放送人権委員会

放送人権委員会 議事概要

第186回

第186回 – 2012年8月

ストローアート事案和解解決
イレッサ報道事案の審理
審理要請案件:「国家試験の元試験委員からの申立て」事案~審理入り決定…など

「ストローアート作家からの申立て」事案は、委員会の仲介斡旋で和解合意に至り、解決したことが委員長から報告された。先月審理入りした「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案、「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の実質審理が、それぞれ始まった。審理要請案件について審議し、審理入りが決まった。

議事の詳細

日時
2012年8月21日(火) 午後4時~7時30分
場所
「放送倫理・番組向上機構 [BPO] 」第1会議室(千代田放送会館7階)
議題
出席者
三宅委員長、坂井委員長代行、市川委員、大石委員、小山委員、田中委員、林委員、山田委員

「ストローアート作家からの申立て」事案、和解合意により解決を報告

本事案については、先月の委員会におけるヒアリング後、委員会が申立人と被申立人であるフジテレビに対し、和解合意に向けての仲介斡旋作業を進めてきた。その結果、最終的に双方の間で合意に至り、8月21日午後、委員会開催に先立って和解合意書が取り交わされ、解決した。
委員会では、三宅委員長が作業経緯を報告するとともに、今回の和解について委員会の考えを示した「委員会コメント」を付し、ホームページ等において公表することを決めた(詳しくは仲介・斡旋解決事案の項をご参照ください)。

「肺がん治療薬イレッサ報道への申立て」事案の審理

前回委員会で審理入りが決定した後、被申立人から「答弁書」の提出を受け、実質的な審理に入った。
本事案は、フジテレビ『ニュースJAPAN』が昨年10月5日と6日の2回にわたって放送した企画「イレッサの真実」に対し、長期取材を受けて番組にも登場した男性が「放送はイレッサの危険性を過小評価し有効性を過剰に強調する偏頗な内容で、客観性、正確性、公正さに欠け、放送倫理に抵触している。こうした放送や、申立人の主義主張とは反する発言の使われ方、取材休憩中の撮影とその映像の放送などによって名誉とプライバシーを侵害された」として、謝罪と放送内容の訂正を求め申し立てたもの。
これに対しフジテレビは、答弁書において「本番組は肺がん治療に関し、様々な立場から多様な意見があることを新薬イレッサを例に報道したもので、客観性、正確性、公正さに欠けるところはなく、放送倫理に抵触する部分はない。申立人に対する名誉、プライバシーの侵害もない。従って、謝罪や放送内容の訂正は受け入れられない」と主張し、全面的に反論している。
この日の委員会ではまず、本件放送が客観性・正確性・公正さに欠けているとする申立人主張の根拠のひとつにもなっているイレッサ訴訟東京地裁判決の判決内容について、起草担当の委員がレジュメをもとに説明した。続いて事務局が双方の主張を整理した後、各委員が意見を述べた。次回審理に向け、申立人の「反論書」と、被申立人の「再答弁書」において、より詳しく説明を求めたいこと等についても話し合った。
次回は「反論書」と「再答弁書」の提出を受け、さらに審理を重ねることにしている。

「無許可スナック摘発報道への申立て」事案の審理

上記事案の実質審理が始まった。
審理しているのは、テレビ神奈川が本年4月11日夜放送した『tvkNEWS930』で、番組では、神奈川県警が無許可営業のスナックを風営法違反容疑で摘発する現場を取材し、1分強のニュースとして放送した。この報道に対し、スナックの女性経営者と家族から「略式命令の軽微な罰金刑にもかかわらず、映像では顔のアップ、実名と年齢、店と自宅の住所まで放送したのはプライバシーをあまりにも公開し過ぎ」など人権侵害を訴える申立書が提出された。申立人は、放送から1カ月以上もの間、ネット上でこのニュースの動画が再生できる環境にあったとし、この点でもプライバシーや名誉毀損になると主張している。
これに対しテレビ神奈川は答弁書で、「通常の実名報道原則に基づき放送した」としたうえ、「報道される側の基本的人権についても十分慎重に検討した。無届け営業を現場で否定しなかったため、当人の顔のボカシは入れずに放送した」と主張している。
この日の委員会では、報道内容にプライバシーの侵害等の人権侵害はあったか、カメラ取材は適切に行われたか、報道の仕方・取り上げ方に行き過ぎはなかったか、インターネット展開における放送局の管理体制は十分だったか、等をめぐって意見を交わした。
次回、9月の委員会では申立人とテレビ神奈川の双方にヒアリングを行い、そのうえでさらに議論を深めることになった。

審理要請案件:「国家試験の元試験委員からの申立て」事案~審理入り決定

国家試験の元試験委員からの申立てについて審理入りが決定した。
対象となった番組はTBSテレビの『報道特集』。本年2月25日に「国家資格の試験めぐり不平等が?疑念招いた1冊の書籍」と題した特集を放送、大学教授で社会福祉士試験委員会副委員長を務めていた申立人が、その著書で社会福祉士資格試験の過去問題を解説し、大学の授業でこれをテキストとして用い、期末試験でも社会福祉士の試験問題と同じ形式で出題していたこと、厚生労働省の調査を受け申立人が試験委員を辞任したこと等を報道した。
申立人はこの報道に対し、申立書において「本件番組は申立人がいかにも国家試験の試験問題を漏洩したかのように報道する等、申立人が試験委員としての職責に背く行為をしたかのように視聴者に印象付け、その名誉と信用を著しく毀損した」としており、TBSに謝罪と放送の訂正等を求めている。
これに対しTBSは、「本放送の主旨は、申立人に国家試験の試験委員としてふさわしくない行為があり、社会福祉士試験の公平性・公正性に疑念を招いたのではないかと問いかけたものである。申立人に問題漏洩等があったとはいささかも言及していない」と局の見解において反論している。
委員会は、委員会運営規則第5条の規定に照らし、本件申立ては要件を充たしているとして審理に入ることを決めた。
次回委員会以降、実質審理に入る。

7月の苦情概要

  • 審理・斡旋に関する苦情・相談・・・・・4件
    (個人又は直接の関係人からの要請)
  • 人権一般の苦情や批判・・・・・・・・・・・20件
    (人権問題、報道被害、差別的表現など一般視聴者からの苦情や批判)

その他

  • 事案数の増加に伴い、審理を迅速かつ的確に行うため、10月9日(火)に臨時で委員会を開催することになった。
  • 次回委員会は9月18日(火)に開かれることになった。

以上