放送人権委員会

放送人権委員会

2008年度 解決事案

「離婚した妻の一方的主張を再現したバラエティー番組」に元夫が苦情

中国地方に住む男性から「全国ネットのバラエティー番組で、元妻の一方的な証言に基づいて、私の浮気が離婚の原因と決め付けた過去が紹介され、その場面の再現放送までされた」として、在京の民放局に訂正放送などを求める訴えが、放送人権委員会に寄せられた。
当委員会で、当該局に事実関係の確認と、男性との話合いを勧めたところ、数回の交渉で和解が成立し、5月の同番組(全国ネット)の最後でお詫び放送がなされ、また3日後には男性が住む県域のローカル局(全国ネット外)でも特別編成で同番組の放送が行われた。
当該局では、本件苦情の訴えを重視し、弁護士を交えて番組スタッフから調査を行い、離婚の原因についての説明が一方的だったことを確認し、再現VTRの使用は、男性の名誉を傷つけた恐れが多分にあることなどを認め、お詫び放送に踏み切ったもの。
なお、当該局では、上記の調査、お詫びの経緯等について、当委員会に報告書を提出し、その中で、今後の対応および再発防止策として、この放送内容について社内のさまざまなレベルで、研修、勉強会などを開き、反省の共有化、意識啓発を進めることになったとしている。

(2008年4月放送 6月解決)

アブラボウズを高級魚クエとして販売した疑惑追跡報道

在阪のテレビ局が、2007年暮のニュース番組内で、新たな食品疑惑として、高級魚クエと偽ってアブラボウズが販売されているという疑惑を追跡し、検証する企画報道を行った。
流通ルートから”偽クエ”の卸並びに小売をしている会社が突き止められ、社長(匿名)の取材に対する対応ぶりなどが放送された。
放送後、この社長が、「偽クエ疑惑の主犯格として扱われ、暴利を貪っているとの印象を視聴者に持たれた」と主張して、放送局に抗議したが、局側は、高級魚クエでも偽の表示で流通が行われていることを、一般の視聴者に注意喚起するための企画であると反論し、謝罪・訂正放送を拒否した。このような経過を経て、社長が2008年3月、放送人権委員会に苦情を訴えてきた。
放送人権委員会で、双方に更なる話し合いを求めたところ、「二度とこのニュースを取り上げないよう求める」という社長側の要求をめぐって決着が長引いたが、局側が「今後も、適正な報道を行ってまいります」との表現を盛り込んだ文書を出すことで話し合いがまとまり、放送以来半年ぶりに解決した。

(2007年12月放送 2008年6月解決)

「亡くなった家族を生きているように間違って放送された」と抗議

九州の民放テレビ局が、「スーパーマーケットの前で、じゃんけんで勝つと品物が安く買えるゲーム」(VTR撮影)を行い、夕方の情報番組内で放送した。(08年6月26日)
放送後、ゲームの参加者(申立人)から、「家族構成は祖父母、両親、子供4人」と字幕入りで放送されたため、取引先や知人から「祖父母は、まだ生きているのか」「前に香典をおくったが・・・」などと疑惑の目で見られたり、不審に思われたりして迷惑を受けたと、局に対し、訂正と謝罪をしてほしいとの抗議がなされた。
実際は、両親に子供6人の8人家族であったのを、取材者が聞き間違えたか、思い込みによって誤報となったもの。
抗議に対し、局側は電話で事実を間違えたことを詫びたが、謝罪文(申立人が知人に説明するため、局側が間違えたことを証明する文書)の提出を拒み、また、自宅へ謝罪に来てほしいとの要請についても断ったため、放送人権委員会への相談となった。
事務局からの事情聴取に対し、申立人は「訂正・謝罪は求めない」「慰謝料等も求めない」と述べていたこともあり、局に対し、誤報で迷惑を掛けたのは事実であり、電話だけでなく自宅に出向いて謝罪し誠意を示すのもひとつの解決法ではないかと勧めたところ、部長でもあるプロデュサーが申立人宅に出向き、お詫びした。申立人は「早い段階で誠意を見せてほしかった」と言いつつもこれを了承し、一転解決となった。申立人は、局が誠意を持って謝罪したことを評価し、謝罪文は要求しなかった。
放送から約1ヵ月後の7月に解決となったが、局側は「これまでの対応と今後の対策」を盛り込んだ説明・報告書を放送人権委員会委員長宛て送付、その中で「間違って放送したことは事実であり、直ちに訪問して謝罪すべきだった」と反省している。

(2008年6月放送 7月解決)