放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第11回

第11回 – 2008年3月

光市事件を巡る裁判報道について

事件報道・裁判報道シンポジウム …など

光市事件を巡る裁判報道について

東京キー局全てと大阪・広島の局を合わせて8局へ質問状を送り、その回答をもとに、小委員会が選んだ情報番組を対象に在京民放4局からヒアリングを行ったことが報告された。これを受けて刑事裁判の理解やコメント、演出など、いくつかの番組制作上の問題点が提起され、議論がおこなわれた。

  • ヒアリングの印象では、制作者の裁判に対する理解が十分できているとは必ずしも言えない。制作者の頭にあるのは、”大いなる凡庸”というのか世間的常識に止まり、「なぜそうなるのか」の検証がされていないのではないか。
  • いま司法改革が進む中、”大いなる凡庸”に近づけようとするのは当然。一般の目線に立ってでしか作りえない。よって明らかなルール違反の個所を指摘してはどうか。
  • 個別的に見た場合、疑問点が各番組ともたくさんあり、限りがない。
  • 民放連放送基準では、これはいけない、留意する、避けなければならない、と守らねばならない度合いがいろいろある。度合いのきつい「これだけはしてはいけない」という点で指摘したほうが良いのではないか。
  • いま問題になっているのは、放送基準34条の「取材・編集にあたっては一方に偏るなど、誤解を与えないよう注意する」ということと32条のニュースは市民の知る権利に奉仕するものであり、公正でなければならないという条項だ。このあたりをどこまで言うのか。
  • 8局からのアンケートを見ると、納得できる回答もある。番組で勝手な意見が述べられるのは仕方ないが、バランスをとらなければならない。
  • 遺族の感情を傷付けているという番組内での批判の仕方はフェアでないのではないか。弁護団も記者会見でなぜなのかの説明はしている。
  • 裁判を扱う時は公正でなければならないとか視聴者に誤解を与えないようにするというのを、どのように織り込んでいくのかが問題になる。「これはこの基準から外れている」という指摘がないと委員会が意見を言う根拠がなくなるということは押さえておくべき。

以上の議論を踏まえ、小委員会で「意見(案)」を詰めることになり、4月1日に臨時委員会を開催して、最終的結論をまとめることとなった。

事件報道・裁判報道シンポジウム

前回委員会で東京大学大学院情報学環との共催が確認されたことを受けて、東大との交渉経過が報告された。そして、5月30日(金)に東京大学にある情報学環・福武ホールで開催することで了承された。

なお、シンポジウムの進め方、パネリストなどの人選、役割分担などについては、引き続き東大側と密に協議し、開催に向けて準備を急ぐこととなった。

番組審議会へ審議要請した2番組の対応について

1.香川・坂出市の事件に関し、加害者の子供(成人)が被害者の家を訪れ、謝罪するシーンを密着取材し放送した番組

当該局からは、「指摘されているテーマや内容に鑑み、局内に設置されている第三者機関「『放送と人権』特別委員会」において審議するほうが適切という判断をしたこと、2月25日に急遽、開催された上記特別委での審議結果を委員会宛に報告するとともに、審議結果を翌週の当該局番組審議会に報告した後、自らホームページ等で公表するとの報告が届いた。

2.憧れの女子アナに握手させると騙して、目隠しをした男性タレントに、全裸になったお笑いタレントの性器を触らせる番組

当該局からは、番組審議会委員長が視聴し「下劣な内容で、審議会にかけるまでもなく、各委員も同様意見と考えられる」として局に自戒を促したことを受けて、制作者にその意を徹底した旨の報告書が提出された。

委員会としては、当該局が自主・自律の原則に則り、それぞれ対応したことを了とした。

報告事項

1.「健康番組の表現方法について」

鮫肝油を飲んだ3分後に、血液がサラサラになるという健康番組で、その科学的根拠に視聴者から疑問が呈された。放送当該局と番組素材を持ち込んだ代理店との間で収録当時の事実関係などの検討がなされた。その結果、当該局は番組の中止と、一度考査を通過した番組素材についても社会情勢などを配慮し必要な場合は再考査を実施することとなった。

2.「青潮映像の誤挿入」

千葉市の港で発生した青潮の実態を紹介する番組の中で、一部異なった場所、時期の資料映像を挿入したもの。放送後、当該局が気付き、後日の同番組内およびホームページでお詫びした。

3.「道路財源問題報道について」

道路財源問題を扱った番組について、自民党より虚偽及び放送倫理上問題があると検証要請があった。討議の結果、指摘された問題のうち明らかに間違って放送された点は放送直後にお詫びと訂正がなされている。その他はデータの理解の仕方およびバランスの捉え方により見方が異なるが、この番組に委員会で取り上げて是正を求めなければならないほどの放送倫理違反があるとまではいえない。以上のことから、委員会では審議・審理しないこととした。

視聴者意見の概要

2月初旬から3月初旬にかけてBPOに寄せられた視聴者意見のうち、いくつかの番組が報告された。

  • 観光地で多数の猿が山から下りてきてホテルや車に入り込み、食べ物を持ち去るという話題を放送した番組。番組スタッフが餌付けをしてサルを呼び寄せ撮影したというホテルのブログが発端になり、事実とすれば「悪質なやらせだ」との意見が多数寄せられた。当該局はこれを否定、その後ホテル側が謝罪してブログも削除。
  • 「ロス疑惑」事件で逮捕された三浦和義元社長の米国人弁護士について「イケメン弁護士」というテロップ表示したニュース番組。  なぜバラエティー番組的な手法を使うのか、報道番組としての自覚が欠如しているとの視聴者からの批判。

以上