放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第35回

第35回 – 2010年2月

「バラエティー番組」のブックレット刊行について

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』 …など

「バラエティー番組」のブックレット刊行について

バラエティー番組のあり方を議論する際の資料として、委員会は昨年11月に発表した「委員会意見」を収録したブックレットを近く刊行するが、このブックレットに収録するそのほかの内容について意見を交換した。「委員会意見」についての新聞記事や「委員会意見」を受けた各局の取り組み方などを収録することとし、さらに担当委員が原案をまとめて次の委員会で報告することにした。

偽札詐欺報道で違法な取材があったTBSの『報道特集NEXT』と『イブニングワイド』

昨年、TBSの『報道特集NEXT』(12月5日)と『イブニングワイド』(12月8日)で、ブラックノートに特殊な薬品をかけると1万円札に戻ると称して薬品代をだまし取るという詐欺事件が放送された。当該局から、この事案の調査報告書が提出されたので、2回目の審議を行った。
まず、配達された郵便物をポストから抜き取って開封するという取材方法が違法なことは議論するまでもないこと、他人の車に勝手にGPSを取り付ける行為も、取材倫理上、妥当とは言い難いことが確認された。
更に、この事案が抱えている重要な要素として、主として制作会社が企画・制作したものを局が採用して放送した番組であることから、当該放送局が定めた「報道倫理ガイドライン」を制作会社といかに共有して運用すべきかという問題がある。今回のように、テレビ局が制作会社の持ち込み企画を局の番組として放送する以上、局側が制作開始時点から責任を持てるように関与することの重要性が議論された。他方、制作会社が企画・制作した番組であることが、視聴者に分かるよう番組クレジットの表記方法を見直すことも、ひとつの方法ではないかという指摘もあった。いずれにしても、放送責任を負う放送局にとって重大な問題であり、真しに検討しないと今後も同様の問題が繰り返されるとの懸念が示された。
次回までに、担当委員が委員会の「意見」をまとめることにした。

【委員の主な意見】

  • テレビ局と制作会社との関係で再発防止を考える場合、テレビ局が制作会社を一方的に締め付ける方向だとしたら問題だ。テレビ局が制作会社に対して威圧的でない、ゆとりある番組制作環境をめざすべきだ。
  • テレビ局が制作会社をどのようにコントロールできるかというのが、今後に影響する問題だ。コントロールできないということになると、テレビ局は制作会社が作った番組を、その局の番組として放送できるのかということになる。
  • テレビ局が納入された番組をするときに、具体的なシーンに疑問を持てるのかどうかだ。疑問を持てなければスルーするしかなく、当該局に過失はない。にもかかわらず、当該局が全責任を負わなければいけないというあり方はおかしい。
  • 制作会社が完パケで持ち込んできたものを、自局の番組として放送するかぎり、放送局として責任が取れなければおかしい。視聴者はその局が作ったものだと見てしまう。
  • テレビ局の名前で番組を放送する以上、制作会社に委託した段階で外形的にはテレビ局が作っていることになる。だから制作会社とのやりとりは、テレビ局内部の問題だ。体制だけを議論しても意昧がない。
  • テレビ局が今置かれている状況を如実に反映している事案だと思う。当委員会が絡んだ途端、局が制作会社に対して制裁を行う、それが今後のパターンになるとしたら、それは全く委員会の本意ではない。
  • 違法な取材が許されないのは当然のことだ。しかし、制作会社への丸投げ状態になっていることが問題を引き起こしていると、局側は自覚すべきだ。

やらせインタビューがあったCBCの『なるほどプレゼンター!花咲かタイムズ』

CBCの生情報ワイド番組『なるほどプレゼンター!花咲かタイムズ』(1月23日放送)で、ファッション関連のフリーマガジンを紹介する際、その編集に関わっている女性3人に、一般の人のように装って街頭インタビューしたことが、視聴者の指摘で発覚した事案。制作現場の安易さや、機能が働かなかったことなど、番組を制作する姿勢に対して厳しい意見が出された。しかし、当該局は視聴者へのお詫び放送など迅速に対応し、社内に調査委員会を設けて自主的に再発防止策を講じる努力を開始しているので、委員会としては取り上げないことにした。

【委員の主な意見】

  • なぜあえて「街の声」という演出方法をとったのか。単純に雑誌の編集に協力している若い女性たちへのインタビューとして紹介すれば良いではないか。街頭インタビューの意昧や必要性について、真剣な議論をしているのだろうか。
  • この手法を使えば、実際にはありもしないことでも制作者側が情報を意図的に操作できるし、ねつ造もできる。これこそが問題で、その結果、いいかげんな内容の情報番組があふれ、テレビの信用を失墜させることにつながる。
  • 安直すぎる。制作者が、テレビをなめ、視聴者をなめているとしか思えない。不快感が先にたつ。
  • この企画全体として、非常にいやな印象を受けた。取材に応じる側は、テレビはコマーシャルに使うもの、うまく利用するものと思い、制作側はそれを気にも留めていないような作りになっている。これは、情報番組なのか、広告なのか。
  • サクラを仕込めば、制作者が意図するコメントが得られるだろうし、効率的な取材ができるのは当たり前だ。制作者としてそれをしてはいけないという社内教育や指導はどうなっているのか。
  • 取材スタッフとして同行した先輩の社員たちは、彼女たちが関係者と知りながら、若いディレクターに注意さえしていない。編集段階でも何の助言もしていない。スタッフ間の相互が、機能していないのではないか。
  • 去年、同じエリアの他局の番組で、よく似た事案があったばかりなのに、その教訓や反省は生かされなかった。プロデューサーらの体制も十分とは言えず、今回は厳しい対応をすべきだ。
  • この放送によって、誰かが甚大な被害をこうむったわけではない。そこまで目くじらを立てる必要はないのではないか。

連絡事項

今年のBPO年次報告会は3月25日に開催され、川端委員長がこの1年の活動報告を行うことが報告された。また、任期満了に伴い交代する委員と新委員の紹介があった。

以上