放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第43回

第43回 – 2010年11月

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』…など

第43回放送倫理検証委員会は11月12日に開催された。今夏に行われた参議院選挙関連の放送で、公平・公正性に疑念が持たれた報道番組および情報番組の合計4番組について3回目の審議を行った。その結果、担当委員が作成した決定文案について委員会の合意が得られたので、12月上旬に当該4局に対して通知した上で記者発表する運びとなった。 付録にバックをつけることで売り上げが伸びている女性誌関連のインタビュー取材で、視聴者から不自然な映像が指摘され、やらせの疑惑が持たれたフジテレビの『Mr.サンデー』について討議した。過去にも他局で同様の事案があり、議論はそれとの関連にも及んだが、当該局から新たに提出される報告書を待って、改めて討議することにした。 10月22日に開催された「在阪局・BPO検証委 意見交換会」(詳細は90号参照)について、意見交換会に参加した在阪各局から意見や感想が寄せられたので事務局から報告した。 事務局からは、11月10日に行われた総務省のフォーラムはまとめの段階に入り、今まで出された意見を集約したうえで座長の見解を添えて総務大臣に提出される見通しであることを報告した。

議事の詳細

日時
2010年11月12日(金) 午後5時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、小町谷代行、吉岡代行、石井委員、重松委員 立花委員、服部委員、水島委員

参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念が持たれた4つの番組

7月11日に行われた参議院選挙に関連して、放送の公平・公正性に疑念が持たれた報道2番組(長野朝日放送、信越放送)と情報バラエティー2番組(TBS、BSジャパン)の事案について、前回の審議をふまえて、担当委員から決定文の修正案が提出された。
この4番組には、参議院比例代表選挙の趣旨を正しく理解せずに制作したと思われるものから、単純な過失と見られるものまで、放送の公平・公正性に関する疑念の程度には差があるが、民主主義の根幹を成す選挙に関わる放送であるのに、公平・公正性を損なわないよう制作するという根本的倫理が十分に尊重されていないという点では、共通の問題があることから4番組を一括した形で委員会決定とすることが、今回の審議で改めて確認された。
一方、TBSのバラエティー番組『アッコにおまかせ』(6月6日放送)の中でも、参議院選挙をめぐって放送の公平・公正性に疑念がもたれる内容があったことが審議の過程で明らかになり、決定文で指摘することになった。
当該4局に対する委員会決定の通知と公表の記者会見は、12月上旬に行うことにした。

やらせ取材の疑惑が指摘されたフジテレビの『Mr.サンデー』

付録にデザイナーズバッグを付けることで販売部数を伸ばしている女性誌に関して、フジテレビの情報番組『Mr.サンデー』が、インタビュー取材を2回にわたって放送(8月8日、9月26日)したところ、視聴者から「場所が異なる2ヶ所の取材現場に同じ女性が映っている」などとやらせ疑惑が指摘された。当該局が調査した結果、制作スタッフが複数の女性を事前に仕込んで撮影したことがわかったので、お詫び放送(10月17日)をするとともに、委員会に対し詳細な報告書を提出した。
これと同様の取材方法が、去年・今年と名古屋のテレビ局において採られており、委員会はBPO報告に記載して注意を喚起した。にもかかわらず、同様の事案が起きたことに委員会は危惧を抱き、過去の事例を踏まえて討議した。

【委員の主な意見】

  • 問題は髪型を変えて2度も出てくる女性で、仕込み過剰だ。特定の女性をそうまでして出すのは、普通ではない。「やらせ」と同じことだ。
  • こういう取材では、あるがままに表現すれば良いと思う。そうではない取材方法に走ってしまう理由が分からない。
  • 日本のメディアは「やらせ」にアレルギー反応があって、すごく潔癖になっている。それは虚偽放送の抑止力になっているが、この事例は「やらせ」と言われるのを回避するために、無理やり通行人に聞いてみたという形式にしてしまったのではないか。
  • バッグを持った通行人を15人も見つけたなら、そのほかに事前調査で判明した愛好者を3人連れてきて、意見を聞きましたと正直なストーリーにすればよい。なぜ通行人18人にこだわったのか。
  • 最近、雑誌にバッグや景品をつけるというのは凄まじい現象になっている。その現象自体について虚偽を言ったわけではない。
  • こういった取材方法が、このまま広がっていったらまずい事になるというのはわかる。しかし、過去にあった捏造事案と比較すると、手法選択の間違い、数の水増し、連絡体制の問題はあるにしても、この事例は軽いと思う。
  • 演出はある程度、番組に必要だと思う。どこまで許されるかと いう程度問題ではないか。
  • 街頭でインタビューして意図しない答えが返ってくることが、実は、取材者を鍛えてゆく。しかし今回のように、コメントや映像を仕込んで済まそうとすることが、取材、制作の弱さになって行き、非常に大きな不祥事を起こす土壌になる。
  • 当該局は、問題点の検証と再発防止に向けたプロジェクトチームを立ち上げ、報告書をまとめることにしている。委員会ではそれを受けてさらに議論を重ねることした。

在阪局と検証委員会との意見交換会の開催

10月22日に大阪の読売テレビで開催した「在阪局・BPO検証委意見交換会」に関して、在阪各局の出席者から事務局へ意見や感想が寄せられたので委員会に報告した。これらの意見を参考にして、次回以降開催する地方における意見交換会の材料にする予定である。

以上