放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第116回

第116回–2017年6月

沖縄基地反対運動の特集を放送したTOKYO MXの『ニュース女子』について審議など

沖縄の基地反対運動の特集で、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りしている東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』について、特集を取材・制作した制作会社にTOKYO MX経由で質問項目を送りヒアリングへの協力を求めたが、その回答が文書で寄せられた。担当委員からは制作会社の回答のポイントについて報告があり、委員会がどのような検証や調査を行うべきかなど、今後の審議の進め方について議論が交わされた。
多摩川の河川敷で生活している男性に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして4月に審議入りしたTBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』について、担当委員から、5月に行われた制作担当者などへのヒアリングの報告と意見書の骨子案の説明があり、意見交換が行われた。次回の委員会で意見書の原案が提出される。
フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、宮崎駿監督の引退発言についてネット上の誤った記述を引用したとして謝罪した。当該放送局からの報告書をもとに委員会で議論した結果、「ネット情報のみでテレビ番組を作る危険性をきちんと指摘することが必要ではないか」などの意見が出され、次回委員会で討議を継続することになった。

議事の詳細

日時
2017年6月9日(金)午後5時00分~8時35分
場所
「放送倫理・番組向上機構[BPO]」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

川端委員長、是枝委員長代行、升味委員長代行、神田委員、岸本委員、斎藤委員、渋谷委員、鈴木委員、中野委員、藤田委員

1. 沖縄基地反対運動の特集を放送した東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)の『ニュース女子』を審議

TOKYO MXの『ニュース女子』は、2017年1月2日に「マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄の米軍基地反対運動を現地リポートとスタジオトークで特集して、「反対派が救急車を止めた?」「反対派の人達は何らかの組織に雇われているのか」などの話題も取り上げた。委員会は2月、情報や事実についての裏付けが十分であったのか、放送局の考査が機能していたのかなどを検証する必要があるとして審議入りを決めた。
この番組は、TOKYO MXは制作に関与していない「持ち込み番組」であるため、番組を取材・制作した制作会社からも話を聞く必要があるとして、委員会からの質問事項を文書にとりまとめヒアリングへの協力を求めていたが、5月末、制作会社から文書で回答が寄せられた。委員会では、担当委員から回答のポイントについて報告があり、さらに今後の審議の進め方について、「もう少し具体的な説明を求めるべき項目もある」「過去にも独自に調査した例があり、委員会でどんな検証ができるか検討すべきだ」などの議論が交わされた。その結果、制作会社に対して当該放送局経由でいくつかの追加質問を行うことになった。

2. ホームレス男性の特集で不適切な表現や取材手法があったTBSテレビの『白熱ライブ ビビット』を審議

TBSテレビの情報番組『白熱ライブ ビビット』は、1月31日に放送した「犬17匹飼うホームレス直撃」という企画内容に不適切な表現と取材手法があったとして、3月3日の番組内で謝罪すると同時に、番組ホームページに経緯を掲載した。委員会は4月、取材対象者に対する明らかな偏見と名誉毀損的な表現があり、ホームレスの人たちを「迷惑モノ」として扱っている姿勢も看過できないとして審議入りを決めた。
委員会では、担当委員から、5月に3日間にわたり行われた制作担当者などへのヒアリングの概要が報告され、取材の経緯や放送前の内容チェックが十分行われなかった原因などについての説明があった。その上で、取材ディレクターが男性に依頼した具体的な内容や状況、別の男性への取材の内容や流れをさらに確認する必要があるとして、当該放送局に追加質問を行うことになった。また、ヒアリングに基づいた意見書の骨子案も提出され、そのポイントについても意見交換が行われた。その結果、これらの議論をもとに担当委員が意見書の原案を作成し、次回委員会に提出することになった。

3. 宮崎駿監督の引退宣言をネットから誤引用したフジテレビ『ワイドナショー』を討議

フジテレビの情報バラエティー番組『ワイドナショー』は、5月28日、ジブリの宮崎駿監督の引退に関する発言を紹介したが、これはネット上に掲載されている誤った情報を転用したもので、「実際には宮崎氏の発言ではなかった」として6月4日の番組内と番組ホームページで謝罪した。
委員会では、当該放送局からの報告書をもとに議論が交わされたが、「今後も起こりうる事案で、ネット情報のみでテレビ番組を作る危険性の指摘が必要ではないか」「あまりにネットに頼り信じすぎている。単純だが根が深い問題だ」などの厳しい意見が相次いだ。また、当該放送局ではその後、別の情報番組でもネット情報をもとに実在しない商品の画像を紹介したことが明らかになったため、この件についても報告書の提出を求め、『ワイドナショー』については、次回委員会で討議を継続することになった。

[委員の主な意見]

  • 流布する情報に対する警戒感がまったくない。ネットに載っていればすべて正しいと思っているのではないか。
  • 情報バラエティー番組といっても裏付けが必要なことなど、かつて委員会が公表した「若き制作者への手紙」で指摘していることがすべてあてはまる。ネット情報を安易に信じ込み、それを前提に番組を収録している。
  • ネットの情報のみで番組を作るという傾向に対し、安直でよくないと注意喚起する必要がある。

以上