放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会

2014年1月23日

NNN(日本テレビ系)中部ブロック各局との意見交換会を開催

日本テレビ系の中部ブロック(北陸・甲信越・東海エリア)8局と放送倫理検証委員会の委員との意見交換会が、1月23日に名古屋市の中京テレビ会議室で開催された。系列局を対象とした意見交換会は、前年度に続いて2回目である。
放送局側からは8局の報道部長など18人、委員会側からは小町谷育子委員長代行と斎藤貴男委員が出席した。

意見交換会では、まず斎藤委員と小町谷代行が委員会での議論などを通じて、日頃感じていることを述べた。
斎藤委員は「委員会で議論をすればするほど、放送は奥が深いと感じている。おかしな番組は、もっとチェックすべきだと思う一方、管理強化になって、記者や制作者たちの裁量をせばめる結果になってしまっていいのかという迷いもある。昔のように、ある意味何をやってもいいというのではなく、報道の自由を本気で守るためには、BPOも含めて自浄作用を発揮していくことが必要だと考えている」などと語った。
また小町谷代行は、検証委員会の発足当初から約7年間の活動を振り返って、「1期目の3年間は大きい事案が多くて『光市母子殺害事件の差戻控訴審』や『バラエティー番組』への意見書などがまとまった。2期目の3年間は、打って変わって比較的軽めの事案になったが、いろいろな問題点が表に出てきた。昨年からの3期目で特徴的なのは、以前の審議事案にそっくりな事案が出てきたことだ。繰り返し起きている問題を委員会としてどうとらえるかについて、議論を重ねている」と語った。
質疑応答では、「バラエティー番組は、モザイクをかけすぎているように思うが、ニュース現場でも、首から下のインタビュー映像が当たり前になりつつあることに悩んでいる」との質問に対し、小町谷代行は「最近、そういう映像が増えていることは気になっている。原則的には顔出しをまず交渉してほしい。そのうえで、個々の取材によって考えていくしかないのではないか」と述べた。また斎藤委員は「モザイクをかけた映像や、首から下だけの映像を使う必要がない場合も実は多いのではないか。本当に使う必然性のある映像なら、いろいろな工夫をして放送することは素晴らしいと思う」などと語った。
また「意見書では、組織上の問題やコミュニケーション不足の問題が、背景にある要因としてよく指摘されるが、実際のヒアリングで実感されているのか」との質問に対して、委員側からは「ヒアリングの中で具体的な状況を確認しながら、確信を得て書くようにしている」「委員会としては、原因や背景を掘り下げることによって、当該局だけでなく、他の放送局にも参考になる意見書にしたいと考えている」などの説明があった。
このほか、ネット上の画像などのニュースでの取り扱い方や、公表されたばかりの参院選関連2番組への意見書(委員会決定第17号)に関する質問などが、報道現場での日々の悩みとともに語られた。これに対して両委員からは、過去の具体的な事案の紹介だけでなく、法律家やジャーナリストとしての個人的な見解を交えた意見やアドバイスも披露された。
3時間にわたる意見交換を終えた参加者の間からは、「同じ系列局ということで、気兼ねなく本音に近い意見交換ができたと思う」という声が数多く聞かれた。

今回の参加者の感想の一部を以下に紹介したい。

  • 意見交換会では、BPOの意義や考え方、また番組へのご意見を聞かせていただけて、大変貴重な機会となりました。放送する側の私達がしっかりした考えや判断を持ち、それを制作の現場まで浸透させなければいけないという原点をあらためて確認いたしました。放送倫理を守りながら、かつ取材、報道、表現の自由を守るという重たい課題に、日々頭を悩ませていこうと思います。

  • 視聴者からの意見が、以前に増して直接届くようになり、批判を受けやすくなったテレビ報道の現場は、深く考えることなく安全な道を選びがちです。私たち自身が、視聴者のテレビを見る目をしっかり受け止めた上で、地に足をつけた対応が求められているのでしょう。テレビニュースの画面がモザイクだらけにならないよう、議論を深めていくことが大事だなと深く感じた意見交換会でした。

  • 委員2人のスピーチを興味深く聞かせていただきました。
    就任されて日が浅い斎藤委員は、番組づくりの現場に触れた率直な感想を述べられていました。「言論の自由を守ることは口で言うほど簡単ではない」という言葉が印象に残りました。
    発足当初から委員を務められている小町谷代行は、3期目は「デジャヴ」のような事件が相次いだと話されていました。これはBPOがまとめた意見を業界全体として教訓にできていないという意味で、重い指摘だと思います。

  • BPO委員のおふたりが我々テレビ局側の質問に対し、とても率直に、忌憚無くお答えいただいたのが印象的でした。我々からの質問には「こうした事案ではBPOの判断の基準はどうなのか」といった、BPOがルールを決めているかのような類のものも、いくつかありましたが、「それは放送局の責任で決めるしかない」と、ある意味当たり前の答えをいただいたのは、とても「目からうろこ」でした。この意見交換会を通じて、率直にテレビ局への愛ある叱咤激励、エールをいただき、非常に委員を身近に感じられ、BPOを頼もしくさえ思えました。

以上