放送倫理検証委員会

放送倫理検証委員会 議事概要

第19回

第19回 – 2008年11月

事実誤認があり訂正放送したニュースバラエティ番組

戦時性暴力を扱ったノンフィクション番組 …など

第19回放送倫理検証委員会は11月14日に開催された。ニュースバラエティ番組において、「保育園が畑として使用している土地が行政代執行された放送内容には事実誤認があり訂正・謝罪をした」と新聞に報道された事案を討議した。その結果、当該局に質問書を出し、回答をもとに再度検討することにした。次に7年前に放送された戦時性暴力を扱ったノンフィクション番組について、3回目の討議が行われたが、結論は次回以降に持ち越された。事務局からは、BPOの理事新任の報告があった。

議事の詳細

日時
2008(平成20) 年11月14日(金) 午後5時~8時
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
川端委員長、上滝委員長代行、小町谷委員長代行、石井委員、市川委員、里中委員、立花委員、服部委員、水島委員、吉岡委員

事実誤認があり訂正放送したニュースバラエティ番組

保育園が園児用のイモ畑として使用している土地に対して、道路建設用地として買収に応じなかったので、強制収用の行政代執行が行われた。そのことを伝えた番組で、事実誤認があり、放送局側も訂正・謝罪したと新聞に報道されたので映像を見た上で討議した。
主な映像の内容と問題点は次の通り。
そのイモ畑に対して行政代執行が開始されると、保育園側の人たちが身を挺して阻止し揉み合いとなるが、そこに10数名の園児たちがいるかのような編集になっている。しかし、園児たちの映像は執行前日に撮影されたものであった。そのVTRを見たスタジオのコメンテーターも執行の当日に園児たちがいたと理解して、園児を盾にすべきではないという趣旨のコメントをしている。
加えて、番組の冒頭でリポーターが高速道路を背景にして「高速道路建設をめぐって騒動が起こった」と紹介しているが、そのロケ現場は当該保育園があるのとはまったく違う都道府県であった。更に、コメンテーターが法律的手続きを説明しているが、番組は収用裁決取消訴訟について2週間後に大阪高裁の判決が予定されていることを前提としており、手続きの誤解ないし混同があると思われる。
後日、訂正放送が行われたが理解しにくい内容であった。

<主な委員の意見>

  • 高速道路の雰囲気を出すために別の場所で撮影したという理屈は報道では通用しない。映像自体がひとつの説明なのだから。
  • この番組はスタート段階ではこういうネタをやらなかった。全体的にパロディ番組だった(当該番組は局のホームページでは「バラエティ」に分類されている)。
  • 仮に制作側がパロディ番組だからといっても、この作りでは視聴者はニュースだと信じてしまう。
  • バラエティ番組を理由に片付けるべきではない。バラエティだってしっかりと下調べして作ったモノもある。番組で、ある真実を伝えるときにはやはり慎重を期すべきだ。番組としておかしい。
  • 園児たちが並んでいる映像はストーリー的には捏造ではないか。
  • 訂正放送で「園児たちを現場に連れて行き並ばされたかのような表現がありましたが、そのような事実はありませんでした」とあるが、これでは説明にも訂正にもなっていない。
  • コメンテーターによる法律的手続きの説明も不可思議。執行停止を申し立てていれば直ぐに判断が下るが、その場合は「判決」ではなく「決定」だ。本訴とごっちゃにしている。
  • 訂正放送では本訴の話ししかしていない。よく調べないで慌てて訂正したのではないか。

討議の結果、ニュースを扱った番組としては正確さに欠け、視聴者に誤解を与えるので、当該局に対していくつかの点について質問書を出し、回答を得た上で再度討議することにした。

戦時性暴力を扱ったノンフィクション番組

戦争と裁判をメインテーマに戦時下における性暴力を扱った7年前に放送されたノンフィクション番組。制作過程において政治的な圧力により内容が不当に改変されたと関係者が主張している事案。
委員会として取上げるかどうかについて、複数の委員から論点を整理した資料が提出され、それをもとにさまざまな角度からの議論が行われた。関係資料を精査した上で、どういうことが言えるのか、言うべきなのかについて意見が出された。各委員の意見にはまだ幅があり、抽象論で議論しても決められないので原案になるようなものを作成し、方向性を見極めたうえで結論が得られるよう、更に継続して討議することになった。

その他

事務局からは、BPOの理事が新しく放送界以外から3人選任されたことの報告があった。

以上