放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会  決定の通知と公表の記者会見

2014年4月1日

フジテレビ『ほこ×たて』「ラジコンカー対決」に関する意見の通知・公表

上記の委員会決定の通知は、4月1日午後2時30分から、千代田放送会館7階のBPO第一会議室で行われた。委員会から川端和治委員長、水島久光委員長代行、香山リカ委員、森まゆみ委員の4人が出席し、当該局のフジテレビからは常務取締役編成制作局長ら4人が出席した。
まず川端委員長が「高く評価されていた番組だけに残念だった。編集で張り合わせて『ない対決を、ある』ことにしなければ、すぐれた番組として生き残れたのではないか」と述べたあと、「問題の直接のきっかけはひとりのディレクターの誤った判断だったかもしれないが、それを許した体制があったことを深く心にとどめてほしい」と指摘した。
これに対してフジテレビからは「意見書に書かれたことを深く受け止める。この番組の視聴者との約束は『真剣勝負』であったので、それを破ったのだから番組の打ち切りを決断した。今後は、社長直轄の再発防止委員会の場で、あらゆるジャンルの番組について視聴者との約束をチェックしていく」と述べた。
このあと、午後3時30分から千代田放送会館2階ホールで記者会見を開き、決定内容を公表した。記者会見には25社50人が出席し、テレビカメラ6台が入った。
初めに川端委員長が意見書の概要を紹介した。重大な放送倫理違反とした委員会の判断について、川端委員長は「ない対決を、ある」としたことや制作体制の組織的な問題などを指摘したうえで、「制作スタッフの間や、制作スタッフと出演者の間に、番組の基本コンセプトの合意がなかったと思われるのが問題だ」と述べた。
水島委員長代行は「出演者や視聴者との微妙なバランスが崩れて、番組への信頼が一気に失われてしまったことを、制作スタッフの皆さんは理解してほしい」と述べた。香山委員は「視聴者が事実を知った時のショックを原点として、この事案を考えた。裏切られた、楽しみにしていたのに、という視聴者の思いを、この意見書につなげた」と述べた。また、森委員は「家族が好きで見ていた番組だった。編集技術によっていまや何でもできてしまうようだが、制作者は誘惑に負けず、愚直に番組を作り続けてほしい」と述べた。

記者とのおもな質疑応答は以下のとおりである。

  • Q:なかった対決を編集で作ったこの放送は、「審議」ではなく「審理」事案とするのがふさわしいのではないか?
    A:「審理」は、虚偽の疑いのある放送によって視聴者に著しく誤解を与えたことが前提となるが、バラエティー番組は虚構を承知のうえで楽しむものであり、報道番組のように事実と違うから直ちに虚偽放送と言うことは適当ではない。ラジコン側とスナイパー側の対決であるという全体の構造は崩れていない。(川端委員長)
    Q:審議の対象となった「スナイパー」「鷹」「猿」以外にも、フジテレビは問題のある演出があったと、明らかにしていたはずだが?
    A:フジテレビが報告してきた他の放送回もチェックしたが、委員会として見逃すことができないような大きな問題があるとは思われなかった。(川端委員長)
    Q:そもそもこのディレクターの動機は何だったと、委員会は考えているのか?
    A:出演者を大事にする気持ちから、全員を出演させたいとディレクターが考えていたことと、すでにボート部分の収録を終えて、すべてを撮り直す日程的な余裕がなかったことではないかと思う。(水島委員長代行)
    ボートが3連勝しラジコン側が勝利した、という当初の結末を変えてはならないとディレクターが判断していたこともあると思う。(香山委員)