放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第214回

第214回 – 2014年11月

散骨場計画報道事案の審理
謝罪会見報道事案の審理
「大阪府議からの申立て」2件審理入り決定…など

「散骨場計画報道への申立て」事案の審理を行い、「委員会決定」案の検討に入った。「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理を始めた。「大阪府議からの申立て」2件を審理要請案件として検討し、いずれも審理入りを決定した。

議事の詳細

日時
2014年11月18日(火)午後4時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者

三宅委員長、奥委員長代行、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、
小山委員、曽我部委員、田中委員、林委員

1.「散骨場計画報道への申立て」事案の審理

静岡放送は2014年6月11日放送のローカルニュース番組『イブアイしずおか・ニュース』において、静岡県熱海市で民間業者が進める「散骨場」建設計画について民間業者の社長が市役所に計画の修正案を提出したうえで記者会見する模様を取材し、社長の映像を使用して放送した。この放送に対し社長が、熱海記者会との間で個人名と顔の映像は出さない条件で記者会見に応じたのに、顔出し映像が放送されたとして人権侵害・肖像権侵害を訴え、「謝罪と誠意ある対応」を求めて申し立てた事案。
この日の委員会では、双方からの書面やヒアリングの結果をもとに起草された「委員会決定」案の検討に入った。委員会の判断のポイントについて担当委員が説明し、各委員が意見を述べた。結論の方向性を確認しつつ記述等を議論したが、次回委員会で修正案を審理することになった。

2.「謝罪会見報道に対する申立て」事案の審理

審理の対象は2014年3月9日放送のTBSテレビの情報・バラエティー番組『アッコにおまかせ!』。佐村河内守氏が楽曲の代作問題で謝罪した記者会見を取り上げ、会見のVTRと出演者によるスタジオトークを生放送した。この放送に対し、佐村河内氏が「聴力に関して事実に反する放送であり、聴覚障害者を装って記者会見に臨んだかのような印象を与えた。申立人の名誉を著しく侵害するとともに同じ程度の聴覚障害を持つ人にも社会生活上深刻な悪影響を与えた」と申し立てた。
前回の委員会で審理入りが決まり、今月の委員会から審理を始めた。TBSテレビは委員会に提出した答弁書で「放送は聴覚障害者に対する誹謗や中傷を生んだ申立人の聴覚障害についての検証と論評で、申立人に聴覚障害がないと断定したものではない。放送に申立書が指摘するような誤りはなく、申立人の名誉を傷つけたものではない」と主張している。委員会では、事務局が放送内容の概要や申立人が指摘する問題点を説明し意見を交わした。

3.審理要請案件:「大阪府議からの申立て」(日本テレビ)
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となったのは、日本テレビが2014年8月11日に放送した情報番組『スッキリ!!』。番組は、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料通話アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになった問題を特集企画で取り上げ、山本府議本人のインタビューを含め、大阪府交野市の地元関係者らを取材し、それをまとめたVTRを放送するとともに、スタジオでコメンテーターが山本府議の言動についてコメントした。
この放送について山本府議は翌12日に日本テレビに対し、コメンテーターのテリー伊藤氏が「今ずっとVTR見てても、こいつキモイもん」と述べたことが人権侵害にあたると抗議し、番組内で謝罪、訂正するよう求めたが、日本テレビはこれを拒否した。
このため山本府議は同日、申立書を委員会に提出し、テリー伊藤氏の発言は「侮辱罪」にあたると訴え、改めて同氏による番組内での発言撤回と謝罪を求めた。申立書では、テリー伊藤氏のコメントにより、twitterやブログに多数の「キモイ」を含む誹謗中傷が寄せられ、精神的な負担が生じたほか、連日多数の電話が寄せられ、府議としての活動に支障が生じたと主張している。
これに対し日本テレビは11月5日に委員会に提出した「経緯と見解」書面の中で、「元々山本府議に対して『キモい』と感じたのは中学生であり、そう感じさせた一連の行為を山本府議本人も不適切だと自認している中で、今回のテリー伊藤氏のコメントが侮辱罪にあたるという山本府議の主張には正直、当惑せざるを得ない」と述べた。また「当該コメントは視聴者に対して、公職にある山本府議の行為には大変、問題があり、中学生の気持ちはよくわかるという論評をなげかけたにすぎず、報道内容の公共性、報道目的の公益性に鑑みれば当然、違法性はない」と主張。さらに、「『スッキリ!!』の放送以前にすでに山本議員の不適切な行為は、テレビ・新聞各社で広く報道されており、本番組の放送が主たる原因となって、山本府議の社会的な名誉が低下したことはない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

4.審理要請案件:「大阪府議からの申立て」(TBSラジオ)
~審理入り決定

上記申立てについて審理入りを決定した。
対象となった番組は、TBSラジオ&コミュニケーションズが2014年8月22日に放送した深夜トーク・バラエティー番組『JUNK おぎやはぎのメガネびいき』。番組では、お笑いタレント「おぎやはぎ」の矢作兼氏と小木博明氏がオープニングトークで、大阪維新の会(当時)の山本景・大阪府議会議員が無料アプリ「LINE(ライン)」で地元中学生らとトラブルになり、その経緯が多くのメディアにより伝えられる中で、テリー伊藤氏が日本テレビの情報番組『スッキリ!!』で「こいつキモイもん」と発言、それに対し山本府議が放送人権委員会に人権侵害を申立てた一連の事態について、矢作氏が小木氏に説明するという形でトークが展開された。
この放送について山本府議は9月8日、TBSラジオに対し「キモイという発言に侮辱されたと感じた」として番組内での謝罪を求めたが、同社は「社会事象についてのコメント」として、拒否した。
このため山本府議は同日、申立書を委員会に提出、その中で「思いついたことはキモイだね。完全に」、「キモイと思ったもんはキモイでいいんでしょ」等の発言は、「全人格を否定し、侮辱罪にあたる可能性が高く、精神的な苦痛を味わった」と訴えている。また、「インターネット上に『キモイ』という中傷の文言が溢れ、信用やイメージを著しく損なった」と主張している。
これに対しTBSラジオ&コミュ二ケーションズは11月10日、「経緯と見解」書面を委員会に提出、この中で「今回の放送は、大阪府議という公人である山本議員の行為及び、それに付随した一連の社会事象へのコメントが主眼であり、小木氏の『キモイ』という発言は、あくまで山本議員の不適切な行為に向けられている。同議員の人格に向けられたものではないし、ましてや全人格を否定する個人攻撃ではまったくありえない」として、侮辱罪にはあたらないと主張している。
同社はさらに、「公人の名誉権が過度に強調されることは、民主主義の基盤を揺るがすことにもつながりかねないという視点からも、今回の放送について謝罪放送やその他の方法による謝罪を行うことはできない」と述べている。
委員会は、委員会運営規則第5条(苦情の取り扱い基準)に照らし、本件申立ては審理要件を満たしていると判断し、審理入りすることを決めた。
次回委員会より実質審理に入る。

5.その他

  • 委員会が今年度予定している系列単位の意見交換会を、2015年2月24日に、高松で開催することを決めた。対象は日本テレビ系列の在四国4局。

  • 次回委員会は12月16日に開かれる。

以上