今後一層どのように改善策をとったら良いか、各局で考えて実行していって欲しい」と述べた。また放送人権委員会事務局からは、最近の苦情傾向として「メディアスクラム状況に対する抗議」や「モザイクがかけられていたが地域社会ではすぐに特定された」「隠しカメラで無断撮影された」等の苦情が増えているとの報告があった。
この後、意見交換に移り、まず委員会決定を受けた当該局から、その後の対応等について報告があった。その中で局側の担当者は「隠しカメラ、マイクの運用面について現実の問題としてどのように考えていったら良いか、頭を悩ましている」と実情を述べた。これに対し委員からは「隠しカメラ、マイクは原則として使用すべきではない。場合によって公共性、公益性との比較衡量上例外的に認められるというものではないか」との説明があった。
最後に放送局側から、放送人権委員会の審理と裁判との関係について、「これまで放送人権委員会で審理した後、裁判になる事例がある。止むを得ないと思うが、なにか腑に落ちない。歯止め的なものはないのか」との質問があった。これについて竹田委員長は、「裁判制度と放送人権委員会の制度自体が存在基盤を異にするものであり、運営規則第5条の『裁判で係争中の事案は取り扱わない』との規定が、今のところ放送人権委員会として出来る限度だ。放送局側の言わんとすることは重々わかるが、放送人権委員会の存在意義を理解して頂き、協力をお願いしたい」と述べ、大阪での意見交換会を終えた。

2005年11月 東北地区各社との意見交換会(開催地:仙台)

放送人権委員会委員と東北地区会員各社のBPO連絡責任者等との意見交換会が11月29日、仙台で開催された。今回の意見交換会は、大阪、名古屋、福岡、札幌、中・四国地区に次いで地方での開催としては6回目、東京での開催を含めると10回目となる。
意見交換会には、東北地区のテレビ・ラジオ局18局(NHKは仙台局と東京から出席)から、BPOの連絡責任者、あるいは制作現場の責任者等32名が参加した。一方放送人権委員会側からは、飽戸弘委員長、竹田稔・堀野紀両委員長代行、五代利矢子・右崎正博・中沢けい・渡邊真次各委員と事務局が出席し、昨今の制作現場が抱える放送倫理上の問題点や課題等について意見を交わした。
冒頭、飽戸委員長から、これまで9年間に亘って放送人権委員会が果たしてきた役割と、放送人権委員会が抱える課題について基調報告があった。この中で飽戸委員長は、特に放送局への期待として、「放送人権委員会は報道の自由を守る機関であって、その放送人権委員会の決定をきっかけに反省と改革の出発点としてもらいたい」と強調した。
続いて、「放送人権委員会判断基準2005」の発刊について、監修をつとめた右崎委員が内容と利用方法について説明し、「放送局の皆さんにはこの『判断基準2005』を人権問題に関する重要指針として受けとめて頂きたい」と述べた。また放送人権委員会事務局からは、最近の苦情傾向として、「幼児、児童、学園内の取材と撮影に関する保護者からの抗議」や「性的少数者や難病患者の扱いに対する苦情」、「警察発表に基づく報道への抗議及び訂正要求」等が増えてきているとの報告があった。
この後、意見交換に移り、放送局側から、「福知山線の脱線事故でみられたように、個人情報に関連して取材側と取材される側とが実名公表をめぐってもろにぶつかった場面が見られたが、このような場合、報道現場ではどのように対応していったらいいか」という質問があった。
放送人権委員会委員側からは、「基本的には実名報道が望ましいが、事故報道の場合、被害者あるいは家族の心の痛みに配慮した報道も必要ではないか」、「事件事故によって被害を受けている人が報道によって更に被害を受けることは避ける必要があるが、現在は警察まで実名を発表しなくなってきているように行き過ぎた状態になっている。このような中、報道する側はどこにポイントを置いて報道するのか考える必要がある」等と答えた。
最後に、委員から放送局側に対して「テレビが大きい力を持っていることを自覚するとともに、放送される側への思いやりを持って欲しい。放送のプロとして自覚と誇りを持ってがんばってもらいたい」との激励の言葉があり、仙台での意見交換会を終えた。

2005年03月 中国・四国地区各社との意見交換会(開催地:広島)

放送人権委員会委員と中国・四国地区の放送局のBPO連絡責任者等との意見交換会が3月7日、広島市で開催された。地方での開催は、大阪、名古屋、福岡、札幌に続いて5回目で、東京を含めると9回目となる。
意見交換会には、両地区のラジオ・テレビ22放送局(民放20局、NHKは広島と東京)から、BPO登録代表者や連絡責任者ら32人が参加。飽戸弘委員長、竹田稔・堀野紀両委員長代行のほか、右崎正博、五代利矢子、中沢けい、渡邊眞次の各委員、それに事務局が出席して、報道・制作現場が抱える人権や放送倫理上の課題について意見交換した。
冒頭のスピーチで飽戸委員長は、最近のテレビメディアを巡る社会環境の変化を具体的に指摘した上で、「今こそ、放送局側が"自主・自律"を成功させなければならない。放送人権委員会は、そのための"報道の自由を守る機関"である」と強調した。
この後、放送人権委員会事務局から最近の苦情の傾向として、「顔出しやモザイクを巡る人権侵害の訴え」や「取材不足や構成・演出・編集によって事実を歪曲されたとの抗議」、「児童施設等の取材・撮影に関する保護者からの抗議」が増えていることなどを報告し、これを受けて参加者との意見交換に入った。
意見交換ではまず、広島県のテレビ局から、「女子高生殺人事件で集団的過熱取材を避けるため、地元の編集責任者会議で協議したが、代表取材で真実追求ができるのか」などの悩みや苛立ちが報告された。また、愛媛県のテレビ局から、「キー局に素材送りした映像が不適切な編集によりネット放送され、地元市民から慰謝料を要求されたトラブルでの苦情対応の難しさ」が紹介されるなど、具体的事例に沿って委員との間で活発な質疑応答が行われた。
さらに委員側から、「真実でない放送によって権利を侵害された場合の放送法に基づく訂正放送請求権は私法上の権利とは認められない、とする最高裁判決があった。これにより今後、放送局は、放送法上の訂正放送をするか否か、自律的・自主的に対応することが求められることになり、その責任はますます重くなった」との指摘があった。
最後に、飽戸委員長ら各委員が、「現場の人たちから、具体例を挙げて取材・報道上の悩みや苦情対応の難しさに関する話が聞けて、大いに参考になった。
また、参加各局には放送人権委員会の機能・役割をより理解してもらえたと思う」と感想を述べた。

2004年11月 在京地区各社との意見交換会(開催地:東京)

放送人権委員会委員と在京テレビ・ラジオ局のBPO連絡責任者との意見交換会が11月16日、東京で開催された。昨年4月に委員長と5人の委員が交代して以来、初めてとなる会合には、飽戸弘委員長はじめ8人の委員全員と、在京各局から10人の連絡責任者(代理を含む)が出席した。
冒頭、飽戸委員長が、「放送人権委員会は判決を下す裁判所ではない。皆さん放送事業者が自ら設置した、自主自律のための機関であって、(表現の自由に対する)権力の介入を防ごうとする機関だ」と、改めて放送人権委員会の基本的な機能を強調。あわせて、「放送人権委員会から『委員会決定』という形で問題が提起された際は、当該局だけでなく、全局の皆さんがそれに関心を持ち、問題について議論してほしい」と要望した。
意見交換では局側から、「今、裁判所では個人の名誉やプライバシーを重視している。苦情申立人は、表現の自由を尊重する放送人権委員会よりも、裁判所を頼りにしようという傾向になりはしないか」と、第三者機関としての立場の難しさを問いかける意見が出された。
これに対し委員からは、「放送人権委員会は司法でも行政でもない。委員会は、放送局の倫理性を問う方向に行くべきだと考えている」、「我々の役割は基本的には人権侵害と放送倫理上の問題からの救済だが、判断が難しいのは"放送倫理とは"ということ。法的責任でないため、そこに幅があるのはやむを得ない」、「厳しい勧告も出したが、局に求められるのは自律性だ」といった考えが述べられた。
また、「申立人の資格が『当分の間、個人』となっているが、"当分"はいつ頃までであり、団体の扱いはどうなるのか」との質問があった。これに対し、委員や事務局からは、「団体すべてが対象外ではなく、個人に近い団体は扱っている」、「放送人権委員会発足後8年になるので、『当分の間』や『個人・団体』について今後、議論が必要になってくる」との説明が行われた。
最後に委員から、「案件や事案を見てきて思うが、取材・編集過程でもう少し注意すれば、人を傷つけるような大きな問題にはならなかったはず」、「表現者は、何故そういう表現をするのかを常に考えるべきで、機械的な自主規制だけでは困る」、「放送局側から、番組を企画した際の志の高さを聞くとホッとする」といった感想が述べられ、意見交換会を締めくくった。

2003年10月 北海道地区各社との意見交換会(開催地:札幌)

放送人権委員会委員と北海道地区放送事業者との意見交換会が10月24日、札幌市で開催された。東京以外での開催は、大阪・名古屋・福岡に続き4回目となる。
意見交換会には、北海道地区の全ラジオ・テレビ9局から、BPO登録代表者やBPO連絡責任者ら35人が参加。放送人権委員会側からは、飽戸弘委員長、竹田稔委員長代行、堀野紀委員長代行、五代利矢子委員、中沢けい委員、それに事務局の合わせて10人が出席した。
まず、飽戸委員長が「放送人権委員会6年と放送局への期待」と題して、名誉毀損に対して司法判断が厳しくなるなどの情勢の中で放送人権委員会が報道の自由を守るために放送界の第三者機関として設立された経緯、6年間の足跡、今後の課題等について講演。特に取材面では、メディアスクラム対応問題や、取材依頼の曖昧さがトラブルの原因になっていること、また番組制作上では、放送局のカルチャーと市民のカルチャーの差がもたらす対応のまずさがトラブルの元になっていること等を指摘した。その上で、「放送人権委員会は裁判所でも統制機関でもない、放送界の皆さんが作った『報道の自由を守っていくための機関』。自主・自律を成功させるためにも放送人権委員会の決定を有効に活用してほしい」と締めくくった。
この後、各委員が挨拶し、その中で、「最高裁の所沢ダイオキシン報道に関する差し戻し判決により、今後、裁判所は"一般視聴者が放送全体から受ける印象"という判断基準を採用して行くだろう。テレビ報道にとっては厳しい時代となる」、「人権擁護法案は仕切り直しとなったが、放送人権委員会を育てないと、また国家権力がやって来る」などの考えが表明された。
意見交換会では、放送局側から、メディアスクラム対応の申し合わせは「解除」が難しい、雑観シーンの映像で通行人や店にいて撮影された人からのクレームの増加、カメラアングルとモザイク処理の難しさといった悩みや、被害者報道、特に死者の人権をどう考えればよいのか、さらに、再現シーンの過剰演出や、取材対象者への説明不足によるトラブルなど、事例を含めて質問や問題提起が多数あった。
これに対して各委員からは、判例や法的見解、肖像権侵害の具体例等の説明やアドバイスがあり、視聴者の意識の大きな変化と放送局側の常識・認識のズレによるトラブルが増えている現状への警鐘、苦情対応のまずさなどの指摘があった。討議は所定の時間では足りないほどで、熱心な議論が続いた。


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